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就活編
-10°F(極寒彼女の弱点)
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「それで私に相談に来たと」
と鈴木リンリン係長。
はあ、既婚者というかパートナー持ちの知り合いのアテがなかったもので。
仕事関係ない、くだらない質問で恐縮ですが。
「それは全然構わないが、君は良いのか?
私と会った事を知った時点で彼女さんが怒り狂いそうだが」
「えーっと、そこは何とかします」
最悪土下座でもして、許してもらう方向で。
「成程。
それで相談だが、パートナーとの今後の付き合い方だったな。主に性的な意味での」
そう言って彼女は加熱式無煙タバコを取り出して咥える。
「それを上司になるかもしれない、しかも女性の私に相談とは随分思い切ったもんだね。
下手すりゃ内定ナシになるか、セクハラで訴えられるかとは考えなかったかい?」
「何となくですが、係長はその辺嫌がらず真面目に聞いてくれそうかな、と」
「やれやれ、無自覚にやってるなら君の人を見る目は本当、才能だな。
ただね、今回に関して言えば性的以前の問題かもしれん」
そう言って係長は、咥えてるタバコを左手に持ち変えて、息を吐く。
「と言うと?」
「自律神経失調症の疑いがあるって事だ」
「自律神経失調症、ですか?」
「ああ、何でもきっちりやろうとする几帳面で完璧主義の人に多いんだが、物事が上手く行かなかった時の強いストレスが蓄積して自律神経がダメージを受けているんだと思う。
例えば極端に朝が弱いとか、思い当たるふしはあるだろう」
えーと、ありまくりですね。
「結果性的なものに限らず他人には些細な事でも、強いショックを感じて気を失いやすくなる」
「精神病みたいなものですか。
というと精神科の通院?」
「も手段の一つだが、パートナーとの関わり方で治療は十分可能だぞ。
要は彼女がリラックス出来る環境を作って少しづつ慣らしていく事だ。
例えば催眠療法に似た、言い聞かせなどが効果的だな」
それならうん、僕にも出来そうかな。
「と言った回答でいいかな?
田中くんの彼女さん」
「えっ?」
「……あっ」
と僕のすぐ後ろの席で声がして、振り返ると……
「ど、どうも」
「……何してんのエイコ」
直接後をつけてくるとは、またずいぶんと大胆な。
「というか係長、いつから気づいてたんですか?」
というか僕の彼女だって、良く分かりましたね。
「私達の話に逐一反応してたし、田中くんの関係者だろう事は早い時期に推測出来たよ。
彼女さんかどうかは鎌をかけてみたけどね」
さすがお客様相談係。
「まあ彼女が嫌でなければ、今度一緒にうちに遊びに来るといい。
何なら訳あり旦那も紹介するよ?」
❄️ ❄️ ❄️
「うー」
さっきからサイレンにでもなったのかと思うほど、彼女はうーうー唸りっぱなしだった。
「人生初めて他人に負けたと思ったわよ。何あの如何にも大人の女性のラスボス感。うー」
そもそも勝つ必要があるのかなあ。
まったく、この負けず嫌いは。
と鈴木リンリン係長。
はあ、既婚者というかパートナー持ちの知り合いのアテがなかったもので。
仕事関係ない、くだらない質問で恐縮ですが。
「それは全然構わないが、君は良いのか?
私と会った事を知った時点で彼女さんが怒り狂いそうだが」
「えーっと、そこは何とかします」
最悪土下座でもして、許してもらう方向で。
「成程。
それで相談だが、パートナーとの今後の付き合い方だったな。主に性的な意味での」
そう言って彼女は加熱式無煙タバコを取り出して咥える。
「それを上司になるかもしれない、しかも女性の私に相談とは随分思い切ったもんだね。
下手すりゃ内定ナシになるか、セクハラで訴えられるかとは考えなかったかい?」
「何となくですが、係長はその辺嫌がらず真面目に聞いてくれそうかな、と」
「やれやれ、無自覚にやってるなら君の人を見る目は本当、才能だな。
ただね、今回に関して言えば性的以前の問題かもしれん」
そう言って係長は、咥えてるタバコを左手に持ち変えて、息を吐く。
「と言うと?」
「自律神経失調症の疑いがあるって事だ」
「自律神経失調症、ですか?」
「ああ、何でもきっちりやろうとする几帳面で完璧主義の人に多いんだが、物事が上手く行かなかった時の強いストレスが蓄積して自律神経がダメージを受けているんだと思う。
例えば極端に朝が弱いとか、思い当たるふしはあるだろう」
えーと、ありまくりですね。
「結果性的なものに限らず他人には些細な事でも、強いショックを感じて気を失いやすくなる」
「精神病みたいなものですか。
というと精神科の通院?」
「も手段の一つだが、パートナーとの関わり方で治療は十分可能だぞ。
要は彼女がリラックス出来る環境を作って少しづつ慣らしていく事だ。
例えば催眠療法に似た、言い聞かせなどが効果的だな」
それならうん、僕にも出来そうかな。
「と言った回答でいいかな?
田中くんの彼女さん」
「えっ?」
「……あっ」
と僕のすぐ後ろの席で声がして、振り返ると……
「ど、どうも」
「……何してんのエイコ」
直接後をつけてくるとは、またずいぶんと大胆な。
「というか係長、いつから気づいてたんですか?」
というか僕の彼女だって、良く分かりましたね。
「私達の話に逐一反応してたし、田中くんの関係者だろう事は早い時期に推測出来たよ。
彼女さんかどうかは鎌をかけてみたけどね」
さすがお客様相談係。
「まあ彼女が嫌でなければ、今度一緒にうちに遊びに来るといい。
何なら訳あり旦那も紹介するよ?」
❄️ ❄️ ❄️
「うー」
さっきからサイレンにでもなったのかと思うほど、彼女はうーうー唸りっぱなしだった。
「人生初めて他人に負けたと思ったわよ。何あの如何にも大人の女性のラスボス感。うー」
そもそも勝つ必要があるのかなあ。
まったく、この負けず嫌いは。
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