激甘革命!マジパティ(分割版)

夜ノ森あかり

文字の大きさ
上 下
56 / 248
勇者クラフティ編

第17話「勇者VSトーニ!マジパティと勇者の奇跡」①

しおりを挟む
 アントーニオが勇者を乗せたライオンに向けて放った銃弾は、ライオンの後脚に3発、そして勇者の背中に命中し、ライオンが彼女を乗せたままその場に崩れ落ちそうになる。



「ドサッ…」



 そこへ1人の幼女がライオンを受け止め、1人の青年がシュトーレンを受け止めた。アンニンとガレットだ。

「どやっ!」

「よかった…まだ息がある…」

 娘の安否を確認したガレットは咄嗟に、持っていたアーミーナイフを、駆けつけてくるアントーニオの足元目掛けて投げつける。ガレットの目測通り、ナイフはアントーニオの足元に直撃した。



「ドスッ!!!」



「娘になんてことをしくれたんだっ!!!!!」



 いつもはひょうきんなガレットが、初めて娘の前で声を荒げた。

「大勇者様、治療タイム…」

 大勇者は娘を幼い姿の僧侶に預けると、背中に持っていた娘の大剣の鞘を抜き、黄金のオーラを纏いつつ、娘とライオンを撃った相手に飛び掛かる。その間に、幼い姿の僧侶様は勇者とライオンの治療の準備を始める。



「父親である俺の許可なく、娘を軽々しく「セーラ」と呼んだり、娘の部屋に盗聴器を仕掛けて付きまとったり…お前の娘に対する無礼の数々はこれまで何度も片目をつぶってきた…その結果、お前は娘を誘拐し、娘は今…生死を彷徨う状況…お前は今まで俺の娘ではなく、娘と一緒にいるお前自身しか見ていなかったってことだっ!!!!!」

「違う…僕は…ひぃっ…」

「どうだぁ…お前が我が物にしようとした女の大剣…美しいだろ?輝かしいだろ?自慢の娘の大剣を持って、お前に向ける親の気持ち…考えたこともなかっただろ?娘が望むなら、俺は今…この大剣でお前を斬りつけてもいいんだぞ?」

 シュトーレンの大剣を構えるガレットの姿は、まさしく「今、まさに娘のかたきを討たんばかり」の父親の姿ともとれる。

「そ、それじゃあ…キョーコが僕と彼女の事を反対したのも…」

「「杏子きょうこちゃん」は昔から娘の幸せを望んでいた!それは俺も同じっ!!!なのに、お前は娘の幸せをブチ壊しにした…どんなに金持ちでも…どんなにエリートでも…お前に娘を任せる資格はねぇっ!!!!!」





「元々お前は俺の娘にとって、恋愛対象じゃなかったんだよ!!!!!」



 ガレットの言葉に、アントーニオは自分がシュトーレンにとっては、「ただの友達」どころか、「ストーカー」としてしか見られていなかったことに対して、表情が青ざめ、ガレットから少しずつ下がるが…



「ドンッ…」



 絶望するアントーニオの背後には、見知らぬ鎧の男・ベイクが立っている。

「嫁入り前の娘に対する情熱…ヘドが出るほどウザったい…だが、貴様の前で失恋男の本性を見せびらかすいい機会だ。カルマン・ガレット・ブラーヴ・シュバリエ!!!これが、お前の娘が振った男の成れの果てだっ!!!!!」

 ベイクの叫び声と共に、彼の手から黒い光が放たれ、恋に破れたイタリア人の捜査官は黒い光を浴びる。



「うわああああああああああああああああっ!!!!!」



 黒い光を浴びたアントーニオは、みるみるうちに巨大なスポンジケーキ状のカオスイーツへと姿を変える…

「さぁ、パンドーロカオスイーツ!!!そこの忌々しい大勇者と僧侶を、マジパティ共々跡形もなく踏みつぶすがいいっ!!!!!」

 ベイクの言葉に呼応するかのように、カオスイーツとなったアントーニオは、ガレットとアンニンに飛び掛かる。







「いっくん…目を開けてっ!!!!!」

一悟いちご…オイ、一悟っ!!!」

 瓦礫をどかし、一悟を引きずり出すものの、一悟は目を覚まさない。そこへキョーコせかんどが合流し、一悟の様子を診る。

「一悟は一時的な意識不明の状態になっているだけで、生きてます。」

仁賀保にかほさん、またまた御冗談を…」

「冗談ではありませんよ?瓦礫に埋もれるまで、ミルフィーユの姿だったからこそ、彼は助かったんです。千葉一悟のままだったら、助からなかったかと…」

 キョーコせかんどの説明を聞いたみるく達は、驚きを隠せないが、雪斗ゆきとは少し息を呑みつつ、キョーコせかんどの言葉を理解しようとする。

「そ、それじゃあ…いちごんは、気を失っているだけって事…でいいのか?」

 雪斗がそう言うと、みるくは一悟の心臓に手を当てる。そこには、かすかに一悟の心臓が脈打つ鼓動がする。

「ホントだ…生きてる…」

「よかったね…幼な妻ちゃん?」

 玉菜たまなの言葉に、みるくは顔全体を真っ赤に染め上げ、今でも湯気がでそうな勢いで頭の中がフットーする。



「あとは…彼次第です…」







 一悟は気が付くと、真っ白な空間にいた。

「そういや、俺…父ちゃんを落ちてくる天井から助けようとして…えっ…?俺…死んじゃったァ!?」

 そう思った瞬間、一悟の表情が一気に青ざめる。一悟は大慌てで周辺を見回すが、そこには大きな川とこの世では見られないようなお花畑は見つからない。

「お、お…俺…やりてぇこと、いっぱいあんのに?今年も…空手で全国…行くって…そんで、みるくに…」



「いいえ、あなたは死んだのではありませんよ?」



 どこかで聞いた事のある声がして、辺りを見回すと、そこにはあんず色のロングヘアーに、青い瞳に、勇者シュトーレンとよく似た雰囲気の女性・セレーネ・ノエル・シュヴァリエが立っている。

「こうやってお話しするのは初めてですね?ミルフィーユ…いいえ、千葉一悟さん?」

「あ、あ…あなたは…ゆ…勇者様…の…」

「いつもセーラがお世話になってます。」

 セレーネが微笑みながらそう言うと、一悟はさらに慌てふためく。

「い、い、いいえっ…寧ろ、お世話になってるの…俺…ですしっ!!!」

 あわあわと挙動不審になる男子中学生の姿に、セレーネは思わずクスっと笑う。そして、突然キリっとした目つきになる。その面影は、まさに娘である勇者・シュトーレンと瓜二つだ。



「突然ですが、あなたに…頼みがあります。マジパティとして、セーラを…勇者シュトーレンを、あのストーカーから守ってほしいのです。」



 その頼みに対して、一悟の心には既に答えが出ている。

「どうやら、答えは既に決まってたみたいですね?」

 それは言うまでもなく、勇者・シュトーレンにとって、誰が一番必要である存在なのか…それが判っているからだ。一悟は黙って頷く。



「頼みましたよ…娘の力を持つマジパティ達…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...