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レインボーポット編
第36話「女豹の罠!狙われた一悟とみるくの恋心!!!」④
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「次のニュースです。1日未明より、瀬戌市で10代から40代にかけての男性が次々と吐き気を訴え、その後意識不明になるという事件が多発しており…」
一悟が右手の筋力を失って3日が経った。あの日以来、一悟はトイレと入浴以外は部屋から一歩も出ず、引きこもったままだ。辛うじて食欲はあるらしく、食べ方は殆ど犬食いにはなったが、完食はしているらしい…というのも、それは殆ど涼也からの話で、ココアも一悟とケンカして以来、みるくの家に行っており、一度も一悟と顔を合わせようとしていない。
「まぁ…いずれはバレることはわかっていたが…」
涼也の話に、僧侶はため息をつく。一悟は、姉の一華にマジパティである事がバレてしまったのである。そんな一華はインターハイ出場のため、昨日より北海道へ行っている。
「コンコン…」
「一悟、私だ。彩聖会に行くぞ…3分以内に支度しろ!!!」
幼女の姿の僧侶の言葉に、一悟は渋々部屋から出て来る。この3日間で殆ど憔悴しきっているようだ。
「今日は運がよかったな?みるくは、明日香とここな、そしてユキと一緒に、買い物に出かけているそうだ。」
その言葉に、一悟は難しい顔をする。
「何で…そこでみるくが出てくんだよ…」
「何でって…お前の大切な幼馴染なんじゃないのか?それに…お前は、もう忘れたのか?初めてマジパティに変身した時の事を…」
僧侶の言葉に、一悟は思わずハッとする。初めてミルフィーユに変身した時の事…忘れていたワケなんかじゃない…
「それじゃ…ココアがあぁ言ったのは…」
「みるくが最近のお前の言動が気に入らなかった事に、気づいたんだろう…あいつは、ラテの件で相当反省していたからな。お前に、自分と同じように大切な人をぞんざいに扱って欲しくないんだろう。」
「ぞんざいって…俺、あすちゃんと一緒に戦えるって…」
その言葉に、僧侶はぴくりと眉を動かす。
「一悟、そういうトコだぞ!!!お前が明日香に気をかけてばかりいるから、ココアからは「みるくをぞんざいに扱っている」って判断されるんだ!!!!!」
僧侶の言葉に、一悟は全身に雷が落ちたような衝撃を覚えた。赤ちゃんの頃から一緒にいて当たり前だと思っていた。だが、明日香の件で一悟とみるくとの間にすれ違いができていた…それも、周囲が気づいてしまうほどに…
僧侶は3日前よりもがっくりと項垂れる一悟をポルシェに乗せ、自身は後部座席に座ると、キョーコせかんどの運転で彩聖会瀬戌病院へと向かった。
6月に国道沿いから斜瑠々川沿いへと移転した彩聖会瀬戌病院は、ドクターヘリにも対応できるなど、設備も移転前より充実しており、それはムッシュ・エクレールも「クソ患者が同じ病室である以外は、居心地よかった」と絶賛するほどだった。彩聖会に到着すると、僧侶は普段の姿に戻り、一悟と共に整形外科へと向かう。
「………」
養護教諭である関係で、何度も生徒を移転した彩聖会へ連れていくことはあるが、僧侶は今日はどことなく不穏な空気が漂っている様子を感じた。
「千葉一悟さーん!!!」
一悟はすぐに呼び出され、僧侶と共に指定された診察室へ入るが…
「!!!?」
そこにいたのは担当医である40代の男性医師ではなく、僧侶より年上程の20代の薄紫色の髪の女性だった。
「それでは、お座りください。」
女性がそう言うと、一悟はまるで操られたかのように椅子に腰かけ、右腕に巻かれた包帯を解きはじめる。そんな一悟の腕には、まるで豹のような青紫色の痣が僧侶の見える範囲に5か所も存在していた。
「やっぱり、10代前半の坊やは上手く私の力に反応してくれる…」
その言葉に、僧侶は苦虫を噛み潰したような表情をしながら、スマートフォンの通話機能を起動させる。
「貴様だったのか…プワゾップルの種を、一悟に与えたのは…」
その言葉に、女性はふふっと微笑み…
「おや…人聞きの悪い…」
「それに、今日の午前は安積永盛医師が担当医のはず…安積先生はどこへやった!!!」
道理でおかしいはずだ。一悟の前には予約の患者が1人いたはずだ。その予約患者すら見当たらない…
「どこへって…普段通りに仕事しているわよ?私は坊やの様子を診にきたに過ぎない…」
不敵な笑みを浮かべる女性に、僧侶は杖を構え、瞬く間にスイーツ界の姿へと姿を変える。
「それに、この混沌のニオイ…貴様、正体を見せろっ!!!!!」
「パチンッ…」
女性が指を弾くと、僧侶は診察室から弾き飛ばされ、壁に激突してしまう。その拍子に、僧侶はスマートフォンを待合用の椅子の上に落としてしまい、女性はそこから流れる男性の声に気づく。
「アンヌちゃん?なにがあった、アンヌちゃんっ!!!」
女性はみるみるうちにフードを被った女豹へと姿を変え、僧侶のスマートフォンを拾い上げる。
「久しぶりね…勇者…いいえ、カルマン・ガレット・ブラーヴ・シュヴァリエ…」
突然僧侶の声がしなくなり、電話の相手である大勇者はその声の主にハッとする。
「その声は…ヒタム…!?」
「うるさい小娘僧侶のお陰で、貴様を探す手間が省けたわ…今度こそ、貴様を絶望に陥れてやるわ…必ずね…」
ヒタムがそう答えると、僧侶との通話は途絶えてしまった。
「親父…何があったの?アンヌは…」
「な、何でもないから!!!ただ、病院が混雑しているってだけだから…ね?」
「それならいいけど、明日のカフェの仕込み…早く済ませてよね?」
慌てながら質問に答える父親に違和感を示しながら、シュトーレンは再びシャワーを浴びるべく、洗面所の扉を閉める。
一悟が右手の筋力を失って3日が経った。あの日以来、一悟はトイレと入浴以外は部屋から一歩も出ず、引きこもったままだ。辛うじて食欲はあるらしく、食べ方は殆ど犬食いにはなったが、完食はしているらしい…というのも、それは殆ど涼也からの話で、ココアも一悟とケンカして以来、みるくの家に行っており、一度も一悟と顔を合わせようとしていない。
「まぁ…いずれはバレることはわかっていたが…」
涼也の話に、僧侶はため息をつく。一悟は、姉の一華にマジパティである事がバレてしまったのである。そんな一華はインターハイ出場のため、昨日より北海道へ行っている。
「コンコン…」
「一悟、私だ。彩聖会に行くぞ…3分以内に支度しろ!!!」
幼女の姿の僧侶の言葉に、一悟は渋々部屋から出て来る。この3日間で殆ど憔悴しきっているようだ。
「今日は運がよかったな?みるくは、明日香とここな、そしてユキと一緒に、買い物に出かけているそうだ。」
その言葉に、一悟は難しい顔をする。
「何で…そこでみるくが出てくんだよ…」
「何でって…お前の大切な幼馴染なんじゃないのか?それに…お前は、もう忘れたのか?初めてマジパティに変身した時の事を…」
僧侶の言葉に、一悟は思わずハッとする。初めてミルフィーユに変身した時の事…忘れていたワケなんかじゃない…
「それじゃ…ココアがあぁ言ったのは…」
「みるくが最近のお前の言動が気に入らなかった事に、気づいたんだろう…あいつは、ラテの件で相当反省していたからな。お前に、自分と同じように大切な人をぞんざいに扱って欲しくないんだろう。」
「ぞんざいって…俺、あすちゃんと一緒に戦えるって…」
その言葉に、僧侶はぴくりと眉を動かす。
「一悟、そういうトコだぞ!!!お前が明日香に気をかけてばかりいるから、ココアからは「みるくをぞんざいに扱っている」って判断されるんだ!!!!!」
僧侶の言葉に、一悟は全身に雷が落ちたような衝撃を覚えた。赤ちゃんの頃から一緒にいて当たり前だと思っていた。だが、明日香の件で一悟とみるくとの間にすれ違いができていた…それも、周囲が気づいてしまうほどに…
僧侶は3日前よりもがっくりと項垂れる一悟をポルシェに乗せ、自身は後部座席に座ると、キョーコせかんどの運転で彩聖会瀬戌病院へと向かった。
6月に国道沿いから斜瑠々川沿いへと移転した彩聖会瀬戌病院は、ドクターヘリにも対応できるなど、設備も移転前より充実しており、それはムッシュ・エクレールも「クソ患者が同じ病室である以外は、居心地よかった」と絶賛するほどだった。彩聖会に到着すると、僧侶は普段の姿に戻り、一悟と共に整形外科へと向かう。
「………」
養護教諭である関係で、何度も生徒を移転した彩聖会へ連れていくことはあるが、僧侶は今日はどことなく不穏な空気が漂っている様子を感じた。
「千葉一悟さーん!!!」
一悟はすぐに呼び出され、僧侶と共に指定された診察室へ入るが…
「!!!?」
そこにいたのは担当医である40代の男性医師ではなく、僧侶より年上程の20代の薄紫色の髪の女性だった。
「それでは、お座りください。」
女性がそう言うと、一悟はまるで操られたかのように椅子に腰かけ、右腕に巻かれた包帯を解きはじめる。そんな一悟の腕には、まるで豹のような青紫色の痣が僧侶の見える範囲に5か所も存在していた。
「やっぱり、10代前半の坊やは上手く私の力に反応してくれる…」
その言葉に、僧侶は苦虫を噛み潰したような表情をしながら、スマートフォンの通話機能を起動させる。
「貴様だったのか…プワゾップルの種を、一悟に与えたのは…」
その言葉に、女性はふふっと微笑み…
「おや…人聞きの悪い…」
「それに、今日の午前は安積永盛医師が担当医のはず…安積先生はどこへやった!!!」
道理でおかしいはずだ。一悟の前には予約の患者が1人いたはずだ。その予約患者すら見当たらない…
「どこへって…普段通りに仕事しているわよ?私は坊やの様子を診にきたに過ぎない…」
不敵な笑みを浮かべる女性に、僧侶は杖を構え、瞬く間にスイーツ界の姿へと姿を変える。
「それに、この混沌のニオイ…貴様、正体を見せろっ!!!!!」
「パチンッ…」
女性が指を弾くと、僧侶は診察室から弾き飛ばされ、壁に激突してしまう。その拍子に、僧侶はスマートフォンを待合用の椅子の上に落としてしまい、女性はそこから流れる男性の声に気づく。
「アンヌちゃん?なにがあった、アンヌちゃんっ!!!」
女性はみるみるうちにフードを被った女豹へと姿を変え、僧侶のスマートフォンを拾い上げる。
「久しぶりね…勇者…いいえ、カルマン・ガレット・ブラーヴ・シュヴァリエ…」
突然僧侶の声がしなくなり、電話の相手である大勇者はその声の主にハッとする。
「その声は…ヒタム…!?」
「うるさい小娘僧侶のお陰で、貴様を探す手間が省けたわ…今度こそ、貴様を絶望に陥れてやるわ…必ずね…」
ヒタムがそう答えると、僧侶との通話は途絶えてしまった。
「親父…何があったの?アンヌは…」
「な、何でもないから!!!ただ、病院が混雑しているってだけだから…ね?」
「それならいいけど、明日のカフェの仕込み…早く済ませてよね?」
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