15 / 37
4-3 憧れだけでよかった
しおりを挟む
濡れて団子みたいになったシーツを力任せに絞り上げ、ブレアは物干し竿に向き直った。途中、繊維のちぎれる音が聞こえたものの、気付かないふりをして作業を進める。
「できた……!」
両端を洗濯ばさみで止め、ひと仕事終えたとばかりに額を拭った。次いで、 たらいを草むらの方へ傾け、汚れた水を捨てる。庭の片隅に雨水を溜めるための水瓶が置いてあったから、あと二、三回は洗濯できそうだ。
あたたかな日差しを背に、ブレアは草むらを這う汚水をぼんやり眺めた。
行き場を失ったそれらが淡褐色の土肌に滲むのを見て、誇らしげに口角を上げる。荒れ果てた後宮の庭をここまできれいにしたのは、他でもない彼女自身だ。
生い茂る雑草をきれいにむしり、林の木で物干し台を作った。
シーツひとつ洗濯するのに丸三日要したものの、暇つぶしにはちょうどいい。立場上、後宮から出ることは許されないため、退屈していたのだ。
「これだけ広けりゃ、剣を振るうこともできるな!」
足元の小枝を拾っては振り回し、誰に聞かせるでもなく声を弾ませる。
今さら研鑽を積んだところで騎士に返り咲くことはないにせよ、このまま腕が鈍るのももったいない。長年培ってきた習慣というのもあり、できれば継続したかった。
「あら、すっかりきれいになりましたね」
後ろから声がして振り向くと、メイド服を着たクラリスが窓から身を乗り出している。
昼食を持ってきたのだと察し、ブレアは「やっと来たか!」と相好を崩した。ひとりで過ごすのは苦ではないにせよ、馴染みの顔を見れば自然と心が華やいだ。
ブレアの世話役として城に来たクラリスは、普段は下っ端メイドとして城の雑用をこなしている。
そのかたわら、後宮から出られないブレアのためにこっそり食料を運んでいるのだ。少なくとも一日一回は、こうして様子を見に来てくれている。
「ここ数日草むしりばっかりしているものですから、気が狂ったのかと心配しておりました」
勝手口を開け、クラリスは庭先をぐるりと眺めた。膝ほどの草で覆われていたのが嘘のようだ。
ここ最近の行動を振り返り、ブレアは決まり悪そうに視線を下げた。確かに近頃の自分は、狂ったように草をむしっていたような気がする。一度火がつくと、周りが見えなくなる性格だ。
「……草だらけじゃ不便だろ」
ブレアは面映ゆそうに口を尖らせるも、クラリスは気にすることなく庭に足を踏み入れた。
「では、せっかくですし外で食べましょうか」
まかないが入ったバスケットを腕から下げ、クラリスは地面にテーブルクロスを敷いた。その上に水差しや食べ物を手際よく並べていく。ブレアはスカートを踏まないようにローブの裾を持ち上げ、シートの上に腰を下ろした。
男性用のズボンばかり穿いていたため、動きにくい。女として暮らすことになってしばらく経っても慣れない自分に嫌気が差しつつ、スライスしたバケットにチーズを乗せる。
「しかし、なんでまた洗濯なんて」
クラリスは胡坐をかいて燻製肉を頬張り、シーツを仰ぎ見た。頭上では洗いざらしの白いリネンが、そよそよと風に揺れている。
ブレアは気まずそうに視線を逸らすと、硬くなったパンを口に押し込んだ。
「……汚れたからに決まってるだろう」
「おっしゃってくだされば、宮中の洗濯物に入れておきましたのに」
「……いや、人様に洗わせるのは、ちょっと…………」
言葉を濁し、ブレアはパンを咀嚼した。噛んでいるだけで、口のなかが干上がってくる。その原因は数日前の同衾にあった。
思い出しただけでラザレスに触れられた箇所が甘く疼き、ブレアは険しい顔で目を細めた。自分でも信じられないような声を上げ、彼を求めたのは記憶に新しい。
あの日以降、暇さえあれば快楽に焦がれ、彼が恋しくなってしまうのだ。Ωの本能がそうさせているだけだと頭では理解していても、胸の苦しさは治まらない。
そんな主人の気苦労など露知らず、クラリスはさして興味もなさそうに言葉を継いだ。
「十歳になってもおねしょのシーツを人に洗わせていたくせに、セックスで汚れたシーツはご自分で洗うんですね。感心です」
「相変わらずデリカシーもへったくれもないな、おまえは」
コップの水をぐいっとあおり、ブレアは憎々しげに応酬した。隙あらば嫌味を言ってくるから、この老婆は鼻持ちならない。
