2 / 248
誕生編
第1話「マジパティ爆誕!その名はミルフィーユ」②
しおりを挟む
夕刻になり、練習を終えて木苺ヶ丘の極真会館を出たばかりの一悟は、ぐんと背伸びをした。
「やっぱり、空手はプロから教わるに限るぜーっ!!!」
サン・ジェルマン学園では中等部のみ部活動が強制なのだが、一悟は部活に入っていない。というのもサン・ジェルマン学園の空手部が高等部にのみ存在している上に、一悟自身が極真空手以外にやりたいものがなく、小学生時代から通っている極真会館の面々を一悟が気に入っているからである。その部活動に消極的な姿勢が、クラスメイトで、生徒会のメンバーである氷見雪斗に目を付けられる一因なのであるが。
「ぁぁぁぁあああああああああ」
一悟が自宅へ帰ろうとするや否や、一悟の頭上から声がした。一悟がふと空を見上げると、空から白髪でツインテールの少女が降ってきた。少女は一悟が避けるスキを与えないほど急降下し、一悟の顔面にぶつかった。
「んがっ…」
一悟が辺りを見渡すと、そこには小さな白い無傷のマグカップが落ちているだけだった。
「何でこんなトコにマグカップが…てゆーか、何で割れなかったんだ?」
「あたた…」
突然、マグカップの方から声がした。一悟はそっとのぞき込むと、マグカップの中から白髪でツインテールの少女が顔を出した。
「女の…子?」
「ぶ、ぶつかってごめんなひゃい…勇者さま捜しに人間界に降りて…」
ご丁寧にも少女の鼻のあたりには、バツ印の絆創膏が貼られている。
「勇者…さま?」
その時だった。一悟は自身の背後から、邪悪な気配を感じ、咄嗟に振り向くと、そこには藍色のシルクハットを被った、やや緑がかった白髪に両耳を尖らせた紳士が立っていた。
「困ったちゃん精霊だな…ラテ!勝手に勇者さまを捜しに人間界にやってくるなど…」
「ムッシュ…エクレール!!!」
マグカップの中に入った少女は、「ラテ」と言った。そして、紳士の名は「ムッシュ・エクレール」。そんな2人を見て、一悟はどうすればよいのかわからなくなり始めるが、彼はムッシュ・エクレールの右手にこげ茶色のマグカップに入った小さな少年の姿を見つけた。
「一体…どういう事なんだ?」
「少年よ…その白いマグカップを私によこしたまえ。大人しく渡せば、危害は加えん。」
ムッシュ・エクレールは、きょとんとした表情で首をかしげる一悟に向かってそう言うが、一悟は…
「そう言って、「ハイ、そうですか」で済むワケねーだろっ!!!潔く渡すかってんだ!!」
この非現実的な状況が何なのかわからないながらも、ラテ達にとって危険な状況である事を感じ取った一悟は、そう言いながら走りだす。そんな一悟の言葉に憤慨したムッシュ・エクレールは、左手をたまたま居合わせた通行人に向け、黒いオーラを放った。
「少年よ…この私に歯向かった事を公開するがいい!!!出でよ、我が下僕・カオスイーツ!!!!!」
黒いオーラを受けた通行人のサラリーマンは、断末魔の叫びをあげるや否や、みるみるうちに姿を巨大なショートケーキの化け物へと変化を遂げた。
「な、なんじゃありゃーっ!!!!!」
「あれはカオスイーツです!!!人間の負の感情を引き出し、スイーツと合体させたモンスター…」
ラテは一悟に説明するが、一悟は突然の非現実にイマイチ状況が飲み込めていない。ショートケーキカオスイーツは、ラテを抱えて逃げる一悟を追いかける。
「うわあああああああああああ!!!!!」
そんな一悟の叫びに、こげ茶色のマグカップの中に居る少年は目を覚ました。
「…!?お、おっぱいデカい子、はっけーん!!!」
少年はマグカップごとムッシュ・エクレールの手から飛び出した。彼の目の前に見えたのは、クリーム色とオレンジ色のワンピース姿のみるくだった。
「いっくん!!!どうしちゃったの?」
「逃げろ、みるく!!!」
偶然通りかかった幼馴染に向かって一悟はそう言うが、みるくは何が何だかわからず、幼馴染の背後の化け物を見るや否や、言葉を失うと同時に硬直してしまった。
「ちょうどいい!!!カオスイーツ、その少女を捕らえなさい!!」
「きゃああああああああああ!!!」
「みるく!!!!!」
ムッシュ・エクレールの言葉に反応したショートケーキカオスイーツは、みるくを白いホイップクリーム状の触手で、いとも簡単に捕らえてしまった。
「ニャロー…ココア様の可愛いおっぱいちゃんに何てことしやがんだ!!!」
今までムッシュ・エクレールに捕まっていた少年は「ココア」と言った。ココアの言葉に、ラテは少々機嫌が悪い。
「くらえ、必殺の追いカカオファッサーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ココアはココアパウダーをショートケーキカオスイーツに振りかけようとするが、カオスイーツは身体から新たなホイップクリーム状の触手を伸ばし、ココアを弾き飛ばした。
「んがっ!!!」
ココアはマグカップごと地面にたたきつけられ、それと同時に気を失ってしまった。
幼馴染が捕まり、その幼馴染を助けようとした小さな少年の姿を見て、一悟の心の中に何かが芽生え始める。
「みるくを縛り上げて…こんな小さい子にまで…許さねぇ…ぜってー許さねぇっ!!!!!」
一悟の叫びに呼応するかのように、桃色の光が放たれ、彼の前にピンク色のハート型の宝石と羽根の形をした飾りのついた銀色のティースプーンが現れた。
「こ…これは…」
「それは、ブレイブスプーンですっ!!!」
突然現れた銀色のティースプーンを見るや否や、ラテは一悟に向かってそう告げた。
「カオスイーツを浄化させられるのは、今…あなたしかいないんですっ!!!今すぐそのスプーンを空高く掲げて下さい!」
「な、何だかよくわかんねぇけど…」
ラテの言葉に、一悟は戸惑いつつも銀色のティースプーンを空高く掲げた。
「マジパティ・スイート・トランスフォーム!!!」
「やっぱり、空手はプロから教わるに限るぜーっ!!!」
サン・ジェルマン学園では中等部のみ部活動が強制なのだが、一悟は部活に入っていない。というのもサン・ジェルマン学園の空手部が高等部にのみ存在している上に、一悟自身が極真空手以外にやりたいものがなく、小学生時代から通っている極真会館の面々を一悟が気に入っているからである。その部活動に消極的な姿勢が、クラスメイトで、生徒会のメンバーである氷見雪斗に目を付けられる一因なのであるが。
「ぁぁぁぁあああああああああ」
一悟が自宅へ帰ろうとするや否や、一悟の頭上から声がした。一悟がふと空を見上げると、空から白髪でツインテールの少女が降ってきた。少女は一悟が避けるスキを与えないほど急降下し、一悟の顔面にぶつかった。
「んがっ…」
一悟が辺りを見渡すと、そこには小さな白い無傷のマグカップが落ちているだけだった。
「何でこんなトコにマグカップが…てゆーか、何で割れなかったんだ?」
「あたた…」
突然、マグカップの方から声がした。一悟はそっとのぞき込むと、マグカップの中から白髪でツインテールの少女が顔を出した。
「女の…子?」
「ぶ、ぶつかってごめんなひゃい…勇者さま捜しに人間界に降りて…」
ご丁寧にも少女の鼻のあたりには、バツ印の絆創膏が貼られている。
「勇者…さま?」
その時だった。一悟は自身の背後から、邪悪な気配を感じ、咄嗟に振り向くと、そこには藍色のシルクハットを被った、やや緑がかった白髪に両耳を尖らせた紳士が立っていた。
「困ったちゃん精霊だな…ラテ!勝手に勇者さまを捜しに人間界にやってくるなど…」
「ムッシュ…エクレール!!!」
マグカップの中に入った少女は、「ラテ」と言った。そして、紳士の名は「ムッシュ・エクレール」。そんな2人を見て、一悟はどうすればよいのかわからなくなり始めるが、彼はムッシュ・エクレールの右手にこげ茶色のマグカップに入った小さな少年の姿を見つけた。
「一体…どういう事なんだ?」
「少年よ…その白いマグカップを私によこしたまえ。大人しく渡せば、危害は加えん。」
ムッシュ・エクレールは、きょとんとした表情で首をかしげる一悟に向かってそう言うが、一悟は…
「そう言って、「ハイ、そうですか」で済むワケねーだろっ!!!潔く渡すかってんだ!!」
この非現実的な状況が何なのかわからないながらも、ラテ達にとって危険な状況である事を感じ取った一悟は、そう言いながら走りだす。そんな一悟の言葉に憤慨したムッシュ・エクレールは、左手をたまたま居合わせた通行人に向け、黒いオーラを放った。
「少年よ…この私に歯向かった事を公開するがいい!!!出でよ、我が下僕・カオスイーツ!!!!!」
黒いオーラを受けた通行人のサラリーマンは、断末魔の叫びをあげるや否や、みるみるうちに姿を巨大なショートケーキの化け物へと変化を遂げた。
「な、なんじゃありゃーっ!!!!!」
「あれはカオスイーツです!!!人間の負の感情を引き出し、スイーツと合体させたモンスター…」
ラテは一悟に説明するが、一悟は突然の非現実にイマイチ状況が飲み込めていない。ショートケーキカオスイーツは、ラテを抱えて逃げる一悟を追いかける。
「うわあああああああああああ!!!!!」
そんな一悟の叫びに、こげ茶色のマグカップの中に居る少年は目を覚ました。
「…!?お、おっぱいデカい子、はっけーん!!!」
少年はマグカップごとムッシュ・エクレールの手から飛び出した。彼の目の前に見えたのは、クリーム色とオレンジ色のワンピース姿のみるくだった。
「いっくん!!!どうしちゃったの?」
「逃げろ、みるく!!!」
偶然通りかかった幼馴染に向かって一悟はそう言うが、みるくは何が何だかわからず、幼馴染の背後の化け物を見るや否や、言葉を失うと同時に硬直してしまった。
「ちょうどいい!!!カオスイーツ、その少女を捕らえなさい!!」
「きゃああああああああああ!!!」
「みるく!!!!!」
ムッシュ・エクレールの言葉に反応したショートケーキカオスイーツは、みるくを白いホイップクリーム状の触手で、いとも簡単に捕らえてしまった。
「ニャロー…ココア様の可愛いおっぱいちゃんに何てことしやがんだ!!!」
今までムッシュ・エクレールに捕まっていた少年は「ココア」と言った。ココアの言葉に、ラテは少々機嫌が悪い。
「くらえ、必殺の追いカカオファッサーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ココアはココアパウダーをショートケーキカオスイーツに振りかけようとするが、カオスイーツは身体から新たなホイップクリーム状の触手を伸ばし、ココアを弾き飛ばした。
「んがっ!!!」
ココアはマグカップごと地面にたたきつけられ、それと同時に気を失ってしまった。
幼馴染が捕まり、その幼馴染を助けようとした小さな少年の姿を見て、一悟の心の中に何かが芽生え始める。
「みるくを縛り上げて…こんな小さい子にまで…許さねぇ…ぜってー許さねぇっ!!!!!」
一悟の叫びに呼応するかのように、桃色の光が放たれ、彼の前にピンク色のハート型の宝石と羽根の形をした飾りのついた銀色のティースプーンが現れた。
「こ…これは…」
「それは、ブレイブスプーンですっ!!!」
突然現れた銀色のティースプーンを見るや否や、ラテは一悟に向かってそう告げた。
「カオスイーツを浄化させられるのは、今…あなたしかいないんですっ!!!今すぐそのスプーンを空高く掲げて下さい!」
「な、何だかよくわかんねぇけど…」
ラテの言葉に、一悟は戸惑いつつも銀色のティースプーンを空高く掲げた。
「マジパティ・スイート・トランスフォーム!!!」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜
華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日
この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。
札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。
渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。
この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。
一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。
そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。
この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。
この作品はフィクションです。
実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる