【完結】正体を偽って皇太子の番になったら、クソデカ感情を向けられました~男として育てられた剛腕の女騎士は、身バレした挙句に溺愛される~

鐘尾旭

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3-6 再会と邂逅*

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「……挿れるぞ」

 濡れそぼる入り口に雄の昂ぶりをあてがわれ、ブレアは「あ」とも「え」ともつかない声を漏らした。
 まじまじと見たわけではないものの、教会から渡された張り型とは比べ物にならないくらい大きい。

「で、殿下……」

 入るのだろうか――一抹の不安を胸に、ブレアはラザレスを仰ぎ見た。こちらの不安などお構いなしに、彼は愉悦の表情を浮かべている。

「あぎっ……!」

 瞬間、ズン、と重い衝撃が体内に響き、ブレアは堪えきれずまなじりを決した。圧倒的な質量が腹の内を押し広げると同時に、甘やかな痺れがほとばしる。

「あ、ああ……!」

 ラザレスはブレアの痩躯を掻き抱き、こちらの顔色をうかがいながら腰を沈めた。その度に悪寒のような快感がぞくぞくと背筋を這いあがり、ブレアは歯の根を震わせる。
 破瓜にも似た痛みを感じるも、快感のほうが上回る。蜜壺内の粘膜は陰茎を最奥へ誘うべく、ぐねぐねと収縮を繰り返している。

「や、あ……だめ、だめっ……!」

 足元から這い上がる快楽に抗うべく、ブレアはかすれた声でかぶりを振った。これまで経験したことのない感覚を前に、焦燥がせり上がる。

「あ、んっ……! あ、ああっ……!」

 にもかかわらず、貪るように腰が動いた。
 気丈に振舞ったとしても、Ωのさがには抗えない。嬌笑で歪んだ口元から、一筋の唾液が伝い落ちる。

 口では嫌と言いつつ行為に耽るブレアを眺め、ラザレスはにやり、と舌を舐めずった。上体を起こして彼女の腰をつかみ、がつがつと腰を振り立てる。

「ああああッ!? でんかぁ……!」

 怒涛の快楽に押し流され、ブレアは総身を揺らしてわなないた。最奥を小突かれるたび、絶頂の予兆がせり上がる。

「や、だっ……! なんか、くるぅ……!」

 抑えようのない悦楽に、ブレアは涙交じりに悲鳴を発した。
 それを隠すべく、縛られた両腕で顔を覆う。腕に巻き付いた衣服がクッションの役目を果たしているせいか、声が多少くぐもって聞こえた。

「顔、見たい」

 表情が見えないのがじれったかったのか、ラザレスはブレアの腕から衣服を剥ぎ取って床に放った。その際、ポケットに入っていたメダルが飛び出し、カツン、と小さい音が鳴る。

「あッ! だめっ!」

 ブレアはまなじりを決し、慌ててメダルを追いかけようとするも、ラザレスがそれを咎める。行為に耽溺するあまり、メダルが落ちたことに気付いていないのだろう。

「他所事を考えるな」

 彼はブレアの頭を抱え込むように腕を回すと、半ば強引にくちびるを奪った。その間も腰の抽送は続いており、矢のような快感が脳天に突き刺さる。

「ンっ、んう……! んぐううッ……!」

 ラザレスにしがみつき、ブレアはくぐもった声でもんどり打った。なにかにしがみつかなければ、快楽の濁流に押し流されてしまいそうだ。
 そうした振る舞いを自身に対するこびだと解釈したのか、彼は面映ゆそうにはにかんだ。ブレアの頬に軽く口づけをしてから、愛おしそうにこちらを見つめる。

「いいぞ、イッても」

 ブレアが達しやすいよう角度を調整しつつ、ラザレスは甘い声でささやいた。追い詰められていることを気取られ、ブレアは羞恥心に身悶える。

「み、みないで……」
「ほら、ここだろ? 分かりやすいな」

 弱いところを探り当て、ラザレスはにやりと口角を上げた。ブレアは「ひいっ」と総身を揺らし、余裕無げにさんざめく。

「ああああッ! そこっ、ヤ……!」

 髪を振り乱して懇願するも、聞き入れてくれる気配はない。
 絶頂へのカウントダウンに目を白黒させながら、ブレアはラザレスの肩口に顔を埋めた。情けなく達するならせめて、緩み切った表情だけは隠したい。

 そうした意図を察したのか、ラザレスはやにわに上体を起こした。腰の抽送を止めることなく、ブレアの両腕をシーツに縫い付ける。

「隠すな」

 ラザレスに咎められ、ブレアは口惜しそうにくちびるを食んだ。かすかに上下する自身の乳房に、汚辱感を掻き立てられる。

 男として暮らし、己を律したところで、女である事実は覆せない。
 たとえ、胸が膨らまないよう気を払って生活してきたとしても、組み敷かれれば自身の性を意識せざるを得ないのだ。少年のような体つきだと自負しようと、『女』という快楽からは逃れられない。

「みないでっ、みないでええ――――ッ!」

 汚辱感に抱かれ、ブレアは赤い日差しの中で絶叫した。快感が過ぎ去った後も、余韻がしつこく残り続ける。
 半開きの口から「あ、あ……」とかすかな喘ぎを漏らし、ブレアは小刻みに体を揺らした。絶頂は一度に止まらず、細かな波が引いては押してを繰り返す。

 五年前に見た景色と同じはずなのに。これ以上ないほど興奮しているはずなのに。胸の奥処はさめざめとしている。
 あの時の忠誠心を、自らの手で踏みにじった罪悪感が否めない。どれだけ強くなろうと、本能には抗えない――そう言われた気がして、無力感に打ちひしがれた。

 ラザレスは惚けるブレアにくちびるを重ね、慰撫するようについばんだ。互いの舌を軽く絡めたのち、切羽詰まった素振りで微笑む。

「最後まで、いいか?」

 そう言って、挿入したまま腰を押し付けた。蜜壺の最奥がごりっと抉られ、ブレアは声にならない叫びを発する。

「んあっ……! ひッ、アアっ……!」

 直後、ゆるやかだった律動が激しさを増した。互いの股間がぶつかり合い、パンパン、パンパンと乾いた音が鳴り響く。
 ラザレスは苦しそうに息をしながら、うっとりとこちらを見つめた。その拍子に汗ばんだ金髪からしずくがしたたり、揺れる乳房にはらはら落ちる。

 呼吸が苦しくなり、ブレアは耐えきれずに顔を上げた。
 ひいひいと喘ぐように空気を貪っていると、ラザレスに首筋を舐められた。それだけで昇りつめそうになり、総身を震わせる。

「射精すぞ……」

 声帯を絞るように、ラザレスがささやいた。弱点を攻め立てる腰の律動も、すっかりでたらめな軌道を描いている。
 さらなる絶頂を目前に控え、ブレアはシーツを掻きむしった。そうこうしているうちに、彼の熱が膣内に広がる。

「あっ、ああああ……ッ!」

 くぐもった彼の呻きと共に、ブレアは甲高い声をあげて総身を反らした。αの精を注がれる悦びに、Ωの本能が色めき立つ。
 圧倒的な快楽に押しつぶされ、もはや指先ひとつ動かせない。
 女であり、Ωでもある。そのことを厭っておきつつも、ひれ伏さずにはいられなかった。

「あうっ……」

 陰茎を引き抜かれ、ブレアはヒクン、と大仰に跳ねた。使い終えた淫花を引きつらせ、どちらのものともつかない体液を垂れ流す。

「かわいかった」

 ラザレスはブレアの耳元に顔を寄せ、相好を崩した。栗色の髪をくしゃり、となで、床に落ちた衣服を拾う。そしてジャケットのポケットから手巾を取り出すと、互いの股間回りを拭き、手際よく着替えを済ませた。

「また来る」

 彼はブレアの服を軽く畳んでベッドの上に置き、端のほうで丸まった毛布を掛けてくれた。いまだ快楽の向こうにいるせいか、ブレアは荒い呼吸を繰り返している。
 それを見て、ラザレスは踵を返した。刹那、靴の先がなにかに触れる。金属片を蹴り上げたような、小さくて甲高い音だ。

 メダルだ――そう思うより前にブレアは上体を起こし、音のほうへ飛び込んだ。ベッドから転げ落ちるのも厭わず、床の金色を引っつかむ。

「だめ……!」

 目を丸くするラザレスに背を向け、ブレアは手中の褒章を胸に押し当てた。表情から察するに、彼は自分が蹴り上げたものの正体に気付いてないらしい。

「すまない。大切なものだったか?」

 こちらを心配するような口ぶりで、ラザレスが投げかけた。
 無意識とはいえ、メダルを蹴ったことを詫びているのだ。そうした気遣いが、余計に心苦しい。

「いえ、大したものではございません。ですが……」

 ブレアは言葉を濁し、窓の外に目を遣った。日はすっかり沈み切っており、周囲は藍色のベールに包まれている。

「そろそろ、戻られたほうが」

 そう言って、ブレアは床に落ちた毛布で裸体を隠した。ラザレスの顔を見ることすらできず、視線を下げる。

 彼がここにきてから、一、二時間は経っただろうか。長居すれば、それだけ城の者に怪しまれる。
 後宮はその存在すら知らない者が多い。城の者からしてみれば、今のラザレスは失踪しているも同然だ。

「ああ……そうだな」

 そのことに気付いたのか、彼は挨拶もそこそこに部屋を出た。遠ざかる足音を確認し、ブレアはメダルに目を落とす。

 五年前、ラザレスから賜った忠誠の証――真っ赤に燃える夕暮れのなか、共にこの地を守ろうと誓った。立場は違えど、剣の道を歩む騎士であることに変わりはない。

「……殿下…………」

 触れ合う素肌の感触を反芻し、誰に聞かせるでもなくつぶやいた。床の板目には、大粒の涙がにじんでいる。

 高潔な忠誠心の裏に見え隠れする、Ωの本能。
 めくるめく快楽に汚辱感を掻き立てられつつも、ブレアは手中のメダルを握りしめた。

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