不貞腐れる主人のことなど気にも留めず、クラリスはぶどうに手を伸ばした。ブレアも負けじと房から実をむしり、口に放る。
「それで? うなじは噛んでいただけましたか?」
当然のように問いかける従者に、ブレアは口の中身を吹き出した。
αとΩが番として結ばれるための儀式のことだ。交尾中の猫が雌の首根っこを噛むように、αは自分のものだと認めたΩに歯型をつける。
そうすることにより、精神的にも肉体的にも強く結ばれるのだ。結婚を社会的な契約とするならば、番は「本能の誓い」といえる。
「もう、こぼさないでください。汚いですねえ」
バスケットから布巾を取りだし、クラリスは大仰にため息をついた。
シートに飛び散ったぶどうの欠片を拾いつつ、ブレアは肩をそびやかす。
「おまえが変なこと言うからだろう!?」
目を吊り上げて怒鳴り散らすも、クラリスはいけしゃあしゃあとまぜっかえす。
「だって、後宮はそういう場所ですし」
「だからっておまえ、食事中に……」
呆れ顔の老婆に苛立ちを覚えるも、言い争ったところで得るものはない。彼女のデリカシーの無さは、なにも今に始まったことではないのだ。
「もういい。言ったところで無駄だ」
残ったぶどうを平らげ、ブレアはバスケットに手を伸ばした。指先が残りのパンや塩漬け肉に触れたところで、クラリスに手の甲を叩かれる。
「それは夕飯の分ですよ」
クラリスは籠を取り上げ、目を吊り上げた。
夕飯を置いていくということは、夜は来ないことを意味する。ブレアは内心がっかりしつつも、シートに散らばった皿を片付ける。
「そんなに忙しいのか?」
「レンジイトン本島から国王様が視察にいらっしゃるとのことで、城じゅうてんやわんやです」
「それはまた、一大イベントだな」
「やれ式典だの、舞踏会だの……催しが多くてかないませんよ」
クラリスは地面に敷いたテーブルクロスを畳んで籠に押し込み、うんざりした様子でため息をついた。
か弱い老婆をこき使うなんて、と不満を口にしているものの、支給されたメイド服は筋肉で今にも張り裂けそうだ。明らかにサイズが合っていないのだが、これ以上大きい制服がこの世に存在するとも思えない。
ブレアはそれ以上深く考えるのをやめ、林の木々に目を遣った。
「舞踏会ということは、着飾った令嬢たちが来るんだろ? 木に登れば、拝めるだろうか?」
想像するだけで気分が高揚してきて、自ずと頬が緩みだす。
無骨な騎士の町アーカスターでは、華やいだ装飾や美しい令嬢の類は滅多にお目にかかれない。綺麗にめかした『お姫様』なんて、絵本のなかの住民だ。なけなしの乙女心が騒ぐのも道理だろう。
「なんです、見たいんですか?」
すかさずクラリスに冷やかされ、ブレアは「別に」とそっぽを向いた。
数日間草むしりをしていたせいで、おろしたてのローブにはあちこち泥がついている。その姿は夜会に繰り出す貴族令嬢のそれとはほど遠い。
女であることがばれないよう、社交の場はことごとく避けてきた。そのため、きらびやかな舞踏会は未知の世界だ。長年、男として生きてきたこともあり、そうした場に足を踏み入れるつもりはないにせよ、見物くらいはしてみたい。
「では、私はこれで」
そんな主人の気持ちなど気にも留めず、クラリスはさっさと部屋を後にした。
よほどメイド稼業が忙しいのだろう。世間から取り残されたような気がして、ブレアは小さく息をつく。
「靴、洗うか……」
自身の足元に目を遣り、誰に聞かせるでもなくつぶやいた。
庭仕事ばかりしていたため、すっかり泥まみれだ。こんなところをラザレスに見られたら、いよいよ愛想を尽かされかねない。
そんなことを考えていると、背後で不穏な音がした。完全に気を抜いていたこともあり、意図せずとも肩が跳ねる。
慌てて振り返ると、鋼の剣と目が合った。何者かが窓から投げ入れたらしく、地面に突き刺さっている。
風にそよぐシーツの音が不協和音のように聞こえた。窓辺から身を乗り出しているのは、血相を変えた金髪と碧眼――。
「剣を取れ! ブレア・ウィズレー・タウンゼント=アーカスター!」
ラザレスは額に青筋を立て、険のある声でがなり立てた。
頭の整理が追い付かず、ブレアは顔を引きつらせて後ずさる。ポケットに入れた金色のメダルが、服のなかで重く圧し掛かった。
「できた……!」
両端を洗濯ばさみで止め、ひと仕事終えたとばかりに額を拭った。次いで、 たらいを草むらの方へ傾け、汚れた水を捨てる。庭の片隅に雨水を溜めるための水瓶が置いてあったから、あと二、三回は洗濯できそうだ。
あたたかな日差しを背に、ブレアは草むらを這う汚水をぼんやり眺めた。
行き場を失ったそれらが淡褐色の土肌に滲むのを見て、誇らしげに口角を上げる。荒れ果てた後宮の庭をここまできれいにしたのは、他でもない彼女自身だ。
生い茂る雑草をきれいにむしり、林の木で物干し台を作った。
シーツひとつ洗濯するのに丸三日要したものの、暇つぶしにはちょうどいい。立場上、後宮から出ることは許されないため、退屈していたのだ。
「これだけ広けりゃ、剣を振るうこともできるな!」
足元の小枝を拾っては振り回し、誰に聞かせるでもなく声を弾ませる。
今さら研鑽を積んだところで騎士に返り咲くことはないにせよ、このまま腕が鈍るのももったいない。長年培ってきた習慣というのもあり、できれば継続したかった。
「あら、すっかりきれいになりましたね」
後ろから声がして振り向くと、メイド服を着たクラリスが窓から身を乗り出している。
昼食を持ってきたのだと察し、ブレアは「やっと来たか!」と相好を崩した。ひとりで過ごすのは苦ではないにせよ、馴染みの顔を見れば自然と心が華やいだ。
ブレアの世話役として城に来たクラリスは、普段は下っ端メイドとして城の雑用をこなしている。
そのかたわら、後宮から出られないブレアのためにこっそり食料を運んでいるのだ。少なくとも一日一回は、こうして様子を見に来てくれている。
「ここ数日草むしりばっかりしているものですから、気が狂ったのかと心配しておりました」
勝手口を開け、クラリスは庭先をぐるりと眺めた。膝ほどの草で覆われていたのが嘘のようだ。
ここ最近の行動を振り返り、ブレアは決まり悪そうに視線を下げた。確かに近頃の自分は、狂ったように草をむしっていたような気がする。一度火がつくと、周りが見えなくなる性格だ。
「……草だらけじゃ不便だろ」
ブレアは面映ゆそうに口を尖らせるも、クラリスは気にすることなく庭に足を踏み入れた。
「では、せっかくですし外で食べましょうか」
まかないが入ったバスケットを腕から下げ、クラリスは地面にテーブルクロスを敷いた。その上に水差しや食べ物を手際よく並べていく。ブレアはスカートを踏まないようにローブの裾を持ち上げ、シートの上に腰を下ろした。
男性用のズボンばかり穿いていたため、動きにくい。女として暮らすことになってしばらく経っても慣れない自分に嫌気が差しつつ、スライスしたバケットにチーズを乗せる。
「しかし、なんでまた洗濯なんて」
クラリスは胡坐をかいて燻製肉を頬張り、シーツを仰ぎ見た。頭上では洗いざらしの白いリネンが、そよそよと風に揺れている。
ブレアは気まずそうに視線を逸らすと、硬くなったパンを口に押し込んだ。
「……汚れたからに決まってるだろう」
「おっしゃってくだされば、宮中の洗濯物に入れておきましたのに」
「……いや、人様に洗わせるのは、ちょっと…………」
言葉を濁し、ブレアはパンを咀嚼した。噛んでいるだけで、口のなかが干上がってくる。その原因は数日前の同衾にあった。
思い出しただけでラザレスに触れられた箇所が甘く疼き、ブレアは険しい顔で目を細めた。自分でも信じられないような声を上げ、彼を求めたのは記憶に新しい。
あの日以降、暇さえあれば快楽に焦がれ、彼が恋しくなってしまうのだ。Ωの本能がそうさせているだけだと頭では理解していても、胸の苦しさは治まらない。
そんな主人の気苦労など露知らず、クラリスはさして興味もなさそうに言葉を継いだ。
「十歳になってもおねしょのシーツを人に洗わせていたくせに、セックスで汚れたシーツはご自分で洗うんですね。感心です」
「相変わらずデリカシーもへったくれもないな、おまえは」
コップの水をぐいっとあおり、ブレアは憎々しげに応酬した。隙あらば嫌味を言ってくるから、この老婆は鼻持ちならない。
不貞腐れる主人のことなど気にも留めず、クラリスはぶどうに手を伸ばした。ブレアも負けじと房から実をむしり、口に放る。
