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仲間集め

勇者アラ・ホース 前編

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 王国の片田舎、辺境伯の領地。

 魔物モンスター国との国境沿いに位置するこの街は、魔物モンスター征伐バスター生業なりわいとする冒険者で賑わっていた。

 その冒険者の中でも抜群の強さを誇る者は勇者と呼ばれ、アラ・ホースは街随一ズイイチの勇者で、魔物の討伐数、依頼達成率、噂になった女性の数、どれを取っても街のナンバーワンであった。

「いや最後、勇者と関係あるかなあ?」
「全然ありますぴょん、だって、英雄色を好むってゆうですぴょん」

 冒険者組合ギルドの受付嬢、兎耳のコラヴィータにそうベタホメされ、勇者アラは苦笑いするしかなかった。

「そんな人気も実力も1番の勇者アラ様に、おりいって頼みがあるですぴょん」
「コラヴィちゃん、ひょっとしてそっちが本題でオレを持ち上げた説?」
「……な、何の事ですぴょん?」

 勇者の追求に、受付の兎耳はそっぽを向く。
 語るに落ちたとはこの事であるが。

「まあ他ならぬ君の頼みだ、よっぽど無理なお願いじゃなきゃ引き受けるよ」
「流石は勇者様ですぴょん!」

 と感激するコラヴィだったが。

「ただ、流石の勇者様も今回は苦戦するかもですぴょん。

 と言うのも敵を倒すとか何かを取ってくるとかの類ではなく、組合の今後に関する相談ですぴょん」
「ほう」

 と勇者アラは、コラヴィの話に声をあげる。確かに今までの依頼とは毛色が違うようだ。

「実は皆さんがお持ちの冒険者カードに、新機能が追加されたですぴょん」

 冒険者になると、組合から誰でも冒険者カードを手渡される。

 それはカードと言うよりはこちらの世界でいうところのスマホに近い。
 冒険者としての自分の強さを閲覧出来るのは当然として、採取の際に現物にかざして鑑定したり、また組合の依頼達成時にポイントが振り込またり、更にそのポイントで街で買い物が出来たりと、冒険者にとってはなくてはならない、本当に万能な機能を持っていた。

 そこに新たな機能が増える。
 それだけでも勇者アラはワクワクするのを感じたが。

「ところが満を辞して追加したこの機能が、あまり評判が良くないと言うか利用されてないですぴょん」

 そもそも新機能が増えた事すら、勇者アラには初耳である。
 つまり告知が上手くいってないのだろう。

「というか、まさに追加したのがその告知機能なんですぴょん」
「え?
 そんなのあった……わ」

 よーく見ると冒険者カードの1番下に、本当に小さい文字で「お知らせ」と言う文字が点滅していたのだった。
 






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