上 下
4 / 7
第一話

大百科と初接吻

しおりを挟む
「我が名は《大百科エンクロペディア》、騎兵はキテレッツ」
 空中の、二本角の騎兵がそう自己紹介する。

「俺は《初接吻ファーストキッス》、騎兵はコロス=ケイだよ」
 同じく地上で暴れ回る一本角の騎兵がそう告げる。

「馬鹿な、コロス=ケイだと?」
 と声をあげるのは、先ほど帝国騎兵ゴンス=ケイに乗っていた搭乗者。

「あー、帝国の騎兵乗りがいたかあ。
 そうそう、このコロス=ケイはあんたの国から奪って改造した騎兵だよ?
 改造し過ぎて見た目も別モンだし3倍くらいの強さになってるけどね」
 と初接吻。

「なかなか面白い機体で改造のしがいがあったぞ」
 と大百科。

「さーて、宴の主役はどこかな、っと。
 いるんだろ、100連勝の坊ちゃんがさあ?」

  🫖 🫖 🫖

 地響きのような音にヴィータとミナが振り向くと、闘技場から煙と悲鳴のような声があがっていた。

「行かなきゃ」
 ヴィータはそう言って、騎兵タイタンに乗り込もうとする。

「待ってヴィータ。レベル8のあなたが行っても多分無駄死によ」
 引き止めるようにそう言うミナ。

「そうかもしれない。でも」
 とヴィータは言い、言葉を続ける。

「何もしなかったら大変な事になるって分かってて、それでも何もしないで。
 結果その通りになってしまう方が嫌だ!」

「そっか……わかった」
 ヴィータの宣言にミナが嬉しそうに言い、

「だったら私も一緒にいく!」
「へっ?」
 ヴィータを困惑させるのだった。

  🫖 🫖 🫖

 ヴィータがミナを連れて祝賀会になった闘技場に着いた時には、そこが祝賀会だったとは信じられないほど滅茶苦茶にされていて。
 そして何より、

「ひゃーっはっははは!
 弱い、弱すぎだぜ坊ちゃんよお!」

 一本角の騎兵にボロボロにされた、かつての無敗の騎士、ゴーダ・ゴウのアンデフィーデットが無惨に地面に転がっていた。

「おんやあ?
 そこに見えるは旧世代の異物、ポンコツのタイタン様じゃございませんかあ」
「油断するな初接吻、その機体はかつて我々魔族に辛酸を舐めさせた騎兵だ」
 一本角の騎兵の軽口を、二本角の騎兵が嗜める。

「そんなの50年も前の話でしょ?
 しかもそこから1000連敗って聞いてるよ?」

「連敗していたのは、からよ!」

 ふいにそんな声が、周囲に響き渡る。

「おいミナ!」
 とヴィータが驚いて声をあげる。
 
 その声を発したのは、騎兵タイタンにヴィータと同乗していたミナによるものだった。

「はあ?何を血迷った事を。
 それじゃ何か?戦う理由があれば、強くなるってのかい」
「ええその通り。
 最弱は最強、よ!」

 ミナはそう言い、更に言葉を続ける。

「いるんでしょうミレ姫、いいえミレ!
『鍵』の解放許可を」
「その言葉を待ってましたミナさん!
鍵の解放アンロック許可パーミッション』します!」

「おいミナ、一体何を……」
 困惑するヴィータに、ミナは静かにこう言う。

「ヴィータ、今から起こる事を目にしても?」
 



 

しおりを挟む

処理中です...