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激甘革命編
第45話「ワガママ王女登場!勇者親子、破綻の危機…」⑦
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「ピーンポーン…」
極真会館近くにある小洒落たマンション「シャンゼリゼ木苺」の302号室で、インターフォンが鳴り響く。この部屋の住人である20代の女性がドアを明けると、そこにはアランが立っている。
「1人暮らしの…ましてや、自分の姉より年上の女性の家に、何の御用ですかぁ?首藤嵐くん…」
「マリーが有馬さんの所に来てないか聞きに来ただけだよ?それに、泥酔状態でその恰好…元男である事隠しても、貰い手来ないよ?」
「うっせぇ!!!家で自堕落にしてんのは、虫除けだ!虫除け!!!」
下はジーンズにも関わらず、上は黒いスポブラで、口元にはあたりめを加えている姿を指摘された有馬は、大慌てで玄関にかけてあるブルゾンを取り、羽織る。アランは、そんな有馬の足元にマリアの靴がある事に気づく。
「そう言えば、有馬さんって…実際は3人兄弟の末っ子なんだよね?」
「あぁ…今は横浜で歯科医やってる兄貴と、東京のアパレル会社に努めている姉貴がな?」
有馬の答えに、アランは何かを察したようだ。
「そっか…だったら、俺がマリーを捜しに行くまでもないかな?何かあったら、連絡して。どーせ、俺はマリーを連れ戻せるワケないし…マリーの気が晴れるまで、そっとしといた方がいいよな?」
有馬にそう告げたアランは、そのままエレベーターへ向かった。
アランが帰った事に気づいたのか否か、有馬の部屋のバスルームからマリアが出てきた。
「誰か来たの?」
「マンションの管理人さんだよ。この辺に高瀬一誠の家があるから、マナーの悪い追っかけが多いんだ。」
有馬はそう言いながらドアを閉め、マリアと一緒にリビングへ向かう。テーブルにはビールの缶が散乱し、無造作にコンビニで買ったあたりめとチーズかまぼこが置かれている。
「それにしても驚いたぜ…エイトテンで買い物中に、お前がこれからコミケに行くような荷物で入って来るんだからな?」
「だって…パパはいっつもお姉ちゃんの事ばっかり…もうお姉ちゃんにはトルテお兄ちゃんがいるのに…お姉ちゃんから離れようとしない…」
勇者のタマゴの言葉に、有馬は不意に実家の事を思い出す。
3人兄弟の末っ子で、いつも親は一番上の兄をひいきにしていた事…親自身は平等に接しているように思っても、当の子供にはそう思われていないのである。
「若干12歳で病弱の母親と、まだ赤ん坊だった双子の弟と妹を、一家の大黒柱として支えてきたってのに…自分の子供の事はまだ何もわかっちゃいねぇんだよな?だから長女に口紅で顔に落書きされたり、焼肉にワサビたっぷり塗られたりするんだよ…」
「それって…」
「お前の親父さんの事!クラフティから聞いたエピソードも山ほどあるぜ!生まれたばかりのクラフティに木の実丸のみさせようとしたり、教会の外壁に魔法陣描いたのをクラフティのせいにしたら、エレナさんとブランシュ卿がチクってブランシュ卿の親父さんにこっぴどく叱られたり…」
殆ど、勇者クラフティに対する悪態である。それを聞いたマリアも、今までずっと黙っていた父親への不満を暴露する。
「ママが死んで半年ぐらいの時だったかな…私、熱を出したの。必死にパパに伝えたんだけど、取り合ってもらえなくって…」
「あちゅい…パパしゃま…マリー…かりゃだ…あちゅいの…」
今でも覚えている…突然の高熱を出した時の事。だが、父は3歳の娘の必死の訴えに聞き耳を持つことはなく…
「今、忙しいんだ!あっち行って大人しくしてなさい!」
高熱を訴える3歳のマリアにとっては、ショック以外のなんでもなかった。兄と叔母がマリアを教会に運んだあとの事はあまり覚えていないが、父は叔母とブランシュ卿にこっぴどく叱られたらしい。
「パパにとって…私はいらない子なのよ…私も…パパの娘なのに…パパなんて…大っ嫌い!!!!!」
紙コップに注がれたジンジャーエールに映るマリアの顔から、大粒の涙がぽたり…ぽたり…と落ちる。まるで、マリアが長年黙り続けてきた父親への不満が暴露されるかのように…
極真会館近くにある小洒落たマンション「シャンゼリゼ木苺」の302号室で、インターフォンが鳴り響く。この部屋の住人である20代の女性がドアを明けると、そこにはアランが立っている。
「1人暮らしの…ましてや、自分の姉より年上の女性の家に、何の御用ですかぁ?首藤嵐くん…」
「マリーが有馬さんの所に来てないか聞きに来ただけだよ?それに、泥酔状態でその恰好…元男である事隠しても、貰い手来ないよ?」
「うっせぇ!!!家で自堕落にしてんのは、虫除けだ!虫除け!!!」
下はジーンズにも関わらず、上は黒いスポブラで、口元にはあたりめを加えている姿を指摘された有馬は、大慌てで玄関にかけてあるブルゾンを取り、羽織る。アランは、そんな有馬の足元にマリアの靴がある事に気づく。
「そう言えば、有馬さんって…実際は3人兄弟の末っ子なんだよね?」
「あぁ…今は横浜で歯科医やってる兄貴と、東京のアパレル会社に努めている姉貴がな?」
有馬の答えに、アランは何かを察したようだ。
「そっか…だったら、俺がマリーを捜しに行くまでもないかな?何かあったら、連絡して。どーせ、俺はマリーを連れ戻せるワケないし…マリーの気が晴れるまで、そっとしといた方がいいよな?」
有馬にそう告げたアランは、そのままエレベーターへ向かった。
アランが帰った事に気づいたのか否か、有馬の部屋のバスルームからマリアが出てきた。
「誰か来たの?」
「マンションの管理人さんだよ。この辺に高瀬一誠の家があるから、マナーの悪い追っかけが多いんだ。」
有馬はそう言いながらドアを閉め、マリアと一緒にリビングへ向かう。テーブルにはビールの缶が散乱し、無造作にコンビニで買ったあたりめとチーズかまぼこが置かれている。
「それにしても驚いたぜ…エイトテンで買い物中に、お前がこれからコミケに行くような荷物で入って来るんだからな?」
「だって…パパはいっつもお姉ちゃんの事ばっかり…もうお姉ちゃんにはトルテお兄ちゃんがいるのに…お姉ちゃんから離れようとしない…」
勇者のタマゴの言葉に、有馬は不意に実家の事を思い出す。
3人兄弟の末っ子で、いつも親は一番上の兄をひいきにしていた事…親自身は平等に接しているように思っても、当の子供にはそう思われていないのである。
「若干12歳で病弱の母親と、まだ赤ん坊だった双子の弟と妹を、一家の大黒柱として支えてきたってのに…自分の子供の事はまだ何もわかっちゃいねぇんだよな?だから長女に口紅で顔に落書きされたり、焼肉にワサビたっぷり塗られたりするんだよ…」
「それって…」
「お前の親父さんの事!クラフティから聞いたエピソードも山ほどあるぜ!生まれたばかりのクラフティに木の実丸のみさせようとしたり、教会の外壁に魔法陣描いたのをクラフティのせいにしたら、エレナさんとブランシュ卿がチクってブランシュ卿の親父さんにこっぴどく叱られたり…」
殆ど、勇者クラフティに対する悪態である。それを聞いたマリアも、今までずっと黙っていた父親への不満を暴露する。
「ママが死んで半年ぐらいの時だったかな…私、熱を出したの。必死にパパに伝えたんだけど、取り合ってもらえなくって…」
「あちゅい…パパしゃま…マリー…かりゃだ…あちゅいの…」
今でも覚えている…突然の高熱を出した時の事。だが、父は3歳の娘の必死の訴えに聞き耳を持つことはなく…
「今、忙しいんだ!あっち行って大人しくしてなさい!」
高熱を訴える3歳のマリアにとっては、ショック以外のなんでもなかった。兄と叔母がマリアを教会に運んだあとの事はあまり覚えていないが、父は叔母とブランシュ卿にこっぴどく叱られたらしい。
「パパにとって…私はいらない子なのよ…私も…パパの娘なのに…パパなんて…大っ嫌い!!!!!」
紙コップに注がれたジンジャーエールに映るマリアの顔から、大粒の涙がぽたり…ぽたり…と落ちる。まるで、マリアが長年黙り続けてきた父親への不満が暴露されるかのように…
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