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レインボーポット編
第39話「大勇者の危機!!!カルマン少年と勇者モンブラン」③
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「まさにおやっさんらしいというか、なんと言うか…」
「突っ込んできた車を片手で止めてしまうなんて…約1か月ぶりの再会が、妹一家の前で馬鹿力見せつける姿なんてねぇ…」
「突っ込んできたプリウスに乗ってた老夫婦はビックリしすぎて腰を抜かすわ、エンジンルームをオーバーヒートさせたまま、素手で止めた本人は気絶するわ…奇跡としか言いようがないよ。」
彩聖会瀬戌病院の救急外来の中で、トルテ、エレナ、クラフティの3人は揃ってため息をつく。マカロンの媒体であった赤ん坊は、KAORUの姉・住ノ江栞とその夫に養子として引き取られ、今後は「住ノ江真」として生きていくことになった。KAORUの姉は過去に病気で子宮を失い、子供を産めない身体となってしまった。それでも、夫婦共に子供を育てたい気持ちが強く、真の里親になる事を決意。真も新しい両親に懐いたようで、ユキは少々寂しさを感じながらも、ホッと安心しているようだ。
そんなユキ達の前に救急外来で運ばれたのが大勇者で、デパートの前の横断歩道で事故に巻き込まれた大勇者は、無我夢中でプリウスのボンネットを素手で押さえつけ、エンジンルームから煙が出るほどの「祖父譲りの火事場の馬鹿力」を野次馬達の前で晒してしまったのである。乗っていた老夫婦は、横断者による突然の行為に腰を抜かし、大勇者は右手に軽い低温火傷をしただけで、幸いにもプリウス以外は大事には至らなかった。そんなユキ達の前では、老夫婦の息子夫婦が必死に頭を下げている。何やら運転していた老人は自動車免許を返納したにも関わらず、車を運転していたそうだ。やめよう…無免許運転。
「ねぇ…大勇者様って、ホントは鋼のサイボーグなの?」
「生身の人間っス…とにかく、お二人も何ともなかったんで、あとは保険会社と警察通して示談って事で…」
被害者家族の言葉に安堵を示したのか、今度は加害者夫婦の息子夫婦が腰を抜かし、エレナの夫・モーガンが腰を抜かした2人支える。そんなやり取りの真横でベッドの上に仰向けにされている大勇者の右手がぴくりと動き出す。
………
真っ白な空間の中、大勇者は勇者の姿でただ1人歩いていた。自分は死んだのかどうかすらわからない…そんな彼を呼ぶ女性の声が響き渡る。
「カルマン…」
先立たれた妻に自分の名前を呼ばれるのは、13年ぶりになる。自分の腕の中で事切れる妻の姿…母の亡骸にショックを受けて泣き崩れる子供達…もしも自分が本当に死んでしまったら、子供達はきっと悲しむだろう…そう思った矢先、妻でも娘でもない女性の声が彼を制止する。
「止まりなさい、カルマン!!!」
29年ぶりに聞く、懐かしい力強い声…声のする方向から娘とよく似た赤い髪の女性が、大勇者の方へ近づいてくる。炎のような真紅のロングヘアーをなびかせ、白を基調とした甲冑に身を包み、白の表地に裏地が赤のマントをひるがえす…その凛とした身のこなしの女勇者に、大勇者は思わず息を呑む。
「カルマン…あなたはまだ、死んではいけないのよ!」
写真や亡くなる少し前でしか見たことがない、亡き祖母の勇者モンブランとしての姿…見れば見るほど、勇者となった娘も祖母と似てきたと思ってしまう。
「あなたは今、やるべき事があるはずよ?三途の川の向こう岸にいる、お嫁さんの所へ行くべき時ではないわ…勇者として…兄として…そして、父親として…」
祖母である勇者モンブランの言葉に、大勇者はハッとする。そして、川の向こうの妻に向かって両手を合わせ…
「わりぃ、セレーネ!!!俺、まだそっちには来られねぇ!」
孫が妻に謝罪する姿に、勇者モンブランは「よく言えた」と言わんばかりの表情をする。
「ニコラスも、セーラも勇者としてはまだまだだし、特にセーラは…もうすぐトルテと結婚するんだ。花嫁の父として、セーラと一緒にバージンロードを歩きたい…お前にさせてあげられなかった事を、セーラにさせてやりてぇんだ。もちろん…まだ幼かったマリーにも…」
夫の言葉にセレーネは寂しそうな表情を浮かべつつ、胸の前で手を合わせ、白い光を放つ。その白い光は夫の大剣の白い宝石・ノエルジュエルと共鳴し、光を放つ。
「私は勇者の妻ですもの…覚悟はできてます!だから、私たちの分まで娘達を頼みます。私の愛する勇者様…」
妻の頼みに頷くと、大勇者の身体は真っ白な空間からスーッと消えていった。
………
「ピッ…ピッ…」
電子音が鳴り響く。大勇者が目を覚ますと、そこは病院のベッドの上…そして、そのベッドを囲むのは娘婿、清掃員の仕事を終えたばかりの弟、妹一家…そして、娘のマジパティの1人・ユキの姿。右手は軽いやけどを負ったのか、手の平が包帯で巻かれている。
「俺、一体…」
ガレットは呼吸器を外しながら起き上がる。枕元にはアクセサリー化した己の大剣があり、その大剣に触れた刹那、大勇者は勇者である娘の危機を察し…
「このままだと、セーラが危ないっ!!!!!」
それを聞いたクラフティ達は、ぐっと息を呑む。それと同時に、トルテの目の前に淡い緑の光を放つ宝石が発生し、彼は咄嗟に宝石をガレットに託す。
