激甘革命!マジパティ(分割版)

夜ノ森あかり

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レインボーポット編

第39話「大勇者の危機!!!カルマン少年と勇者モンブラン」②

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 一方その頃、父親が大変な事になっている事も露知らず、シュトーレン達はいないはずの店舗スペースから発する物音の正体を突き止めようとしていた。トルテは、マカロンの媒体であった赤ん坊・まことの引き取り先が元モデル仲間のKAORUの姉に決まったという知らせを受け、ユキと共に彩聖さいせい会に向かっている。
「お姉ちゃん…ご、ゴキブリじゃない?」
「だとしたら、何で大きな物音がするのかしら?」
「さぁー、ネズミども…お前らは完全に包囲されている!!!神妙にお縄につけーっ!!」
「アラン…あんた、警察官になった方がいいんじゃない?」
 まるで一悟いちごの父親と似たような言い回しをする弟に、シュトーレンは彼にそう告げる。
「やだよ…殺人事件の現場とか見るの…」

「ガチャッ…」

 住居スペースと店舗スペースを繋ぐ扉を開け、咄嗟に3人同時に飛び出すと、そこにいたのは…

「うわっ…」
 まるで彼女達の父親にそっくりの赤い髪の少年だった。服装は白い開襟シャツに、チョコレート色のジレとハーフパンツに黒いブーツ…見た目は12歳くらいなのだろうか、彼の体格には釣り合わない真紅の鞘に入った大剣を持っていた。
「お…男の子?」
「って、その大剣…ひいばあちゃんのじゃねぇかっ!!!」
 アランは少年の持つ大剣を見るや否や、思わず声を荒げ、少年はアランの声に驚き、思わず大剣をぎゅっと抱きしめる。
「お兄ちゃん…あの剣のこと…知ってるの?」
「知ってるも何も…あの大剣は…」

「アランはんから預かっとった勇者モンブランの大剣なら、ここに持ってきたんやけどなぁ…」

 3人姉弟の背後から、ブランシュ卿夫人の声がした。3人が振り向くと、そこには勇者モンブランの大剣を持ったブランシュ卿夫妻と娘である僧侶が住居スペースの廊下に立っている。
「そいで、そこの坊や…ウチは大賢者テリーヌや。あんさん、名前は?」

「カルマン…カルマン・ガレット・シュヴァリエ…」

 その名前を聞くや否や、カフェにいる少年、ブランシュ卿夫妻以外全員、声を上げて驚きの声を上げる。
「道理で学が足りてなさそうな顔立ちをしているワケだ…」
「だいたいあってるが、本物の大勇者ガレットの前では言うなよ?」
「それじゃあ、ひいおばあちゃんの大剣を大賢者様が持ってるって事は…この子は…」
 シュトーレンはそう言いながら、自らを「カルマン」と名乗る少年に近づこうとする。

「本人気づいてへんけど、29年前の勇者ガレット…つまり、勇者として覚醒する前のセーラはん達のお父さんや♪」

 にこりと微笑むブランシュ卿夫人の言葉に、今度は少年も驚きの声を上げた。
「た、確かに言われてみれば…」
 女の勇者はそう言いながら、更にカルマン少年との距離を詰めようとするが…
「セーラはん…結婚式控えた娘はんが、そないな丈の短いワンピースなんて着たらあかんえ?」
「えっ…」
 大賢者に言われた女の勇者が目線を下の方へ向けると、パステルグリーンのリブニットのハイネックワンピースの裾は、大剣の柄に引っかかってめくれ上がっており、めくれ上がった裾からは、ピンクの布地に黒い花柄レースで彩られたデルタ地帯が少年の前で晒しものとなっていたのである。そんな少年は大剣を抱きかかえたまま、勇者からあとずさりをはじめ…

「わ、わけのわからねーこと言うんじゃねぇっ!!!お前ら…どうせ、ばあさんの事で…王族の奴らに頼まれて、俺を殺しに来たんだろ!!!お前らのいう事なんて、信じられるわけ、ねーだろっ!!!!!」

 勇者達の前でそう暴言を吐いたカルマン少年は、店舗スペースのドアを開け、カフェから飛び出してしまった。
「何なの、あの子!!!生意気じゃない!」
 マリアはそう叫ぶが、ブランシュ卿は不意に何かを思い出したような顔をする。恐らく、カルマン少年の言葉に対し、何か引っかかる事があるようだ。

「まだ遠くへは行ってない!追うのはセーラ、お前だけに任せる!!!彼は勇者モンブランが殺された事で、敵と味方の判別がつかなくなっているだけだ…もし、未来の世界で彼に何かが起これば…カルマンはセレーネを受け入れる事はない…つまり、お前達は生まれない事になる…」

 それは、まさしく「過去を変えてしまう」という事…その言葉に、女の勇者は黙って頷き、玄関から出ると、弟の電動アシスト自転車に跨り、少年の跡を追い始めた。流石にライダースーツに着替える時間がないため、やむを得ない。
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