1 / 37
1-1 破瓜の儀*
しおりを挟む
Ωの血は不純の証。
それは破瓜の鮮血であっても例外ではなかった。とはいえ、王族に献上される身の上の女が不貞をはたらくことは許されない。
「いつまで素っ裸でいるつもりですか。風邪ひきますよ」
自室のベッドのすぐ隣で、クラリスがため息をつく。
うだつの上がらない主人に代わり、明日の荷造りをしているのだ。白髪交じりの赤毛を揺らし、トランクに衣服を詰め込む姿は、冬支度をするクマのようだ。
年老いた乳母を眺め、ブレアは股間に革張りの筒をあてがった。一糸まとわぬ姿でシーツの上に座っているため、少しだけ肌寒い。
――やっぱり入る気がしない。
声には出さずにつぶやき、顔面を強張らせた。女にしては短い髪をぱらぱら揺らし、かぶりを振る。手に握られているのは、男性器を模した革張りの玩具だ。
――教会がこんな邪悪なものを貸し出すなんて、世も末だ。
そんなことを考えつつ、ブレアは不承不承に玩具を握り直した。
Ωの女は初夜を迎える前に、自分で処女膜を破いておかねばならないらしい。しかし、何度繰り返しても上手く入らず、ついにはやる気も底をついた。
「なあ、本当にするのか?」
「当たり前です」
老婆とは思えない大柄の体躯を軽く伸ばし、クラリスは取り付く島もなく切り返した。
同時に、ぎゅうぎゅう詰めのトランクが大仰な音を立てて閉まった。荷物が多すぎるせいか、ふたが大きく浮いている。
今は退役してブレアの世話をしているが、昔はとんでもない強さを誇る女兵士だった。農民の家族を支えるべく、タウンゼント家に志願したと聞いている。
「やらねば『後宮』には入れません」
クラリスはトランクにマウンティングしたまま、仏頂面で言葉を継いだ。
『後宮』はαの番となったΩが、子どもを孕むための部屋を指す。
その名称は、かつての東洋文化をもとにしていた。
古代の東洋では、国王の子を産ませるために、多数の正妻や妾を豪華絢爛な殿舎に幽閉していたのだという。一説によれば、三千人の美女が暮らしていたというから驚きだ。
この国の後宮にはせいぜい一、二人しか収容されないことを考えると、その差は歴然といえる。
ブレアは手中の張り型に目を落とし、小さくため息をついた。
なぜ、自分なんだ――頭の中で独りごち、つい先月発覚したΩの性を嫌悪する。
男女とは異なり、後天的に明かされるもうひとつの性別だ。支配者の素質を持つα、これといった特徴のないβ、αの子を孕むための淫らなΩの三つから構成される。とはいえ、王族以外の大半は平凡なβ性だ。
Ωは数万人にひとりの割合でしか存在しないため、大抵は王族や上級貴族の番として後宮に嫁がされる。
番になったαとΩの間には、必ずαの子どもが産まれるのがその理由だ。王者の素質を持つαは美しい碧眼と金髪を持ち、生まれた瞬間に絶対的な地位が約束される。
そうした背景により、王族の人間はαであることが求められた。
そのためには世継ぎを産むΩが必要だ。国王はαの妃と結婚するのが常識だが、α同士では子どもを作ることができないため、妃とは別にΩを娶らねばならない。
他のαに目移りされては困るという理由で、番となるΩは人目のつかない場所に幽閉された。そのための小部屋が後宮だ。
Ωは優秀な遺伝子を求めて発情する習性がある。それによってαや他の雄が惹きつけられては困るため、隔離しなければならないのだ。王族の世継ぎを作るためにも、後宮のΩは純潔であることが求められる。
「だからって、自分で処女膜を破るのは……」
ブレアは眼下の玩具を一瞥し、クラリスに投げかけた。
誉れ高い王族のブツを卑しいΩの血で穢すのは不敬に当たるため、自分で処理するのが『マナー』なのだという。
「お城に着き次第、神官が張り型を検めるそうです。血の付き方とか、粘液の具合で『初物』かどうか判断するらしいですよ」
「趣味わる……」
顔面を盛大に引きつらせ、ブレアは張り型に再び目を落とした。
すぐ隣では、クラリスがトランクと格闘している。限界量の荷物を詰め込まれたうえに筋骨隆々の巨体に押さえつけられ、蝶番が弾け飛びそうだ。
ブレアは何度目か分からないため息をつき、シーツの上で居住まいを正した。
