13 / 151
13
しおりを挟む
ドキっとしていると、ユリウスは私の瞼の下を軽く引っ張った。
「少し貧血を起こされているようですね。横になりましょう」
……あ、そういうことね。
元喪女のせいで男の人に免疫がなくって、そういう意味はなくても触れられるとドキドキしてしまう。
ユリウスはお医者さんだから、診察されることはよくあるけど、慣れないのよね~。
「あ、えーっと、それが、本当にお父様の部屋に行こうと思うのよ」
「それって、さっき部屋から飛び出していったアンナ嬢と何か関係があるんですか?『婚約破棄』なんていう、不穏な言葉も出てましたけど」
あまり興味なさそうにユリウスは問いながら、今度は私の手首に親指と人さし指を添える。
思わずビクッとすると、「……脈を診てるだけですよ」と冷静に言われて顔が熱くなる。
……頑張れ私。
「そ……そうなのよ。いろいろあって、アレックスが婚約を破棄したいと言ってきたから、受け入れることにしたの。結婚式は明日だし、お父様にはお伝えしておかないと」
「よかったじゃないですか」
「え?」
予想外の反応に、私は目をぱちくりさせた。
「アレックス様に嫁いだところで、メリットはありませんよ。向こうから断ってくれて、むしろ好都合だ」
「メリットって……あなたねぇ……」
ユリウスって、こういう人だ。乙女心と対極にあるというか、バリバリの現実派というか。
でも、私はさっきより少し、ほっとしていた。
「ご一緒しますよ。まだ顔色もよくありませんし、つかまってください」
ユリウスは言って、当然のように手を差しのべた。
「あ……ありがとう」
指先が熱く震えていたけれど、多分これは、婚約破棄のショックじゃなくて恥ずかしさのせいだった。
「少し貧血を起こされているようですね。横になりましょう」
……あ、そういうことね。
元喪女のせいで男の人に免疫がなくって、そういう意味はなくても触れられるとドキドキしてしまう。
ユリウスはお医者さんだから、診察されることはよくあるけど、慣れないのよね~。
「あ、えーっと、それが、本当にお父様の部屋に行こうと思うのよ」
「それって、さっき部屋から飛び出していったアンナ嬢と何か関係があるんですか?『婚約破棄』なんていう、不穏な言葉も出てましたけど」
あまり興味なさそうにユリウスは問いながら、今度は私の手首に親指と人さし指を添える。
思わずビクッとすると、「……脈を診てるだけですよ」と冷静に言われて顔が熱くなる。
……頑張れ私。
「そ……そうなのよ。いろいろあって、アレックスが婚約を破棄したいと言ってきたから、受け入れることにしたの。結婚式は明日だし、お父様にはお伝えしておかないと」
「よかったじゃないですか」
「え?」
予想外の反応に、私は目をぱちくりさせた。
「アレックス様に嫁いだところで、メリットはありませんよ。向こうから断ってくれて、むしろ好都合だ」
「メリットって……あなたねぇ……」
ユリウスって、こういう人だ。乙女心と対極にあるというか、バリバリの現実派というか。
でも、私はさっきより少し、ほっとしていた。
「ご一緒しますよ。まだ顔色もよくありませんし、つかまってください」
ユリウスは言って、当然のように手を差しのべた。
「あ……ありがとう」
指先が熱く震えていたけれど、多分これは、婚約破棄のショックじゃなくて恥ずかしさのせいだった。
1
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

華都のローズマリー
みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。
新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる