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箱の底に残る物
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母親が蝋燭を持って立ち上がり光が揺れテラスに立つ人物を一瞬照らす。
一瞬だけ見えたその顔をキャロルは瞳に焼き付けた。
特徴的な切れ長の黄金色の瞳。
緑がかった長い髪。
焦げ茶のマントを身にまとった180cm位の長身の男。
鼻から下は白い布で覆い隠しているがあの瞳だけでかなり絞れるはずだ。
今まであんな色の瞳はお目にかかった事がない。
「…叔父上。」
ルシウスの言葉が耳に突き刺さる。
ばっと顔を上げると隙間を睨み付けているルシウスが口を動かした。
「…あの瞳は代々シャルドネ王室の男児に受け継がれる物だ。
今シャルドネ王室の直系はケヴィン国王と私の義母であるエバンネ王妃、そして王弟であるアルバート公がいるんだよ。
国王は髪の色が青みがかった白だったと把握しているから当て嵌るのは叔父上しかいない。」
「その言い方だとお会いした事はないんですか?」
「物心ついた頃には彼は体を悪くして療養の為に領地に引きこもってると言われていたからね。
盲点だったよ。
そりゃあ王宮や魔術師団を探しても出てこないはずだ。」
キャロルはもう一度テラスに視線を向ける。
ようやく分かった。
ようやく掴める場所に上がる事が出来た。
アルバート公。
こいつを刺せば王妃に手が届く。
握り締めた拳が熱を持つ。
10年以上恨んだ相手だ。
今すぐ殺したくなる衝動を抑えアルバートを睨み付ける。
首を取る事を胸に刻みながらこの光景を目に焼き付ける。
この後何かが起こり禁術が失敗したのだ。
それを確かめなければならない。
だが今の所魔法陣にミスは見られないし母親への魔術が解けた様子も見られない。
このままだと成功してしまうだろう。
ここから一体何が起こったのか皆目検討もつかない。
キャロルは焦りを感じていた。
もしかしたら実はキャロル達が何か失敗して未来が変わっているのではないだろうか。
巫女自身もキャロルの未来が見えないと言っていた。
それはつまり未来がねじ曲がったわけではなく禁術が成功し未来が消え去ったからではないのか。
背中を冷や汗が伝う。
扉の外ではアルバートが部屋に入り魔法陣に手を翳し詠唱を始めてしまっている。
母親は魔法陣の中に入り虚ろな顔でキャロルに指先を向けていた。
魔法陣が赤黒い光を放つ。
その瞬間キャロルは悲鳴を上げそうになり慌てて口を抑えた。
一瞬だけ見えたその顔をキャロルは瞳に焼き付けた。
特徴的な切れ長の黄金色の瞳。
緑がかった長い髪。
焦げ茶のマントを身にまとった180cm位の長身の男。
鼻から下は白い布で覆い隠しているがあの瞳だけでかなり絞れるはずだ。
今まであんな色の瞳はお目にかかった事がない。
「…叔父上。」
ルシウスの言葉が耳に突き刺さる。
ばっと顔を上げると隙間を睨み付けているルシウスが口を動かした。
「…あの瞳は代々シャルドネ王室の男児に受け継がれる物だ。
今シャルドネ王室の直系はケヴィン国王と私の義母であるエバンネ王妃、そして王弟であるアルバート公がいるんだよ。
国王は髪の色が青みがかった白だったと把握しているから当て嵌るのは叔父上しかいない。」
「その言い方だとお会いした事はないんですか?」
「物心ついた頃には彼は体を悪くして療養の為に領地に引きこもってると言われていたからね。
盲点だったよ。
そりゃあ王宮や魔術師団を探しても出てこないはずだ。」
キャロルはもう一度テラスに視線を向ける。
ようやく分かった。
ようやく掴める場所に上がる事が出来た。
アルバート公。
こいつを刺せば王妃に手が届く。
握り締めた拳が熱を持つ。
10年以上恨んだ相手だ。
今すぐ殺したくなる衝動を抑えアルバートを睨み付ける。
首を取る事を胸に刻みながらこの光景を目に焼き付ける。
この後何かが起こり禁術が失敗したのだ。
それを確かめなければならない。
だが今の所魔法陣にミスは見られないし母親への魔術が解けた様子も見られない。
このままだと成功してしまうだろう。
ここから一体何が起こったのか皆目検討もつかない。
キャロルは焦りを感じていた。
もしかしたら実はキャロル達が何か失敗して未来が変わっているのではないだろうか。
巫女自身もキャロルの未来が見えないと言っていた。
それはつまり未来がねじ曲がったわけではなく禁術が成功し未来が消え去ったからではないのか。
背中を冷や汗が伝う。
扉の外ではアルバートが部屋に入り魔法陣に手を翳し詠唱を始めてしまっている。
母親は魔法陣の中に入り虚ろな顔でキャロルに指先を向けていた。
魔法陣が赤黒い光を放つ。
その瞬間キャロルは悲鳴を上げそうになり慌てて口を抑えた。
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