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エレベーターを降りてエントランスに向かうと、案の定、日野多々良はそこにいた。
総合受付のカウンターに手をついてもたれかかり、制服姿の女性三人と仲良く話し込んでいる。
多々良が何か言うと、慎ましやかな笑い声が上がった。
「お話し中すみません」
門倉千春が背後から声をかけると、多々良はぱっと振り向いた。
同時に、受付の女性たちの目つきが険を帯びたものになる。
百八十センチ近くあると思われる長身に、ほどよく筋肉のついた体つき。
紺色のポロシャツに灰色のスラックスというラフな服装で、クールビズにかこつけて、ジャケットも羽織らずネクタイも締めていない。
柔らかい黒髪はくせ毛なのかくしゃっとさせて、高く通った鼻筋と、眠たげな甘い目元が特徴的だった。
「日野さん。課長がお呼びです」
「あらら」
多々良は芝居がかった動作で肩をすくめると、人懐っこい笑顔で言った。
「ごめんごめん。こわーいお目付け役が来ちゃったから、そろそろ戻らないと」
悪者にされた千春だったが、気にせずエレベーターホールに引き返していく。
「また今度、飲みに行こうね」
両手を合わせて言うと、多々良は千春の後を追いかけてエレベーターに乗り込んだ。
箱は音も立てずに閉まり、二人を乗せて五階まで上昇していく。
総合受付のカウンターに手をついてもたれかかり、制服姿の女性三人と仲良く話し込んでいる。
多々良が何か言うと、慎ましやかな笑い声が上がった。
「お話し中すみません」
門倉千春が背後から声をかけると、多々良はぱっと振り向いた。
同時に、受付の女性たちの目つきが険を帯びたものになる。
百八十センチ近くあると思われる長身に、ほどよく筋肉のついた体つき。
紺色のポロシャツに灰色のスラックスというラフな服装で、クールビズにかこつけて、ジャケットも羽織らずネクタイも締めていない。
柔らかい黒髪はくせ毛なのかくしゃっとさせて、高く通った鼻筋と、眠たげな甘い目元が特徴的だった。
「日野さん。課長がお呼びです」
「あらら」
多々良は芝居がかった動作で肩をすくめると、人懐っこい笑顔で言った。
「ごめんごめん。こわーいお目付け役が来ちゃったから、そろそろ戻らないと」
悪者にされた千春だったが、気にせずエレベーターホールに引き返していく。
「また今度、飲みに行こうね」
両手を合わせて言うと、多々良は千春の後を追いかけてエレベーターに乗り込んだ。
箱は音も立てずに閉まり、二人を乗せて五階まで上昇していく。
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