汗で湿っていく黒革の感触に気持ち悪さを抱きつつも、切っ先を自身の粘膜に押し付ける。
「……入らない」
角度を変えて再度挑戦するも、入り口はぐにょぐにょと変形するばかりで手応えがない。張り型はおろか、針一本すら入らない気さえする。
「だらしないですよ、ブレア様。タウンゼント家のご令息ともあろう方が、こんな玩具に苦戦するなんて」
トランクを押さえつけるクラリスが、うろんげな表情で言葉を継いだ。
獲物を組み敷くクマのような恰好をした老婆を前に、ブレアは自嘲気味に鼻を鳴らす。
「『ブレア』はもう死んだと言ったろ。今の私は『ブレンダ嬢』だ。父上の隠し子という設定を忘れたか?」
そう言って、ブレアは苦々しく目を細めた。
跡取り息子であるブレア・ウィズレー・タウンゼント=アーカスターは、ひと月前に流行り病で死んだ――ということになっている。
既に死亡届を協会に提出したうえ、葬式まで執り行った。もちろん、ブレア本人はまだ生きているため、空っぽの棺を埋めただけだが。
ブレアは物心ついた時から男として生きてきた。
十五年前に実兄が失踪し、タウンゼント家の後を継ぐ人間がいなくなったのがその理由だ。
病弱の母は既にこの世を去っているため、新たな男児の誕生は見込めない。となれば、年端のいかないブレアに白羽の矢が立つのは仕方ないことだった。
幸い、彼女は身体能力が高く、加えて真面目な性格だったため、辺境伯の子息として次々と戦果を挙げた。
二十年前、大国オルレイユから奪取したヴェリオ半島――その北方に位置するアーカスター領は、日々周辺国の脅威に晒されている。そうした勢力から国境を守ることこそ、タウンゼント家の宿命なのだ。
西端に浮かぶ小さな島国・レンジイトン王国は作物が育ちにくい土地柄であるため、大陸の領地は喉から手が出るほど欲しい代物だ。そうした意味で、ヴェリオ半島は大陸進出の記念すべき一歩であり、交易の要だった。
海の向こうに浮かぶ祖国のために剣を振るい、新興地であるヴェリオを敵から守る。そして、ゆくゆくは父の後を継ぎ、国境沿いのアーカスター領主となる――それが、ブレアに課された定めだった。
自分でも納得していたし、疑問に感じたことはない。
しかし、それらはΩの発覚を機に覆される。
「十二の時の検査では、βだと言われたのに……」
手のなかで張り型をいじりながら、ブレアはため息をついた。
つい先月、風邪とは異なる発熱と倦怠感を発症し、医者を呼んだらΩだと診断されたのだ。単なる体調不良かと思いきや、初めての発情を迎えていた。
「検査は絶対ではありません。第二の性別は体が成熟してから発覚すると言いますし」
そう言って、クラリスはトランクのふたを閉めるべく体を弾ませた。それでも閉まらないということは、相当の荷物を詰め込んでいるのだろう。
ブレアは眉間にしわを寄せ、憎まれ口を叩く。
「まるで、当時の私が未発達だと言わんばかりだな」
「とんでもありません。今も充分、『未発達』ではありませんか」
そう言って、クラリスはブレアの胸部を凝視した。女であることを隠すべく、体が丸みを帯びないよう腐心してきたため、十九になっても少年のような体つきだ。
「馬鹿にしているのか、貴様!」
ブレアは気色ばみ、目の前の老婆に張り型を投げつけた。一番気にしていることを茶化され、頭に血が登ったのだ。
百戦錬磨の父・スタンレーのような偉丈夫になるべく、幼い頃から体形に気を払ってきた。大人になっても男を騙るには、相応の体格に成長することが欠かせない。
にもかかわらず、ブレアの身長は女性の平均止まりだった。おまけにこの童顔である。
これでは成人男性を自称するのが憚られる。そのため、近頃はシークレットブーツやフード付きのローブで体格や顔を隠すことが多かった。
社交の場には極力参加しないようにしていたのが功を奏し、今のところ周囲には気付かれていない。戦場ではフルプレートの甲冑を身につけるため、なおさらだ。
ブレアは自身の胸部を一瞥し、嘆息した。
今までは「女性として見られないこと」に重きを置いてきたが、これからは「皇太子と番うΩの女」として暮らさねばならないのだ。そう考えると、まな板のような胸がみすぼらしく見える。
