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レインボーポット編

第30話「いざ、茅ケ崎!ミルフィーユよ、立ち上がれ!!!」⑤

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「「「でやあああああああああああああああああっ!!!!!」」」

「ざばっ…」

 突然何かに引っ張られる感覚がして、ミルフィーユがグラウンドに着地したと同時に振り向くと、そこにいたのは…
「やっと、合流できましたね!」
「今朝はごめんね!サプライズ狙ってたんだけどさ…あの鎧がしゃしゃり出ちゃってせいで…」
「これこれ、幹部相手にも指をさすんじゃないの!」
 プディング、ソルベ、クリームパフ…そして、スイーツ界の姿でベイクを睨みつける女勇者の姿…いすみもカオスイーツの中から引きずり出されたようで、人間の姿のラテが介抱している。

「けほっ…けほっ…」

「ベイク…アタシの父親の真名を連呼した挙句、関係のない人間界の住人を巻き込んだ報い…受けてもらうわ!」
 凛とした姿で、戦国武将のような鎧姿の青年に向けて大剣を構える勇者…その姿からは「人妻」であるという事が一切見受けられない。
「ミルフィーユ、立てるわね?」
「は…はい…」
 勇者の言葉に、ミルフィーユは立ち上がり、ミルフィーユグレイブを構える。プディングはプディングワンド、ソルベはソルベアロー、クリームパフはクリームグレネードをそれぞれ構え、戦闘態勢はバッチリだ。

「3つの心を1つに合わせて…」

 ミルフィーユ、プディング、ソルベの3人がそう叫んだ瞬間、3人の武器は光の粒子となり、それぞれのカラーに合わせた細身の剣・パティブレードに変わった。

「勇者の力を1つの剣に!!!ミルフィーユブレード!!!」
「勇者の愛を1つの剣に!!!プディングブレード!!!」
「勇者の知性を1つの剣に!!!ソルベブレード!!!」

 3人はそれぞれのパティブレードを構え、ピンク、黄色、水色の光をまといつつ、カオスイーツに飛び掛かる。

「さぁ、行くわよ!!!フォンダンっ!」
「はいでしゅ!!!」
 フォンダンがクリームパフの右肩に乗ると、クリームパフはウインクをする。
「精霊の力と…」
「勇者の光を一つにあわせて…」
「バレットリロード!!!」
 フォンダンの身体が白く光るなり、フォンダンはクリームパフの持つクリームグレネードのレンコン状のシリンダーに光の銃弾を装填する。そして、クリームパフは左手でシリンダーをくるくると回転させ、狙いを定めると同時に、クリームパフは拳銃のトリガーを引く。

 そして、勇者は白い光を纏いながらカオスイーツの前で高くジャンプする…

「「「「「マジパティ・ブレイブ・ピュニシオン!!!!!」」」」」

 その掛け声とともに、カオスイーツはミルフィーユ、プディング、ソルベの順に斬られ、クリームパフの無数の光の銃弾を浴びる。最後に、勇者・シュトーレンがカオスイーツの頭上から大きく振りかぶってカオスイーツを一刀両断する。

「「「「「アデュー♪」」」」」

 5人が同時にウインクをすると、マンゴープリンのカオスイーツは光の粒子となって本来の姿を取り戻したのだった。カオスイーツにされたのは紗山中学校の教頭先生だったようで、化け物の姿から戻った教頭先生を見て、いすみは安心する。
「よかっ…た…」
「フンッ…男子児童のいない校舎など、無意味以外の何者でもないっ!!!!!」
 そう捨て台詞を吐いたベイクは、フッと音を盾ながらどこかへ行ってしまった。


 ………


「ほなみ、もう怖がらなくていいのよ?勇者様のお陰で、お姉さんも妖精さんも化け物から助け出されたの。」
「…ホント?明日香ちゃん…」
 ぐずる小学生のほなみに、明日香は優しく諭す。
「本当よ…ほら、妖精さんもここにいるわ。」
 ほなみに微笑みながら、明日香はピンクのマグカップを見せる。そのマグカップからは、ラテにそっくりの精霊・モカが顔を出す。
「ねっ?だから、ほなみちゃん!もう泣かないで?」
 モカがそう言うと、ほなみはやっと笑い出した。

 思えばあの時、明日香姉さんは自分がミルフィーユである事を打ち明けたのだろう…当時の明日香と同じ年齢となったほなみは、そう確信する。


 ………


「だから、悪かったって…流石に脳筋一華ちゃんにマジパティ合宿の話、するワケにいかないだろ?」
 サザンクロスビーチ近くの和食レストランで、ココアが一悟に向かってそう答える。あの後、昨日のカフェの営業が終わったと同時に茅ケ崎市に合宿入りしていた事が勇者親子の口から明かされ、一悟はここでやっとココアを返してもらえたのだった。ほなみもクラフティとアンニン、涼也のお陰で落ち着きを取り戻し、お座敷の席で祖父にお酌をしている。
「さりげなく姉ちゃんディスってんじゃねぇよ…」
「ここにいる連中で、一悟も明日香もミルフィーユだって知らねぇの…一華ちゃんだけだぜ?一華ちゃん、ニブすぎだろ!」

 ほなみといすみの両親も、既に明日香がミルフィーユである事を知っていた様で、一悟に関してはマカロンの配信をいすみに見せてもらい、その戦い方で気づかれてしまったのだった。

「まぁ、あのゴリさんには口止めするって話だしぃ…明日からの合宿、がんばってこーぜ☆彡」
 そう言いながら、ココアは一悟にサムズアップをかます。

「「あ…」」

 一悟は不意にトイレから出てきたいすみと合流する。
「さっきは…悪りぃ…巻き込んじまって…」
「はぁ?あれはあたしが勝手に巻き込まれただけっ!何で一悟が気に病むワケ?あたしはお姉ちゃんが大事にしている学校を守りたかっただけっ!!!」
「そ…そうだよな…お前、昔っからシスコンだもんな…」
 一悟は、いすみと話しながらふと思い出す…今のいすみと肩を並べるほどのシスコンのいとこの存在…今、彼がいたら、間違いなくいすみとシスコントークを繰り広げるだろう。

「それから…一華ちゃんには黙っとく…から…先、戻る。」

「えっ…だったら俺も…」
 一悟はいすみ一緒に座敷に戻ろうとするが…
「はぁ!?一悟、あんたわかってないの?今、ここには家族以外にあんたの事を大事に想ってるのが居るのよ?あたしとあんたは単なるいとこ同士っ!!!そもそも、お互い中学生でしょ?異性のいとこ同士で仲良く一緒にお座敷に行くなんてあり得ないっしょ!!!」
 いすみが一悟を引き留める。そんな一悟の後ろには…

「そ、そう…だよね?いとこ同士仲がいいのはいい事だけど、一緒に席に戻るなんて…勘違いされちゃう…よね?」
 みるくが立っていた。どうやらいすみとトイレで居合わせたらしい。そんなみるくの表情はにこやかのわりに、不穏なオーラが漂う。
「一悟…明日からは覚悟、しといてくださいね?」
「こりゃやべーぜ?一悟…明日からはベリーハードなのが待ってるぜ☆彡」
 ココアが一悟にニヤリと笑うのを背景に、いすみは家族のいる座敷の戸を開ける。

『一華ちゃん共々ニブいんだから…いい加減、どうして心配されてるのか、気にかけなさいよ…バカ…』
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