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始まり
一話「心の支え」
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この世界は能力が溢れている。テレポートだとか読心術だとか飛行能力だとかそんな様々な能力が人々に一つだけ宿っているのだ。そして、能力というのは僕にも宿っているのだが……。
「おいおい、お前なんかが何でいるんだ?お前みたいな無能がよぉ?」
「そうだそうだ!」
「お前の能力はなんだったっけなぁ?……ああ、そうだったそうだった!お前の能力は三文字テレパシーだったな!」
「なんだよそれ!たった三文字程度で何が伝えられるってんだ!」
「しかも発動条件は触れることらしいぜ!」
「触れなきゃ発動できないとか喋った方が早いじゃねぇか!何の為にあるんだよ!」
そう、僕の能力は触れた生き物に三文字まで言葉を伝える能力。使い道なんて僕ですらわからない。本当に何でこんな能力が与えられたんだ?
「雑魚で無能なお前には生きている価値なんてねぇんだよ!」
「とっとと死ねよ!このゴミが!」
こんな風に罵倒され、虐められようが、僕はピンピンしていた。死にたいだとかそんなことはこれっぽっちも思わなかった。何故なら……
「貴方たち、何しているの?」
そんな甲高い声がその場に響き渡った。僕はこの声の主を知っている。
「な、何で……ここにいるんだ……?ここに……どうして……生徒会長の神子谷神奈がここにいるんだ……?」
「あら、いちゃ駄目かしら?」
その少女の圧に気圧され、ただ黙り込んでいた。
「それで、もう一度聞くけど何してるの?」
「ひぃっ……!すみませんでした~!」
そう言ってそいつらはその場から走り去った。
「それで、何でまたいじめられてるの?」
「しょうがないでしょ?僕は回りから見ればただの雑魚に変わりはないんだし。」
「れいれいはそれが悔しくないの?」
我が校最強とも呼ばれる神子谷神奈は僕のことをれいれいと呼ぶ。何故なら、僕らは恋人同士だから。何故、僕がこんなにも素晴らしい彼女と付き合うことができているのか全くわからない。
「悔しいよ……でも、これでいいんだ。僕が何もできないのは自分が一番わかってるから。何より、どれだけ傷つこうと僕には君がいるから。」
僕は神奈を心の拠り所にしている。彼女に依存してしまっている。ただ、彼女さえいれば自分がどれだけ傷つこうが気にしない。
「よくもそんなことを恥ずかしからずに言えるわね……。」
そう言って神奈は顔を赤くした。
「可愛い……。」
思わず僕はそう言ってしまっていた。
「か、かわっ……そ、そんなに誉めたって……別になにもでないわよ……?」
「本当に可愛いんだもん。」
「ひゃぁ……。」
能力には恵まれなかったけど、彼女にだけは恵まれているなぁ……と、そう思った。
その後、僕らは帰路を辿っていた。
「ねぇ、今日泊まってもいい?」
「いいけど……突然どうしたの?」
僕は独り暮らしなのでいつ誰が泊まろうとそこまで気にしない。それに神奈はよく家へ泊まっていくので着替えやら何やらが二、三日分は家にある。
「貴方と一緒にいたいって理由じゃ駄目かしら?」
僕の彼女かわいすぎるだろ……。
「ほら、もっとこっち寄ってよ。」
そう言って僕の腕が引っ張られ、肌と肌が密着する距離まで近付けられた。
「いや、ちょっ、流石に近すぎない?」
「恋人同士ならこれぐらいの距離がちょうどいいのよ。」
「そんなことないと思うけどなぁ……。」
そんなくだらない会話をしながら僕らは我が家へと歩を進めた。
家に着くと僕らは私服に着替えのんびり寛ぐ。
「ねぇれいれ~い、来週の日曜日デートしよ?」
神奈はソファに座る僕の隣に腰を下ろし、僕の頬をつつきながらそんなことを言う。可愛い。
「別にいいけど、どこ行くの?」
「遊園地とか?」
遊園地かぁ……良いなぁ……。
「いいじゃん。」
「なら、十時に入り口の前に集合ね?」
「わかった。」
「ふふっ、楽しみだなぁ……。」
幸せな日常。ずっとこれが続けばいいのに……。
「ねぇれいれ~い、何食べたい?」
暫く彼女とイチャイチャしていたわけだが、突然、神奈はそんな質問をしてきた。外を見ればもう既に真っ暗だった。
「そうだなぁ……ハンバーグ、かなぁ……。」
「わかった!めちゃくちゃ美味しいハンバーグ作ってあげるから楽しみにしててね。」
「うん!」
僕の彼女は、料理が上手い。というか、何に関しても人一倍上手くできる。本当に僕の彼女なのか疑いたくなる程、なんだってできる。なんで神奈は僕なんかと付き合っているんだ?素直に気になったので、僕は彼女に質問をした。
「どうして神奈は僕なんかと付き合っているの?」
「どうしてって……そんなの……」
そうして神奈は頬を赤らめながらもこういった。
「れいれいのことが……好きだからに決まってんじゃん……。」
ヤバい……僕の彼女マジで可愛い……。
「あーもうっ!何言わせてんのよ!真っ黒なハンバーグ食べたくなかったら、そういうこと言わせるのやめてよね!」
「じゃあ、愛してるよ、神奈。」
「はいはいわかったって!本当にハンバーグ焦がしちゃうから!」
そう言って神奈はそっぽを向いてしまった。そんな神奈もまた可愛かった。
それから暫くして、豪華な夕飯ができあがった。僕らは合掌し、二人揃って
「いただきます!」
そう言って食事を始めた。そして、間もなくして神奈が話しかけてきた。
「ねぇ、れいれい。」
「ん?何?」
「口開けて?」
僕は彼女の言葉の意図を汲み取り口を開ける。
「はい、あーん。」
口の中に入ってきたハンバーグをパクりと口に含む。口中に美味しさが広がる。
「どう?」
「すごく美味しいよ!」
「よかった!」
そう言って神奈は幸せそうに微笑んだ。こっちまで笑みがこぼれてくる。
「じゃあ、今度は僕が……。」
僕はフォークでハンバーグの切れ端を突き刺し神奈の口元へ持っていく。
「い、いや、私は……ちょっと……そういうキャラじゃないし……。」
今さらじゃないだろうか?
「ほらほら、口開けて。はい、あーん。」
「わわっ……むぐっ……。」
このままだと僕だけ得した気がするので、無理やり口に突っ込んだ。
「ロマンの欠片もないじゃない!」
ハンバーグを飲み込んだ神奈がそう言ってきた。
「なら、ちゃんと口を開けてくれれば良かったのに。」
そんな感じで僕らは食事をすすめる。
「ねえ、一緒にお風呂入らない?」
「え?」
夕食の後、神奈がそんなことを言ってきた。
「いや、待って!流石にそれは……!」
「別にいいじゃない?恋人同士ならこれ位するんじゃないの?」
「それどこ情報!?」
「小説。」
「多分、その小説が間違ってるよ!」
「それでも私は一緒に入りたいな。れいれいのマッスルボディ見てみたい。れいれい海とかプール行くときはラッシュガード来ちゃうし。」
「いや、それでも……。」
「なら、無理矢理連れていくしかないわね!」
次の瞬間、目にも留まらぬ速度で僕の腕は掴まれ、そのまま脱衣所へ連れていかれた。
「本当に一緒に入るの?」
僕は脱衣所で神奈に問いかける。
「全裸で言っても説得力ないけど?」
「脱がしたのは君だけどね!」
「そんな細かいことはどうだっていいじゃない。ほら、一緒に入りましょ。」
抵抗なんてできなかった。何故なら僕と彼女との間には圧倒的な力の差があるから。
気付けば僕は湯船に浸かっていた。神奈と向かい合って。
「流石に向かい合う必要ないんじゃない?」
「だって後ろ向いたられいれいの体見れないじゃん!」
そう言って彼女は僕の体をまじまじと見つめる。普段の彼女のキャラでは考えられない行動に僕は戸惑ってしまう。
「あんまり……ジロジロ見ないで……。」
「思った以上に良い身体してるね。」
「そ、そりゃどうも……。」
「これ程までに鍛え上げられた肉体、今の人間には早々いないでしょうね。」
「誰目線?」
「最強目線。」
「成る程、納得。」
何度も言うが神奈は強い。地元最強どころか恐らく、我が国最強と言っても良いレベルで。本当に僕には勿体ない彼女である。
「あ、そうだ!背中洗ってあげる!」
「別にいいって!」
僕は抵抗したが、無意味だった。
「は……恥ずかしいんだけど……。」
僕は後ろにいる神奈にそう言った。
「何を恥ずかしがる必要があるの?私たち付き合ってるんだし、いずれお互いの裸なんていくらでも見るようになるわ。」
「いや、それでも……。」
「耳赤くしちゃって……れいれいってば可愛い。」
「ひゃっ!?」
耳元に神奈の吐息がかかり、僕はビクッと体を振るわせた。
「ちょっとやめてよ!」
神奈の方を振り向き、僕はそう言った。その瞬間、僕の顔面に大量の水が掛かった。
「あばばばばばば!」
なんとか目を開くと神奈が片手にシャワーを持っているのが見えた。
「もう!背中流してるときに後ろ向かないでよ。」
そう言われるとなにも言い返せない。
その後は一応何事もなく風呂から出た。少し疲れた気もするが気のせいだろう。
「それじゃあ寝よっか。」
僕らは寝室へ向かう。そして、二人揃って同じベッドに横になる。神奈が僕の腕に抱きついてくる。
「なんだか、君のそういうところ可愛いよね。」
「ふぇっ!?」
「何て言うか、普段の君のキャラじゃ考えられないって言うか……。」
「何度も言ってるけど、こっちが本当の私。れいれいに嘘は吐きたくないの。隠し事はあるけど……。」
「隠し事?なにそれ?」
「言わない!」
「もしかして浮気!?」
「違う!」
よかった……僕があまりにも弱いから、他に彼氏を作ったのかと思った。
「じゃあ、何なの?」
「いつか教えるよ。」
「いつかって、いつさ?」
「私たちが結婚するとき。」
結婚……か。僕らが結婚したその先にはどんな未来があるのだろう?子供は何人欲しいかな?どんな家に住もうか?想像するだけでも幸せだ。
「愛してるよ、神奈。」
「ちょっ……突然、やめてよ……!恥ずかしいから……!」
「神奈はどうなの?」
「そ、そりゃ……す、好きだけど……。」
神奈は顔を赤くしつつそう答えた。そんな彼女を見ていると少し意地悪したくなった。
「愛してる?」
「もちろん愛してるに決まってるじゃない!」
「ほんとに?」
「本当だから!」
「嬉しい。」
僕は小さくそう呟いた。
「それじゃあ、おやすみ。」
「ええ、おやすみ。」
神奈はそう言うと目を瞑った。かと、思ったそのときだった。彼女は僕に顔を近づけキスしてきた。唇同士が触れ合う。やがて彼女は顔を離すと
「仕返し……。」
とだけ言って今度こそ寝てしまった。そんな彼女を見て僕は呟いた。
「可愛い奴。」
そんな可愛い彼女といられる僕はきっと世界で一番幸せなのだと思う。そして、僕はこうも思った。この幸せを、神奈を守るために、僕は強くなりたい。そのために僕は一つ目標を決めた。この国一の高校とも言われる「幻能学園高校」に入学する!
(あとがき)
どうも、新シリーズを書き始めたしらす(仮)です。一週間遅れてすみません。本当はハガネノココロが完結した翌週からは新シリーズを投稿しようと思っていたんですが、書き終わっていなかったので、申し訳ございません。というわけで新シリーズ始めました。先に言っておきますが、主人公は間違いなく最弱です。このサイトで小説を書いている友人に主人公について話したら、弱すぎると言われました。まあ、強すぎる主人公はインフレのもとなので。とは言え、流石に弱すぎる気もしますが、それを目標にしてるので問題なしです。絶対伸びないと思いますが、私は書きたいものを書ければそれで良いのです。強い主人公もそれはそれで別作品を用意してますので。というわけで以上、新シリーズより先に他の一話が書き終わったしらす(仮)でした。
(解説)
〈能力について〉
この世界の能力には使用可能回数というものがある。使用可能回数は能力によって違い、使用可能回数が0になると能力が使えなくなると言われている。使用可能回数は使用者本人ですら何回なのかはわからない。昔は勘でしかわからなかったが、現代では使用可能回数を測定する機械が存在している。
「おいおい、お前なんかが何でいるんだ?お前みたいな無能がよぉ?」
「そうだそうだ!」
「お前の能力はなんだったっけなぁ?……ああ、そうだったそうだった!お前の能力は三文字テレパシーだったな!」
「なんだよそれ!たった三文字程度で何が伝えられるってんだ!」
「しかも発動条件は触れることらしいぜ!」
「触れなきゃ発動できないとか喋った方が早いじゃねぇか!何の為にあるんだよ!」
そう、僕の能力は触れた生き物に三文字まで言葉を伝える能力。使い道なんて僕ですらわからない。本当に何でこんな能力が与えられたんだ?
「雑魚で無能なお前には生きている価値なんてねぇんだよ!」
「とっとと死ねよ!このゴミが!」
こんな風に罵倒され、虐められようが、僕はピンピンしていた。死にたいだとかそんなことはこれっぽっちも思わなかった。何故なら……
「貴方たち、何しているの?」
そんな甲高い声がその場に響き渡った。僕はこの声の主を知っている。
「な、何で……ここにいるんだ……?ここに……どうして……生徒会長の神子谷神奈がここにいるんだ……?」
「あら、いちゃ駄目かしら?」
その少女の圧に気圧され、ただ黙り込んでいた。
「それで、もう一度聞くけど何してるの?」
「ひぃっ……!すみませんでした~!」
そう言ってそいつらはその場から走り去った。
「それで、何でまたいじめられてるの?」
「しょうがないでしょ?僕は回りから見ればただの雑魚に変わりはないんだし。」
「れいれいはそれが悔しくないの?」
我が校最強とも呼ばれる神子谷神奈は僕のことをれいれいと呼ぶ。何故なら、僕らは恋人同士だから。何故、僕がこんなにも素晴らしい彼女と付き合うことができているのか全くわからない。
「悔しいよ……でも、これでいいんだ。僕が何もできないのは自分が一番わかってるから。何より、どれだけ傷つこうと僕には君がいるから。」
僕は神奈を心の拠り所にしている。彼女に依存してしまっている。ただ、彼女さえいれば自分がどれだけ傷つこうが気にしない。
「よくもそんなことを恥ずかしからずに言えるわね……。」
そう言って神奈は顔を赤くした。
「可愛い……。」
思わず僕はそう言ってしまっていた。
「か、かわっ……そ、そんなに誉めたって……別になにもでないわよ……?」
「本当に可愛いんだもん。」
「ひゃぁ……。」
能力には恵まれなかったけど、彼女にだけは恵まれているなぁ……と、そう思った。
その後、僕らは帰路を辿っていた。
「ねぇ、今日泊まってもいい?」
「いいけど……突然どうしたの?」
僕は独り暮らしなのでいつ誰が泊まろうとそこまで気にしない。それに神奈はよく家へ泊まっていくので着替えやら何やらが二、三日分は家にある。
「貴方と一緒にいたいって理由じゃ駄目かしら?」
僕の彼女かわいすぎるだろ……。
「ほら、もっとこっち寄ってよ。」
そう言って僕の腕が引っ張られ、肌と肌が密着する距離まで近付けられた。
「いや、ちょっ、流石に近すぎない?」
「恋人同士ならこれぐらいの距離がちょうどいいのよ。」
「そんなことないと思うけどなぁ……。」
そんなくだらない会話をしながら僕らは我が家へと歩を進めた。
家に着くと僕らは私服に着替えのんびり寛ぐ。
「ねぇれいれ~い、来週の日曜日デートしよ?」
神奈はソファに座る僕の隣に腰を下ろし、僕の頬をつつきながらそんなことを言う。可愛い。
「別にいいけど、どこ行くの?」
「遊園地とか?」
遊園地かぁ……良いなぁ……。
「いいじゃん。」
「なら、十時に入り口の前に集合ね?」
「わかった。」
「ふふっ、楽しみだなぁ……。」
幸せな日常。ずっとこれが続けばいいのに……。
「ねぇれいれ~い、何食べたい?」
暫く彼女とイチャイチャしていたわけだが、突然、神奈はそんな質問をしてきた。外を見ればもう既に真っ暗だった。
「そうだなぁ……ハンバーグ、かなぁ……。」
「わかった!めちゃくちゃ美味しいハンバーグ作ってあげるから楽しみにしててね。」
「うん!」
僕の彼女は、料理が上手い。というか、何に関しても人一倍上手くできる。本当に僕の彼女なのか疑いたくなる程、なんだってできる。なんで神奈は僕なんかと付き合っているんだ?素直に気になったので、僕は彼女に質問をした。
「どうして神奈は僕なんかと付き合っているの?」
「どうしてって……そんなの……」
そうして神奈は頬を赤らめながらもこういった。
「れいれいのことが……好きだからに決まってんじゃん……。」
ヤバい……僕の彼女マジで可愛い……。
「あーもうっ!何言わせてんのよ!真っ黒なハンバーグ食べたくなかったら、そういうこと言わせるのやめてよね!」
「じゃあ、愛してるよ、神奈。」
「はいはいわかったって!本当にハンバーグ焦がしちゃうから!」
そう言って神奈はそっぽを向いてしまった。そんな神奈もまた可愛かった。
それから暫くして、豪華な夕飯ができあがった。僕らは合掌し、二人揃って
「いただきます!」
そう言って食事を始めた。そして、間もなくして神奈が話しかけてきた。
「ねぇ、れいれい。」
「ん?何?」
「口開けて?」
僕は彼女の言葉の意図を汲み取り口を開ける。
「はい、あーん。」
口の中に入ってきたハンバーグをパクりと口に含む。口中に美味しさが広がる。
「どう?」
「すごく美味しいよ!」
「よかった!」
そう言って神奈は幸せそうに微笑んだ。こっちまで笑みがこぼれてくる。
「じゃあ、今度は僕が……。」
僕はフォークでハンバーグの切れ端を突き刺し神奈の口元へ持っていく。
「い、いや、私は……ちょっと……そういうキャラじゃないし……。」
今さらじゃないだろうか?
「ほらほら、口開けて。はい、あーん。」
「わわっ……むぐっ……。」
このままだと僕だけ得した気がするので、無理やり口に突っ込んだ。
「ロマンの欠片もないじゃない!」
ハンバーグを飲み込んだ神奈がそう言ってきた。
「なら、ちゃんと口を開けてくれれば良かったのに。」
そんな感じで僕らは食事をすすめる。
「ねえ、一緒にお風呂入らない?」
「え?」
夕食の後、神奈がそんなことを言ってきた。
「いや、待って!流石にそれは……!」
「別にいいじゃない?恋人同士ならこれ位するんじゃないの?」
「それどこ情報!?」
「小説。」
「多分、その小説が間違ってるよ!」
「それでも私は一緒に入りたいな。れいれいのマッスルボディ見てみたい。れいれい海とかプール行くときはラッシュガード来ちゃうし。」
「いや、それでも……。」
「なら、無理矢理連れていくしかないわね!」
次の瞬間、目にも留まらぬ速度で僕の腕は掴まれ、そのまま脱衣所へ連れていかれた。
「本当に一緒に入るの?」
僕は脱衣所で神奈に問いかける。
「全裸で言っても説得力ないけど?」
「脱がしたのは君だけどね!」
「そんな細かいことはどうだっていいじゃない。ほら、一緒に入りましょ。」
抵抗なんてできなかった。何故なら僕と彼女との間には圧倒的な力の差があるから。
気付けば僕は湯船に浸かっていた。神奈と向かい合って。
「流石に向かい合う必要ないんじゃない?」
「だって後ろ向いたられいれいの体見れないじゃん!」
そう言って彼女は僕の体をまじまじと見つめる。普段の彼女のキャラでは考えられない行動に僕は戸惑ってしまう。
「あんまり……ジロジロ見ないで……。」
「思った以上に良い身体してるね。」
「そ、そりゃどうも……。」
「これ程までに鍛え上げられた肉体、今の人間には早々いないでしょうね。」
「誰目線?」
「最強目線。」
「成る程、納得。」
何度も言うが神奈は強い。地元最強どころか恐らく、我が国最強と言っても良いレベルで。本当に僕には勿体ない彼女である。
「あ、そうだ!背中洗ってあげる!」
「別にいいって!」
僕は抵抗したが、無意味だった。
「は……恥ずかしいんだけど……。」
僕は後ろにいる神奈にそう言った。
「何を恥ずかしがる必要があるの?私たち付き合ってるんだし、いずれお互いの裸なんていくらでも見るようになるわ。」
「いや、それでも……。」
「耳赤くしちゃって……れいれいってば可愛い。」
