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激甘革命編
第44話「満員御礼!!サン・ジェルマン学園学園祭、開催!」②
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ノリ気ではないながらも、元々祭事が好きな性分である一悟は、学園祭の準備には積極的に参加し、明日香も通信課程の登校日がある日には医療福祉科の出し物の準備を手伝った。勿論クラス以外でも出し物があり、中等部の弓道部は高等部と合同での弓道体験、合唱部は講堂での合唱、テニス部はサーブで的を撃ちぬくゲーム…そして、マルチメディア部は…
「学園祭の出し物、学園脱出ゲームなんてどう?シナリオ考えてきちゃった♪」
ユキが目をキラキラさせながらシナリオを見せるが…
「これだと、プログラミングが複雑になりますね…そもそも、私達はパソコンでゲームを作る技術がありませんし…」
そう悩む瑞希に、有馬はある事を思いついた。
「それなら、クイズゲームはどうだ?俺、カリフォルニアに居た時に、大学のサークルでシンプルなクイズゲーム作った事があるんだ。」
有馬はそう言うと、本棚からマカロンが部室に置いていったプログラミングの本を取り出した。
「おっ…俺が使ってた本の日本語版だ!技術経験者がいれば、安心だろ?」
副顧問の言葉に、部員である一悟達は全員一致で賛同した。ユキの方はシナリオが却下された事に対してだけは、不満なようだが…
『雪斗の心の中にいられるの…あと僅かかもしれないから、一生懸命考えたのに…』
ユキが雪斗の心の中にいられる時間を意識するようになったのは、先日のカフェの休憩時間の時に遡る。
「カオスを封印した後、カオスの力で生み出された奴らがどうなるかだって?」
「うん…媒体がある幹部は、マカロンお姉ちゃんや、ビスコッティみたいに媒体に戻るんだよね?」
賄い料理を前に、ユキは思い詰めた表情でガレットに問いかける。
「ユキの言う通り、媒体がある場合は媒体の姿に戻るだけさ…」
「そっか…じゃあ、雪斗の心の中にいられる時間も…長く…ないんだ…」
ユキは元々、雪斗を媒体としてカオスの力で生み出された存在である。ユキにとって、カオスを封印する事…つまり…
ユキもカオスと共に封印されてしまうのである。
再び封印が解かれぬ限り、ユキは永遠にカオスと運命を共にせねばならないため、カオスを封印後は雪斗と別れることになる。それをユキが深刻に悩んでいるにも関わらず…
「ユキがいなくなったら、静かになっていいかもな?」
あっけらかんとした表情でそう口走るものだから、ユキにとってはキレるのも無理はない。そんなことを口走った翌日は弓道部の活動日だったが、ユキが有無を言わさず入れ替わったので、雪斗は部活を休まざるを得なかったのだった。
「冗談で言っただけなのに…」
ユキにとっては、冗談では済まされない問題だ。
それ以降ユキは雪斗と入れ替わろうとしなくなり、普段なら率先して雪斗と入れ替わるはずのマルチメディア部の活動や、カフェの手伝いですら出てこなくなった。一悟達は当初、「シナリオが通らなかった事に納得がいかなかった」と思ってはいたが、媒体である雪斗が何度も声をかけても出てこない様子に、一悟達はユキが出てこなくなった原因が「雪斗の失言」である事に気づいた。
「お前…ユキに何言ったんだよ…」
「ユキちゃんだって、酷い事言われたら傷つくんですよ!!!」
ユキが出てこなくなって、1週間近く経過した金曜日の昼休みの食堂の一角。一悟とみるくの向かいには、雪斗が背中を丸めたまま縮こまっている。
「さしずめ、ユキさんが深刻に悩んでいらっしゃったのを、軽くあしらってしまわれたのでしょう?」
あずきの鋭い推測に、雪斗の背中がぎくりと動いた。
「無理もありませんわ…ユキ様は長い間、鳥籠の中にいたようなものですから…」
その言葉に、一悟とみるくは納得するしかなかった。そもそも雪斗は、最近まで同年代の女子はおろか、同年代の男子とですらコミュニケーションがとれなかったのである。
「それに、学園祭は来週でしょ?明日はカフェの手伝いもあるんだし、今日中にユキの機嫌を直さないと…」
一悟達の焦りは募る…マルチメディア部の出し物は何とか進んではいるが、ユキが不在な上に、クラスの出し物である「ロミオとジュリエット」でジュリエット役を務める部長の瑞希が顔を出す時間があまりとれない状態のため、まだ完成には程遠い段階で、文化祭当日に間に合うかどうかは微妙なラインである。
「それに、ユキ…この間、パパちゃまにカオスを封印した後の幹部について聞いたんだって…もしかしたら…ユキ…それで悩んでいるのかもしれない…」
マリアの言葉に、一悟達は不意にユキが元々カオスの力で生み出された存在だった事を思い出した。
「ムッシュ・エクレールも…マカロンも…ビスコッティも…これまでの事を思い起こせば、カオスイーツ化して浄化された幹部は、本来の姿に戻ってる…」
「ってことは、カオスを封印したら…ユキも…」
