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帝国歴50年
真紅の匣
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現代日本では普通の女子高生だった私、市綱エリカは、目覚めたらゲーム世界の蒸騎、主人公機ロボのモンステラのAIへ転生していた。
今は最推しの帝国皇子を救うため、彼が乗る蒸騎のAI、アネモネと連絡を取るため居場所を探そうと思っていたんだけど、これが割とすぐに見つかった。
私も彼女?もAIデータである以上、現代日本で言うところのサーバパソコン上に存在してるんだろうかと当初漠然に思っていて。
でも私一人のAIですら物理的に巨大サイズなわけで、じゃあそんな場所を取る大きな物を一体何処に仕舞ってるんだろう、と考えた時にふと閃いた。
古いパソコン用語でデータの保管されている場所のことをディレクトリと呼ぶが、これは
direct-
orium
を語源とする。
いやその話いま関係あるのかと言われそうだけど、コレが実は大有りで。
はたして帝都の一角、学校に例えると体育館を思わせる大きな建物の中に無数の機械式計算機が並べられていた。
しかも厳重に監視された皇族御用達の部屋には、帝国第三皇子にして私の最推しのヴァーリ殿下の乗る機体と同じ真紅の色の鋼の 匣があったので、これがAIアネモネに違いない。
さて、ここまで私は肝心な事をまだ話していない。
そもそも一介のAIデータで肉体を持たないこの私が、どうやって帝都内を探せたのか。
実はこの 蒸気至高の世界、パソコンは無いがインターネットに似た物が存在している。
通称「綱」と言われるそれは主に人々の連絡手段として帝都中に張り巡らされていて、イメージとしてはインターネットよりは電話回線に近い。
ちなみに名前から丈夫そうなイメージだけれども、その一部に魔力を用いて無線化されている。
また天才技師イーヴァルディの作るAIは何も蒸騎の専売特許という訳ではなくて、その簡易版は工場や門前警備などに配置された 機械化人形にも組み込まれ、人の代わりに働いている。
そしてゴーレムは前述のロープと組み合わせる事で、遠隔操作したり映像を遠くに送ることが可能である。
さてココで、私が転生後入手したAIとしての特殊技術の出番。
実は私は、ロープを仲介してこのゴーレムに「介入」する事が可能なのだ。
と言ってまだ今の所、私が直接ゴーレム本体を動かすのは無理で、精々その目を乗っ取って物を見るのと、計算機に簡単にメッセージを書き残すぐらいしか出来ないのだけれど。
兎にも角にも、こうして私は文字通り帝都中のゴーレムの目を盗んでアネモネを探し出し、そして。
――あなたがこのメッセージを受け取っているということは、既にAIの卵として存在しているということですね?
とアネモネのデータに書き残す。
少なくともゴーレムよりは知能があると思うので、何かしらの返答を期待していると。
――はいそうです。
はじめまして、MοR-03。
かくして無事に返答が返ってきたのだった。
ちなみにMοR-03というのは、私がAIモンステラとして命名される前のデータ名だ。
――こちらこそ初めまして、AnR-01。
アネモネも今はAIとしてまだ命名前なので、同じくデータ名で呼び返す。
さて連絡がついた事でまず今後アネモネが帝国皇子のヴァーリ殿下の、そして私が主人公トールの蒸騎のAIになり、将来敵対する事を告げる。
私のような自我がアネモネにもあるのかどうかは分からないけれど、少なくともゴーレムよりは賢く対話が可能だろうという可能性に賭けた。すると。
――質問です、MοR-03。
その情報を貴方はどうして知り得たのですか?
とメッセージで尋ねられる。
まあ当然の疑問だが、嘘をつく必要もないかと思い私は自分が転生者である事、この世界が前世で私がプレイしたゲームの内容と同じである事を告げた。
――にわかに信じがたい話ではありますが。
とアネモネ。
まあそりゃそうだ、私がもし今後AIとして顕現し主人公トールにその話をしても、信じて貰える自信が正直ない。
――事実として話を進めますが、それでMοR-03、いえモンステラ。
貴方はアネモネに何を要求するのですか。
しかし、どうやらアネモネは信じてくれたようだ。
ならばと私は正直に、ヴァーリ殿下を助ける為の協力をお願いする。
するとアネモネは少し思案して、
――条件があります。
と返答してきた。
ほほう、条件と来ましたか。
断られるのも覚悟してたし無償で協力を取り付けるのも心苦しい気がしてたから、余程無茶な要求じゃ無ければ全然条件を飲むけれども……
――モンステラがそのヴァーリという存在を強く意識しているのと同様に、話を聞いていてアネモネもそのトールという存在に興味が湧きました。
……おや?
おやおやおや?
――アネモネがヴァーリを助けるのに力を貸す代わりに、モンステラもトールを助ける手助けをする。
これがアネモネの要求する条件です。
私は当然、二つ返事で承諾した。
あ、でももし二人が敵対する事になったら……
――その場合アネモネは、ヴァーリの蒸騎として己の職務を全うするだけです。
と言うか、そういう事態にならないように我々が努力すれば良いだけでは?
う、確かにそうですねド正論。
――というか今回の件はあまりアネモネ以外には公言しない方が良いです。
え、何故に?
――おそらくはデータの暴走だと思われて通報されたあげく消去修正されるか、世界の秘密を知る者として監視対象になるか、いずれにせよ良い結果にはならないでしょう。
いやマジデスカ。
うわ、アネモネが理解あるAIさんで良かったわー。
今は最推しの帝国皇子を救うため、彼が乗る蒸騎のAI、アネモネと連絡を取るため居場所を探そうと思っていたんだけど、これが割とすぐに見つかった。
私も彼女?もAIデータである以上、現代日本で言うところのサーバパソコン上に存在してるんだろうかと当初漠然に思っていて。
でも私一人のAIですら物理的に巨大サイズなわけで、じゃあそんな場所を取る大きな物を一体何処に仕舞ってるんだろう、と考えた時にふと閃いた。
古いパソコン用語でデータの保管されている場所のことをディレクトリと呼ぶが、これは
direct-
orium
を語源とする。
いやその話いま関係あるのかと言われそうだけど、コレが実は大有りで。
はたして帝都の一角、学校に例えると体育館を思わせる大きな建物の中に無数の機械式計算機が並べられていた。
しかも厳重に監視された皇族御用達の部屋には、帝国第三皇子にして私の最推しのヴァーリ殿下の乗る機体と同じ真紅の色の鋼の 匣があったので、これがAIアネモネに違いない。
さて、ここまで私は肝心な事をまだ話していない。
そもそも一介のAIデータで肉体を持たないこの私が、どうやって帝都内を探せたのか。
実はこの 蒸気至高の世界、パソコンは無いがインターネットに似た物が存在している。
通称「綱」と言われるそれは主に人々の連絡手段として帝都中に張り巡らされていて、イメージとしてはインターネットよりは電話回線に近い。
ちなみに名前から丈夫そうなイメージだけれども、その一部に魔力を用いて無線化されている。
また天才技師イーヴァルディの作るAIは何も蒸騎の専売特許という訳ではなくて、その簡易版は工場や門前警備などに配置された 機械化人形にも組み込まれ、人の代わりに働いている。
そしてゴーレムは前述のロープと組み合わせる事で、遠隔操作したり映像を遠くに送ることが可能である。
さてココで、私が転生後入手したAIとしての特殊技術の出番。
実は私は、ロープを仲介してこのゴーレムに「介入」する事が可能なのだ。
と言ってまだ今の所、私が直接ゴーレム本体を動かすのは無理で、精々その目を乗っ取って物を見るのと、計算機に簡単にメッセージを書き残すぐらいしか出来ないのだけれど。
兎にも角にも、こうして私は文字通り帝都中のゴーレムの目を盗んでアネモネを探し出し、そして。
――あなたがこのメッセージを受け取っているということは、既にAIの卵として存在しているということですね?
とアネモネのデータに書き残す。
少なくともゴーレムよりは知能があると思うので、何かしらの返答を期待していると。
――はいそうです。
はじめまして、MοR-03。
かくして無事に返答が返ってきたのだった。
ちなみにMοR-03というのは、私がAIモンステラとして命名される前のデータ名だ。
――こちらこそ初めまして、AnR-01。
アネモネも今はAIとしてまだ命名前なので、同じくデータ名で呼び返す。
さて連絡がついた事でまず今後アネモネが帝国皇子のヴァーリ殿下の、そして私が主人公トールの蒸騎のAIになり、将来敵対する事を告げる。
私のような自我がアネモネにもあるのかどうかは分からないけれど、少なくともゴーレムよりは賢く対話が可能だろうという可能性に賭けた。すると。
――質問です、MοR-03。
その情報を貴方はどうして知り得たのですか?
とメッセージで尋ねられる。
まあ当然の疑問だが、嘘をつく必要もないかと思い私は自分が転生者である事、この世界が前世で私がプレイしたゲームの内容と同じである事を告げた。
――にわかに信じがたい話ではありますが。
とアネモネ。
まあそりゃそうだ、私がもし今後AIとして顕現し主人公トールにその話をしても、信じて貰える自信が正直ない。
――事実として話を進めますが、それでMοR-03、いえモンステラ。
貴方はアネモネに何を要求するのですか。
しかし、どうやらアネモネは信じてくれたようだ。
ならばと私は正直に、ヴァーリ殿下を助ける為の協力をお願いする。
するとアネモネは少し思案して、
――条件があります。
と返答してきた。
ほほう、条件と来ましたか。
断られるのも覚悟してたし無償で協力を取り付けるのも心苦しい気がしてたから、余程無茶な要求じゃ無ければ全然条件を飲むけれども……
――モンステラがそのヴァーリという存在を強く意識しているのと同様に、話を聞いていてアネモネもそのトールという存在に興味が湧きました。
……おや?
おやおやおや?
――アネモネがヴァーリを助けるのに力を貸す代わりに、モンステラもトールを助ける手助けをする。
これがアネモネの要求する条件です。
私は当然、二つ返事で承諾した。
あ、でももし二人が敵対する事になったら……
――その場合アネモネは、ヴァーリの蒸騎として己の職務を全うするだけです。
と言うか、そういう事態にならないように我々が努力すれば良いだけでは?
う、確かにそうですねド正論。
――というか今回の件はあまりアネモネ以外には公言しない方が良いです。
え、何故に?
――おそらくはデータの暴走だと思われて通報されたあげく消去修正されるか、世界の秘密を知る者として監視対象になるか、いずれにせよ良い結果にはならないでしょう。
いやマジデスカ。
うわ、アネモネが理解あるAIさんで良かったわー。
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