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レインボーポット編
第30話「いざ、茅ケ崎!ミルフィーユよ、立ち上がれ!!!」①
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7月21日、朝―
「バンッ!!!」
カフェ「ルーヴル」に止めてある赤いデミオのトランクが閉まり、トランクを閉めた張本人は、「ふんっ」と鼻息を出しながら仁王立ちをする。
「よしっ!これで持っていく荷物の殆どは乗せたな。」
大勇者は旅行へ行く準備を終えたかのように、車に鍵をかけると、玄関へ入り、リビングへと戻る。リビングへと戻るや否や、彼の足元には…
「あ…あんなに成長していたなんて…」
弟のニコラス・クラフティ・ブラーヴ・シュヴァリエが倒れていたのだった。そんなクラフティは鼻から血を流している。その鼻血の理由を何となくで察した大勇者ガレットは、彼の背中に跨り、脇を抱えつつ弟の上半身を起こし、技をかける。大勇者ガレットのキャメルクラッチが、勇者クラフティの全身に炸裂した瞬間である。
「シュヴァリエ家家訓!第1条っ!!!肉親を性的な目で見るんじゃねぇっ!!!!」
終業式が行われた一昨日、ガレットは弟を連れて一旦スイーツ界へと戻り、勇者クラフティは約8年ぶりに自分の身体を取り戻したのだった。勿論、シュガトピア国王に経過報告も忘れない。勇者クラフティと彼のマジパティが見つかったため、本来ならガレットと魔界のマジパティはお役御免となるのだが、勇者クラフティのミルフィーユもとい千葉明日香がカオスの手中であること、2人の勇者とそのマジパティ達の成長を見届けて欲しいという国王からの願いを受け、大勇者ガレットと魔界のマジパティはそのまま人間界にいられることとなったのである。娘の結婚式を見届けたいガレットにとっては、ある意味嬉しいニュースだろう。
なお、グラッセに関しては一悟と明日香の先輩マジパティでありながら戦績がそぐわない事もあり、学校が夏休み期間の間はスイーツ界で修業をする事になった。そんな彼女の指導にあたるのは、ガレットの長男で、シュトーレンの弟であるアラン・キルシュ・シュヴァリエ。20歳にして、魔導騎士第3部隊隊長という地位に君臨する青年である。父親からの頼みとはいえ、父親のマジパティの修行の相手と聞いて、少々複雑な心境だったようだ。
「それで、兄さん…ホントに一悟と涼也には内緒でいいの?幸いにも、今日は2人とも空手と剣道で来られないけどさ…」
「一悟と涼也には内緒」というのは、2人の祖母である千葉峰子の七回忌の法事が茅ケ崎市内の寺院で営まれるため、明日から茅ケ崎に行くことになっている。
「言ったらサプライズじゃねぇだろ?それに、今回はお前とセーラ…つまり、勇者とマジパティ達の合宿も兼ねてんだ。カオスから明日香を助け出したいんだろ?そのためには、それなりに力をつけなくちゃいけねぇ…今の勇者とマジパティ達にできることは、それしか方法がないんだ。」
兄の言葉に、クラフティはしんみりとした表情を浮かべる。
「そう…だよな。明日香を取り戻すためには、ぼんやりとしちゃいけないんだ…」
「そう!明日香はおにぃにとって、大切な存在でしょ?アタシも自分のマジパティ達と共にカオスと戦わなくちゃいけない…今回の合宿で十分に力をつけなくっちゃね?」
クラフティにそう言うシュトーレンではあるが、どうにも言っている事と、服装がかみ合っていない。そんな彼女はつばの広い白い帽子にサングラス、そして帽子と同じ白のロングワンピース姿だ。
「セーラ…合宿と新婚旅行は一緒にしないでね?」
明日から合宿とはいえ、本日もカフェ「ルーヴル」は通常営業である。暫くしてみるく、瑞希がココアを連れてカフェに来て、その後に雪斗、ボネ、ネロ、トロールがやって来る。それから5分もしないうちに玉菜と友菓が合流し、僧侶アンニンの家で暮らすここな以外の合宿メンバーが揃う。全員保護者からの了承は済ませており、一悟と涼也もあらかじめ本人から口止めする事を前提の上で、了承を済ませている。
………
「待たせたわね!有馬は明日の午前中に仕事片付けてから、ライスは高萩家の仕事を片付けてからそれぞれ合流するそうよ。」
夕方になって、閉店作業を終えたカフェの前に14人乗りのハイエースが停まり、ハイエースから僧侶アンニン、キョーコせかんど、ここなが降りて来る。カフェの営業を終えた勇者とマジパティ達は、荷物を持ってハイエースに乗り込む。ハイエースの運転はキョーコせかんどの担当のようで、キョーコせかんどは普段のロングスカート姿ではなく、動きやすいパンツスタイルにスニーカー姿となっている。
「んじゃ…岩槻インターからは高速で、食事は海老名でいいね?何かあれば、セーラの方に連絡して。ニコラス、スマホ使えないし、俺も下手したら首都高の途中で運転変わるかもしれないから。」
「その方が無難だな。セーラに車で首都高走らせるのは、リスクが高すぎる…」
フランスから日本に戻ってすぐに短期合宿で車の免許を取得した女勇者にとっては、カーブや分岐の多い首都高の運転はハードルが高い。しかもバイクの運転と同じノリで運転しているから、猶更である。
「そんじゃ、合宿に出発っ!!!」
一通りの経路を話した大勇者と僧侶はそれぞれの車に乗り込み、カフェをあとにして、トルテが運転する赤いデミオと、キョーコせかんどが運転するハイエースは目的地である茅ケ崎市を目指すのだった。
「あーあ…アイツにこの事、伝えるの忘れて出かけて…でも、楽しんで来てちょうだいね…カル兄」
2台の車がカフェを去っていくのを見届けながら、30代後半の女性が1人呟く。
「バンッ!!!」
カフェ「ルーヴル」に止めてある赤いデミオのトランクが閉まり、トランクを閉めた張本人は、「ふんっ」と鼻息を出しながら仁王立ちをする。
「よしっ!これで持っていく荷物の殆どは乗せたな。」
大勇者は旅行へ行く準備を終えたかのように、車に鍵をかけると、玄関へ入り、リビングへと戻る。リビングへと戻るや否や、彼の足元には…
「あ…あんなに成長していたなんて…」
弟のニコラス・クラフティ・ブラーヴ・シュヴァリエが倒れていたのだった。そんなクラフティは鼻から血を流している。その鼻血の理由を何となくで察した大勇者ガレットは、彼の背中に跨り、脇を抱えつつ弟の上半身を起こし、技をかける。大勇者ガレットのキャメルクラッチが、勇者クラフティの全身に炸裂した瞬間である。
「シュヴァリエ家家訓!第1条っ!!!肉親を性的な目で見るんじゃねぇっ!!!!」
終業式が行われた一昨日、ガレットは弟を連れて一旦スイーツ界へと戻り、勇者クラフティは約8年ぶりに自分の身体を取り戻したのだった。勿論、シュガトピア国王に経過報告も忘れない。勇者クラフティと彼のマジパティが見つかったため、本来ならガレットと魔界のマジパティはお役御免となるのだが、勇者クラフティのミルフィーユもとい千葉明日香がカオスの手中であること、2人の勇者とそのマジパティ達の成長を見届けて欲しいという国王からの願いを受け、大勇者ガレットと魔界のマジパティはそのまま人間界にいられることとなったのである。娘の結婚式を見届けたいガレットにとっては、ある意味嬉しいニュースだろう。
なお、グラッセに関しては一悟と明日香の先輩マジパティでありながら戦績がそぐわない事もあり、学校が夏休み期間の間はスイーツ界で修業をする事になった。そんな彼女の指導にあたるのは、ガレットの長男で、シュトーレンの弟であるアラン・キルシュ・シュヴァリエ。20歳にして、魔導騎士第3部隊隊長という地位に君臨する青年である。父親からの頼みとはいえ、父親のマジパティの修行の相手と聞いて、少々複雑な心境だったようだ。
「それで、兄さん…ホントに一悟と涼也には内緒でいいの?幸いにも、今日は2人とも空手と剣道で来られないけどさ…」
「一悟と涼也には内緒」というのは、2人の祖母である千葉峰子の七回忌の法事が茅ケ崎市内の寺院で営まれるため、明日から茅ケ崎に行くことになっている。
「言ったらサプライズじゃねぇだろ?それに、今回はお前とセーラ…つまり、勇者とマジパティ達の合宿も兼ねてんだ。カオスから明日香を助け出したいんだろ?そのためには、それなりに力をつけなくちゃいけねぇ…今の勇者とマジパティ達にできることは、それしか方法がないんだ。」
兄の言葉に、クラフティはしんみりとした表情を浮かべる。
「そう…だよな。明日香を取り戻すためには、ぼんやりとしちゃいけないんだ…」
「そう!明日香はおにぃにとって、大切な存在でしょ?アタシも自分のマジパティ達と共にカオスと戦わなくちゃいけない…今回の合宿で十分に力をつけなくっちゃね?」
クラフティにそう言うシュトーレンではあるが、どうにも言っている事と、服装がかみ合っていない。そんな彼女はつばの広い白い帽子にサングラス、そして帽子と同じ白のロングワンピース姿だ。
「セーラ…合宿と新婚旅行は一緒にしないでね?」
明日から合宿とはいえ、本日もカフェ「ルーヴル」は通常営業である。暫くしてみるく、瑞希がココアを連れてカフェに来て、その後に雪斗、ボネ、ネロ、トロールがやって来る。それから5分もしないうちに玉菜と友菓が合流し、僧侶アンニンの家で暮らすここな以外の合宿メンバーが揃う。全員保護者からの了承は済ませており、一悟と涼也もあらかじめ本人から口止めする事を前提の上で、了承を済ませている。
………
「待たせたわね!有馬は明日の午前中に仕事片付けてから、ライスは高萩家の仕事を片付けてからそれぞれ合流するそうよ。」
夕方になって、閉店作業を終えたカフェの前に14人乗りのハイエースが停まり、ハイエースから僧侶アンニン、キョーコせかんど、ここなが降りて来る。カフェの営業を終えた勇者とマジパティ達は、荷物を持ってハイエースに乗り込む。ハイエースの運転はキョーコせかんどの担当のようで、キョーコせかんどは普段のロングスカート姿ではなく、動きやすいパンツスタイルにスニーカー姿となっている。
「んじゃ…岩槻インターからは高速で、食事は海老名でいいね?何かあれば、セーラの方に連絡して。ニコラス、スマホ使えないし、俺も下手したら首都高の途中で運転変わるかもしれないから。」
「その方が無難だな。セーラに車で首都高走らせるのは、リスクが高すぎる…」
フランスから日本に戻ってすぐに短期合宿で車の免許を取得した女勇者にとっては、カーブや分岐の多い首都高の運転はハードルが高い。しかもバイクの運転と同じノリで運転しているから、猶更である。
「そんじゃ、合宿に出発っ!!!」
一通りの経路を話した大勇者と僧侶はそれぞれの車に乗り込み、カフェをあとにして、トルテが運転する赤いデミオと、キョーコせかんどが運転するハイエースは目的地である茅ケ崎市を目指すのだった。
「あーあ…アイツにこの事、伝えるの忘れて出かけて…でも、楽しんで来てちょうだいね…カル兄」
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