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第1章 ロロ
2 夕方6時
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「ロロ先生!おはようございます!」
「ロロ先生、昨日作ったクッキーです。お母さんがいつもありがとうって。」
詳しい人数は分からないけど、この町には300人ぐらいしか人が住んでいない。ロロのお父さんが小さい頃に戦争があって、皆んな少し離れた隣町に引っ越したんだって。だからこの町には、学校っていうのも一つしかない。それも生徒は30人もいないらしいね。6歳から18歳の子までさまざまさ。ロロはその学校の担任の先生。って言っても、学校にはロロとピュアハート校長の2人しか先生はいないみたいだけど。
「ピュアハート校長は良い人だよ。」
ロロは仕事から帰ると、何回も僕にそう言ったっけな。なんでも、校長はロロのお母さんの友達で、ロロを自分の息子のように可愛がってるみたいさ。そんなロロも担任は何かと大変なんだってさ。1つの部屋に6歳の女の子もいれば、18歳の兄ちゃんもいるわけだろ、そりゃあ想像を絶する修羅場だね。僕にはちょっと無理かな。
「それにしても学校は楽しいな。」
でもロロは上手くやってるみたいだ。生徒に慕われている良い先生。
ロロが先生になって4年が経った。明後日でロロは26歳になるはずさ。おっと、もうすぐ夕方5時になる。この町では5時に
なったら教会の鐘が町中に鳴り響くんだ。そして、その音を聞いたら皆んなは仕事を終えて家に帰るんだ。5時を過ぎるとここらへんはすっかり暗く、寒くなるからね。早く家に帰って、暖かい食事と暖かい家族と過ごす。まあ、学校からここまでは歩いて1分もかからないから、鐘が聞こえてしばらくするとロロが、
「ただいま。」
って帰ってくるよ。
「ゴーン・・・ゴーン・・・」
もうちょっと待ってね。
「ガチャッ、」
「ただいま!」
ほらね。ロロは帰ってくると、まず2階にある自分の部屋に駆け上がる。つまりここさ。そして、ベッドにカバンを放り投げて、椅子に座って紅茶を一飲み。これが習慣。その次に、
「ただいま。」
僕に向かって笑顔でそう言う。
ーああ、おかえりロロ。
帰ってきて一息ついたと思ったらつかの間、
「ロロ!夕食にするわよ。」
1階のキッチンからロロのお母さんの声が聞こえる。ロロの家族はお父さんとお母さんと後、妹のリンの4人家族。ロロのお父さんは隣町で働いていて週末しか家に帰らないし、妹のリンは去年の秋に遠くの国へお嫁にいったんだ。だから普段家にはロロとお母さんしかいない。
「ああ、すぐ行くよ。」
ロロは上着を投げ捨てるとキッチンへと向かった。
「もう5時半よ、早く食べないと。」
キッチンではお母さんがそう言いながら急いでパスタをお皿に盛り付けていた。
「大丈夫だよ、みんなもご飯を食べ終わるまで待っててくれるさ。」
これが毎日同じやりとりみたいだね。ここから動けない僕は実際に見たことはないけれど。
「ロロ、今日はお仕事どうだったの?」
盛り付けを終えたお母さんが、ロロの向かいに腰掛けて優しい笑顔で聞くんだ。週末以外はロロがいないと1人のお母さんは、ロロが毎日話してくれる学校での話を楽しみにしているんだ。そんなお母さんを気遣ってか、ロロも学校であった話をうんとする。元気を出してもらおうと楽しい話ばかりね。
「今日はね、ジェレンダがお昼ご飯にホットケーキを持ってきたんだけれど、妹が休み時間に食べちゃったんだ。それでものすごい姉妹ゲンカでさ。大変だったよ!」
「ああ、それで。さっきから向かいの家でジェレンダとミンシーの喧嘩声が聞こえてくるのよ。」
「まだ喧嘩してるのあの2人!しょうがないなぁ。」
そんな話でいつも母親を元気付けるロロ。
「ゴーン・・・ゴーン・・・」
お母さんが無意識に鐘の音を数える。
「いけないロロ!6時よ!」
お母さんは慌てて立ち上がり、ロロに食事を急がせた。
「分かってる。」
ロロも急いでパスタを口に入れ、水で流し込んだ。夕方6時になると、すぐいつもの光景になるんだ。今日は電話が早いか、ドアを叩く音が早いか。
「ドンドンッ!ドンドンッ!」
どうやら今日はドアを叩く音の方が早かったみたいだね。ドアの向こうから女性の声が聞こえてきた。
「ロロ!ロロ!」
「その声は、パン屋のおばさんだね。」
ロロはそうつぶやくと、ドアを開けて玄関に女性を招き入れた。
「寒かったでしょう。電話をしてくれたら良かったのに。」
パン屋のおばさんは、手をこすりながら暖を取った。
「いつもは電話だけどね、明日は特に危険だからさ・・・直接ロロに聞きたくてね。悪いねいつも。」
「いいや、何を言ってるんだよ。もちろん、いいよ。」
ロロはパン屋のおばさんの息が落ち着くのを待った。
「それで、明日の何が知りたいんですか?」
「ロロ先生、昨日作ったクッキーです。お母さんがいつもありがとうって。」
詳しい人数は分からないけど、この町には300人ぐらいしか人が住んでいない。ロロのお父さんが小さい頃に戦争があって、皆んな少し離れた隣町に引っ越したんだって。だからこの町には、学校っていうのも一つしかない。それも生徒は30人もいないらしいね。6歳から18歳の子までさまざまさ。ロロはその学校の担任の先生。って言っても、学校にはロロとピュアハート校長の2人しか先生はいないみたいだけど。
「ピュアハート校長は良い人だよ。」
ロロは仕事から帰ると、何回も僕にそう言ったっけな。なんでも、校長はロロのお母さんの友達で、ロロを自分の息子のように可愛がってるみたいさ。そんなロロも担任は何かと大変なんだってさ。1つの部屋に6歳の女の子もいれば、18歳の兄ちゃんもいるわけだろ、そりゃあ想像を絶する修羅場だね。僕にはちょっと無理かな。
「それにしても学校は楽しいな。」
でもロロは上手くやってるみたいだ。生徒に慕われている良い先生。
ロロが先生になって4年が経った。明後日でロロは26歳になるはずさ。おっと、もうすぐ夕方5時になる。この町では5時に
なったら教会の鐘が町中に鳴り響くんだ。そして、その音を聞いたら皆んなは仕事を終えて家に帰るんだ。5時を過ぎるとここらへんはすっかり暗く、寒くなるからね。早く家に帰って、暖かい食事と暖かい家族と過ごす。まあ、学校からここまでは歩いて1分もかからないから、鐘が聞こえてしばらくするとロロが、
「ただいま。」
って帰ってくるよ。
「ゴーン・・・ゴーン・・・」
もうちょっと待ってね。
「ガチャッ、」
「ただいま!」
ほらね。ロロは帰ってくると、まず2階にある自分の部屋に駆け上がる。つまりここさ。そして、ベッドにカバンを放り投げて、椅子に座って紅茶を一飲み。これが習慣。その次に、
「ただいま。」
僕に向かって笑顔でそう言う。
ーああ、おかえりロロ。
帰ってきて一息ついたと思ったらつかの間、
「ロロ!夕食にするわよ。」
1階のキッチンからロロのお母さんの声が聞こえる。ロロの家族はお父さんとお母さんと後、妹のリンの4人家族。ロロのお父さんは隣町で働いていて週末しか家に帰らないし、妹のリンは去年の秋に遠くの国へお嫁にいったんだ。だから普段家にはロロとお母さんしかいない。
「ああ、すぐ行くよ。」
ロロは上着を投げ捨てるとキッチンへと向かった。
「もう5時半よ、早く食べないと。」
キッチンではお母さんがそう言いながら急いでパスタをお皿に盛り付けていた。
「大丈夫だよ、みんなもご飯を食べ終わるまで待っててくれるさ。」
これが毎日同じやりとりみたいだね。ここから動けない僕は実際に見たことはないけれど。
「ロロ、今日はお仕事どうだったの?」
盛り付けを終えたお母さんが、ロロの向かいに腰掛けて優しい笑顔で聞くんだ。週末以外はロロがいないと1人のお母さんは、ロロが毎日話してくれる学校での話を楽しみにしているんだ。そんなお母さんを気遣ってか、ロロも学校であった話をうんとする。元気を出してもらおうと楽しい話ばかりね。
「今日はね、ジェレンダがお昼ご飯にホットケーキを持ってきたんだけれど、妹が休み時間に食べちゃったんだ。それでものすごい姉妹ゲンカでさ。大変だったよ!」
「ああ、それで。さっきから向かいの家でジェレンダとミンシーの喧嘩声が聞こえてくるのよ。」
「まだ喧嘩してるのあの2人!しょうがないなぁ。」
そんな話でいつも母親を元気付けるロロ。
「ゴーン・・・ゴーン・・・」
お母さんが無意識に鐘の音を数える。
「いけないロロ!6時よ!」
お母さんは慌てて立ち上がり、ロロに食事を急がせた。
「分かってる。」
ロロも急いでパスタを口に入れ、水で流し込んだ。夕方6時になると、すぐいつもの光景になるんだ。今日は電話が早いか、ドアを叩く音が早いか。
「ドンドンッ!ドンドンッ!」
どうやら今日はドアを叩く音の方が早かったみたいだね。ドアの向こうから女性の声が聞こえてきた。
「ロロ!ロロ!」
「その声は、パン屋のおばさんだね。」
ロロはそうつぶやくと、ドアを開けて玄関に女性を招き入れた。
「寒かったでしょう。電話をしてくれたら良かったのに。」
パン屋のおばさんは、手をこすりながら暖を取った。
「いつもは電話だけどね、明日は特に危険だからさ・・・直接ロロに聞きたくてね。悪いねいつも。」
「いいや、何を言ってるんだよ。もちろん、いいよ。」
ロロはパン屋のおばさんの息が落ち着くのを待った。
「それで、明日の何が知りたいんですか?」
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