一悟は言葉を詰まらせる。
「だから、出し物でゲームを作ろうって言ったんですね…」
初心者でありながら、詳しいところまで練りこまれたシナリオ…そこには、ユキの本気が感じ取れた。その事を悟った一悟とみるくは、放課後を迎えるや否や、マルチメディア部の部室へ急いだ。
「学園祭の出し物、学園脱出ゲームなんてどう?シナリオ考えてきちゃった♪」
ユキが目をキラキラさせながらシナリオを見せるが…
「これだと、プログラミングが複雑になりますね…そもそも、私達はパソコンでゲームを作る技術がありませんし…」
そう悩む瑞希に、有馬はある事を思いついた。
「それなら、クイズゲームはどうだ?俺、カリフォルニアに居た時に、大学のサークルでシンプルなクイズゲーム作った事があるんだ。」
有馬はそう言うと、本棚からマカロンが部室に置いていったプログラミングの本を取り出した。
「おっ…俺が使ってた本の日本語版だ!技術経験者がいれば、安心だろ?」
副顧問の言葉に、部員である一悟達は全員一致で賛同した。ユキの方はシナリオが却下された事に対してだけは、不満なようだが…
『雪斗の心の中にいられるの…あと僅かかもしれないから、一生懸命考えたのに…』
ユキが雪斗の心の中にいられる時間を意識するようになったのは、先日のカフェの休憩時間の時に遡る。
「カオスを封印した後、カオスの力で生み出された奴らがどうなるかだって?」
「うん…媒体がある幹部は、マカロンお姉ちゃんや、ビスコッティみたいに媒体に戻るんだよね?」
賄い料理を前に、ユキは思い詰めた表情でガレットに問いかける。
「ユキの言う通り、媒体がある場合は媒体の姿に戻るだけさ…」
「そっか…じゃあ、雪斗の心の中にいられる時間も…長く…ないんだ…」
ユキは元々、雪斗を媒体としてカオスの力で生み出された存在である。ユキにとって、カオスを封印する事…つまり…
ユキもカオスと共に封印されてしまうのである。
再び封印が解かれぬ限り、ユキは永遠にカオスと運命を共にせねばならないため、カオスを封印後は雪斗と別れることになる。それをユキが深刻に悩んでいるにも関わらず…
「ユキがいなくなったら、静かになっていいかもな?」
あっけらかんとした表情でそう口走るものだから、ユキにとってはキレるのも無理はない。そんなことを口走った翌日は弓道部の活動日だったが、ユキが有無を言わさず入れ替わったので、雪斗は部活を休まざるを得なかったのだった。
「冗談で言っただけなのに…」
ユキにとっては、冗談では済まされない問題だ。
それ以降ユキは雪斗と入れ替わろうとしなくなり、普段なら率先して雪斗と入れ替わるはずのマルチメディア部の活動や、カフェの手伝いですら出てこなくなった。一悟達は当初、「シナリオが通らなかった事に納得がいかなかった」と思ってはいたが、媒体である雪斗が何度も声をかけても出てこない様子に、一悟達はユキが出てこなくなった原因が「雪斗の失言」である事に気づいた。
「お前…ユキに何言ったんだよ…」
「ユキちゃんだって、酷い事言われたら傷つくんですよ!!!」
ユキが出てこなくなって、1週間近く経過した金曜日の昼休みの食堂の一角。一悟とみるくの向かいには、雪斗が背中を丸めたまま縮こまっている。
「さしずめ、ユキさんが深刻に悩んでいらっしゃったのを、軽くあしらってしまわれたのでしょう?」
あずきの鋭い推測に、雪斗の背中がぎくりと動いた。
「無理もありませんわ…ユキ様は長い間、鳥籠の中にいたようなものですから…」
その言葉に、一悟とみるくは納得するしかなかった。そもそも雪斗は、最近まで同年代の女子はおろか、同年代の男子とですらコミュニケーションがとれなかったのである。
「それに、学園祭は来週でしょ?明日はカフェの手伝いもあるんだし、今日中にユキの機嫌を直さないと…」
一悟達の焦りは募る…マルチメディア部の出し物は何とか進んではいるが、ユキが不在な上に、クラスの出し物である「ロミオとジュリエット」でジュリエット役を務める部長の瑞希が顔を出す時間があまりとれない状態のため、まだ完成には程遠い段階で、文化祭当日に間に合うかどうかは微妙なラインである。
「それに、ユキ…この間、パパちゃまにカオスを封印した後の幹部について聞いたんだって…もしかしたら…ユキ…それで悩んでいるのかもしれない…」
マリアの言葉に、一悟達は不意にユキが元々カオスの力で生み出された存在だった事を思い出した。
「ムッシュ・エクレールも…マカロンも…ビスコッティも…これまでの事を思い起こせば、カオスイーツ化して浄化された幹部は、本来の姿に戻ってる…」
「ってことは、カオスを封印したら…ユキも…」
一悟は言葉を詰まらせる。
「だから、出し物でゲームを作ろうって言ったんですね…」
初心者でありながら、詳しいところまで練りこまれたシナリオ…そこには、ユキの本気が感じ取れた。その事を悟った一悟とみるくは、放課後を迎えるや否や、マルチメディア部の部室へ急いだ。
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