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「それで?あなたは俺がいない間に、また人助けをなさったんですね」

ぐいっと大胆に背中を反らす体勢になったとき、ユリウスは耳元で囁いた。

「別に人助けってわけじゃ……」

「ダンスパーティーの運営は、本来2年生が中心で行うものと思っておりましたが」

「もう、よく知ってるのね。生徒会長が困ってるみたいだったから、ちょっと手伝っただけよ」

「これが『ちょっと』ですか?」

からかうように言って、ユリウスは私の腰に手を回して引き寄せる。

「ちょ、ちょっと……!ワルツにこんな振りつけないでしょ」

慌てて離れようとするけど、しっかり固定されてて動けない。

首の後ろに手を回されているので、目を逸らすこともできない。

唇が触れそうな距離で、そのままゆっくりと左右にゆらゆら揺れる。

顔が燃えそうに熱い。うう……恥ずかしすぎて死にそう。

こんな密着状態、喪女には刺激が強すぎるんだってば~!

「そういう顔をされると、余計に困らせてみたくなりますよ」

「え……?」

絶妙のタイミングで音楽が終わり、ぱちぱちぱち……と上品な拍手が起こった。

ユリウスは非の打ちどころのないお辞儀をして、私の手の甲に口づける。

とりあえず、私もドレスの裾を広げて一礼した。

「ローラ様。あなたはもう少し、男という生き物を知ったほうがいい」

「それって、どういう……」

「あっ、ローラ様!」

そこへ呼びとめてきたのはリックだった。

やばい。さっさとダンスホールを抜けて、人の少ないところに避難する予定だったのに。

「リック。ごきげんよう」

私は笑顔で振り向いた。さすがに、主催者であり生徒会長の彼を無視するわけにはいかない。

ちらっと視線をやると、ユリウスは『先に行きます』と言うように、階段の上へ姿を消した。
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