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「持ってきてくれ」
王子はぱんぱんと手をたたき、状況が飲み込めていない私の前に、箱を持った侍従が現れた。
「それは、俺からの贈り物だ。開けてみてくれ」
片手に乗るくらいの大きさの、美しいロイヤルブルーの立方体だった。
そっと開いてみて、私は息を飲んだ。
「殿下。これは……」
「俺からの気持ちだ」
それはダイヤや真珠、ルビーやサファイアやエメラルドの散りばめられた、美しいイヤリングだった。
金の台座に、宝石を埋め込んで花を描いている。
もう、目が飛び出るぐらい高価であることは間違いない。
「こんな豪華なもの……いただけません」
「そう言うと思った。まあ、話を聞いてくれよ」
王子はにこにこというより、もはやにやにやしている。ご満悦な感じだ。
「今回の件で、しばらくの間お前の元には縁談が持ち込みにくくなるだろう。それは分かるな?」
「はい。わたくしに関するいろいろな噂が流布しているようですから、そうだと思います」
「そこで、俺がお前のために一肌脱ぎたい。つまり、ローラ・クイーンズに、キング家のナサニエルが結婚を申し込んでいるらしい……という噂を流したいんだよ」
「え……ええええ?」
さすがの私も、王子の前で取り繕えず、素が出てしまった。
「なぜ、そんなことをする必要があるんですか?」
「まあ、ネガティブキャンペーンを打ち消すための、逆キャンペーンだな。俺は一応王子だし、王子が結婚申し込んだらしいとなれば、ナイト家がどうこうとか抜かす奴らも黙らせられるだろ?」
「それは、そうですけど……」
私は口ごもった。やばい、エマの言ったとおりじゃない?
確かに王家とナイト伯爵家じゃ、格が違う。
私とナサニエル王子との間に噂が立てば、アレックスとの婚約破棄の噂なんて吹き飛んでしまうだろう。
「な?いいアイディアだろ?」
豪快に「わっはっは」と笑っている王子に、私は問いかけた。
「失礼ですが、殿下。こんなことをして、殿下に何のメリットがあるのですか?」
「メリット?」
王子は目を丸くしている。
「わたくしと王子の間に噂が流れれば、それこそ王子の縁談に差し支えるのではありませんか」
「あー、まあ、それはそうだな」
まんざらでもない王子の表情を見て、私はぴんときた。
王子はぱんぱんと手をたたき、状況が飲み込めていない私の前に、箱を持った侍従が現れた。
「それは、俺からの贈り物だ。開けてみてくれ」
片手に乗るくらいの大きさの、美しいロイヤルブルーの立方体だった。
そっと開いてみて、私は息を飲んだ。
「殿下。これは……」
「俺からの気持ちだ」
それはダイヤや真珠、ルビーやサファイアやエメラルドの散りばめられた、美しいイヤリングだった。
金の台座に、宝石を埋め込んで花を描いている。
もう、目が飛び出るぐらい高価であることは間違いない。
「こんな豪華なもの……いただけません」
「そう言うと思った。まあ、話を聞いてくれよ」
王子はにこにこというより、もはやにやにやしている。ご満悦な感じだ。
「今回の件で、しばらくの間お前の元には縁談が持ち込みにくくなるだろう。それは分かるな?」
「はい。わたくしに関するいろいろな噂が流布しているようですから、そうだと思います」
「そこで、俺がお前のために一肌脱ぎたい。つまり、ローラ・クイーンズに、キング家のナサニエルが結婚を申し込んでいるらしい……という噂を流したいんだよ」
「え……ええええ?」
さすがの私も、王子の前で取り繕えず、素が出てしまった。
「なぜ、そんなことをする必要があるんですか?」
「まあ、ネガティブキャンペーンを打ち消すための、逆キャンペーンだな。俺は一応王子だし、王子が結婚申し込んだらしいとなれば、ナイト家がどうこうとか抜かす奴らも黙らせられるだろ?」
「それは、そうですけど……」
私は口ごもった。やばい、エマの言ったとおりじゃない?
確かに王家とナイト伯爵家じゃ、格が違う。
私とナサニエル王子との間に噂が立てば、アレックスとの婚約破棄の噂なんて吹き飛んでしまうだろう。
「な?いいアイディアだろ?」
豪快に「わっはっは」と笑っている王子に、私は問いかけた。
「失礼ですが、殿下。こんなことをして、殿下に何のメリットがあるのですか?」
「メリット?」
王子は目を丸くしている。
「わたくしと王子の間に噂が流れれば、それこそ王子の縁談に差し支えるのではありませんか」
「あー、まあ、それはそうだな」
まんざらでもない王子の表情を見て、私はぴんときた。
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