激甘革命!マジパティ(分割版)

夜ノ森あかり

文字の大きさ
上 下
190 / 248
激甘革命編

第43話「狙われた体育祭…障害物にご用心!」①

しおりを挟む
「パン!パン!パン!!!」

 10月に入って間もない土曜日の早朝、瀬戌せいぬ市上空にイベントの開催を知らせる花火が上がった。この日は私立サン・ジェルマン学園の体育祭が開催される日で、中等部、高等部合同で開催されるイベントだ。合同とは言っても、高等部は通信課程があるため、通信課程の者達は自由参加となっている上に、場所もサン・ジェルマン学園の敷地内ではなく、瀬戌市民公園という大きな市営の運動公園での開催である。

 サン・ジェルマン学園の体育祭は中等部、高等部合同のため、クラス対抗ではなく、縦割り2組のチーム対抗戦となっている。これは体力の格差をなるべく均一にするためと、過去にクラス対抗方式で開催した際、教師が他のクラスで運動神経がいい生徒を菓子折りや現金などで買収していた事が発覚し、危うく体育祭開催禁止になりかけた事があったためである。そんな体育祭の参加者には、勿論マジパティ達や勇者達も含まれている。

 紅組にいるマジパティは、中等部から一悟いちご、みるく、トロールの3人で、高等部はここなとネロの2人。そして、勇者のタマゴであるマリアと、スイーツ界の住人のライスも紅組だ。

 対して、白組にいるマジパティは、中等部から雪斗ゆきと玉菜たまなの2人。高等部からは友菓ともか、グラッセ、ボネの3人。そして、人間界の住人でマジパティ達の協力者である瑞希みずき涼也りょうやも白組である。



「これより、サン・ジェルマン学園体育祭を開催いたします!みなさん、怪我のないよう、ベストを尽くしましょう!!!」

 体育祭実行委員長である高等部生徒の挨拶が終わり、最初の競技となる男子スウェーデンリレーが始まる。スウェーデンリレーは第1走者100m、第2走者200m、第3走者300m、そしてアンカーの第4走者が200mと合計1000mを走るメドレーリレーだ。

「紅組Aチームの紹介です。第1走者1年C組、小岩新太こいわあらた、第2走者2年B組市川幸弘いちかわゆきひろ、第3走者3年B組船橋智久ふなばしともひさ、そしてアンカーは2年A組の千葉一悟です。続きまして、紅組Bチームは第1走者3年A組四ツ谷賢よつやけん、第2走者1年A組中野幸男なかのゆきお、第3走者2年B組荻窪洋おぎくぼひろし、そしてアンカーは3年C組三鷹智みたかさとしです。続きまして、白組…」

 サン・ジェルマン学園では、まず中等部から紅組、白組ともにAチーム4人、Bチーム4人の代表が選出され、合計で16人の代表選手が運動公園グラウンドのトラックを走る。紅組中等部Aチームのアンカーは、スポーツテスト50m走の成績から2年生である一悟が選ばれた。そんな一悟と同じアンカーは、皆3年生ばかりだ。
「責任重大だなぁ…まぁ、がんばれよ?」
「他人事みたいに言うんじゃねぇよ…」
 一悟は白組Bチーム第1走者である涼也に茶化されるが、涼也の方も同じ第1走者に陸上部短距離走のエース・四ツ谷がいるため、余裕をかましている場合ではない。

 間もなくして中等部の部のリレーが始まり、序盤から飛ばす四ツ谷に、涼也は追いつくのがやっとで、何とか2位に食いつく。その後は紅組Bチームが1位をキープした状態が続き、やがて紅組Bチームはアンカーの三鷹にバトンが渡った。
「千葉、あとは頼んだ!!!」
「はいっ!!!」
 一悟が第3走者の船橋からバトンを受け取った時点で、紅組Aチームは3位。1位の三鷹とは50mほどの差がある。そんな三鷹は、白組Bチームの吉野よしのに追いつかれそうな状態だ。
「悪いな、三鷹…この勝負、バスケ部がもらったぜ!!!」
 中等部のバスケットボール部とバレーボール部は男女共に、体育館の使用範囲を巡って仲が悪く、その辺りは男子バレーボール部アウトサイドヒッターである三鷹も、バスケ部の言動には日々憤りを感じている。だが、今は体育祭のリレーの真っ最中である。部活動同士の争いを持ち込んでいる場合ではない。そんなバスケ部とバレー部の衝突を阻むかの如く、一悟と白組Aチームのアンカー・西大寺さいだいじが追い上げてくる。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 ゴールまであと20m辺りの所でトラックの観客席側から、一悟が3年生2人を追い抜き、一悟はさらにペースを上げる。突然の逆転劇にペースが乱れた三鷹と吉野だが、三鷹は何とかペースを取り戻すものの、吉野は完全に失速してしまい、とうとう西大寺にも追い抜かれてしまった。

「パーーーーーーーーーン」

 一悟がゴールテープに触れると同時に、ゴールを知らせるピストルが鳴り響く。一悟に続いて、三鷹、西大寺、吉野もゴールに到達し、中等部の部は終了した。

「序盤から見事な逆転劇でした!!!1位、紅組Aチーム、2位、紅組Bチーム、3位、白組Aチーム、そして4位は白組Bチームです。」

 高等部の放送部員がリレーの結果を読み上げる。それを聞いた観客席の女勇者は、夫や精霊達と共に大いに喜び、中等部紅組の控え席では、あずきとトロールの傍でみるくが安堵の表情を浮かべる。
「よかった、よかった…」
 大勇者も一悟の吉報を聞きながら、グラウンドの隅のテントでうどんの仕込みを続ける。高等部の部は、1位を独走状態だった紅組のBチームが、バトンの受け渡しの際に第2走者がバトンを落とし、そのバトンを誤って第3走者が拾ってしまい、その場で紅組Bチームは失格。結果、高等部の部は白組Bチームが1位でゴールしたのであった。

 続いて女子スウェーデンリレーも開始され、中等部の部は玉菜率いる白組Aチームが1位でゴールし、高等部の部はマリアとネロがいる紅組Bチームが猛威を振るい、第3走者のマリアが1位を走っていた白組Aチームの一悟の姉・一華いちかを追い抜いたり、アンカーのネロが走っている間中、黄色い歓声がグラウンド全体を覆いつくしてしまったのだった。

『伊達に勇者の姿で河川敷走らせてないもんねー♪』

 黄色い歓声が鳴りやまぬ中、うどんの具材を切りながら、大勇者は次女の大活躍を誇らしく(?)思った。

 運動神経に難ありのみるくやここなも、団体競技の綱引きや、くす玉割りでチームに貢献したり、応援を頑張るなどの活躍をし、雪斗は徒競走、ボネはパン食い競争、トロール、友菓も障害物競走でそれぞれのチームに貢献する。得点も大接戦だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...