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心の闇と過去の事件
十話「秘めた闇の過去」
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僕らはその家へと歩み寄る。そして、桃はその扉の鍵を開けた。中は……暗かった。どうやら、両親共に帰っていないらしい。
「一人で大丈夫か?」
「私の事を……子供扱いしないでください……。」
「あ、そう。じゃ、また明日。」
そうして僕は桃に背を向け、家へと歩き出したのだった。
家に帰ると雫がこちらへ駆け寄ってきた。
「遅いじゃないですか?何かあったんですか!?って、その制服どうしたんですか!?ボロボロじゃないですか!」
「いや……」
そこで僕は何と言おうか悩んだ。僕はあまり人に心配を掛けたくない。だが、相手はアンドロイド、本当の感情なんてない。あるのはプログラミングされた感情だけ。だが、そうは言っても雫はなんだか人間らしく心配しそうな気がした。根拠なんてない。ただの勘だ。だから僕は嘘をつくことにした。
「学校までの道に少し急な坂があるんだよ。」
そんなものはない。学校まではずっと平坦な道が続いている。
「そこでちょっと転んだだけさ。」
「坂で転んだだけでこんなにボロボロになるものなんですか?」
「坂をなめちゃダメだよ。」
「そうですか。怪我とかしてないですか?」
「あー……どうだろ?ちょっと確かめるか。」
僕はそう言って制服を脱いだ。そういや、雫と出会ったばかりの頃の僕は裸を恥ずかしがっていたが、アンドロイドと割り切れるようになったからか、今の僕は何も感じていなかった。
「体もボロボロみたいだな……。」
アイツらよくもここまでボコボコにしてくれたな?まあ、女子にすら力負けするんだけどさ。だとして、体のあちこちが打撲で痛むレベルなのはおかしくないか?というか、僕よくもここまで歩いて帰ってこれたな?殴られた直後はアドレナリンが出ていたお陰で痛まなかったのだろうか?まあ、僕は医学とか人体とかはよくわからないから考えても仕方がないのだが。
「既にお風呂は溜まっていますので入ってきたらどうですか?」
「ああ、そうさせて貰うよ。今日はかなりつかれているしね。」
僕はそう言って風呂場へと向かうのだった。
脱衣所で服を脱いだ僕は浴場へと足を踏み入れた。そして、掛け湯をした後、ゆっくりと湯船に浸かる。フゥーっと思い切り息を吐き出す。この数日があまりにも濃かった。雫が来てからそう日は経っていないというのに様々なことがあった。
「突然ラノベの主人公になった気分だよ。本当に。」
そういえば……桃……アイツやっぱりアイツに似てるな……中学の頃のアイツに。ほんとに似てる。アイツも桃もメインターゲットだし……。にしても、どんな学校にもクズはいるんだな。折角、アイツを追っ払ったってのに、またこの役になるのか……。その瞬間、脳裏に写ったのは過去の記憶。いや、考えるのはよそう。これから僕がやるのは盲目な人助けだ。理由なんて考えず、困ってると感じたから助ける。それだけだ。
風呂から上がると既に夕飯が完成していた。僕は席に着き合掌する。
「いただきます。」
今日もまた貧相な食事である。バイトの収入も微々たるものなのでまだ贅沢は言えない。とはいえ、もうすぐ月末。来月の始めには親からいくらか振り込みがある筈だ。
「あ、そうそう、天海空さん。」
「ん?どうした?」
「明日から四日連続で雨らしいですよ?」
「梅雨だなぁ……。」
「反応薄いですね。」
「まあ、雨だからなんだって感じかな。別に体育が好きな訳じゃないし。」
「なるほど。暗いですね。」
「別にいいだろ。」
そんな会話をしながら僕は食事を続ける。にしても、僕だけ食事をしているこの現状、端から見ればシュールだなーとそんなくだらないことを思う僕だった。
食事が終わり、更に時間が経った。すでに夜の十一時。僕はそろそろ寝ようかと、ベッドに寝転がった。今日はなんだかいい夢は見れない気がした。
「お休み。」
そうして、僕は瞼を閉じ、だんだんと意識を落としていくのだった。
