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就活編

-19.5°F (蜂に泣きっ面 前編)

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「六華宮霙子FC?」
「はいですぅ。
 ちなみにFCはサッカークラブの事じゃないですぅ」

 いや流石に分かるよ!ファンクラブね?
 芸能人でもないエイコにファンクラブってのがピンと来ないだけで。

「ちなみに設立したのは私ですぅ」

 と目の前にいる後輩、鈴木日菜は会員番号0番の会員証を取り出した。

 あんたが設立したんかい!
 まあ君は以前エイコに助けられてるしファンにもなるのは分かるけど。

「ちなみにエイコさん公認で会員数50名超えてますぅ」

 意外に多いなエイコのファン!

 あの何人も寄せ付けない極寒ツンドラ系女子に惹かれるドMがそんなにいるのか(僕もだけど)。
 
 というかエイコ公認したの!?そっちの方が驚きなんだけど。

「このFCにはもう一つの側面があるの」

 どこから話を聞いていたのかエイコ本人が現れる。

 も、もう一つの側面?

「FCには色んな技術に秀でた人が集まってるの。
 早い話、私の私兵よ」

 滅茶滅茶身も蓋も無いことをぶっちゃけましたよ、うちの彼女!?
 でも、それでも全然良いと思ってそうだなエイコFCの面々。

「そうだ日菜、FCの皆に召集かけておいてね。相談したい事があるって」
「了解ですぅ!」

 何を始める気だ、エイコ?

「ちょっと泣きっ面に蜂……違うわね、蜂に泣きっ面かかせてこようと思って」

  ❄️  ❄️  ❄️

 蜂須賀 美衣。通称びー夫人。
 蜂須賀ホールディングス社長の妻で会社専務、そしてビーカンパニー創立に深く関わった彼女は、いつものように移動送迎のリムジンに乗り込んだ。

 それがいつものリムジンだと程に、車も運転も完璧に騙せていた。

 しかし、ふと蜂夫人が窓の外を見た時。
「ちょっとあなた!
 どこに向かってるのよ、全然方向違いじゃない」

 車が目的地に進んで無いことに気づいたが、文句を言う運転手から返事が返ってくる事はなかった。

「いいから車を止めなさい!
 直ぐ止めて!!」

 と蜂夫人が声を荒げると、車は急ブレーキで停車し、夫人は車内で前のめりに転んだ。

「止めろってそういう意味じゃ無いわよ!バカなの!?」

 怒り心頭に運転手に怒鳴ると、

「本当に使えないわねっ!
 あんたはクビよ、クビ!!」

 蜂夫人は車を降りたのだった。


 そしてその様子を、隠しカメラで観察するのは僕とエイコと日菜ちゃん。

「ここまでは計画通りですぅ」

 蜂夫人の性格と行動も含めて、本当にここまで、びっくりする程計画通りだ。

「でも本番はここからよ。
 特殊効果班、準備して!」

 エイコが無線で、ノリノリで指示を出すのだった。
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