14 / 18
くるもんはくる……きたときに受けて立てばいいんだ。『ハリーポッターと炎のゴブレット』――J・K・ローリング
しおりを挟む
ハリーポッターシリーズへの愛は、1つの記事では到底書ききれない。
まだめちゃくちゃ分厚い単行本しかなかった時代から、文字通り肌身離さず持ち歩いて、通学の長い電車の中で何度も読んだ。バイブルと言っていい。
いわずと知れた世界的大大大ベストセラー、USJにもハリーポッターワールドが設置されているなど、もはや説明は不要だろう。
ワーナーブラザーズで全シリーズが映画化され、記録的な大ヒットとなったことも皆さんご存知のとおり。
その中でも、まず原作の小説の第4巻『炎のゴブレット』から紐解きたい。
◇あらすじ
「闇の印」――夜空に刻印された緑色に輝く髑髏。
闇の帝王の凋落後、13年間現れなかった死の印が、興奮と熱狂渦巻くクィディッチ・ワールドカップの夜に打ち上げられた。
いったい誰が、何のために――。
闇の帝王の復活に向けて、物語が動き始める。
第3巻『アズカバンの囚人』までは一話完結というか、1年の間に何やかんやあったけど、結果ハッピーエンドだよね、という感覚で読んでいた。
安心感があった。
でも、その安心感が裏切られ、不穏な空気に包まれるのが第4巻だ。
J・K・ローリングはお子さんがいらっしゃるけれど、そうだとしても、ティーンエイジャーをここまで鋭い視点で観察し、描けるのは天才的と言うほかない。
ハリーやロン、ハーマイオニーはもちろん、誰もが生き生きとリアルで、「そんな中学生いないやろ」というツッコミは入らない。
そして、誰の心にもある邪悪さを描くのもうまい。
例えばマルフォイが嫌な奴だというのは分かるけど、クラスメイトたちだって、普段はハリーをちやほやしても、旗色が悪いと見るや攻撃に回ったり、興味津々で噂したり、からかったり。
悪意はなく、ただ無邪気にやっているのが、余計に怖い。
そのことでハリーやロン、ハーマイオニーは時に傷つき、窮地に立たされ、孤独を募らせるが、最終的には「そういうもん」として割り切っているように思う。
特にハリーは生まれながらに特別な存在で、注目されることに慣れている。(というか、慣れざるを得なかった)
孤独で壮絶な生い立ちから、いろいろなことを諦めている。
そしてどこか老成した眼差しで、冷ややかに物事を達観している。
それでも真っすぐな勇気や正義感、年頃の男の子らしいやんちゃさが奇跡的に残っていて、アンバランスな魅力を放つ。
ハリーを見てると、なりたくて人気者になったわけじゃないし、惨めな思いもたくさんしてるし、辛いよね・・・と思う。
ハリーが向き合わなければならない宿命が、いよいよ形を取って現れるのが本巻だ。
はっきりとスイッチが入り、魔法学校の物語が、命がけの戦いへとシフトする。
そのきっかけこそ、セドリック・ディゴリー、今回のキーパーソンに他ならない。
魔法学校3大対抗戦、それぞれの恋愛、クィディッチ、占い学、マスゴミの権化リータ・スキータなど、見どころとスリルたっぷり。
個人的にはダンスパーティーのシーン、最大の見どころと言っても過言ではない。
眼鏡を取ったら美少女みたいな、まるで少女漫画のような展開にキュンキュンが止まらない。
あと、ハーマイオニーの捨て台詞も最高!
イライラしたり、貧乏だったり、友だちと喧嘩したり、恋に悩んだり、青春って楽しいばかりじゃない。
本当に自分もホグワーツにいるような臨場感を味わいつつ、自分の学生時代も蘇って重なる。
小さい頃両親を失わずにすむなら、何と引き換えにしてもいいと願うハリー。
ガリオン金貨とクィディッチのキャプテンを熱望し、いつも傍観者で、スターになりたいと願ってきたロン。
でしゃばりと笑われ、容姿をけなされ、マグルの娘と嘲られ、すがるように勉学に打ち込むハーマイオニー。
魔法の世界でも、魔法のようにご都合主義に解決することは一切ない。
ハリーたちが子どもだからって、敵は容赦なく卑劣に攻撃してくる。
だからこそ、そこで生まれる血の通った人間ドラマが私たちの心を打ち、温めるのだ。
読む人を別世界に連れて行き、幸せにしてくれる物語の魔法。
ふだん本を読まない人さえ、ハリーポッターのページを一たびめくれば、その魔法を信じることができる。
何年たっても読み返し、そのたび出会えたことに感謝したくなる作品だ。
◇好きな一文
「それはの、ハグリッド、世界中の人に好かれようと思うのなら、残念ながらこの小屋にずっと長いこと閉じこもっているほかあるまい」byダンブルドア
ロンやハーマイオニーと一緒にいるのが一番好きだった。三人で他愛のないことをしゃべったり、チェスをする二人をハリーが黙ってそばで見ていたりと、そんな時間が好きだった。三人とも、言葉に出さなくても一つの了解に達していると感じていた。
まだめちゃくちゃ分厚い単行本しかなかった時代から、文字通り肌身離さず持ち歩いて、通学の長い電車の中で何度も読んだ。バイブルと言っていい。
いわずと知れた世界的大大大ベストセラー、USJにもハリーポッターワールドが設置されているなど、もはや説明は不要だろう。
ワーナーブラザーズで全シリーズが映画化され、記録的な大ヒットとなったことも皆さんご存知のとおり。
その中でも、まず原作の小説の第4巻『炎のゴブレット』から紐解きたい。
◇あらすじ
「闇の印」――夜空に刻印された緑色に輝く髑髏。
闇の帝王の凋落後、13年間現れなかった死の印が、興奮と熱狂渦巻くクィディッチ・ワールドカップの夜に打ち上げられた。
いったい誰が、何のために――。
闇の帝王の復活に向けて、物語が動き始める。
