商会を立ち上げたい【完結】

青緑

文字の大きさ
上 下
23 / 32

22

しおりを挟む

「いえ、大丈夫ならば良いのです。私が冒険者組合へ行っていたことは知っているでしょうか?」

「ああ、ベルトンの従者から以前起きたことなら聞いたぞ?なんでも冒険者組合の受付嬢がヘマをしたらしいな。その受付嬢は組合長から厳しい対応を受けたとか。」

「その時、組合長と契約していた取引をやめたので問題は起きなかったかな…と。それとですね。…我が家からの仕入れを打ち切りました。」

「ほう。組合長のことは気の毒としか言えないな。しかし仕入れ行っていたことは私も知らないのだが?何か特殊な仕入れなのか」

「ええ、私の知り合いの職人が作っている物なんです。庶民では買えず、貴族の富裕層でしか回らない代物を。」

「………。」

「すでに再開していますが、貴族の家令などは留守を理由に出回っているかもですね。」

「まさか、あの高値の酒ですか!そりゃ、仕事が回らない筈だ。まぁ気長にやっていくとしよう。うちは在庫もあるし大丈夫だ、セリア嬢が気にすることではない。領地へ行ったら、連絡は難しいだろうな」

「何か有れば向かいますので、お構いなく。」

 その後、学園長から外出の辞令書をもらい受けたセリアは屋敷への帰路に着く。屋敷では方向性が歪んでいた取引を軌道に戻して、友好な関係に戻ることができていた。家令の多くはグラレス領産の酒類を以前より極少量を回すことで、利益を増やせるように動き回っていた。



「…こんなところでしょうか。満足できたでしょうか、キース様。」

「ええ、よく分かりました。話を聞いた限りでは、やはり商業組合に入っていただきたい。我々としては公爵家とのコネクションを持った商会であれば、何処の誰であろうと引き入れたいのですよ。」

「でも断ります。既にアグレス領では元に戻せないほど、形が出来つつありますから。」

「そのようですね。では、いつか会えるときを期待しましょうかね。」

 その会話で終わりと言うように、セリアは席を立ち上がり、護衛と宿を離れていった。それを頃合いに寝たフリをしていた男は身体を戻し、窓越しで去っていく馬車を眺めた。
 キースは起きだした男を見ながら、自分が交渉に失敗したことを自覚する。商業組合の視察官でありながら、益となるであろう個人、または商店を引き入れることがキースの役目だった。しかし頑なにセリアは商業組合に入ることに対して拒絶を示してみせた。
 セリアへの対応を思案し、それから数日の間、商業組合本部への返答を考え続けることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

文官たちの試練の日

田尾風香
ファンタジー
今日は、国王の決めた"貴族の子息令嬢が何でも言いたいことを本音で言っていい日"である。そして、文官たちにとっては、体力勝負を強いられる試練の日でもある。文官たちが貴族の子息令嬢の話の場に立ち会って、思うこととは。 **基本的に、一話につき一つのエピソードです。最初から最後まで出るのは宰相のみ。全七話です。

ええ。私もあなたの事が嫌いです。 それではさようなら。

月華
ファンタジー
皆さんはじめまして。月華です。はじめてなので至らない点もありますが良い点も悪い点も教えてくだされば光栄です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「エレンベール・オーラリー!貴様との婚約を破棄する!」…皆さんこんにちは。オーラリー公爵令嬢のエレンベールです。今日は王立学園の卒業パーティーなのですが、ここロンド王国の第二王子のラスク王子殿下が見たこともない女の人をエスコートしてパーティー会場に来られたらこんな事になりました。

全部忘れて、元の世界に戻って

菜花
ファンタジー
多くの人間を不幸にしてきた怪物は、今まさに一人の少女をも不幸にしようとしていた。前作異世界から帰れないの続編になります。カクヨムにも同じ話があります。

完結 幽閉された王女

音爽(ネソウ)
ファンタジー
愛らしく育った王女には秘密があった。

巷で噂の婚約破棄を見た!

F.conoe
ファンタジー
婚約破棄をみて「きたこれ!」ってなってるメイド視点。 元ネタはテンプレだけど、なんか色々違う! シナリオと監修が「妖精」なのでいろいろおかしいことになってるけど逆らえない人間たちのてんやわんやな話。 謎の明るい婚約破棄。ざまぁ感は薄い。 ノリで書いたのでツッコミどころは許して。

貴様とは婚約破棄だ!え、出来ない?(仮)

胸の轟
ファンタジー
顔だけ王子が婚約破棄しようとして失敗する話 注)シリアス

婚約破棄されたので歴代最高の悪役令嬢になりました

Ryo-k
ファンタジー
『悪役令嬢』 それすなわち、最高の貴族令嬢の資格。 最高の貴族令嬢の資格であるがゆえに、取得難易度もはるかに高く、10年に1人取得できるかどうか。 そして王子から婚約破棄を宣言された公爵令嬢は、最高の『悪役令嬢』となりました。 さらに明らかになる王子の馬鹿っぷりとその末路――

処理中です...