そんなことを考えていると、先ほど投げた張り型がクラリスの頭を直撃した。ポコンと音がして、老婆は肩をそびやかす。
「なにするんですか、お行儀の悪い!」
頭を押さえ、クラリスは血相を変えて叫んだ。あまりの迫力に、ブレアはシーツの上でたじろぐ。
「おまえが失礼なことを言うからだろう!?」
「だからって、こんな下品なもの投げていいわけないでしょ! 汚らわしい!」
「知るか! 渡してきたのはそっちだ!」
ブレアはまなじりを決し、負けじと応酬した。クラリスは額に青筋を浮かべ、床に落ちた張り型を拾い上げる。
「王宮に嫁ぐ前に、もう一度しつけ直したほうがよさそうですね……」
そう言って、おもむろに立ち上がった。踏みつけられていたトランクが、ギィと不気味に鳴り響く。
それは破瓜の鮮血であっても例外ではなかった。とはいえ、王族に献上される身の上の女が不貞をはたらくことは許されない。
「いつまで素っ裸でいるつもりですか。風邪ひきますよ」
自室のベッドのすぐ隣で、クラリスがため息をつく。
うだつの上がらない主人に代わり、明日の荷造りをしているのだ。白髪交じりの赤毛を揺らし、トランクに衣服を詰め込む姿は、冬支度をするクマのようだ。
年老いた乳母を眺め、ブレアは股間に革張りの筒をあてがった。一糸まとわぬ姿でシーツの上に座っているため、少しだけ肌寒い。
――やっぱり入る気がしない。
声には出さずにつぶやき、顔面を強張らせた。女にしては短い髪をぱらぱら揺らし、かぶりを振る。手に握られているのは、男性器を模した革張りの玩具だ。
――教会がこんな邪悪なものを貸し出すなんて、世も末だ。
そんなことを考えつつ、ブレアは不承不承に玩具を握り直した。
Ωの女は初夜を迎える前に、自分で処女膜を破いておかねばならないらしい。しかし、何度繰り返しても上手く入らず、ついにはやる気も底をついた。
「なあ、本当にするのか?」
「当たり前です」
老婆とは思えない大柄の体躯を軽く伸ばし、クラリスは取り付く島もなく切り返した。
同時に、ぎゅうぎゅう詰めのトランクが大仰な音を立てて閉まった。荷物が多すぎるせいか、ふたが大きく浮いている。
今は退役してブレアの世話をしているが、昔はとんでもない強さを誇る女兵士だった。農民の家族を支えるべく、タウンゼント家に志願したと聞いている。
「やらねば『後宮』には入れません」
クラリスはトランクにマウンティングしたまま、仏頂面で言葉を継いだ。
『後宮』はαの番となったΩが、子どもを孕むための部屋を指す。
その名称は、かつての東洋文化をもとにしていた。
古代の東洋では、国王の子を産ませるために、多数の正妻や妾を豪華絢爛な殿舎に幽閉していたのだという。一説によれば、三千人の美女が暮らしていたというから驚きだ。
この国の後宮にはせいぜい一、二人しか収容されないことを考えると、その差は歴然といえる。
ブレアは手中の張り型に目を落とし、小さくため息をついた。
なぜ、自分なんだ――頭の中で独りごち、つい先月発覚したΩの性を嫌悪する。
男女とは異なり、後天的に明かされるもうひとつの性別だ。支配者の素質を持つα、これといった特徴のないβ、αの子を孕むための淫らなΩの三つから構成される。とはいえ、王族以外の大半は平凡なβ性だ。
Ωは数万人にひとりの割合でしか存在しないため、大抵は王族や上級貴族の番として後宮に嫁がされる。
番になったαとΩの間には、必ずαの子どもが産まれるのがその理由だ。王者の素質を持つαは美しい碧眼と金髪を持ち、生まれた瞬間に絶対的な地位が約束される。
そうした背景により、王族の人間はαであることが求められた。
そのためには世継ぎを産むΩが必要だ。国王はαの妃と結婚するのが常識だが、α同士では子どもを作ることができないため、妃とは別にΩを娶らねばならない。
他のαに目移りされては困るという理由で、番となるΩは人目のつかない場所に幽閉された。そのための小部屋が後宮だ。
Ωは優秀な遺伝子を求めて発情する習性がある。それによってαや他の雄が惹きつけられては困るため、隔離しなければならないのだ。王族の世継ぎを作るためにも、後宮のΩは純潔であることが求められる。
「だからって、自分で処女膜を破るのは……」
