その人事には理由がある

９

突然の依頼に動じた風もなく悠然としている態度は、明らかに場慣れしていることを感じさせた。

もしかすると以前から、千春たちが通常業務を行っている裏で、多々良はこのような特殊な業務についていたのだろうか？

横目で見ると、多々良はにやにや笑いかけてくる。

いらついて、千春は彼の靴をヒールで思いきり踏んづけてやった。

「ぎゃっ！」

と言いつつ、嬉しそうなのが気持ち悪い。

「門倉さん。あなたは日野君をサポートしてあげて。ちょっと難しい仕事だけど、お願いできるかしら」

「もちろんです！」

胸を張って千春は応じた。

――サポート？　冗談じゃない。

入社半年目にして、ようやく手柄を上げる機会が巡ってきたのだ、これを逃す手はない。

ふつふつとやる気と野心が胸に湧き上がる。千春は机の下で拳を握りしめた。


――日野さんなんて関係ない。


――この案件、私がこの手で解決してみせる。