196 / 248
激甘革命編
第44話「満員御礼!!サン・ジェルマン学園学園祭、開催!」②
しおりを挟む
ノリ気ではないながらも、元々祭事が好きな性分である一悟は、学園祭の準備には積極的に参加し、明日香も通信課程の登校日がある日には医療福祉科の出し物の準備を手伝った。勿論クラス以外でも出し物があり、中等部の弓道部は高等部と合同での弓道体験、合唱部は講堂での合唱、テニス部はサーブで的を撃ちぬくゲーム…そして、マルチメディア部は…
「学園祭の出し物、学園脱出ゲームなんてどう?シナリオ考えてきちゃった♪」
ユキが目をキラキラさせながらシナリオを見せるが…
「これだと、プログラミングが複雑になりますね…そもそも、私達はパソコンでゲームを作る技術がありませんし…」
そう悩む瑞希に、有馬はある事を思いついた。
「それなら、クイズゲームはどうだ?俺、カリフォルニアに居た時に、大学のサークルでシンプルなクイズゲーム作った事があるんだ。」
有馬はそう言うと、本棚からマカロンが部室に置いていったプログラミングの本を取り出した。
「おっ…俺が使ってた本の日本語版だ!技術経験者がいれば、安心だろ?」
副顧問の言葉に、部員である一悟達は全員一致で賛同した。ユキの方はシナリオが却下された事に対してだけは、不満なようだが…
『雪斗の心の中にいられるの…あと僅かかもしれないから、一生懸命考えたのに…』
ユキが雪斗の心の中にいられる時間を意識するようになったのは、先日のカフェの休憩時間の時に遡る。
「カオスを封印した後、カオスの力で生み出された奴らがどうなるかだって?」
「うん…媒体がある幹部は、マカロンお姉ちゃんや、ビスコッティみたいに媒体に戻るんだよね?」
賄い料理を前に、ユキは思い詰めた表情でガレットに問いかける。
「ユキの言う通り、媒体がある場合は媒体の姿に戻るだけさ…」
「そっか…じゃあ、雪斗の心の中にいられる時間も…長く…ないんだ…」
ユキは元々、雪斗を媒体としてカオスの力で生み出された存在である。ユキにとって、カオスを封印する事…つまり…
ユキもカオスと共に封印されてしまうのである。
再び封印が解かれぬ限り、ユキは永遠にカオスと運命を共にせねばならないため、カオスを封印後は雪斗と別れることになる。それをユキが深刻に悩んでいるにも関わらず…
「ユキがいなくなったら、静かになっていいかもな?」
あっけらかんとした表情でそう口走るものだから、ユキにとってはキレるのも無理はない。そんなことを口走った翌日は弓道部の活動日だったが、ユキが有無を言わさず入れ替わったので、雪斗は部活を休まざるを得なかったのだった。
「冗談で言っただけなのに…」
ユキにとっては、冗談では済まされない問題だ。
それ以降ユキは雪斗と入れ替わろうとしなくなり、普段なら率先して雪斗と入れ替わるはずのマルチメディア部の活動や、カフェの手伝いですら出てこなくなった。一悟達は当初、「シナリオが通らなかった事に納得がいかなかった」と思ってはいたが、媒体である雪斗が何度も声をかけても出てこない様子に、一悟達はユキが出てこなくなった原因が「雪斗の失言」である事に気づいた。
「お前…ユキに何言ったんだよ…」
「ユキちゃんだって、酷い事言われたら傷つくんですよ!!!」
ユキが出てこなくなって、1週間近く経過した金曜日の昼休みの食堂の一角。一悟とみるくの向かいには、雪斗が背中を丸めたまま縮こまっている。
「さしずめ、ユキさんが深刻に悩んでいらっしゃったのを、軽くあしらってしまわれたのでしょう?」
あずきの鋭い推測に、雪斗の背中がぎくりと動いた。
「無理もありませんわ…ユキ様は長い間、鳥籠の中にいたようなものですから…」
その言葉に、一悟とみるくは納得するしかなかった。そもそも雪斗は、最近まで同年代の女子はおろか、同年代の男子とですらコミュニケーションがとれなかったのである。
「それに、学園祭は来週でしょ?明日はカフェの手伝いもあるんだし、今日中にユキの機嫌を直さないと…」
一悟達の焦りは募る…マルチメディア部の出し物は何とか進んではいるが、ユキが不在な上に、クラスの出し物である「ロミオとジュリエット」でジュリエット役を務める部長の瑞希が顔を出す時間があまりとれない状態のため、まだ完成には程遠い段階で、文化祭当日に間に合うかどうかは微妙なラインである。
「それに、ユキ…この間、パパちゃまにカオスを封印した後の幹部について聞いたんだって…もしかしたら…ユキ…それで悩んでいるのかもしれない…」
マリアの言葉に、一悟達は不意にユキが元々カオスの力で生み出された存在だった事を思い出した。
「ムッシュ・エクレールも…マカロンも…ビスコッティも…これまでの事を思い起こせば、カオスイーツ化して浄化された幹部は、本来の姿に戻ってる…」
「ってことは、カオスを封印したら…ユキも…」
一悟は言葉を詰まらせる。
「だから、出し物でゲームを作ろうって言ったんですね…」