僕の目の前には見たくもない光景が広がっていた。二人の少女が男女計七名に虐められていた。片方の少女の机は落書きだらけで、もう片方の少女の椅子には大量の画鋲が置かれてあった。いじめ、それは人を傷つけることでしか安心を得られない下の下の下未満のクズによる所業。僕はその現場を黙ってみているだなんて、そんな胸くそ悪いことできなかった。気づけば右の拳がそいつら目掛けて放たれていた。それは一人の男にヒットした。大きく仰け反り吹っ飛ぶ。調子に乗った僕は更にもう一人を殴り飛ばし、更にもう一人蹴り飛ばした。そこへ騒ぎを聞き付けた生徒指導の教師がやってきた。これで助かったと、そう安堵した瞬間、僕は目が覚めた。僕の体かそれとも脳か、どちらかは知らないが僕の何かがそれより先を見ることを拒んでいた。僕は近くにあったスマホを見る。そこには午前二時と表示されていた。どうにも眠れそうな気がしなかった僕はリビングへと向かった。
そこには雫が平然とテレビを見ていた。
「あら、どうかしましたか?」
「まあ、ちょっとね。にしても君、こんなの見るんだ。」
雫が見ていたのはバラエティ番組だった。
「ええ、店長のところのお客さんがこちらの番組がお好きなようでして、私も見てみようかと思ったのですが……やはり、私にはあまりよくわかりませんね。これの何がどう面白いんでしょう?」
「哲学みたいなこと言うね?そんなことを僕に言われても答えにくいんだけど……。」
「そうですか……。」
「僕からすれば面白いという感情を理解しようとしている君が面白いよ。」
「なんですかそれ。」
「面白いを無理に理解しようとするっていうのは、それこそそのネタを考えた人に失礼って奴じゃないかな?」
「なるほど?」
「こう言うのってきっと見てたらだんだんと面白いなって思えるようになると思うんだよね。だから、何も考えずにボーッと見てたらいつかわかるんじゃないかな?」
「ボーッと見るって私には難しいんですけど。」
「まあ、それはこれから習得すればいいよ。」
僕はそう言うと背を向けた。
「それじゃお休み。」
そう言って僕は自室へと帰った。その後は夢を見なかった。
翌朝、僕はいつも通り食事を済ませ学校へ行く準備をしていた。いつも通りの日常。とはいえ、制服は昨日のではなく、万が一の時のために買っておいた二着の内の一着。それ以外は間違いなくいつも通りだった。けれども、一つだけいつも通りにいって欲しくないことがあった。そんなとき、けたたましくインターホンが鳴った。嫌だ。普段からあまりソイツと関わりたくはないと考えているが、今日は本当に会いたくなかった。あの日を思い出してしまうから。助けられなかった人間を思い出してしまうから。僕は準備が整うと玄関へ向かい、その扉を開けた。
「おっはよ~!空~!」
その少女はいつも通り僕に挨拶をしてくる。僕はそれを無視して走り出した。今彼女と一緒にいるときっと僕はあの日の辛さを思い出してしまう。だからもう辛くならないためにも僕は走り去ったのだった。
「ちょっ……!どこに行くの、空!」
そんな声が後ろから聞こえたが僕は無視をしてその場を去った。
学校に着くと僕は机の上に伏せた。さて、これからどうしようか……?今、桃に会いにいってもできることなんて殆どない。なんなら、迷惑を掛けるだけだろう。なら、今は、アレをどうするか考えながら鋭気を養うとでもするかな?そうして僕は考え事をしながら少しずつ意識を落としていくのだった。
あれから時間は流れていき、昼休みになった。僕は弁当を持って屋上へといった。そこにはいつも通り誰もいない。少し待つか。
暫く待っていると、桃はそこへやってきた
「先輩……なんで、助けてくれないんですか……?」
その言葉に僕はハッと息を呑んだ。自分の愚かさを祟った。僕は恐る恐るそちらを向いた。そこにはびしょ濡れで、ゴミにまみれた桃がいた。甘かった。アイツらがまさか……いや、間違えたのは僕だ。誤ってしまったのだ。言い訳なんてできなかった。助けて貰えない人間の気持ちを知っているから。
「なんで……なんで、どうして……。昨日、あなたは……私を助けてくれた……なのに……なのにどうして……今日は……。」
「……ごめん。」
僕は何とかその言葉を絞り出した。罪悪感で押し潰されそうだった。
「でも、私……あんなこと言ったけど……理解しているんです……。きっと、先輩は……自分の身の安全の為に関わらなかったんですよね……?」
「違う!」
僕は叫ぶように言った。
「僕は、自分の安全のためになんか行動していない!僕が今、この時間まで君に会いに行かなかったのは君を傷つけたくなかったから!僕が君の側にいるのをアイツらが見れば、きっと君へのいじめは更に酷くなるんじゃないかって、そう思ったから!」
「そんなの嘘!」
「嘘じゃない!もし僕が自分の安全のために行動しているなら、昨日、僕が君を助けた理由がないじゃないか!」
「……そう……ですよね……。すみません……疑ったりなんかして……。もう私……誰を信じたらいいのか……わからないんです……。」
「信じるべきは自分の心じゃないかな?」
僕は先ほどと違い落ち着いた声音でそう言った。更に一歩近づきこう言う。
「君の状況は当事者の次に理解してる。君のクラスの担任の何倍も理解している。だからこそ、君が今、誰も信じられないのはよく理解できる。でも、誰も信じられないのなら、無理に信じなくていい。自分の心だけ信じていればいい。」
「なら……自分の心を信じることにする……。だから、私はあなたを信じる。私の心は……あなただけは信頼できると……そう言っているから……。」
「ありがとう……。」
僕は今でも人を信じられていないのだろうか?そんなことを思う今日この頃だった。
「んじゃ、落ち着いたみたいだし、食事にしよう?」
「え、あ、そうですね。」
そうして僕らがいつも通り食事をしようと思っていたそのとき、額に冷たい感触。水だと一瞬で気づいた。その雫は一滴だけじゃなかった。やがて、音を立てながら大量の雨粒が降ってきた。
「どうやら、場所を変えなきゃいけないっぽいな。」
「そうですね、早く中に入りましょう。」
そうして、僕らは扉を開けて屋内に逃げ込むのだった。
(あとがき)
どうも、突然キャラクターの名前を変えたしらす(仮)です。え?誰の名前が変わったかわからないって?まあ、そりゃそうか。僕の小説を投稿した瞬間に見る猛者なんていないわな。ちなみに変えたのは春花桃さんです。前の名前は冬山白でした。なぜ変えたかって?どこかの委員長と名字の季節が被ってたからです。いやぁ……登場させなさすぎてすっかり忘れてた。まあ、こんな感じでガバガバなしらす(仮)ですがお許しください。以上、GW中ラーメンばかり食べていたしらす(仮)でした。
「一人で大丈夫か?」
「私の事を……子供扱いしないでください……。」
「あ、そう。じゃ、また明日。」
そうして僕は桃に背を向け、家へと歩き出したのだった。
家に帰ると雫がこちらへ駆け寄ってきた。
「遅いじゃないですか?何かあったんですか!?って、その制服どうしたんですか!?ボロボロじゃないですか!」
「いや……」
そこで僕は何と言おうか悩んだ。僕はあまり人に心配を掛けたくない。だが、相手はアンドロイド、本当の感情なんてない。あるのはプログラミングされた感情だけ。だが、そうは言っても雫はなんだか人間らしく心配しそうな気がした。根拠なんてない。ただの勘だ。だから僕は嘘をつくことにした。
「学校までの道に少し急な坂があるんだよ。」
そんなものはない。学校まではずっと平坦な道が続いている。
「そこでちょっと転んだだけさ。」
「坂で転んだだけでこんなにボロボロになるものなんですか?」
「坂をなめちゃダメだよ。」
「そうですか。怪我とかしてないですか?」
「あー……どうだろ?ちょっと確かめるか。」
僕はそう言って制服を脱いだ。そういや、雫と出会ったばかりの頃の僕は裸を恥ずかしがっていたが、アンドロイドと割り切れるようになったからか、今の僕は何も感じていなかった。
「体もボロボロみたいだな……。」
アイツらよくもここまでボコボコにしてくれたな?まあ、女子にすら力負けするんだけどさ。だとして、体のあちこちが打撲で痛むレベルなのはおかしくないか?というか、僕よくもここまで歩いて帰ってこれたな?殴られた直後はアドレナリンが出ていたお陰で痛まなかったのだろうか?まあ、僕は医学とか人体とかはよくわからないから考えても仕方がないのだが。
「既にお風呂は溜まっていますので入ってきたらどうですか?」
「ああ、そうさせて貰うよ。今日はかなりつかれているしね。」
僕はそう言って風呂場へと向かうのだった。
脱衣所で服を脱いだ僕は浴場へと足を踏み入れた。そして、掛け湯をした後、ゆっくりと湯船に浸かる。フゥーっと思い切り息を吐き出す。この数日があまりにも濃かった。雫が来てからそう日は経っていないというのに様々なことがあった。
「突然ラノベの主人公になった気分だよ。本当に。」
そういえば……桃……アイツやっぱりアイツに似てるな……中学の頃のアイツに。ほんとに似てる。アイツも桃もメインターゲットだし……。にしても、どんな学校にもクズはいるんだな。折角、アイツを追っ払ったってのに、またこの役になるのか……。その瞬間、脳裏に写ったのは過去の記憶。いや、考えるのはよそう。これから僕がやるのは盲目な人助けだ。理由なんて考えず、困ってると感じたから助ける。それだけだ。
風呂から上がると既に夕飯が完成していた。僕は席に着き合掌する。
「いただきます。」
今日もまた貧相な食事である。バイトの収入も微々たるものなのでまだ贅沢は言えない。とはいえ、もうすぐ月末。来月の始めには親からいくらか振り込みがある筈だ。
「あ、そうそう、天海空さん。」
「ん?どうした?」
「明日から四日連続で雨らしいですよ?」
「梅雨だなぁ……。」
「反応薄いですね。」
「まあ、雨だからなんだって感じかな。別に体育が好きな訳じゃないし。」
「なるほど。暗いですね。」
「別にいいだろ。」
そんな会話をしながら僕は食事を続ける。にしても、僕だけ食事をしているこの現状、端から見ればシュールだなーとそんなくだらないことを思う僕だった。
食事が終わり、更に時間が経った。すでに夜の十一時。僕はそろそろ寝ようかと、ベッドに寝転がった。今日はなんだかいい夢は見れない気がした。
「お休み。」
そうして、僕は瞼を閉じ、だんだんと意識を落としていくのだった。
僕の目の前には見たくもない光景が広がっていた。二人の少女が男女計七名に虐められていた。片方の少女の机は落書きだらけで、もう片方の少女の椅子には大量の画鋲が置かれてあった。いじめ、それは人を傷つけることでしか安心を得られない下の下の下未満のクズによる所業。僕はその現場を黙ってみているだなんて、そんな胸くそ悪いことできなかった。気づけば右の拳がそいつら目掛けて放たれていた。それは一人の男にヒットした。大きく仰け反り吹っ飛ぶ。調子に乗った僕は更にもう一人を殴り飛ばし、更にもう一人蹴り飛ばした。そこへ騒ぎを聞き付けた生徒指導の教師がやってきた。これで助かったと、そう安堵した瞬間、僕は目が覚めた。僕の体かそれとも脳か、どちらかは知らないが僕の何かがそれより先を見ることを拒んでいた。僕は近くにあったスマホを見る。そこには午前二時と表示されていた。どうにも眠れそうな気がしなかった僕はリビングへと向かった。
そこには雫が平然とテレビを見ていた。
「あら、どうかしましたか?」
「まあ、ちょっとね。にしても君、こんなの見るんだ。」
雫が見ていたのはバラエティ番組だった。
「ええ、店長のところのお客さんがこちらの番組がお好きなようでして、私も見てみようかと思ったのですが……やはり、私にはあまりよくわかりませんね。これの何がどう面白いんでしょう?」
「哲学みたいなこと言うね?そんなことを僕に言われても答えにくいんだけど……。」
「そうですか……。」
「僕からすれば面白いという感情を理解しようとしている君が面白いよ。」
「なんですかそれ。」
「面白いを無理に理解しようとするっていうのは、それこそそのネタを考えた人に失礼って奴じゃないかな?」
「なるほど?」
「こう言うのってきっと見てたらだんだんと面白いなって思えるようになると思うんだよね。だから、何も考えずにボーッと見てたらいつかわかるんじゃないかな?」
「ボーッと見るって私には難しいんですけど。」
「まあ、それはこれから習得すればいいよ。」
僕はそう言うと背を向けた。
「それじゃお休み。」
そう言って僕は自室へと帰った。その後は夢を見なかった。
翌朝、僕はいつも通り食事を済ませ学校へ行く準備をしていた。いつも通りの日常。とはいえ、制服は昨日のではなく、万が一の時のために買っておいた二着の内の一着。それ以外は間違いなくいつも通りだった。けれども、一つだけいつも通りにいって欲しくないことがあった。そんなとき、けたたましくインターホンが鳴った。嫌だ。普段からあまりソイツと関わりたくはないと考えているが、今日は本当に会いたくなかった。あの日を思い出してしまうから。助けられなかった人間を思い出してしまうから。僕は準備が整うと玄関へ向かい、その扉を開けた。
「おっはよ~!空~!」
その少女はいつも通り僕に挨拶をしてくる。僕はそれを無視して走り出した。今彼女と一緒にいるときっと僕はあの日の辛さを思い出してしまう。だからもう辛くならないためにも僕は走り去ったのだった。
「ちょっ……!どこに行くの、空!」
そんな声が後ろから聞こえたが僕は無視をしてその場を去った。
学校に着くと僕は机の上に伏せた。さて、これからどうしようか……?今、桃に会いにいってもできることなんて殆どない。なんなら、迷惑を掛けるだけだろう。なら、今は、アレをどうするか考えながら鋭気を養うとでもするかな?そうして僕は考え事をしながら少しずつ意識を落としていくのだった。
あれから時間は流れていき、昼休みになった。僕は弁当を持って屋上へといった。そこにはいつも通り誰もいない。少し待つか。
暫く待っていると、桃はそこへやってきた
「先輩……なんで、助けてくれないんですか……?」
その言葉に僕はハッと息を呑んだ。自分の愚かさを祟った。僕は恐る恐るそちらを向いた。そこにはびしょ濡れで、ゴミにまみれた桃がいた。甘かった。アイツらがまさか……いや、間違えたのは僕だ。誤ってしまったのだ。言い訳なんてできなかった。助けて貰えない人間の気持ちを知っているから。
「なんで……なんで、どうして……。昨日、あなたは……私を助けてくれた……なのに……なのにどうして……今日は……。」
「……ごめん。」
僕は何とかその言葉を絞り出した。罪悪感で押し潰されそうだった。
「でも、私……あんなこと言ったけど……理解しているんです……。きっと、先輩は……自分の身の安全の為に関わらなかったんですよね……?」
「違う!」
僕は叫ぶように言った。
「僕は、自分の安全のためになんか行動していない!僕が今、この時間まで君に会いに行かなかったのは君を傷つけたくなかったから!僕が君の側にいるのをアイツらが見れば、きっと君へのいじめは更に酷くなるんじゃないかって、そう思ったから!」
「そんなの嘘!」
「嘘じゃない!もし僕が自分の安全のために行動しているなら、昨日、僕が君を助けた理由がないじゃないか!」
「……そう……ですよね……。すみません……疑ったりなんかして……。もう私……誰を信じたらいいのか……わからないんです……。」
「信じるべきは自分の心じゃないかな?」
僕は先ほどと違い落ち着いた声音でそう言った。更に一歩近づきこう言う。
「君の状況は当事者の次に理解してる。君のクラスの担任の何倍も理解している。だからこそ、君が今、誰も信じられないのはよく理解できる。でも、誰も信じられないのなら、無理に信じなくていい。自分の心だけ信じていればいい。」
「なら……自分の心を信じることにする……。だから、私はあなたを信じる。私の心は……あなただけは信頼できると……そう言っているから……。」
「ありがとう……。」
僕は今でも人を信じられていないのだろうか?そんなことを思う今日この頃だった。
「んじゃ、落ち着いたみたいだし、食事にしよう?」
「え、あ、そうですね。」
そうして僕らがいつも通り食事をしようと思っていたそのとき、額に冷たい感触。水だと一瞬で気づいた。その雫は一滴だけじゃなかった。やがて、音を立てながら大量の雨粒が降ってきた。
「どうやら、場所を変えなきゃいけないっぽいな。」
「そうですね、早く中に入りましょう。」
そうして、僕らは扉を開けて屋内に逃げ込むのだった。
(あとがき)
どうも、突然キャラクターの名前を変えたしらす(仮)です。え?誰の名前が変わったかわからないって?まあ、そりゃそうか。僕の小説を投稿した瞬間に見る猛者なんていないわな。ちなみに変えたのは春花桃さんです。前の名前は冬山白でした。なぜ変えたかって?どこかの委員長と名字の季節が被ってたからです。いやぁ……登場させなさすぎてすっかり忘れてた。まあ、こんな感じでガバガバなしらす(仮)ですがお許しください。以上、GW中ラーメンばかり食べていたしらす(仮)でした。
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