「ひゃっ!?」
耳元に神奈の吐息がかかり、僕はビクッと体を振るわせた。
「ちょっとやめてよ!」
神奈の方を振り向き、僕はそう言った。その瞬間、僕の顔面に大量の水が掛かった。
「あばばばばばば!」
なんとか目を開くと神奈が片手にシャワーを持っているのが見えた。
「もう!背中流してるときに後ろ向かないでよ。」
そう言われるとなにも言い返せない。
その後は一応何事もなく風呂から出た。少し疲れた気もするが気のせいだろう。
「それじゃあ寝よっか。」
僕らは寝室へ向かう。そして、二人揃って同じベッドに横になる。神奈が僕の腕に抱きついてくる。
「なんだか、君のそういうところ可愛いよね。」
「ふぇっ!?」
「何て言うか、普段の君のキャラじゃ考えられないって言うか……。」
「何度も言ってるけど、こっちが本当の私。れいれいに嘘は吐きたくないの。隠し事はあるけど……。」
「隠し事?なにそれ?」
「言わない!」
「もしかして浮気!?」
「違う!」
よかった……僕があまりにも弱いから、他に彼氏を作ったのかと思った。
「じゃあ、何なの?」
「いつか教えるよ。」
「いつかって、いつさ?」
「私たちが結婚するとき。」
結婚……か。僕らが結婚したその先にはどんな未来があるのだろう?子供は何人欲しいかな?どんな家に住もうか?想像するだけでも幸せだ。
「愛してるよ、神奈。」
「ちょっ……突然、やめてよ……!恥ずかしいから……!」
「神奈はどうなの?」
「そ、そりゃ……す、好きだけど……。」
神奈は顔を赤くしつつそう答えた。そんな彼女を見ていると少し意地悪したくなった。
「愛してる?」
「もちろん愛してるに決まってるじゃない!」
「ほんとに?」
「本当だから!」
「嬉しい。」
僕は小さくそう呟いた。
「それじゃあ、おやすみ。」
「ええ、おやすみ。」
神奈はそう言うと目を瞑った。かと、思ったそのときだった。彼女は僕に顔を近づけキスしてきた。唇同士が触れ合う。やがて彼女は顔を離すと
「仕返し……。」
とだけ言って今度こそ寝てしまった。そんな彼女を見て僕は呟いた。
「可愛い奴。」
そんな可愛い彼女といられる僕はきっと世界で一番幸せなのだと思う。そして、僕はこうも思った。この幸せを、神奈を守るために、僕は強くなりたい。そのために僕は一つ目標を決めた。この国一の高校とも言われる「幻能学園高校」に入学する!
(あとがき)
どうも、新シリーズを書き始めたしらす(仮)です。一週間遅れてすみません。本当はハガネノココロが完結した翌週からは新シリーズを投稿しようと思っていたんですが、書き終わっていなかったので、申し訳ございません。というわけで新シリーズ始めました。先に言っておきますが、主人公は間違いなく最弱です。このサイトで小説を書いている友人に主人公について話したら、弱すぎると言われました。まあ、強すぎる主人公はインフレのもとなので。とは言え、流石に弱すぎる気もしますが、それを目標にしてるので問題なしです。絶対伸びないと思いますが、私は書きたいものを書ければそれで良いのです。強い主人公もそれはそれで別作品を用意してますので。というわけで以上、新シリーズより先に他の一話が書き終わったしらす(仮)でした。
(解説)
〈能力について〉
この世界の能力には使用可能回数というものがある。使用可能回数は能力によって違い、使用可能回数が0になると能力が使えなくなると言われている。使用可能回数は使用者本人ですら何回なのかはわからない。昔は勘でしかわからなかったが、現代では使用可能回数を測定する機械が存在している。
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