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いつの間にか夜も更けて、月の光が水のようにきらきらと降り注いでいる。
ダンスやコンサートが盛り上がっているのか、階下からは歓声が聞こえてくる。
でも、私たちのいるバルコニーだけは別世界のように、しんと静まり返っていた。
「……帰る?」
あまりにも気まずい沈黙が続いたので、私はユリウスに促した。
「南部から戻ってきたばかりで、疲れたでしょう。お家でゆっくり休んだほうがいいわ」
「……そうですね。お気遣いありがとうございます」
ユリウスはほっとしたように頷く。
歩き出したところで、後ろから声をかけられた。
「ローラ様」
振り向くと、ユリウスは真剣な眼差しでこちらを見つめている。
「なあに?」
「今、アレックス様へのお気持ちは、少しでもおありですか」
さっきのナサニエル殿下との話だと、すぐに直感した。
「ないわ」
「本当に?」
至近距離で目を覗き込まれて、心を見透かされそうになる。
わずらわしくなって、私は首を振った。
「ないって言ってるでしょ」
「では、ナサニエル様へのお気持ちはいかがですか」
今度は、心臓がどきっとした。
アレックスの名前が出たときはうんともすんとも言わなかったのに――体の反応って素直だ。
「……分からないっていうのが、正直なところかな」
殿下のことは好ましい人だと感じてるし、ドキドキもするけど、この気持ちが恋なのかは分からない。
喪女だから、自分の感覚に自信が持てないっていうのもある。
妄想でしか恋愛したことないから、サンプルがなくて、これが恋だっていう確信が持てないんだよね。
「じゃあ、俺とのキスは嫌でしたか?」
「え、ちょ、な、何言ってるのよ……」
顔がかあっと熱くなって、体温が急上昇していく。
黙っていると手を握られて、指先を親指で撫でられる。何かエロい。
今日のユリウス、本当に意味が分からないんですけど!
「答えてください」
「ユリウス……酔ってるの?」
「そうかもしれませんね」
酔ってるんかーい。
まあ、私も久しぶりにユリウスに会えて、テンション上がりまくってたけども。
私はため息をついた。
「びっくりしすぎて、嫌とか嫌じゃないとか考える暇なかったよ。あれは事故だと思って忘れるから、もう二度とあんなことしないでね」
「……分かりました」
ユリウスは切なく目を細める。
――そのときの表情が意味するものを私が知るのは、ずっと後になってからのことだった。
ダンスやコンサートが盛り上がっているのか、階下からは歓声が聞こえてくる。
でも、私たちのいるバルコニーだけは別世界のように、しんと静まり返っていた。
「……帰る?」
あまりにも気まずい沈黙が続いたので、私はユリウスに促した。
「南部から戻ってきたばかりで、疲れたでしょう。お家でゆっくり休んだほうがいいわ」
「……そうですね。お気遣いありがとうございます」
ユリウスはほっとしたように頷く。
歩き出したところで、後ろから声をかけられた。
「ローラ様」
振り向くと、ユリウスは真剣な眼差しでこちらを見つめている。
「なあに?」
「今、アレックス様へのお気持ちは、少しでもおありですか」
さっきのナサニエル殿下との話だと、すぐに直感した。
「ないわ」
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至近距離で目を覗き込まれて、心を見透かされそうになる。
わずらわしくなって、私は首を振った。
「ないって言ってるでしょ」
「では、ナサニエル様へのお気持ちはいかがですか」
今度は、心臓がどきっとした。
アレックスの名前が出たときはうんともすんとも言わなかったのに――体の反応って素直だ。
「……分からないっていうのが、正直なところかな」
殿下のことは好ましい人だと感じてるし、ドキドキもするけど、この気持ちが恋なのかは分からない。
喪女だから、自分の感覚に自信が持てないっていうのもある。
妄想でしか恋愛したことないから、サンプルがなくて、これが恋だっていう確信が持てないんだよね。
「じゃあ、俺とのキスは嫌でしたか?」
「え、ちょ、な、何言ってるのよ……」
顔がかあっと熱くなって、体温が急上昇していく。
黙っていると手を握られて、指先を親指で撫でられる。何かエロい。
今日のユリウス、本当に意味が分からないんですけど!
「答えてください」
「ユリウス……酔ってるの?」
「そうかもしれませんね」
酔ってるんかーい。
まあ、私も久しぶりにユリウスに会えて、テンション上がりまくってたけども。
私はため息をついた。
「びっくりしすぎて、嫌とか嫌じゃないとか考える暇なかったよ。あれは事故だと思って忘れるから、もう二度とあんなことしないでね」
「……分かりました」
ユリウスは切なく目を細める。
――そのときの表情が意味するものを私が知るのは、ずっと後になってからのことだった。
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