似非王子と欠陥令嬢

ちゃろっこ

文字の大きさ
上 下
139 / 339
一緒にお出かけしてみましょう

139

しおりを挟む
扉の隙間から中を覗いたルシウスの乾いた笑い声が響く。

「おっおい殿下…?」

レオンが怯えて問いかけるがルシウスは片手に握り締めていた剣を静かに腰にしまう。

それを見てリアムも大剣を背中に担ぎ直しレオンも慌てて構えようとしていた弓を肩に担ぐ。

「こんな所で出会えるとはね。
…ケルベロス。」

「ケルベロス?!
まさか地獄の番犬?!」

「あの見た目はそれしかないよ。
面白いじゃないか。
この先は地獄だなんてね。」

キャロルがそっと中を除くと巨大な3つの頭を持った犬が鎮座していた。

暇そうに欠伸をしている姿からは地獄という言葉が似合わない程平和そのものである。

「…あれが地獄の番犬なんですか?」

「三又の頭を持つ犬なんてケルベロスしかいないから間違いないよ。」

「じゃああれ強いんですか?」

「いや、伝説通りなら強くはない。
逃げ出そうとする亡者を喰らうだけで生者に対してはヨダレが強酸だからそれで溶かしてしまうだけだよ。」

確かに地面がクレーター塗れになっている。

ヨダレで溶かしてしまったのだろう。

「ただケルベロスの飼い主はハデスでね。
冥府の神なんだよ。
だから殺しちゃまずいって言う所が大切だね。」

そう言うとルシウスは蜂蜜をボールに流し入れその中に睡眠薬を入れ混ぜ始めた。

「なんですかこれ。」

「ケルベロスは甘い物に目が無いって伝説があってね。
蜂蜜で試してみようかなと。」

ルシウスは混ぜ終わると同じものを後2つ作り扉の隙間からケルベロスに向かって3個のボールを滑らせた。

地獄の番犬ともあろう伝説の生物がこんな見え透いた罠に引っかかるだろうか。

名前負けも甚だしいのではないだろうか。

ケルベロスは3つの頭をそれぞれのボールに近付け匂いを嗅いでいる。

上手くいけば何よりだが地獄の番犬ならこれ位の罠は退けて欲しいとも思ってしまう。

…まあ結果伝説通りではあったが。

ペロリとひと舐めし甘い事に気が付いたケルベロスはそれはもう貪り舐め尽くした。

口周りを蜂蜜でベタベタにしながら舐めに舐めた。

今は睡眠薬が効いたのか満足気な顔で寝ているが。

戦わずして済んだ事はありがたいが門番なら門番らしく頑張れやとも思う。

キャロルは何ともやり切れない思いを抱えながらケルベロスの横を素通りし下へと降りたのだった。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

今度こそ君に返信を~愛妻の置手紙は離縁状~

cyaru
恋愛
辺鄙な田舎にある食堂と宿屋で働くサンドラ。 そこに子爵一家がお客様としてやって来た。 「パンジーじゃないか!?」叫ぶ子爵一家。 彼らはサンドラ、もといパンジーの両親であり、実妹(カトレア)であり、元婚約者(アラン)だった。 婚約者であるアランをカトレアに奪われたパンジー。婚約者を入れ替えれば良いと安易な案を出す父のルド子爵。それぞれの家の体面と存続を考えて最善の策と家を出る事に決めたパンジーだったが、何故がカトレアの婚約者だったクレマンの家、ユゴース侯爵家はパンジーで良いと言う。 ユゴース家のクレマンは、カトレアに一目惚れをして婚約を申し込んできた男。どうなんだろうと思いつつも当主同士の署名があれば成立する結婚。 結婚はしたものの、肝心の夫であるクレマンが戦地から戻らない。本人だけでなく手紙の返事も届かない。そして戦が終わったと王都が歓喜に溢れる中、パンジーはキレた。 名前を捨て、テーブルに【離縁状】そして短文の置手紙を残し、ユゴース侯爵家を出て行ってしまったのだった。 遅きに失した感は否めないクレマンは軍の職を辞してパンジーを探す旅に出た。 そして再会する2人だったが・・・パンジーは一言「あなた、誰?」 そう。サンドラもといパンジーは記憶喪失?いやいや・・・そもそもクレマンに会った事がない?? そこから関係の再構築を試みるクレマン。果たして夫婦として元鞘になるのか?! ★例の如く恐ろしく省略しております。 ★タイトルに◆マークは過去です。 ★話の内容が合わない場合は【ブラウザバック】若しくは【そっ閉じ】お願いします。 ★10月13日投稿開始、完結は10月15日です。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションでご都合主義な異世界を舞台にした創作話です。登場人物、場所全て架空であり、時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。

間違った方法で幸せになろうとする人の犠牲になるのはお断りします。

ひづき
恋愛
濡れ衣を着せられて婚約破棄されるという未来を見た公爵令嬢ユーリエ。 ───王子との婚約そのものを回避すれば婚約破棄など起こらない。 ───冤罪も継母も嫌なので家出しよう。 婚約を回避したのに、何故か家出した先で王子に懐かれました。 今度は異母妹の様子がおかしい? 助けてというなら助けましょう! ※2021年5月15日 完結 ※2021年5月16日  お気に入り100超えΣ(゚ロ゚;)  ありがとうございます! ※残酷な表現を含みます、ご注意ください

番(つがい)はいりません

にいるず
恋愛
 私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。 本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。  

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

夫を捨てる事にしました

東稔 雨紗霧
恋愛
今日は息子ダリルの誕生日だが夫のライネスは帰って来なかった。 息子が生まれて5年、そろそろ愛想も尽きたので捨てようと思います。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

処理中です...