9 / 9
9
しおりを挟む
「まずは噂がどれほど正確なのか試してみましょうか。ルアー、一般的なポーションからやってみましょう?」
サラマドラは優しく撫でながら、ルアーに声をかける。
ポーションにも種類が多くあり、製造者の力量によって効能が左右するためランクが設けられている。
一時期はこのランク制度がないために同じポーションでも、一滴で治療させてしまう物から切り傷しか治せない物まで存在して混乱を招いた。
多くの治験によって大まかなランクが設けられ、どんなポーションも区分けされることが決められている。
サラマドラが用意したポーションは通常のポーションを始め、ギルドで売られている品だった。
傷薬、痛み止め、解熱、と他にも多くあるポーションだがランクはCランクにしている。
Cの一つ上であるBランクから上は全て用途を申告しなければ罰金が課せられるほどに厳重なため、仕方のない話だった。
製造者に直接相談し、確実かつ直に購入する手もあるが誰も居所を知らないので、知人でもない限りできない手である。
サラマドラも依頼で知り合った製造者はいるのだが、値段を吹っかける婆のため会いたくなかったという事情もあった。
ルアーの怪我した足にかけるが、水のように流れていくだけだった。
使い捨て羊皮紙に結果を記入してポーションを施すが、結局のところ効果は期待できなかった。
一部のポーションは効果を得られたが、すぐに切れてしまった。
次に用意したものは薬草だった。
ポーションは薬草に自身の魔力を混ぜ合わせることで製造されるが、これは薬草本体である。
薬草自体を食すなり、煎じれば効果はポーションと同じか、それ以上をもたらす。
ただし味が激不味で、効果が得られるまで数日摂取しなければならない。
サラマドラが今回施すのは、薬草にある数少ない根をすり潰した物を包帯に染み込ませて足に巻くという手法だった。
だが動物の本能というべきか、不自由な足を器用に使って、サラマドラから距離を常に取りながら部屋中を逃げ出したことで、中止せざるを得なくなった。
全ての片付けをやり終えたサラマドラは優しく手招きして、落ち着かせるように撫で続けた。
先程までゲッソリしていたルアーだが、サラマドラの魔法で包帯そのものを消したことで逆立っていた毛が元に戻り、大人しく従った。
ルアーが仕切りにサラマドラの手に鼻を擦り付けるが、サラマドラは撫でながらもう片方の手に闇魔法を纏わせた。
ルアーは闇魔法を纏った手に、怪我した前足を載せた。
「どうしたの?」
驚くサラマドラの目の前で、その奇跡は起こったのだった。
それまでポーションも受け付けなかった怪我が、サラマドラの手からモヤのようにルアーの足に纏わりつくと、銀製腕輪を付けた足と同じ足がそこに存在していた。
ルアーも突然のことに呆然としていたが、当の本人であるサラマドラは引き攣った口角をしながら頭の中では混乱の渦に巻き込まれていた。
サラマドラは優しく撫でながら、ルアーに声をかける。
ポーションにも種類が多くあり、製造者の力量によって効能が左右するためランクが設けられている。
一時期はこのランク制度がないために同じポーションでも、一滴で治療させてしまう物から切り傷しか治せない物まで存在して混乱を招いた。
多くの治験によって大まかなランクが設けられ、どんなポーションも区分けされることが決められている。
サラマドラが用意したポーションは通常のポーションを始め、ギルドで売られている品だった。
傷薬、痛み止め、解熱、と他にも多くあるポーションだがランクはCランクにしている。
Cの一つ上であるBランクから上は全て用途を申告しなければ罰金が課せられるほどに厳重なため、仕方のない話だった。
製造者に直接相談し、確実かつ直に購入する手もあるが誰も居所を知らないので、知人でもない限りできない手である。
サラマドラも依頼で知り合った製造者はいるのだが、値段を吹っかける婆のため会いたくなかったという事情もあった。
ルアーの怪我した足にかけるが、水のように流れていくだけだった。
使い捨て羊皮紙に結果を記入してポーションを施すが、結局のところ効果は期待できなかった。
一部のポーションは効果を得られたが、すぐに切れてしまった。
次に用意したものは薬草だった。
ポーションは薬草に自身の魔力を混ぜ合わせることで製造されるが、これは薬草本体である。
薬草自体を食すなり、煎じれば効果はポーションと同じか、それ以上をもたらす。
ただし味が激不味で、効果が得られるまで数日摂取しなければならない。
サラマドラが今回施すのは、薬草にある数少ない根をすり潰した物を包帯に染み込ませて足に巻くという手法だった。
だが動物の本能というべきか、不自由な足を器用に使って、サラマドラから距離を常に取りながら部屋中を逃げ出したことで、中止せざるを得なくなった。
全ての片付けをやり終えたサラマドラは優しく手招きして、落ち着かせるように撫で続けた。
先程までゲッソリしていたルアーだが、サラマドラの魔法で包帯そのものを消したことで逆立っていた毛が元に戻り、大人しく従った。
ルアーが仕切りにサラマドラの手に鼻を擦り付けるが、サラマドラは撫でながらもう片方の手に闇魔法を纏わせた。
ルアーは闇魔法を纏った手に、怪我した前足を載せた。
「どうしたの?」
驚くサラマドラの目の前で、その奇跡は起こったのだった。
それまでポーションも受け付けなかった怪我が、サラマドラの手からモヤのようにルアーの足に纏わりつくと、銀製腕輪を付けた足と同じ足がそこに存在していた。
ルアーも突然のことに呆然としていたが、当の本人であるサラマドラは引き攣った口角をしながら頭の中では混乱の渦に巻き込まれていた。
0
お気に入りに追加
22
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
魔獣奉賛士
柚緒駆
ファンタジー
砂漠の巨大帝国アルハグラを支配する冷酷な王ゲンゼルは、東の果て、氷の山脈に棲む魔獣ザンビエンに、己の姫リーリアを生け贄として捧げる事を決めた。姫を送り届ける役目には、三十人の傭兵達と年老いた魔獣奉賛士が一人。それ以外の奉賛隊はアルハグラの民から選ばれる。孤児として育ったランシャは、報奨金目当てに奉賛隊に参加した。一方隣国ダナラムは、奉賛隊を壊滅すべく秘密裏に聖滅団を差し向ける。
引退冒険者は従魔と共に乗合馬車始めました
SILVER・BACK(アマゴリオ)
ファンタジー
引退を考え始めた中年冒険者が、偶然幼い馬の魔獣と出会う。その魔獣を従魔として拾い育て、仕事を乗合馬車の御者と変え新たな人生を歩み始めた。今までの人生で味わった希望に絶望、仲間との出会いや別れ、そして新たな仕事や出会いに依頼。そんな冒険者の旅物語です。
その声は媚薬.2
江上蒼羽
恋愛
【その声は媚薬】別視点、おまけエピソード詰め合わせ。
伊原 瑞希(27)
工事勤務の派遣社員
密かにリュークの声に悶えている重度の声フェチ
久世 竜生(28)
表向きは会社員
イケボを生かし、リュークとしてボイス動画を配信している。
※作中に登場する業界については想像で書いておりますので、矛盾点や不快な表現があるかと思いますが、あくまでも素人の作品なのでご理解願います。
誹謗中傷はご容赦下さい。
R3.3/7~公開
婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?
異世界めぐりの白と黒
小望月 白
ファンタジー
二十歳の誕生日を迎えた谷本 凛花(たにもと りんか)
人とは少し違った容姿だったが、自分を丸ごと愛してくれる優しい両親。打算ではなく、純粋な好意で付き合ってくれる大切な友人。そんな大好きな人達に囲まれての幸せな誕生日パーティーが終わり、最後にもう一度ドレスを見ようと鏡を見に自室へ帰ると気付けば知らない世界。
訳がわからない内に死にかけ、助けられ、また死にかけて早く元の世界に帰りたいのに帰れない。
その内少しずつ増えて行く大切な人達。帰れないのならばせめて居心地の良いこの場所が平穏である事を願うのに、何故か儘ならない。
そんな中で時折見る不思議な夢を辿って異世界を巡る物語。
※小説家になろう 様でも掲載中です
R15は念の為です。
条件付きチート『吸収』でのんびり冒険者ライフ!
ヒビキ タクト
ファンタジー
旧題:異世界転生 ~条件付きスキル・スキル吸収を駆使し、冒険者から成り上がれ~
平凡な人生にガンと宣告された男が異世界に転生する。異世界神により特典(条件付きスキルと便利なスキル)をもらい異世界アダムスに転生し、子爵家の三男が冒険者となり成り上がるお話。 スキルや魔法を駆使し、奴隷や従魔と一緒に楽しく過ごしていく。そこには困難も…。 従魔ハクのモフモフは見所。週に4~5話は更新していきたいと思いますので、是非楽しく読んでいただければ幸いです♪ 異世界小説を沢山読んできた中で自分だったらこうしたいと言う作品にしております。
スライムの恩返しで、劣等生が最強になりました
福澤賢二郎
ファンタジー
「スライムの恩返しで劣等生は最強になりました」は、劣等生の魔術師エリオットがスライムとの出会いをきっかけに最強の力を手に入れ、王女アリアを守るため数々の試練に立ち向かう壮大な冒険ファンタジー。友情や禁断の恋、そして大陸の未来を賭けた戦いが描かれ、成長と希望の物語が展開します。
聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】
青緑
ファンタジー
聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。
———————————————
物語内のノーラとデイジーは同一人物です。
王都の小話は追記予定。
修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる