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足りない物
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風穴の開いたシルフィーの肩に魔素が集まる。
傷口に触れた魔素は体内に吸い込まれ新しい血肉を作った。
その光景にシルフィーは目を丸くする。
魔素に肉体の修復が出来るなど一切知らなかった。
レイモンドの前に立つ男はその光景を見て紅色の瞳をトロリと溶かした。
「へぇ…私がやってるのを見て学習したんだあ…。
死に際に一度見ただけで出来るのは半魔なのに中々偉いねえ」
「……」
何やら褒められているが嬉しくない。
だが傷が塞がった事で意識がはっきりして来た。
シルフィーは立ち上がるとまた戦闘態勢に入る。
ーー最悪相討ちで良いからこいつは殺したい。
とりあえずこいつの左肩にも風穴は開けてやりたい。
だが男はうーんそうだなあうーんと何やらブツブツ言っており攻撃して来る様子が無い。
一体何なんだろうか。
「勿体無いよねえ。
本当に勿体無いよ」
「……」
「あーもう我慢出来ないやあ。
お前達戦い方を知らなさ過ぎるよ。
せっかく楽しい玩具になれる素質はあるのにそれを全て無駄にしてるよ」
いきなり説教が始まってしまいレイモンドとシルフィーは固まった。
しかも怒られ方も意味が分からない。
楽しい玩具になれてない事がまるで悪い事だとでも言いたげである。
「大体自分の種族による特性とかちゃんと知ってるう?
そこの小娘もだけど小僧はぜんっぜん駄目。
ほんと宝の持ち腐れ過ぎてイライラする」
「……」
「しかも何で隷属の誓約なんて交わしてるのお???
意味ないじゃんそれえ。
それをするなら何で因縁の盟約に変えないのか意味不明過ぎて呆れる通り越してぶちギレそう」
男は地団駄を踏みながら怒る。
良く分からないがレイモンドとシルフィーはとてもダメらしい。
そこまで言わなくても良いじゃないかとこちらが怒りたい気分である。
こっちだって頑張って生きているのに、と。
「あー…もう良いやあ。
楽しくなりそうな物を放置するのも気分悪いしぃ…」
男はヤレヤレと両手を上げるジェスチャーをした後、にたぁと笑みを浮かべて指先を振るった。
「遊べる様にしてあげる」
その瞬間、シルフィーの心臓が大きく跳ねた。
心臓が鷲掴みにされたかの様に激しく痛む。
胸を抑えて崩れ落ちたシルフィーの口からゴボリと大量の血が溢れ出た。
慌てて歯を食いしばるがその隙間からもダラダラと血が流れ落ちる。
シルフィーの目の前でレイモンドも床に膝を着いたのが見えた。
内臓を誰かに勝手にもぎ取られているかの様に痛くて苦しい。
叫びたいが喉すらも潰されたかの様に声が出せない。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!
声にならない絶叫を上げたシルフィーは地面に転がった。
視界が真っ白で何も見えない。
これ本当に死ぬんじゃないのか?と頭の片隅で思う。
「あははははははははははははははは!!!!!!!!
凄い!!!!!!
凄いよ!!!!!!
まさかこんな奇跡が起こるなんて!!!!!!
こんな愉快な事はないよ!!!!!!
有り得ない!!!!!!
偶然だとは決して思えない!!!!!!!!!!」
意識の遠くで男のはしゃぐ酷く耳障りな笑い声が聞こえた。
さすが魔族だ。
笑いのツボが分からない。
意識が限界なのか何を騒いでいるのかははっきり聞き取れないが。
「何これ本当に奇跡だよ!!!!!!!!!!!!!!
こうしちゃいられない!!!!!!!!!!
早くミの奴に伝えなくちゃ!!!!!!!!!!
あっ続きはまた今度ねえ!!!!!!!!!!!!」
ふざけんなと口を小さく動かしながら、シルフィーの意識は闇に飲まれたのだった。
傷口に触れた魔素は体内に吸い込まれ新しい血肉を作った。
その光景にシルフィーは目を丸くする。
魔素に肉体の修復が出来るなど一切知らなかった。
レイモンドの前に立つ男はその光景を見て紅色の瞳をトロリと溶かした。
「へぇ…私がやってるのを見て学習したんだあ…。
死に際に一度見ただけで出来るのは半魔なのに中々偉いねえ」
「……」
何やら褒められているが嬉しくない。
だが傷が塞がった事で意識がはっきりして来た。
シルフィーは立ち上がるとまた戦闘態勢に入る。
ーー最悪相討ちで良いからこいつは殺したい。
とりあえずこいつの左肩にも風穴は開けてやりたい。
だが男はうーんそうだなあうーんと何やらブツブツ言っており攻撃して来る様子が無い。
一体何なんだろうか。
「勿体無いよねえ。
本当に勿体無いよ」
「……」
「あーもう我慢出来ないやあ。
お前達戦い方を知らなさ過ぎるよ。
せっかく楽しい玩具になれる素質はあるのにそれを全て無駄にしてるよ」
いきなり説教が始まってしまいレイモンドとシルフィーは固まった。
しかも怒られ方も意味が分からない。
楽しい玩具になれてない事がまるで悪い事だとでも言いたげである。
「大体自分の種族による特性とかちゃんと知ってるう?
そこの小娘もだけど小僧はぜんっぜん駄目。
ほんと宝の持ち腐れ過ぎてイライラする」
「……」
「しかも何で隷属の誓約なんて交わしてるのお???
意味ないじゃんそれえ。
それをするなら何で因縁の盟約に変えないのか意味不明過ぎて呆れる通り越してぶちギレそう」
男は地団駄を踏みながら怒る。
良く分からないがレイモンドとシルフィーはとてもダメらしい。
そこまで言わなくても良いじゃないかとこちらが怒りたい気分である。
こっちだって頑張って生きているのに、と。
「あー…もう良いやあ。
楽しくなりそうな物を放置するのも気分悪いしぃ…」
男はヤレヤレと両手を上げるジェスチャーをした後、にたぁと笑みを浮かべて指先を振るった。
「遊べる様にしてあげる」
その瞬間、シルフィーの心臓が大きく跳ねた。
心臓が鷲掴みにされたかの様に激しく痛む。
胸を抑えて崩れ落ちたシルフィーの口からゴボリと大量の血が溢れ出た。
慌てて歯を食いしばるがその隙間からもダラダラと血が流れ落ちる。
シルフィーの目の前でレイモンドも床に膝を着いたのが見えた。
内臓を誰かに勝手にもぎ取られているかの様に痛くて苦しい。
叫びたいが喉すらも潰されたかの様に声が出せない。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!
声にならない絶叫を上げたシルフィーは地面に転がった。
視界が真っ白で何も見えない。
これ本当に死ぬんじゃないのか?と頭の片隅で思う。
「あははははははははははははははは!!!!!!!!
凄い!!!!!!
凄いよ!!!!!!
まさかこんな奇跡が起こるなんて!!!!!!
こんな愉快な事はないよ!!!!!!
有り得ない!!!!!!
偶然だとは決して思えない!!!!!!!!!!」
意識の遠くで男のはしゃぐ酷く耳障りな笑い声が聞こえた。
さすが魔族だ。
笑いのツボが分からない。
意識が限界なのか何を騒いでいるのかははっきり聞き取れないが。
「何これ本当に奇跡だよ!!!!!!!!!!!!!!
こうしちゃいられない!!!!!!!!!!
早くミの奴に伝えなくちゃ!!!!!!!!!!
あっ続きはまた今度ねえ!!!!!!!!!!!!」
ふざけんなと口を小さく動かしながら、シルフィーの意識は闇に飲まれたのだった。
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