似非王子と欠陥令嬢

ちゃろっこ

文字の大きさ
上 下
198 / 339
時間は勝手に進む物です

198

しおりを挟む
「…もうここで降りません?」

キャロルは馬車の窓枠に頬杖を付きながらレオンに声をかけた。

学園まで歩けば15分もかからないであろう場所でかれこれ30分は待っている。

他の馬車も王室の馬車だからと道を開けようとしてくれたのだが混雑しすぎてどうにもならない状態だ。

「そうだなあ…。
もう降りていいんじゃないか殿下?」

レオンがルシウスに尋ねるがルシウスは困ったように笑っている。

キャロルの横に座っているアンジェリカが露骨に嫌な顔をしたせいだろう。

我が妹は余程歩きたくないらしい。

向かいに座っているアグネス嬢も扇子で口元を隠しているが目でアンジェリカを睨み付けている。

このままでは初日から遅刻だ。

キャロルは窓の外の動かない景色を眺めながら溜息をついた。

明日からは1人で歩いた方が良さそうだ。

「まあ今日は新入生は入寮もございますからこの混雑は仕方ありませんわ。
明日からはスムーズに行きますからご安心下さいませ。」

「入寮?
寮があるんですか?」

取りなすように話すアグネス嬢の言葉にキャロルは首を傾げる。

寮の話などを聞いていない。

「そもそも王立学園は本来全寮制でございますのよ?
けれど殿下は執務も御座いますし寮に入ってしまわれては学園に通われていないフワリー様達と交流出来ませんでしょう。
ですから公平を期すために殿下の15歳の婚約者決定までは候補者達も離宮から通う事になっておりますのよ。
そこでお選び頂けなければ来年からは私も入寮致しますわ。」

「はー、そうなんですか。」

「ただキャロル様はお手付きで御座いますから婚約者がどなたであろうと離宮から登校になりますわね。」

アグネス嬢の言葉に隣から鋭い視線を感じる。

我が妹はキャロルがお手付きという事に大層お怒りらしい。

でもお前はハリー第二王子の側近に狙いを変えたんじゃなかったのかとキャロルは言いたい。

空気を読んで口には出さないが。

「でもこれヤバいんじゃないか?
アグネス嬢は生徒会の役員で入学式の仕事があるんだろ?
殿下も代表の挨拶があるし…。
まじで間に合わねえぞ。」

レオンの言葉にアグネス嬢とルシウスは目を床に落とした。

二人共実はかなり焦っているのだろう。

妹が歩くと言えば解決する話なのだが。

時計を眺めていたリアムも眉間に皺を寄せている。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。 何もしていないのに冤罪で…… 死んだと思ったら6歳に戻った。 さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。 絶対に許さない! 今更わたしに優しくしても遅い! 恨みしかない、父親と殿下! 絶対に復讐してやる! ★設定はかなりゆるめです ★あまりシリアスではありません ★よくある話を書いてみたかったんです!!

番(つがい)はいりません

にいるず
恋愛
 私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。 本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。  

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

間違った方法で幸せになろうとする人の犠牲になるのはお断りします。

ひづき
恋愛
濡れ衣を着せられて婚約破棄されるという未来を見た公爵令嬢ユーリエ。 ───王子との婚約そのものを回避すれば婚約破棄など起こらない。 ───冤罪も継母も嫌なので家出しよう。 婚約を回避したのに、何故か家出した先で王子に懐かれました。 今度は異母妹の様子がおかしい? 助けてというなら助けましょう! ※2021年5月15日 完結 ※2021年5月16日  お気に入り100超えΣ(゚ロ゚;)  ありがとうございます! ※残酷な表現を含みます、ご注意ください

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

処理中です...