上 下
1 / 1

0 プロローグ

しおりを挟む
近年きんねん軍内部ぐんないぶ問題視もんだいしされていることがあった。

戦争せんそうえないこの時代じだい負傷者ふしょうしゃはもちろんのことだが死傷者ししょうしゃかぞれないほどおおてしまう。

そのなか従魔契約じゅうまけいやくわした契約者けいやくしゃふくまれていることがある。

従魔契約とは、つよさにかかわらず、魔物まものとおたがいが了承りょうしょうしなければない契約けいやくである。

簡単かんたんな契約でいうと、「家族かぞくになろう」や「仲間なかまになろう」といった内容ないようで契約を交わすものが多いかもしれない。

ある者は魔物がまうもりはいり、そこで出逢であった魔物とえさ対価たいかに契約する者がいた。

ある者は親族しんぞくが契約を交わした従魔から子孫しそんのこすためにひなたくされた者がいた。

ある者は商隊しょうたい護衛中ごえいちゅう怪我けがった魔物に治療ちりょうほどこし、そのおんかえそうと魔物から契約をけれられる者がいた。

契約のかたちは多くあれど、ともきようと契約を交わした者を、ひと一般的いっぱんてきと呼ぶ。

また、契約者と従魔契約を交わした魔物を、人は一般的にと呼ぶ。

そうした従魔契約だが、メリットとデメリットが確認かくにんされている。

従魔契約を交わすと、契約者は従魔と会話かいわができ、従魔は契約者から魔力を供給きょうきゅうされる。

従魔契約は本人同士ほんにんどうしわなければ、契約を解除かいじょすることができない。

魔物は自然しぜんなかで魔力をたし成長せいちょううながすが、従魔は契約を交わしたそのときから契約にとらわれてしまい、契約者からの魔力でしかけられない。

魔獣や従魔にとって、成長や生きるためには魔力が必要不可欠ひつようふかけつだ。

その関係上かんけいじょう、契約者の魔力がよわいと、従魔にあたえられる魔力は極少ごくすくなくなる。

そのため、くにによって一定以上いっていいじょうに成長してから従魔契約を交わすことを義務化ぎむかされている。

閑話休題かんわきゅうだい軍内部ぐんないぶ問題もんだいとなっているのは契約者が戦場せんじょうくなった場合ばあいである。

従魔は契約者から魔力を供給されることで生きていると言っても過言かごんではない。

その契約者がかりに戦場で亡くなると、従魔への魔力供給が途絶え、従魔は身体からだ維持いじできず亡くなってしまうのだ。

中には同族どうぞく同種族どうしゅぞくから魔力をけてもらい、のこる従魔もいるが、大半たいはんもと棲家すみかからているため、それがかなわない従魔が数多かずおお存在そんざいしていた。

契約者でなくとも契約者の血縁者けつえんしゃであれば、魔力を譲渡じょうとすることで代行だいこうすることができる場合もあるが、おたがいの適正てきせい必須ひっす相性あいしょうによって受け付けない従魔もいる。

契約者は軍に入隊時にゅうたいじ、従魔を家族かぞくあずけることか、戦場へ連れて行くことをせまられる。

その中で従魔を連れて入隊にゅうたいした者は、必ずでないが偵察部隊ていさつぶたいなど裏方うらかた役目やくめ配属はいぞくされることが多い。

理由りゆうは、従魔契約を交わした契約者は五感ごかん通常つうじょうよりたか傾向けいこうにあるからだ。

それでもてき部隊ぶたいつかり、襲撃しゅうげきによって負傷ふしょうする者は存在そんざいする。

死傷者ししょうしゃが出ることもある。

そこに契約者がいた場合、魔力供給が途切れ、従魔はただを待つだけの存在になってしまう。

従魔契約をしてから年月ねんげつながい従魔によって、その期間きかん前後ぜんごする。

従魔の中には、契約者をうしなったことが受け入れることが出来できずにあばれてしまう者も、に日に老化ろうか加速かそくしていく者も、主人しゅじんとうと住処すみかからうごかずに待ちつづける者もいる。

軍上層部ぐんじょうそうぶすこしでも被害ひがいすくなく、市民しみん不安ふあんいだかせないために、従魔専用せんよう病棟びょうとうつくり、契約者の遺族いぞく管理者かんりしゃ意向いこう収容しゅうようすることがめられた。

時間じかん指定してい上限じょうげんもうけられているが、遺族の面会めんかい可能かのうで、えさくすりは全て国から配給はいきゅうされる。

人々ひとびとは病棟に歓喜かんきして寄付きふする者もいたが、遺族にとっては最期さいごのこされた家族を手放てばなすようでことわる者も少なくなかった。

ある時、病棟の院長いんちょう就任しゅうにんしたおとこ存在そんざいによって、それまで遺族らが手放さなかった従魔を預ける者があらわれるようになる。

従魔病棟じゅうまびょうとうの院長に就任しゅうにんした男のは、ビルファスといった。


=+=+=+=+=+=+=+=+=+=

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今話では、お試しで読み仮名を入れてみました。
誤字・脱字・感想などありましたら、コメントをよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

俺の娘、チョロインじゃん!

ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ? 乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……? 男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?  アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね? ざまぁされること必至じゃね? でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん! 「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」 余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた! え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ! 【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?

ライバル令嬢に選択肢取られてるんですけど?

こうやさい
ファンタジー
 気がつくと乙女ゲーの世界にヒロインとして転生していた。うん、フィクションなら良くある。  そのゲームの攻略キャラには婚約者がいた。うん、これもある。  けどその婚約者がヒロインの言うはずのセリフ言ってるのはありなの?  うん、タイトルまんまの話。恋愛には発展しません。  本編以外はセルフパロディです。本編のイメージ及び設定を著しく損なう可能性があります。ご了承ください。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。

聖女は聞いてしまった

夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」 父である国王に、そう言われて育った聖女。 彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。 聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。 そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。 旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。 しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。 ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー! ※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

異世界に召喚された様ですが、村人Aと間違えられて追い出されましたorz

かぜかおる
ファンタジー
題名のまんま、特に落ちもないので、暇つぶしにフワッと読んでください。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

完結 幽閉された王女

音爽(ネソウ)
ファンタジー
愛らしく育った王女には秘密があった。

処理中です...