ブレアは眼下の玩具を一瞥し、クラリスに投げかけた。
誉れ高い王族のブツを卑しいΩの血で穢すのは不敬に当たるため、自分で処理するのが『マナー』なのだという。
「お城に着き次第、神官が張り型を検めるそうです。血の付き方とか、粘液の具合で『初物』かどうか判断するらしいですよ」
「趣味わる……」
顔面を盛大に引きつらせ、ブレアは張り型に再び目を落とした。
すぐ隣では、クラリスがトランクと格闘している。限界量の荷物を詰め込まれたうえに筋骨隆々の巨体に押さえつけられ、蝶番が弾け飛びそうだ。
ブレアは何度目か分からないため息をつき、シーツの上で居住まいを正した。
汗で湿っていく黒革の感触に気持ち悪さを抱きつつも、切っ先を自身の粘膜に押し付ける。
「……入らない」
角度を変えて再度挑戦するも、入り口はぐにょぐにょと変形するばかりで手応えがない。張り型はおろか、針一本すら入らない気さえする。
「だらしないですよ、ブレア様。タウンゼント家のご令息ともあろう方が、こんな玩具に苦戦するなんて」
トランクを押さえつけるクラリスが、うろんげな表情で言葉を継いだ。
獲物を組み敷くクマのような恰好をした老婆を前に、ブレアは自嘲気味に鼻を鳴らす。
「『ブレア』はもう死んだと言ったろ。今の私は『ブレンダ嬢』だ。父上の隠し子という設定を忘れたか?」
そう言って、ブレアは苦々しく目を細めた。
跡取り息子であるブレア・ウィズレー・タウンゼント=アーカスターは、ひと月前に流行り病で死んだ――ということになっている。
既に死亡届を協会に提出したうえ、葬式まで執り行った。もちろん、ブレア本人はまだ生きているため、空っぽの棺を埋めただけだが。
ブレアは物心ついた時から男として生きてきた。
十五年前に実兄が失踪し、タウンゼント家の後を継ぐ人間がいなくなったのがその理由だ。
病弱の母は既にこの世を去っているため、新たな男児の誕生は見込めない。となれば、年端のいかないブレアに白羽の矢が立つのは仕方ないことだった。
幸い、彼女は身体能力が高く、加えて真面目な性格だったため、辺境伯の子息として次々と戦果を挙げた。
二十年前、大国オルレイユから奪取したヴェリオ半島――その北方に位置するアーカスター領は、日々周辺国の脅威に晒されている。そうした勢力から国境を守ることこそ、タウンゼント家の宿命なのだ。
西端に浮かぶ小さな島国・レンジイトン王国は作物が育ちにくい土地柄であるため、大陸の領地は喉から手が出るほど欲しい代物だ。そうした意味で、ヴェリオ半島は大陸進出の記念すべき一歩であり、交易の要だった。
海の向こうに浮かぶ祖国のために剣を振るい、新興地であるヴェリオを敵から守る。そして、ゆくゆくは父の後を継ぎ、国境沿いのアーカスター領主となる――それが、ブレアに課された定めだった。
自分でも納得していたし、疑問に感じたことはない。
しかし、それらはΩの発覚を機に覆される。
「十二の時の検査では、βだと言われたのに……」
手のなかで張り型をいじりながら、ブレアはため息をついた。
つい先月、風邪とは異なる発熱と倦怠感を発症し、医者を呼んだらΩだと診断されたのだ。単なる体調不良かと思いきや、初めての発情を迎えていた。
「検査は絶対ではありません。第二の性別は体が成熟してから発覚すると言いますし」
そう言って、クラリスはトランクのふたを閉めるべく体を弾ませた。それでも閉まらないということは、相当の荷物を詰め込んでいるのだろう。
ブレアは眉間にしわを寄せ、憎まれ口を叩く。
「まるで、当時の私が未発達だと言わんばかりだな」
「とんでもありません。今も充分、『未発達』ではありませんか」
そう言って、クラリスはブレアの胸部を凝視した。女であることを隠すべく、体が丸みを帯びないよう腐心してきたため、十九になっても少年のような体つきだ。
「馬鹿にしているのか、貴様!」
ブレアは気色ばみ、目の前の老婆に張り型を投げつけた。一番気にしていることを茶化され、頭に血が登ったのだ。
百戦錬磨の父・スタンレーのような偉丈夫になるべく、幼い頃から体形に気を払ってきた。大人になっても男を騙るには、相応の体格に成長することが欠かせない。
にもかかわらず、ブレアの身長は女性の平均止まりだった。おまけにこの童顔である。
これでは成人男性を自称するのが憚られる。そのため、近頃はシークレットブーツやフード付きのローブで体格や顔を隠すことが多かった。
社交の場には極力参加しないようにしていたのが功を奏し、今のところ周囲には気付かれていない。戦場ではフルプレートの甲冑を身につけるため、なおさらだ。
ブレアは自身の胸部を一瞥し、嘆息した。
今までは「女性として見られないこと」に重きを置いてきたが、これからは「皇太子と番うΩの女」として暮らさねばならないのだ。そう考えると、まな板のような胸がみすぼらしく見える。
そんなことを考えていると、先ほど投げた張り型がクラリスの頭を直撃した。ポコンと音がして、老婆は肩をそびやかす。
「なにするんですか、お行儀の悪い!」
頭を押さえ、クラリスは血相を変えて叫んだ。あまりの迫力に、ブレアはシーツの上でたじろぐ。
「おまえが失礼なことを言うからだろう!?」
「だからって、こんな下品なもの投げていいわけないでしょ! 汚らわしい!」
「知るか! 渡してきたのはそっちだ!」
ブレアはまなじりを決し、負けじと応酬した。クラリスは額に青筋を浮かべ、床に落ちた張り型を拾い上げる。
「王宮に嫁ぐ前に、もう一度しつけ直したほうがよさそうですね……」
そう言って、おもむろに立ち上がった。踏みつけられていたトランクが、ギィと不気味に鳴り響く。
2
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
責任を取らなくていいので溺愛しないでください
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。
だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。
※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。
※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。

一途なエリート騎士の指先はご多忙。もはや暴走は時間の問題か?
はなまる
恋愛
シエルは20歳。父ルドルフはセルベーラ国の国王の弟だ。17歳の時に婚約するが誤解を受けて婚約破棄された。以来結婚になど目もくれず父の仕事を手伝って来た。
ところが2か月前国王が急死してしまう。国王の息子はまだ12歳でシエルの父が急きょ国王の代理をすることになる。ここ数年天候不順が続いてセルベーラ国の食糧事情は危うかった。
そこで隣国のオーランド国から作物を輸入する取り決めをする。だが、オーランド国の皇帝は無類の女好きで王族の女性を一人側妃に迎えたいと申し出た。
国王にも王女は3人ほどいたのだが、こちらもまだ一番上が14歳。とても側妃になど行かせられないとシエルに白羽の矢が立った。シエルは国のためならと思い腰を上げる。
そこに護衛兵として同行を申し出た騎士団に所属するボルク。彼は小さいころからの知り合いで仲のいい友達でもあった。互いに気心が知れた中でシエルは彼の事を好いていた。
彼には面白い癖があってイライラしたり怒ると親指と人差し指を擦り合わせる。うれしいと親指と中指を擦り合わせ、照れたり、言いにくい事があるときは親指と薬指を擦り合わせるのだ。だからボルクが怒っているとすぐにわかる。
そんな彼がシエルに同行したいと申し出た時彼は怒っていた。それはこんな話に怒っていたのだった。そして同行できる事になると喜んだ。シエルの心は一瞬にしてざわめく。
隣国の例え側妃といえども皇帝の妻となる身の自分がこんな気持ちになってはいけないと自分を叱咤するが道中色々なことが起こるうちにふたりは仲は急接近していく…
この話は全てフィクションです。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
腹黒宰相との白い結婚
黎
恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる