結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

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「ここに来る前、私は、今みたいに裕福じゃなかった。お嬢様でもなかった。仕事もなかなか見つからなかったし、いつもお金がなくって、惨めな思いもした。だけど、最低限の衣食住は保障されてた。
テセオニアには、今日食べるものすらない人がいる。親がいなくて、一人ぼっちの子どもがいる。病気になっても、病院に行くお金がない人がいる。
だったら私はここで、みんなが少しでも幸せになれるように、できることをしたい。それが、私自身を救うことにつながるから」

ばしっと激しい音がして、頭を殴られたような痛みが走った。

「黙れ」

静かに言ったアンナの目は燃えていて、手には蛇のような太いムチが握られていた。

衝撃で口の中を噛んだらしく、血の味がする。

「無駄口をたたけるのも今のうちよ。お前は今から、私と同じ目に遭うんだから」

アンナと同じ目……？

ぱしん、ぱしん、とムチを手でもてあそびながら、アンナは微笑む。

「ナイト家に協力しているのは、ロベルトだけじゃない。北のキャスリングとアンパッサンも味方になってくれた。今ごろクイーンズ家は焼き払われて、跡形もなくなってる。お前の大好きなお父様もお母様も、ユリウスも！炎の中で死んでいるでしょうアハハハハハハハハハ！！」

高笑いが牢屋の中に響き渡る。

「嘘よ……」

冷や汗が背中をつたった。

そんなはずない。これはアンナの脅しだ。

お父様やお母様が、クイーンズ家のみんなが――ユリウスが死んでしまうなんて、そんなこと、あるわけない。

「お前も住む場所を奪われて、どこかの屋敷の下働きとして、一年中ずっと働いてみるといい。隙間風の吹く部屋で、寒くて眠れない思いをすればいい。指にあかぎれができて、ひび割れて血が出て、ずっと治らない手で水仕事をしてみるといい。それが！！この世界を生きている人間の現実だ。人を救うだなんだって話は、その境遇を味わってみてから言え」

私は唇を噛みしめた。