「おやっさん!!!」
「兄さん、ニコラス!あとは私達に任せて、ユキちゃんと一緒にセーラの所へ!!!」
「突っ込んできた車を片手で止めてしまうなんて…約1か月ぶりの再会が、妹一家の前で馬鹿力見せつける姿なんてねぇ…」
「突っ込んできたプリウスに乗ってた老夫婦はビックリしすぎて腰を抜かすわ、エンジンルームをオーバーヒートさせたまま、素手で止めた本人は気絶するわ…奇跡としか言いようがないよ。」
彩聖会瀬戌病院の救急外来の中で、トルテ、エレナ、クラフティの3人は揃ってため息をつく。マカロンの媒体であった赤ん坊は、KAORUの姉・住ノ江栞とその夫に養子として引き取られ、今後は「住ノ江真」として生きていくことになった。KAORUの姉は過去に病気で子宮を失い、子供を産めない身体となってしまった。それでも、夫婦共に子供を育てたい気持ちが強く、真の里親になる事を決意。真も新しい両親に懐いたようで、ユキは少々寂しさを感じながらも、ホッと安心しているようだ。
そんなユキ達の前に救急外来で運ばれたのが大勇者で、デパートの前の横断歩道で事故に巻き込まれた大勇者は、無我夢中でプリウスのボンネットを素手で押さえつけ、エンジンルームから煙が出るほどの「祖父譲りの火事場の馬鹿力」を野次馬達の前で晒してしまったのである。乗っていた老夫婦は、横断者による突然の行為に腰を抜かし、大勇者は右手に軽い低温火傷をしただけで、幸いにもプリウス以外は大事には至らなかった。そんなユキ達の前では、老夫婦の息子夫婦が必死に頭を下げている。何やら運転していた老人は自動車免許を返納したにも関わらず、車を運転していたそうだ。やめよう…無免許運転。
「ねぇ…大勇者様って、ホントは鋼のサイボーグなの?」
「生身の人間っス…とにかく、お二人も何ともなかったんで、あとは保険会社と警察通して示談って事で…」
被害者家族の言葉に安堵を示したのか、今度は加害者夫婦の息子夫婦が腰を抜かし、エレナの夫・モーガンが腰を抜かした2人支える。そんなやり取りの真横でベッドの上に仰向けにされている大勇者の右手がぴくりと動き出す。
………
真っ白な空間の中、大勇者は勇者の姿でただ1人歩いていた。自分は死んだのかどうかすらわからない…そんな彼を呼ぶ女性の声が響き渡る。
「カルマン…」
先立たれた妻に自分の名前を呼ばれるのは、13年ぶりになる。自分の腕の中で事切れる妻の姿…母の亡骸にショックを受けて泣き崩れる子供達…もしも自分が本当に死んでしまったら、子供達はきっと悲しむだろう…そう思った矢先、妻でも娘でもない女性の声が彼を制止する。
「止まりなさい、カルマン!!!」
29年ぶりに聞く、懐かしい力強い声…声のする方向から娘とよく似た赤い髪の女性が、大勇者の方へ近づいてくる。炎のような真紅のロングヘアーをなびかせ、白を基調とした甲冑に身を包み、白の表地に裏地が赤のマントをひるがえす…その凛とした身のこなしの女勇者に、大勇者は思わず息を呑む。
「カルマン…あなたはまだ、死んではいけないのよ!」
写真や亡くなる少し前でしか見たことがない、亡き祖母の勇者モンブランとしての姿…見れば見るほど、勇者となった娘も祖母と似てきたと思ってしまう。
「あなたは今、やるべき事があるはずよ?三途の川の向こう岸にいる、お嫁さんの所へ行くべき時ではないわ…勇者として…兄として…そして、父親として…」
祖母である勇者モンブランの言葉に、大勇者はハッとする。そして、川の向こうの妻に向かって両手を合わせ…
「わりぃ、セレーネ!!!俺、まだそっちには来られねぇ!」
孫が妻に謝罪する姿に、勇者モンブランは「よく言えた」と言わんばかりの表情をする。
「ニコラスも、セーラも勇者としてはまだまだだし、特にセーラは…もうすぐトルテと結婚するんだ。花嫁の父として、セーラと一緒にバージンロードを歩きたい…お前にさせてあげられなかった事を、セーラにさせてやりてぇんだ。もちろん…まだ幼かったマリーにも…」
夫の言葉にセレーネは寂しそうな表情を浮かべつつ、胸の前で手を合わせ、白い光を放つ。その白い光は夫の大剣の白い宝石・ノエルジュエルと共鳴し、光を放つ。
「私は勇者の妻ですもの…覚悟はできてます!だから、私たちの分まで娘達を頼みます。私の愛する勇者様…」
妻の頼みに頷くと、大勇者の身体は真っ白な空間からスーッと消えていった。
………
「ピッ…ピッ…」
電子音が鳴り響く。大勇者が目を覚ますと、そこは病院のベッドの上…そして、そのベッドを囲むのは娘婿、清掃員の仕事を終えたばかりの弟、妹一家…そして、娘のマジパティの1人・ユキの姿。右手は軽いやけどを負ったのか、手の平が包帯で巻かれている。
「俺、一体…」
ガレットは呼吸器を外しながら起き上がる。枕元にはアクセサリー化した己の大剣があり、その大剣に触れた刹那、大勇者は勇者である娘の危機を察し…
「このままだと、セーラが危ないっ!!!!!」
それを聞いたクラフティ達は、ぐっと息を呑む。それと同時に、トルテの目の前に淡い緑の光を放つ宝石が発生し、彼は咄嗟に宝石をガレットに託す。
「おやっさん!!!」
「兄さん、ニコラス!あとは私達に任せて、ユキちゃんと一緒にセーラの所へ!!!」
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