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クイーンズ公爵家の屋敷に帰りつくと、私は少しだけ時間をもらって、お父様とお母様に会いに行った。
そして、ナサニエル殿下の病状と、ユリウスとの結婚について話した。
お父様とお母様は、ナサニエル殿下のことでは驚いて胸を痛めておられたけれど、ユリウスのことについては驚かなかった。
「やっと自分の気持ちに気づいてくれたのね、ローラちゃん」
「いつまでたっても進まないんで、やきもきしたぞ」
二人とも満面の笑みで言うものだから、こっちが恥ずかしくなった。
「お父様とお母様は、ユリウスの素性についてもご存じだったんですか?」
「ああ。ローズは王家出身で、エスター王女とも親しかったからな。マリウスが王家の主治医をクビになった後、仕事が必要だってことでクイーンズ家に雇うよう進言してくれた」
「二人と生まれてくる子どものために、何かできることをしたかったの。エスターは体が弱くて、亡くなってしまったけれど……あなたを産んだこと、後悔していないと思うわ」
お母様は、ユリウスの目を真っすぐ見つめて言った。
「あなたの瞳の色、ペリドットグリーンは、エスターから受け継いだものよ。誇りなさいね」
「ありがとうございます」
ユリウスは丁寧にお辞儀をした。
無事に結婚の承諾も得ることができ、ほっとしたら、何だか急に眠くなってきた。
お父様の部屋を出たところで、私は両手を伸ばす。
「ユリウス。抱っこ」
「はいはい。仕方ありませんね」
よっこらしょ、と横抱きに――いわゆるお姫様抱っこの体勢で部屋まで連れていってもらう。
「うう、重い……」
「え!?ごめんなさい、降りる」
「冗談ですよ。お姫様」
からかうように耳元で呟いて、夜の廊下をユリウスは一歩ずつ歩いていく。
温かさと揺れが心地よく、ほわほわした幸せな気分だった。
「ユリウス」
「何ですか?」
「ナサニエル殿下を……お願いね。ずっと、いっぱい長生きしてほしいから」
そして、ナサニエル殿下の病状と、ユリウスとの結婚について話した。
お父様とお母様は、ナサニエル殿下のことでは驚いて胸を痛めておられたけれど、ユリウスのことについては驚かなかった。
「やっと自分の気持ちに気づいてくれたのね、ローラちゃん」
「いつまでたっても進まないんで、やきもきしたぞ」
二人とも満面の笑みで言うものだから、こっちが恥ずかしくなった。
「お父様とお母様は、ユリウスの素性についてもご存じだったんですか?」
「ああ。ローズは王家出身で、エスター王女とも親しかったからな。マリウスが王家の主治医をクビになった後、仕事が必要だってことでクイーンズ家に雇うよう進言してくれた」
「二人と生まれてくる子どものために、何かできることをしたかったの。エスターは体が弱くて、亡くなってしまったけれど……あなたを産んだこと、後悔していないと思うわ」
お母様は、ユリウスの目を真っすぐ見つめて言った。
「あなたの瞳の色、ペリドットグリーンは、エスターから受け継いだものよ。誇りなさいね」
「ありがとうございます」
ユリウスは丁寧にお辞儀をした。
無事に結婚の承諾も得ることができ、ほっとしたら、何だか急に眠くなってきた。
お父様の部屋を出たところで、私は両手を伸ばす。
「ユリウス。抱っこ」
「はいはい。仕方ありませんね」
よっこらしょ、と横抱きに――いわゆるお姫様抱っこの体勢で部屋まで連れていってもらう。
「うう、重い……」
「え!?ごめんなさい、降りる」
「冗談ですよ。お姫様」
からかうように耳元で呟いて、夜の廊下をユリウスは一歩ずつ歩いていく。
温かさと揺れが心地よく、ほわほわした幸せな気分だった。
「ユリウス」
「何ですか?」
「ナサニエル殿下を……お願いね。ずっと、いっぱい長生きしてほしいから」
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