「それで? うなじは噛んでいただけましたか?」
当然のように問いかける従者に、ブレアは口の中身を吹き出した。
αとΩが番として結ばれるための儀式のことだ。交尾中の猫が雌の首根っこを噛むように、αは自分のものだと認めたΩに歯型をつける。
そうすることにより、精神的にも肉体的にも強く結ばれるのだ。結婚を社会的な契約とするならば、番は「本能の誓い」といえる。
「もう、こぼさないでください。汚いですねえ」
バスケットから布巾を取りだし、クラリスは大仰にため息をついた。
シートに飛び散ったぶどうの欠片を拾いつつ、ブレアは肩をそびやかす。
「おまえが変なこと言うからだろう!?」
目を吊り上げて怒鳴り散らすも、クラリスはいけしゃあしゃあとまぜっかえす。
「だって、後宮はそういう場所ですし」
「だからっておまえ、食事中に……」
呆れ顔の老婆に苛立ちを覚えるも、言い争ったところで得るものはない。彼女のデリカシーの無さは、なにも今に始まったことではないのだ。
「もういい。言ったところで無駄だ」
残ったぶどうを平らげ、ブレアはバスケットに手を伸ばした。指先が残りのパンや塩漬け肉に触れたところで、クラリスに手の甲を叩かれる。
「それは夕飯の分ですよ」
クラリスは籠を取り上げ、目を吊り上げた。
夕飯を置いていくということは、夜は来ないことを意味する。ブレアは内心がっかりしつつも、シートに散らばった皿を片付ける。
「そんなに忙しいのか?」
「レンジイトン本島から国王様が視察にいらっしゃるとのことで、城じゅうてんやわんやです」
「それはまた、一大イベントだな」
「やれ式典だの、舞踏会だの……催しが多くてかないませんよ」
クラリスは地面に敷いたテーブルクロスを畳んで籠に押し込み、うんざりした様子でため息をついた。
か弱い老婆をこき使うなんて、と不満を口にしているものの、支給されたメイド服は筋肉で今にも張り裂けそうだ。明らかにサイズが合っていないのだが、これ以上大きい制服がこの世に存在するとも思えない。
ブレアはそれ以上深く考えるのをやめ、林の木々に目を遣った。
「舞踏会ということは、着飾った令嬢たちが来るんだろ? 木に登れば、拝めるだろうか?」
想像するだけで気分が高揚してきて、自ずと頬が緩みだす。
無骨な騎士の町アーカスターでは、華やいだ装飾や美しい令嬢の類は滅多にお目にかかれない。綺麗にめかした『お姫様』なんて、絵本のなかの住民だ。なけなしの乙女心が騒ぐのも道理だろう。
「なんです、見たいんですか?」
すかさずクラリスに冷やかされ、ブレアは「別に」とそっぽを向いた。
数日間草むしりをしていたせいで、おろしたてのローブにはあちこち泥がついている。その姿は夜会に繰り出す貴族令嬢のそれとはほど遠い。
女であることがばれないよう、社交の場はことごとく避けてきた。そのため、きらびやかな舞踏会は未知の世界だ。長年、男として生きてきたこともあり、そうした場に足を踏み入れるつもりはないにせよ、見物くらいはしてみたい。
「では、私はこれで」
そんな主人の気持ちなど気にも留めず、クラリスはさっさと部屋を後にした。
よほどメイド稼業が忙しいのだろう。世間から取り残されたような気がして、ブレアは小さく息をつく。
「靴、洗うか……」
自身の足元に目を遣り、誰に聞かせるでもなくつぶやいた。
庭仕事ばかりしていたため、すっかり泥まみれだ。こんなところをラザレスに見られたら、いよいよ愛想を尽かされかねない。
そんなことを考えていると、背後で不穏な音がした。完全に気を抜いていたこともあり、意図せずとも肩が跳ねる。
慌てて振り返ると、鋼の剣と目が合った。何者かが窓から投げ入れたらしく、地面に突き刺さっている。
風にそよぐシーツの音が不協和音のように聞こえた。窓辺から身を乗り出しているのは、血相を変えた金髪と碧眼――。
「剣を取れ! ブレア・ウィズレー・タウンゼント=アーカスター!」
ラザレスは額に青筋を立て、険のある声でがなり立てた。
頭の整理が追い付かず、ブレアは顔を引きつらせて後ずさる。ポケットに入れた金色のメダルが、服のなかで重く圧し掛かった。
21
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる