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勇者クラフティ編

第26話「廃部決定?マルチメディア部を守れ!」③

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 翌朝、みるくはトロールと一緒に職員室で下妻先生にマルチメディア部に入部するための必要書類をもらいにやって来た。

「みるく、お前は父子家庭で部活は入れないって言ってたはずだが…」

「パパ…いえ、父からの許可はとってあります!「汀良てら先輩」にはまだ話をしていませんが、せめてお力になれれば…」

 その言葉に、下妻先生はハッとする。ブラックビターの幹部の頃からのティラミスとマカロンの主従関係の事を思い出せば、ティラミスもとい瑞希の性格上、「マルチメディア部を守りたい」と考えるのも納得がいく。

「それなら、この入部届に親御さん…土呂は親が遠方だから、身元保証人である氷見ひみ家の当主様にサインと印鑑をもらい、汀良に渡すように。私もマルチメディア部に関しては気がかりな所もあるから、部活の件は私に預けて欲しい。」

「「はい!」」

 みるくとトロールは下妻先生から入部届を受け取ると、そのまま職員室を出る。そこへ…



「みるく、今日の日直はいちごんだったはずじゃ…」



 朝練を終えた雪斗と廊下でバッタリ会ったのだった。

「トロちゃんがね、マルチメディア部に入りたいって言うから職員室に案内したの。」

 トロールは昨日も職員室に来たのだが、一晩で場所を忘れてしまったようだ。

「それなら、どうしてみるくも入部届を持ってるんだ?家の事は…」

「パパからOKもらったから、大丈夫!それに、「漆山さん」の意志を守ろうとしている瑞希さんのためにできるのはこれくらいだし。」

 みるくがそう言うと、雪斗の意識の中でユキが動き出す。ユキの方も、マカロンの事で何かやれることがないか、模索しているようである。



 一昨日、マカロンの媒体ばいたいである赤ん坊を彩聖さいせい会瀬戌病院に運んだ時の事は、ユキの記憶の中で忘れる事はないだろう。赤ん坊の様子はジュレから聞かされている。彼の健康状態は良好で、引き取り先が見つかり次第、彩聖会から退院するそうだ。名前はまだ決まっていない。でも、ユキ自身には赤ん坊にと、密かに決めている名前がある。



 それは「まこと」という名前だった。マカロンの学生としての名前、「漆山マコ」から取って、漢字に当てた名前で、雪斗の意識の中で一晩考えていたようだ。 



「僕も…マカロンお姉ちゃん…ううん、「真」のために何かがしたい…僕にしかできない事…きっとあると思うんだ…」



 会いたい気持ちは日に日に募る一方だが、引き取り先が見つかるまでは会いに行かないと決めた。でも、「会いたい」と想えば想うほど、ユキの心の中に家族として接してくれたマカロンの媒体のこれからを見届けたくなる…歯がゆい気持ちになる…この気持ちは一体、何なのだろう。





 ………





 放課後になり、雪斗はユキに言われるがまま特別棟にある空き教室に入る。ここは主に吹奏楽部のパート練習で使われることが多く、実質的には吹奏楽部の部室の1つと言ってもいい。ユキはいつもここで雪斗と入れ替わっており、マルチメディア部の部室も近いという点でも、彼女はこの空き教室を気に入っている。誰も来ない事を確認した雪斗は、ブレイブレットにブレイブスプーンをかざす。

「ユキ…一昨日からぼーっとしてるが、どうしたんだ?いつものお前らしくもない…」

 雪斗の姿は瞬く間にユキの姿に変わり、意識も雪斗からユキへ入れ替わる。

「別に…雪斗に…僕の気持ちなんて理解できるワケないじゃん…」

 いつもは雪斗の言動にギャンギャン反論するユキが、そっけない反論をするので、雪斗もどことなく調子が狂う。理由は大体想像がつくが、言ったら言ったでユキは激怒するので、雪斗には確認しづらい状況である。



