激甘革命!マジパティ(分割版)

夜ノ森あかり

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誕生編

第1話「マジパティ爆誕!その名はミルフィーユ」②

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 夕刻になり、練習を終えて木苺ヶ丘きいちごがおか極真きょくしん会館を出たばかりの一悟いちごは、ぐんと背伸びをした。

「やっぱり、空手はプロから教わるに限るぜーっ!!!」

 サン・ジェルマン学園では中等部のみ部活動が強制なのだが、一悟は部活に入っていない。というのもサン・ジェルマン学園の空手部が高等部にのみ存在している上に、一悟自身が極真空手以外にやりたいものがなく、小学生時代から通っている極真会館の面々を一悟が気に入っているからである。その部活動に消極的な姿勢が、クラスメイトで、生徒会のメンバーである氷見雪斗ひみゆきとに目を付けられる一因なのであるが。



「ぁぁぁぁあああああああああ」



 一悟が自宅へ帰ろうとするや否や、一悟の頭上から声がした。一悟がふと空を見上げると、空から白髪でツインテールの少女が降ってきた。少女は一悟が避けるスキを与えないほど急降下し、一悟の顔面にぶつかった。

「んがっ…」

 一悟が辺りを見渡すと、そこには小さな白い無傷のマグカップが落ちているだけだった。

「何でこんなトコにマグカップが…てゆーか、何で割れなかったんだ?」



「あたた…」



 突然、マグカップの方から声がした。一悟はそっとのぞき込むと、マグカップの中から白髪でツインテールの少女が顔を出した。

「女の…子?」

「ぶ、ぶつかってごめんなひゃい…勇者さま捜しに人間界に降りて…」

 ご丁寧にも少女の鼻のあたりには、バツ印の絆創膏が貼られている。

「勇者…さま?」



 その時だった。一悟は自身の背後から、邪悪な気配を感じ、咄嗟に振り向くと、そこには藍色のシルクハットを被った、やや緑がかった白髪に両耳を尖らせた紳士が立っていた。

「困ったちゃん精霊だな…ラテ!勝手に勇者さまを捜しに人間界にやってくるなど…」

「ムッシュ…エクレール!!!」

 マグカップの中に入った少女は、「ラテ」と言った。そして、紳士の名は「ムッシュ・エクレール」。そんな2人を見て、一悟はどうすればよいのかわからなくなり始めるが、彼はムッシュ・エクレールの右手にこげ茶色のマグカップに入った小さな少年の姿を見つけた。

「一体…どういう事なんだ?」

「少年よ…その白いマグカップを私によこしたまえ。大人しく渡せば、危害は加えん。」

 ムッシュ・エクレールは、きょとんとした表情で首をかしげる一悟に向かってそう言うが、一悟は…

「そう言って、「ハイ、そうですか」で済むワケねーだろっ!!!潔く渡すかってんだ!!」

 この非現実的な状況が何なのかわからないながらも、ラテ達にとって危険な状況である事を感じ取った一悟は、そう言いながら走りだす。そんな一悟の言葉に憤慨したムッシュ・エクレールは、左手をたまたま居合わせた通行人に向け、黒いオーラを放った。



「少年よ…この私に歯向かった事を公開するがいい!!!出でよ、我が下僕・カオスイーツ!!!!!」



 黒いオーラを受けた通行人のサラリーマンは、断末魔だんまつまの叫びをあげるや否や、みるみるうちに姿を巨大なショートケーキの化け物へと変化を遂げた。

「な、なんじゃありゃーっ!!!!!」

「あれはカオスイーツです!!!人間の負の感情を引き出し、スイーツと合体させたモンスター…」

 ラテは一悟に説明するが、一悟は突然の非現実にイマイチ状況が飲み込めていない。ショートケーキカオスイーツは、ラテを抱えて逃げる一悟を追いかける。



「うわあああああああああああ!!!!!」



 そんな一悟の叫びに、こげ茶色のマグカップの中に居る少年は目を覚ました。

「…!?お、おっぱいデカい子、はっけーん!!!」

 少年はマグカップごとムッシュ・エクレールの手から飛び出した。彼の目の前に見えたのは、クリーム色とオレンジ色のワンピース姿のみるくだった。

「いっくん!!!どうしちゃったの?」

「逃げろ、みるく!!!」

 偶然通りかかった幼馴染おさななじみに向かって一悟はそう言うが、みるくは何が何だかわからず、幼馴染の背後の化け物を見るや否や、言葉を失うと同時に硬直してしまった。

「ちょうどいい!!!カオスイーツ、その少女を捕らえなさい!!」



「きゃああああああああああ!!!」



「みるく!!!!!」

 ムッシュ・エクレールの言葉に反応したショートケーキカオスイーツは、みるくを白いホイップクリーム状の触手で、いとも簡単に捕らえてしまった。

「ニャロー…ココア様の可愛いおっぱいちゃんに何てことしやがんだ!!!」

 今までムッシュ・エクレールに捕まっていた少年は「ココア」と言った。ココアの言葉に、ラテは少々機嫌が悪い。

「くらえ、必殺の追いカカオファッサーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 ココアはココアパウダーをショートケーキカオスイーツに振りかけようとするが、カオスイーツは身体から新たなホイップクリーム状の触手を伸ばし、ココアを弾き飛ばした。

「んがっ!!!」

 ココアはマグカップごと地面にたたきつけられ、それと同時に気を失ってしまった。



 幼馴染が捕まり、その幼馴染を助けようとした小さな少年の姿を見て、一悟の心の中に何かが芽生え始める。



「みるくを縛り上げて…こんな小さい子にまで…許さねぇ…ぜってー許さねぇっ!!!!!」



 一悟の叫びに呼応するかのように、桃色の光が放たれ、彼の前にピンク色のハート型の宝石と羽根の形をした飾りのついた銀色のティースプーンが現れた。

「こ…これは…」

「それは、ブレイブスプーンですっ!!!」

 突然現れた銀色のティースプーンを見るや否や、ラテは一悟に向かってそう告げた。

「カオスイーツを浄化させられるのは、今…あなたしかいないんですっ!!!今すぐそのスプーンを空高く掲げて下さい!」

「な、何だかよくわかんねぇけど…」

 ラテの言葉に、一悟は戸惑いつつも銀色のティースプーンを空高く掲げた。



「マジパティ・スイート・トランスフォーム!!!」
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