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勇者クラフティ編
第20話「泣いた鬼メイド!主は灼熱の炎の中へ…」①
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ティラミスが気がついた頃には、姿は汀良瑞希の姿で、彼女は狭いワンルームの和室に敷かれた布団に寝かせられていた。本棚には英語の参考書の数々に、山積みの新聞…テーブルにはノートパソコン…キッチンは恐らく今朝の朝食を食べ終わってすぐに出勤したのがわかるほど、散らかっている。
「気が付いた?私の家まで運ぼうと思ったけど、ウチのクソ姉貴がうるさくって…まぁ、家主はすぐ戻ってくるけど…」
生徒会長が話す「家主」…部屋の状況、そして自分の事を知っている者で思い当たるのは1人しかない…ティラミスの脳裏にはあてはまる人物がハッキリと浮かぶ。
…ムッシュ・エクレールだ。
「彼も…あなたも…お人よしですね…敵である私を助けるなんて…」
ティラミスはそう言うが、少しばかり安心したようだ。
「オイオイ…今は敵同士じゃないでしょ?今のあなたはケガ人なの!直接ではないけど、私にはあなたをケガさせた責任がある!」
いつもはひょうきんな顔をする玉菜は、ティラミスに向かって真面目な表情になる。
「ていうか…よく全治5日程度で済んだわよ…メガネに関しては残念だけど、作り直すしかないわね…まぁ…お金は私のお小遣いから出すけど。」
「そうですか…まぁ、元々伊達でしたし…それに…」
ティラミスが何かを言い掛けようとした時、部屋のドアが開き、そこから家主が入って来る。
「やっと起きたか…ティラミス…」
そんな彼の表情は、どことなく深刻だ。
下妻先生はティラミスの枕もとに座り、彼女にある古い新聞記事のプリントアウトした用紙を見せる。現在の瀬戌市がかつて瀬戌町、辺利井村、苔山村、桃ノ木村、胡桃野村…と、1つの町と4つの村に分かれていた頃の新聞記事…
「鬼胡桃の豪邸、全焼。生存者絶望的」
「貴様の「汀良瑞希」としての住所は「瀬戌市くるみの町大字鬼胡桃21-1」…だったな?」
「えぇ…確かに、その住所で間違いありません。」
新聞記事に載せられた鬼胡桃の豪邸…火が完全に消し止められた後の写真だが、ひどく焼けた西幡豆家の屋敷の姿が、当時の状況を物語る…
「この写真を見て、思い浮かぶ事はあるか?」
下妻先生の言葉に、ティラミスの脳裏にふと浮かぶ、あの人物の姿…
「みづき…逃げなさい!みづきっ!!!!!」
灼熱の炎の中から響き渡る、主の声…今でもこだまする…
「その顔は…やはりそうなんだな。最近、貴様が私がカオスイーツにされる直前に取った行動と似た行動をしているのが気になってな…それで、勝手ながら貴様の媒体である「寺泊みづき」の過去を調べさせてもらった。」
下妻先生の言葉に、ティラミスの背筋がぞっとする。
「カオスイーツに…される…?わ、私はただベイクという男のやり方や、クグロフが気に入らないだけで…」
「幹部同士の諍いであっても、カオスにとっては「わざと負ける」という裏切り行為と判断されるのは、貴様も十分知っているはずだ!それに、媒体の過去を思い出すという事は…いずれは貴様も…」
ここ最近の自分の行動で、思い当たる節はいくつもある…クリームパフに変身した玉菜や、魔界のマジパティの目の前でわざとクグロフを負けさせることもやった事だってある。ティラミスは全身を震わせながら、下妻先生に質問をする。
「それなら…カオスイーツにされたあとは…どうなるんですか?」
「勿論、マジパティに浄化される…カオスイーツだからな。媒体に肉体が存在するならば、元の肉体に戻るだけ…私はスイーツ界の住人で、魔術師…だからこの姿のまま、カオスイーツから戻れた。」
その言葉に、ティラミスは言葉を失った。ティラミスの媒体には肉体が存在していない…それは、つまり…
「じゃあ、カオスイーツになったら…汀良さんは…消えちゃうって…事?」
玉菜の言葉に、下妻先生が黙って頷く。ティラミスにとっては受け入れたくない現実…
「イヤよ…汀良さんがカオスイーツにされるなんて…汀良さん、自分がやりたいことやってるだけでしょ?」
マジパティである人物から放たれた言葉に、ティラミスは思考回路が停止するような感覚を覚えた。
「それでも…カオスにとっては「自分を裏切った者」として裁かれる…「ブラックビターの幹部」ならではの宿命だ。」
「そう言われたって…マジパティとして浄化しなくちゃいけないって言われたって…私はカオスイーツになった汀良さんとなんて…」
その言葉に、下妻先生はため息をつく。
「玉菜…それは、家族をカオスイーツにされた経験のある一悟達に言える言葉か?」
ティラミスが思い出すだけでも、ブラックビターはこれまでにミルフィーユ達の身内を何人もカオスイーツにしてきた。雪斗の弟の冷斗、そして母の冷華…みるくの兄の我夢…一悟の姉の一華に、いとこの涼也…玉菜に至っては、パリでの活動を含めると、ミルフィーユ達よりも浄化してきたカオスイーツは多い。しかし、身内がカオスイーツにされたことが一度もない。
「勇者様だって…アントーニオ・パネットーネがカオスイーツにされた時…どんな複雑な気持ちでいらしたか…」
いや…なぜ、勇者様の話題を出してきたし…というツッコミが出てきそうではあるが、下妻先生は現場を見ていないので、アントーニオの時の件は詳しくは知らない。
「それでも…私は、カオスイーツになった汀良さんと戦いたくない…やっと汀良さんと友達になれると確信した矢先に、こんな事…知りたくなかった!!!!!」
玉菜はそう叫ぶなり、荷物を持ってアパートを飛び出してしまった。
「気が付いた?私の家まで運ぼうと思ったけど、ウチのクソ姉貴がうるさくって…まぁ、家主はすぐ戻ってくるけど…」
生徒会長が話す「家主」…部屋の状況、そして自分の事を知っている者で思い当たるのは1人しかない…ティラミスの脳裏にはあてはまる人物がハッキリと浮かぶ。
…ムッシュ・エクレールだ。
「彼も…あなたも…お人よしですね…敵である私を助けるなんて…」
ティラミスはそう言うが、少しばかり安心したようだ。
「オイオイ…今は敵同士じゃないでしょ?今のあなたはケガ人なの!直接ではないけど、私にはあなたをケガさせた責任がある!」
いつもはひょうきんな顔をする玉菜は、ティラミスに向かって真面目な表情になる。
「ていうか…よく全治5日程度で済んだわよ…メガネに関しては残念だけど、作り直すしかないわね…まぁ…お金は私のお小遣いから出すけど。」
「そうですか…まぁ、元々伊達でしたし…それに…」
ティラミスが何かを言い掛けようとした時、部屋のドアが開き、そこから家主が入って来る。
「やっと起きたか…ティラミス…」
そんな彼の表情は、どことなく深刻だ。
下妻先生はティラミスの枕もとに座り、彼女にある古い新聞記事のプリントアウトした用紙を見せる。現在の瀬戌市がかつて瀬戌町、辺利井村、苔山村、桃ノ木村、胡桃野村…と、1つの町と4つの村に分かれていた頃の新聞記事…
「鬼胡桃の豪邸、全焼。生存者絶望的」
「貴様の「汀良瑞希」としての住所は「瀬戌市くるみの町大字鬼胡桃21-1」…だったな?」
「えぇ…確かに、その住所で間違いありません。」
新聞記事に載せられた鬼胡桃の豪邸…火が完全に消し止められた後の写真だが、ひどく焼けた西幡豆家の屋敷の姿が、当時の状況を物語る…
「この写真を見て、思い浮かぶ事はあるか?」
下妻先生の言葉に、ティラミスの脳裏にふと浮かぶ、あの人物の姿…
「みづき…逃げなさい!みづきっ!!!!!」
灼熱の炎の中から響き渡る、主の声…今でもこだまする…
「その顔は…やはりそうなんだな。最近、貴様が私がカオスイーツにされる直前に取った行動と似た行動をしているのが気になってな…それで、勝手ながら貴様の媒体である「寺泊みづき」の過去を調べさせてもらった。」
下妻先生の言葉に、ティラミスの背筋がぞっとする。
「カオスイーツに…される…?わ、私はただベイクという男のやり方や、クグロフが気に入らないだけで…」
「幹部同士の諍いであっても、カオスにとっては「わざと負ける」という裏切り行為と判断されるのは、貴様も十分知っているはずだ!それに、媒体の過去を思い出すという事は…いずれは貴様も…」
ここ最近の自分の行動で、思い当たる節はいくつもある…クリームパフに変身した玉菜や、魔界のマジパティの目の前でわざとクグロフを負けさせることもやった事だってある。ティラミスは全身を震わせながら、下妻先生に質問をする。
「それなら…カオスイーツにされたあとは…どうなるんですか?」
「勿論、マジパティに浄化される…カオスイーツだからな。媒体に肉体が存在するならば、元の肉体に戻るだけ…私はスイーツ界の住人で、魔術師…だからこの姿のまま、カオスイーツから戻れた。」
その言葉に、ティラミスは言葉を失った。ティラミスの媒体には肉体が存在していない…それは、つまり…
「じゃあ、カオスイーツになったら…汀良さんは…消えちゃうって…事?」
玉菜の言葉に、下妻先生が黙って頷く。ティラミスにとっては受け入れたくない現実…
「イヤよ…汀良さんがカオスイーツにされるなんて…汀良さん、自分がやりたいことやってるだけでしょ?」
マジパティである人物から放たれた言葉に、ティラミスは思考回路が停止するような感覚を覚えた。
「それでも…カオスにとっては「自分を裏切った者」として裁かれる…「ブラックビターの幹部」ならではの宿命だ。」
「そう言われたって…マジパティとして浄化しなくちゃいけないって言われたって…私はカオスイーツになった汀良さんとなんて…」
その言葉に、下妻先生はため息をつく。
「玉菜…それは、家族をカオスイーツにされた経験のある一悟達に言える言葉か?」
ティラミスが思い出すだけでも、ブラックビターはこれまでにミルフィーユ達の身内を何人もカオスイーツにしてきた。雪斗の弟の冷斗、そして母の冷華…みるくの兄の我夢…一悟の姉の一華に、いとこの涼也…玉菜に至っては、パリでの活動を含めると、ミルフィーユ達よりも浄化してきたカオスイーツは多い。しかし、身内がカオスイーツにされたことが一度もない。
「勇者様だって…アントーニオ・パネットーネがカオスイーツにされた時…どんな複雑な気持ちでいらしたか…」
いや…なぜ、勇者様の話題を出してきたし…というツッコミが出てきそうではあるが、下妻先生は現場を見ていないので、アントーニオの時の件は詳しくは知らない。
「それでも…私は、カオスイーツになった汀良さんと戦いたくない…やっと汀良さんと友達になれると確信した矢先に、こんな事…知りたくなかった!!!!!」
玉菜はそう叫ぶなり、荷物を持ってアパートを飛び出してしまった。
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