「バキバキバキ…ガシャーーーーーーーーーーン!!!」



 空き教室の静寂を破るかのように、突然教室のドアがなぎ倒され、水色のゼリー状の物体がまるでスライムのような動きをしながらユキのいる空き教室に入り込む。

「か、カオスイーツ!?」

 ユキは咄嗟にブレイブスプーンを構えようとするが、ゼリー状の物体は触手のようにうねりながらユキの両腕と両脚を拘束し、その拍子にユキはブレイブスプーンを落としてしまう。

「うぐっ…」

 ゼリー状の物体を生成した相手の姿が見えない…恐らく、これはダークミルフィーユが生成したカオスイーツだと、ユキは推測する。



「うひゃっ!!!」

 ゼリーのカオスイーツは、ユキの動きを封じたまま頭上に持ち上げ、さらに別の触手を6本生やし、1本をユキの腰に、2本を両肘、2本を両太ももにそれぞれ巻き付ける。瞬く間にカオスイーツは頭上でユキの全身をまるでアルファベットの「N」の字を斜めにしたかのように拘束し、両脚に至ってはM字開脚に固められ、めくれ上がったスカートからは水色のチェック柄のショーツが顔を出す。

「や、やだっ…」

 最後の一本はセーラー服の襟ぐりに潜り込み、ユキの上半身を舐めまわすかのように徘徊する。まるでナメクジが身体を這うような感覚に、ユキは悶絶する。

「ユキ、今すぐ意識を…」

「わかってるけど…ぴゃうっ!!!」

 雪斗と意識を入れ替えようとしても、上半身を這う触手が意識の入れ替えを妨害する。



 あろうことか、触手はユキのブラの中に潜り込み、ユキは突然こそばゆい感覚を覚える。

「ぴえっ…」

 触手がブラの仲を這いずり回り始めたと同時に、制服のリボンタイがはじけ飛び、セーラー服の開きを止める黄色いボタンとボタンが徐々に隙間を広げていく…

「こ、このままだとユキは…」

 以前ひどい目に遭った事から、雪斗は意識の中でユキ自身の辱めを覚悟した。そんな雪斗とユキの事を嘲笑うかのように、ダークミルフィーユの笑い声が空き教室に響き渡る。



「ハーッハッハッハ!!!!!ソルベに変身できないお前など、ただの中学生!このまま絶望に陥れるまで!!!」



 ダークミルフィーユの叫びと同時に、ユキのセーラー服の第1ボタンが弾け飛び、今度は水色のチェック柄に白い綿レースがあしらわれたブラが晒しものとなってしまった。

「きゃうんっ!!!」



「私…元々、ソルベが大っ嫌いなのよ!私の事を散々おちょくって…だから、真っ先に始末する事にした!!!ソルベの正体であるユキ…いいえ、媒体である氷見雪斗もろともね!!!!!」



 その言葉に、自身の身の危険を感じた雪斗は、ダークミルフィーユに気づかれぬよう、意識を左腕に集中させ始めた。







 ほぼ同時刻、調理室では高等部の実技試験が行われていた。高等部にも調理室はあるが、実技試験で使用するはずだったクッキングヒーターが故障で使えず、急遽放課後の中等部の調理室を使うこととなったのである。そこには、何故か女子高生の姿となっている勇者シュトーレンも混ざっている。

「トイレに行ったにしては、遅いわね…十津川くん…」

 今回の実技試験で使うジャガイモを切りながら、シュトーレンはそう呟く。高等部1年C組の十津川新とつかわしんは、テスト期間中は交通事故で入院しており、テストそのものを受ける事ができなかった。そのため首藤まりあこと、勇者シュトーレン達通信課程の生徒と共に実技試験を受ける事になったのだった。

『カオスイーツの気配がしてるけど…まさか、十津川くんがカオスイーツにされたなんてないわよね?』

 悪い予感が女勇者の脳裏をよぎる。しかし、衛生面の問題で調理実習中のアクセサリー着用は不可…したがって、今のシュトーレンには「ブレイブディメンション」を発動できる状況ではない。



「♪~」



 突然アルトフルートの音色がし始めた途端、勇者の周囲の時間が止められ、勇者は試験会場の調理室から飛び出した。
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