初心者でありながら、詳しいところまで練りこまれたシナリオ…そこには、ユキの本気が感じ取れた。その事を悟った一悟とみるくは、放課後を迎えるや否や、マルチメディア部の部室へ急いだ。
「学園祭の出し物、学園脱出ゲームなんてどう?シナリオ考えてきちゃった♪」
ユキが目をキラキラさせながらシナリオを見せるが…
「これだと、プログラミングが複雑になりますね…そもそも、私達はパソコンでゲームを作る技術がありませんし…」
そう悩む瑞希に、有馬はある事を思いついた。
「それなら、クイズゲームはどうだ?俺、カリフォルニアに居た時に、大学のサークルでシンプルなクイズゲーム作った事があるんだ。」
有馬はそう言うと、本棚からマカロンが部室に置いていったプログラミングの本を取り出した。
「おっ…俺が使ってた本の日本語版だ!技術経験者がいれば、安心だろ?」
副顧問の言葉に、部員である一悟達は全員一致で賛同した。ユキの方はシナリオが却下された事に対してだけは、不満なようだが…
『雪斗の心の中にいられるの…あと僅かかもしれないから、一生懸命考えたのに…』
ユキが雪斗の心の中にいられる時間を意識するようになったのは、先日のカフェの休憩時間の時に遡る。
「カオスを封印した後、カオスの力で生み出された奴らがどうなるかだって?」
「うん…媒体がある幹部は、マカロンお姉ちゃんや、ビスコッティみたいに媒体に戻るんだよね?」
賄い料理を前に、ユキは思い詰めた表情でガレットに問いかける。
「ユキの言う通り、媒体がある場合は媒体の姿に戻るだけさ…」
「そっか…じゃあ、雪斗の心の中にいられる時間も…長く…ないんだ…」
ユキは元々、雪斗を媒体としてカオスの力で生み出された存在である。ユキにとって、カオスを封印する事…つまり…
ユキもカオスと共に封印されてしまうのである。
再び封印が解かれぬ限り、ユキは永遠にカオスと運命を共にせねばならないため、カオスを封印後は雪斗と別れることになる。それをユキが深刻に悩んでいるにも関わらず…
「ユキがいなくなったら、静かになっていいかもな?」
あっけらかんとした表情でそう口走るものだから、ユキにとってはキレるのも無理はない。そんなことを口走った翌日は弓道部の活動日だったが、ユキが有無を言わさず入れ替わったので、雪斗は部活を休まざるを得なかったのだった。
「冗談で言っただけなのに…」
ユキにとっては、冗談では済まされない問題だ。
それ以降ユキは雪斗と入れ替わろうとしなくなり、普段なら率先して雪斗と入れ替わるはずのマルチメディア部の活動や、カフェの手伝いですら出てこなくなった。一悟達は当初、「シナリオが通らなかった事に納得がいかなかった」と思ってはいたが、媒体である雪斗が何度も声をかけても出てこない様子に、一悟達はユキが出てこなくなった原因が「雪斗の失言」である事に気づいた。
「お前…ユキに何言ったんだよ…」
「ユキちゃんだって、酷い事言われたら傷つくんですよ!!!」
ユキが出てこなくなって、1週間近く経過した金曜日の昼休みの食堂の一角。一悟とみるくの向かいには、雪斗が背中を丸めたまま縮こまっている。
「さしずめ、ユキさんが深刻に悩んでいらっしゃったのを、軽くあしらってしまわれたのでしょう?」
あずきの鋭い推測に、雪斗の背中がぎくりと動いた。
「無理もありませんわ…ユキ様は長い間、鳥籠の中にいたようなものですから…」
その言葉に、一悟とみるくは納得するしかなかった。そもそも雪斗は、最近まで同年代の女子はおろか、同年代の男子とですらコミュニケーションがとれなかったのである。
「それに、学園祭は来週でしょ?明日はカフェの手伝いもあるんだし、今日中にユキの機嫌を直さないと…」
一悟達の焦りは募る…マルチメディア部の出し物は何とか進んではいるが、ユキが不在な上に、クラスの出し物である「ロミオとジュリエット」でジュリエット役を務める部長の瑞希が顔を出す時間があまりとれない状態のため、まだ完成には程遠い段階で、文化祭当日に間に合うかどうかは微妙なラインである。
「それに、ユキ…この間、パパちゃまにカオスを封印した後の幹部について聞いたんだって…もしかしたら…ユキ…それで悩んでいるのかもしれない…」
マリアの言葉に、一悟達は不意にユキが元々カオスの力で生み出された存在だった事を思い出した。
「ムッシュ・エクレールも…マカロンも…ビスコッティも…これまでの事を思い起こせば、カオスイーツ化して浄化された幹部は、本来の姿に戻ってる…」
「ってことは、カオスを封印したら…ユキも…」
一悟は言葉を詰まらせる。
「だから、出し物でゲームを作ろうって言ったんですね…」
初心者でありながら、詳しいところまで練りこまれたシナリオ…そこには、ユキの本気が感じ取れた。その事を悟った一悟とみるくは、放課後を迎えるや否や、マルチメディア部の部室へ急いだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる