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「何かイクスって意外としっかり者で、スケジュール立てたり予算計画したり、会場の準備をしたりっていう実務を一手に引き受けてたらしいのよ。今の会長はちゃらんぽらんで全部任せてたから、イクスがいなくなってどうしようって青ざめてて」

「えっ。でも、たしかダンスパーティーって来週じゃなかったっけ?」

「そうなのよ。なのに、現時点で何も準備が進んでないらしくて、この私に泣きついてきたってわけ。本当情けない奴だわ」

「何でマリーなの?」

「遠い親戚だし、家同士のつながりがあって顔見知りなのよ。で、いっそのことダンスパーティー中止したら?って私は言ってやったわけ。そしたら『それは困る。みんな楽しみにしてるから』とか言い出して、何言ってんの?って感じ」

マリーは腕を組んで憤慨している。私は苦笑した。

「よく考えたら、大規模なイベントを運営するのって大変だもんね。うちの場合、先生もぼやーんとしてて、あんまり手伝ってくれるわけじゃないし」

「そうそう。先生たちも貴族の坊っちゃん嬢ちゃんか、暇な老人だからさ~。大体ダンスパーティーなんて言いながら、実態はマウンティングなんだから、だったら普通に名簿配ったらいいじゃん。『○○家の○○令嬢は、○○家の○○令息と交際中だから手出さないように』とか。そしたら必要ないでしょ」

ずばっと言い切るマリーは、ちょっぴり卍暴走族モード卍に入りつつある。

彼女はまどろっこしいことを好まないし、表面上を取り繕った心のない会話や社交辞令が大嫌いなのだ。

「まあまあ。気持ちは分かるけど、これも貴族社会のイベントの一つだから」

「本っ当に無駄が好きよね、非合理的ったらありゃしない」

ぷんすかむくれているマリーに、私は微笑みかけた。

「ねえ、マリー?中止しようって言ってくれたの、私のためでしょう」

「……は?」

マリーは軽く目を見開いた後、怒ったような顔でそっぽを向いた。

「何のことを言ってるのか、さっぱりだわ」

色白な頬が、かすかに赤く染まっている。

図星だ。かわいい。私はくすくす笑った。

「大丈夫、私のことなら心配しないで。何やかんやで婚約破棄になったけど、ダンスパーティー以上の修羅場はくぐってきたから」

パートナーがいないのは辛いけど、正直それどころじゃない事件に巻き込まれてきたのだから、今回も何とか乗り切れるだろう。

そのとき、ふっとある考えがひらめいた。

「ねえ、マリー。こういうのはどう?私たちで生徒会を手伝って、今年のダンスパーティーを取り仕切るの」

マリーは鳩が豆鉄砲を食らったような、とってもキュートな顔をした。
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