191 / 339
秘密とは分からないから秘密なのでありまして
191
しおりを挟む
日が半分程沈み王都に明かりが灯される頃キャロルはポツリと呟いた。
「…おかしい。」
キャロルは先程読んでいた書物を急いで捲る。
目的のページに辿り着き文字を指で追いながらもう一度読む。
…やはりおかしい。
ありえない。
「…キャロルも気が付いたかい?」
ルシウスに声をかけられバッと顔を上げ大きく頷いた。
「…ありえないんです。」
キャロルが指で1文を指差す。
指先が震えるのは興奮か困惑なのかは分からない。
キャロルが指差した文章を見てルシウスも頷いた。
「『他者から奪った魔力を得られるのはまだ核の出来上がっていない15歳未満の子供のみである。』
…キャロルの母君では奪った魔力を得る事は決して出来ないんだ。」
「…知らなかったんでしょうか?」
「禁術を使う位だ。
知っていたはずだよ。
…だからキャロルの魔力欲しさにというのは母君には当てはまらないんだ。」
キャロルは頭が真っ白になる。
今までずっと母親は魔力を求めてキャロルに禁術をかけたのだと聞かされてきたのだ。
それが間違いだったとしたなら。
一体母親は得た魔力をどうするつもりだったのか。
ただ奪うだけが目的だったとでも言うのだろうか。
「…あの当時キャロルの家に15歳未満は2人の兄君達だけ。
ただ2人共キャロル程でなくても一般的には高い魔力の保持者だ。
しかもワインスト家は代々文官の家系だ。
母君のご実家も領地経営が主。
魔力量が重視される事はない。
禁忌を犯してまでキャロルから魔力を移す理由がないって事だ。」
「…じゃあ一体何故?」
混乱を隠せずキャロルは問いかける。
ルシウスはペンを指先でくるりと回すとキャロルの目をじっと見た。
「…ここからは何の確証もないんだけどね。
私はずっと引っ掛かっている事があるんだ。」
「引っ掛かっている事ですか?」
ルシウスは頷くと右手で頬杖を付き天井を見上げる。
「…国王になるには最初に生まれた男児が継承権第1位となる。
ただ長子でも継承権を持てない場合があるんだよ。
それは何か分かるかい?」
「危険な思想の持ち主とか著しく体が弱いとかですか?」
「体が弱いのは関係ないけれど、思想については正解だよ。
体が弱いとか知能不足は傀儡の王として宰相や第2王子が実権を握れば良いってだけで継承権には影響はしない。
それよりももっと重要視されている事があるんだ。」
「…それは?」
「…おかしい。」
キャロルは先程読んでいた書物を急いで捲る。
目的のページに辿り着き文字を指で追いながらもう一度読む。
…やはりおかしい。
ありえない。
「…キャロルも気が付いたかい?」
ルシウスに声をかけられバッと顔を上げ大きく頷いた。
「…ありえないんです。」
キャロルが指で1文を指差す。
指先が震えるのは興奮か困惑なのかは分からない。
キャロルが指差した文章を見てルシウスも頷いた。
「『他者から奪った魔力を得られるのはまだ核の出来上がっていない15歳未満の子供のみである。』
…キャロルの母君では奪った魔力を得る事は決して出来ないんだ。」
「…知らなかったんでしょうか?」
「禁術を使う位だ。
知っていたはずだよ。
…だからキャロルの魔力欲しさにというのは母君には当てはまらないんだ。」
キャロルは頭が真っ白になる。
今までずっと母親は魔力を求めてキャロルに禁術をかけたのだと聞かされてきたのだ。
それが間違いだったとしたなら。
一体母親は得た魔力をどうするつもりだったのか。
ただ奪うだけが目的だったとでも言うのだろうか。
「…あの当時キャロルの家に15歳未満は2人の兄君達だけ。
ただ2人共キャロル程でなくても一般的には高い魔力の保持者だ。
しかもワインスト家は代々文官の家系だ。
母君のご実家も領地経営が主。
魔力量が重視される事はない。
禁忌を犯してまでキャロルから魔力を移す理由がないって事だ。」
「…じゃあ一体何故?」
混乱を隠せずキャロルは問いかける。
ルシウスはペンを指先でくるりと回すとキャロルの目をじっと見た。
「…ここからは何の確証もないんだけどね。
私はずっと引っ掛かっている事があるんだ。」
「引っ掛かっている事ですか?」
ルシウスは頷くと右手で頬杖を付き天井を見上げる。
「…国王になるには最初に生まれた男児が継承権第1位となる。
ただ長子でも継承権を持てない場合があるんだよ。
それは何か分かるかい?」
「危険な思想の持ち主とか著しく体が弱いとかですか?」
「体が弱いのは関係ないけれど、思想については正解だよ。
体が弱いとか知能不足は傀儡の王として宰相や第2王子が実権を握れば良いってだけで継承権には影響はしない。
それよりももっと重要視されている事があるんだ。」
「…それは?」
0
お気に入りに追加
976
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
間違った方法で幸せになろうとする人の犠牲になるのはお断りします。
ひづき
恋愛
濡れ衣を着せられて婚約破棄されるという未来を見た公爵令嬢ユーリエ。
───王子との婚約そのものを回避すれば婚約破棄など起こらない。
───冤罪も継母も嫌なので家出しよう。
婚約を回避したのに、何故か家出した先で王子に懐かれました。
今度は異母妹の様子がおかしい?
助けてというなら助けましょう!
※2021年5月15日 完結
※2021年5月16日
お気に入り100超えΣ(゚ロ゚;)
ありがとうございます!
※残酷な表現を含みます、ご注意ください
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
番(つがい)はいりません
にいるず
恋愛
私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。
本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる