「世界はオモロイ」3部作 第1部 転生のアメリカ編

レオ

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VOL32 「真夜中の来訪者」

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ー転生のアメリカ編 VOL32ー
「真夜中の来訪者」
ニューヨーク 1990年3月

観光して、ゴハンを食べて、バーで飲んで、
ホテルの部屋に戻ってきた。
夜7時になったらレストランやバー以外の
ほとんどの店はいっせいに閉めてしまう。
賑やかな昼間とは打って変わって
スプレーの落書きだらけの
シャッターが続く暗い通りは
まるでゴーストタウンのようだ。
華やかな服や靴の店のショーウィンドウの
外には檻のような頑丈な柵に太い鎖と
でかい錠がかけられ、柵の上には
槍のように尖った忍び返しがズラッと並ぶ。
暗くなってから街を歩くのは
やっぱりちょっと緊張するなあ。
昼間でも街中で馬に乗った警官を
よく見かけた。
こんな大都会なのに道路の端に
たまに馬フンのデカい塊がある。
1年中交通渋滞が激しいこの街では
車より馬の方が機動力があるやろけど
なんでバイクじゃないんやろか?

泊まっているこの部屋のドアには
上、真ん中、下の3つのロックと
チェーンもある。
3つもロックがあるドアなんて
初めて見た。
それだけ危険な街ということだ。
(翌年に行ったテキサスの田舎町
フォートワースではなんとロックが
1つもなかった。)
でもここはほんとにいろんな意味で
ワクワクする街でもある。
ベッドで寝転がって翌日のプランを
立てているとどこからかパトカーの
サイレンの音が何度も聞こえる。
そんなにあちこちで何か事件が
起きているのだろうか?

コンコン。
11時半頃ドアがノックされた。
「んんー?」
ニューヨークに着いてからこれまでの
緊張感は前置きに過ぎなかったのだ。
このあとこの部屋で本当の緊張体験を
することになろうとは、、、、。

ノック?
こんな夜中に一体誰?
耳をすますとドアの向こうから
カサカサッと音が聞こえる。
誰かがいる、、、、。
誰?、、、、誰?、、、、、、、、。

コンコン。
ハッ!!
ノックの音で目が覚める。
疲れてて電気も点けたままで
いつのまにか寝てしまっていた。
時計を見ると明け方の5時半。
今、確かにノックの音が、、、、。
あれは夢やったんか?
カサカサッ、、、、。
なにいいいいいいいいっ!!!?
夜中の11時半に人の気配を感じて、
あれからもう6時間も経ってるのに
やっぱりまだ誰かがそこにいる!!!
このドアのすぐ外に!!!
ドアの3つのロックは全てかけてる。
でも、、、、。

一体何者なんや? 何が目的なんや?
強盗? それとも、、、、
まさか殺人鬼!!?
コンコン。
うわああああああああっ!!
なんかわからんけどこれはマジで
ヤバイかもっ!!
どーしよ!? どーしよっ!?
俺は正体不明の存在を前にして
緊急事態に突入するのを感じていた。
ドアの外のヤツに聞こえんように
頭からフトンをガバッと被って
ベッドの横の電話を引っ張り込む。
フロントに電話すると4、5回
コールして眠そうな声で中国人の
おばちゃんが出た。
俺はフトンの中で声を押し殺して
「誰かがドアの外にいる!」
と必死に訴えた。
おばちゃんが寝ぼけてるのか、
俺の英語表現が悪いのか、
うまく通じていないようだ。
何か言ってるけど電話での英語は
俺にはほとんどわからない。
もう1度ゆっくり繰り返して言うと
彼女は何かを言って電話を切った。

今のでちゃんと伝わったのか?
わけわからんこと言うてると思われて
無視されたんやろか?
一体どうなるんやろ?
もしヤツがドアを無理矢理こじ開けて
侵入してきたら?
ガンやナイフで襲ってきたら?
この部屋は11階や。
窓からは逃げられへん。
入ってこられたら他に逃げ道はない。
カサカサッ、、、、。
あかあーーーーん!!
ヤツは確かにそこにいるうーー!!

ずっと最も恐れていた街
ニューヨークでほんまにこんなことに
なるとは!
日本にいる友達やオカンは
俺が今シャレにならんピンチに
追い込まれてるのを知るはずもない。
俺はこの外国で今ほんまに
たったひとりなんや。
助けてくれる人は誰もいない。
コンコン。
カサカサッ、、、、。
ベッドの上で膝を抱えてドアをじっと
見つめたままの俺の全身を
未知の恐怖が包み込む。

(次回「ジェイソン来襲!?」に続く)
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