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第一章
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クリネ=システィナベル、16歳。
大王国から魔導馬車で、3時間程かかる地方国家ベセノム出身の少女。小さい頃に両親をどちらも亡くした。
親戚の家に居候しながら、貧乏な学生時代を送る。中等学校卒業後、魔素流の乱れによって発生する「魔物」を狩る、狩猟者になる。
これがクリネの略歴だ。
あの時、叔母さんに強く止められたけど、この選択を後悔はしていない。確かにハンターは危険が伴う職業で、女性の立場も厳しい。だが、もう一度選び直せるチャンスがあってもこの選択をするだろうと彼女は思っていた。
でも、
ベセノムの中で、いや、世界で1番不幸なのは自分だとずっと思っていた。
皆、温かい家族がいて、大学に通えて、有名企業に就職して…きっと幸せになるのだろう。
自分は、がむしゃらに頑張った。独学でハンターの基礎知識を学び、自分のスタイルに合わせた体作りをして。剣の技術を学んで、実戦で何回も死にかけて。
気づいたら、「剣姫」と呼ばれるまでになっていた。
誰も助けてくれなかった。
優しかった叔母さんも、私がハンターになると言ったら、急に人が変わったように冷たくなってしまった。
男の人も下心がありそうな目つきで、ニヤニヤしながら話しかけて来るだけ。
結局、頼る人がいないためたった1人で努力するしかなかったのだ。
「グガァーッッッ!!!」
そして今、私は自分の3倍もの身長の大型の熊に似た怪物、ベアリンスと対峙している。
コイツの特徴は、異常に発達した爪。
そこらの魔導剣にも劣らない硬度を持つそれは、一撃でもまともに喰らえば、例えフルプレートであってもあの世行きだ。
「フッ!」
私は、敢えて軽装備で身を包み、「ヒットアンドアウェイ」を戦闘スタイルとしている。
避けることを基本とし、少しでも隙ができたら、確実に正確にそこを突く。それが今まで築き上げてきた戦闘の一連のだった。
今回もベアリンスの方が攻撃に疲れたのか、隙を見せる。
私はその隙を逃さず、頭を撥ねようとする。
油断はしていなかった。
魔物は死ぬ間際が一番危険である。 そんなことは、ハンターなら誰でも知っている。
「グルガァァァァッッッッ!!!」
「!?」
突如として、ベアリンスの体が輝きだし、辺り一面は光の海と化した。その光は見るのは初めてだったが、文献でその正体を知っていた。
"魔核による自爆"
魔物と通常の生物との違いはいくつか挙げられるが、一番の違いは、魔核があるかないかだろう。
魔核は、魔物にとって生命と力の源である。
詳しいことはまだ分かっていないが、少なくとも超常的な何かがあるのは間違いないと言われている。
そんなエネルギーの塊がバランスを失ったとしたらどうなるかなど説明するまでもない。
(もし、振り向いて逃げたとしても間に合わない……!)
魔物の強さは魔核のエネルギーに比例することは既に証明がなされていた。
(一体、どうすれば……………む?)
上から何かの気配を感じた。敵かどうかはわからない。もしかしたら、隕石の可能性もある。とにかく、異常な速度でこちらに近づいてきてるのは明らかだった。ベアリンスは相変わらず、光を放ち続けている。どうやら、気配には気づいていないようである。
ズリ………ヒュンッッ!
脚を撓め、力を込めて一気に後方へと加速した。
次の瞬間、
轟!!!
何かが予想通り落下した。いや、墜下と言った方が正しいだろう。重力に引かれ墜ちて来た「それ」は、凄まじい破壊力と運動量を持ち合わせていた。
「ぐっ…」
地が揺れる。女とはいえ、鍛え上げた体でさえよろめくほどに。
やがて砂埃が消え、その姿が見えてくる。
墜ちてきたのは、隕石ではなく、、、
「いやー、ちょっとやりすぎたかな?」
1人の少年であった。
大王国から魔導馬車で、3時間程かかる地方国家ベセノム出身の少女。小さい頃に両親をどちらも亡くした。
親戚の家に居候しながら、貧乏な学生時代を送る。中等学校卒業後、魔素流の乱れによって発生する「魔物」を狩る、狩猟者になる。
これがクリネの略歴だ。
あの時、叔母さんに強く止められたけど、この選択を後悔はしていない。確かにハンターは危険が伴う職業で、女性の立場も厳しい。だが、もう一度選び直せるチャンスがあってもこの選択をするだろうと彼女は思っていた。
でも、
ベセノムの中で、いや、世界で1番不幸なのは自分だとずっと思っていた。
皆、温かい家族がいて、大学に通えて、有名企業に就職して…きっと幸せになるのだろう。
自分は、がむしゃらに頑張った。独学でハンターの基礎知識を学び、自分のスタイルに合わせた体作りをして。剣の技術を学んで、実戦で何回も死にかけて。
気づいたら、「剣姫」と呼ばれるまでになっていた。
誰も助けてくれなかった。
優しかった叔母さんも、私がハンターになると言ったら、急に人が変わったように冷たくなってしまった。
男の人も下心がありそうな目つきで、ニヤニヤしながら話しかけて来るだけ。
結局、頼る人がいないためたった1人で努力するしかなかったのだ。
「グガァーッッッ!!!」
そして今、私は自分の3倍もの身長の大型の熊に似た怪物、ベアリンスと対峙している。
コイツの特徴は、異常に発達した爪。
そこらの魔導剣にも劣らない硬度を持つそれは、一撃でもまともに喰らえば、例えフルプレートであってもあの世行きだ。
「フッ!」
私は、敢えて軽装備で身を包み、「ヒットアンドアウェイ」を戦闘スタイルとしている。
避けることを基本とし、少しでも隙ができたら、確実に正確にそこを突く。それが今まで築き上げてきた戦闘の一連のだった。
今回もベアリンスの方が攻撃に疲れたのか、隙を見せる。
私はその隙を逃さず、頭を撥ねようとする。
油断はしていなかった。
魔物は死ぬ間際が一番危険である。 そんなことは、ハンターなら誰でも知っている。
「グルガァァァァッッッッ!!!」
「!?」
突如として、ベアリンスの体が輝きだし、辺り一面は光の海と化した。その光は見るのは初めてだったが、文献でその正体を知っていた。
"魔核による自爆"
魔物と通常の生物との違いはいくつか挙げられるが、一番の違いは、魔核があるかないかだろう。
魔核は、魔物にとって生命と力の源である。
詳しいことはまだ分かっていないが、少なくとも超常的な何かがあるのは間違いないと言われている。
そんなエネルギーの塊がバランスを失ったとしたらどうなるかなど説明するまでもない。
(もし、振り向いて逃げたとしても間に合わない……!)
魔物の強さは魔核のエネルギーに比例することは既に証明がなされていた。
(一体、どうすれば……………む?)
上から何かの気配を感じた。敵かどうかはわからない。もしかしたら、隕石の可能性もある。とにかく、異常な速度でこちらに近づいてきてるのは明らかだった。ベアリンスは相変わらず、光を放ち続けている。どうやら、気配には気づいていないようである。
ズリ………ヒュンッッ!
脚を撓め、力を込めて一気に後方へと加速した。
次の瞬間、
轟!!!
何かが予想通り落下した。いや、墜下と言った方が正しいだろう。重力に引かれ墜ちて来た「それ」は、凄まじい破壊力と運動量を持ち合わせていた。
「ぐっ…」
地が揺れる。女とはいえ、鍛え上げた体でさえよろめくほどに。
やがて砂埃が消え、その姿が見えてくる。
墜ちてきたのは、隕石ではなく、、、
「いやー、ちょっとやりすぎたかな?」
1人の少年であった。
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