第3巻『アズカバンの囚人』までは一話完結というか、1年の間に何やかんやあったけど、結果ハッピーエンドだよね、という感覚で読んでいた。
安心感があった。
でも、その安心感が裏切られ、不穏な空気に包まれるのが第4巻だ。
J・K・ローリングはお子さんがいらっしゃるけれど、そうだとしても、ティーンエイジャーをここまで鋭い視点で観察し、描けるのは天才的と言うほかない。
ハリーやロン、ハーマイオニーはもちろん、誰もが生き生きとリアルで、「そんな中学生いないやろ」というツッコミは入らない。
そして、誰の心にもある邪悪さを描くのもうまい。
例えばマルフォイが嫌な奴だというのは分かるけど、クラスメイトたちだって、普段はハリーをちやほやしても、旗色が悪いと見るや攻撃に回ったり、興味津々で噂したり、からかったり。
悪意はなく、ただ無邪気にやっているのが、余計に怖い。
そのことでハリーやロン、ハーマイオニーは時に傷つき、窮地に立たされ、孤独を募らせるが、最終的には「そういうもん」として割り切っているように思う。
特にハリーは生まれながらに特別な存在で、注目されることに慣れている。(というか、慣れざるを得なかった)
孤独で壮絶な生い立ちから、いろいろなことを諦めている。
そしてどこか老成した眼差しで、冷ややかに物事を達観している。
それでも真っすぐな勇気や正義感、年頃の男の子らしいやんちゃさが奇跡的に残っていて、アンバランスな魅力を放つ。
ハリーを見てると、なりたくて人気者になったわけじゃないし、惨めな思いもたくさんしてるし、辛いよね・・・と思う。
ハリーが向き合わなければならない宿命が、いよいよ形を取って現れるのが本巻だ。
はっきりとスイッチが入り、魔法学校の物語が、命がけの戦いへとシフトする。
そのきっかけこそ、セドリック・ディゴリー、今回のキーパーソンに他ならない。
魔法学校3大対抗戦、それぞれの恋愛、クィディッチ、占い学、マスゴミの権化リータ・スキータなど、見どころとスリルたっぷり。
個人的にはダンスパーティーのシーン、最大の見どころと言っても過言ではない。
眼鏡を取ったら美少女みたいな、まるで少女漫画のような展開にキュンキュンが止まらない。
あと、ハーマイオニーの捨て台詞も最高!
イライラしたり、貧乏だったり、友だちと喧嘩したり、恋に悩んだり、青春って楽しいばかりじゃない。
本当に自分もホグワーツにいるような臨場感を味わいつつ、自分の学生時代も蘇って重なる。
小さい頃両親を失わずにすむなら、何と引き換えにしてもいいと願うハリー。
ガリオン金貨とクィディッチのキャプテンを熱望し、いつも傍観者で、スターになりたいと願ってきたロン。
でしゃばりと笑われ、容姿をけなされ、マグルの娘と嘲られ、すがるように勉学に打ち込むハーマイオニー。
魔法の世界でも、魔法のようにご都合主義に解決することは一切ない。
ハリーたちが子どもだからって、敵は容赦なく卑劣に攻撃してくる。
だからこそ、そこで生まれる血の通った人間ドラマが私たちの心を打ち、温めるのだ。
読む人を別世界に連れて行き、幸せにしてくれる物語の魔法。
ふだん本を読まない人さえ、ハリーポッターのページを一たびめくれば、その魔法を信じることができる。
何年たっても読み返し、そのたび出会えたことに感謝したくなる作品だ。
◇好きな一文
「それはの、ハグリッド、世界中の人に好かれようと思うのなら、残念ながらこの小屋にずっと長いこと閉じこもっているほかあるまい」byダンブルドア
ロンやハーマイオニーと一緒にいるのが一番好きだった。三人で他愛のないことをしゃべったり、チェスをする二人をハリーが黙ってそばで見ていたりと、そんな時間が好きだった。三人とも、言葉に出さなくても一つの了解に達していると感じていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
BL書籍の印税で娘の振り袖買うつもりが無理だった話【取らぬ狸の皮算用】
月歌(ツキウタ)
エッセイ・ノンフィクション
【取らぬ狸の皮算用】
書籍化したら印税で娘の成人式の準備をしようと考えていましたが‥‥無理でした。
取らぬ狸の皮算用とはこのこと。
☆書籍化作家の金銭的には夢のないお話です。でも、暗い話じゃないよ☺子育ての楽しさと創作の楽しさを満喫している貧弱書籍化作家のつぶやきです。あー、重版したいw
☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆
『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#)
その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。
☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです
生きる 〜アルコール依存症と戦って〜
いしかわ もずく(ペンネーム)
エッセイ・ノンフィクション
皆より酒が強いと思っていた。最初はごく普通の酒豪だとしか思わなかった。
それがいつに間にか自分で自分をコントロールできないほどの酒浸りに陥ってしまい家族、仕事そして最後は自己破産。
残されたものはたったのひとつ。 命だけ。
アルコール依存専門病院に7回の入退院を繰り返しながら、底なし沼から社会復帰していった著者の12年にわたるセミ・ドキュメンタリー
現在、医療従事者として現役。2024年3月で還暦を迎える男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる