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しおりを挟む「どうかなさいましたか?何か不備があれば、仰って頂いても構いません。」
「いや、不備なんてものはない。ほぼ完璧な資料だったよ。しかしこの教材は、簡略化され過ぎているのではないのかな?」
「詳しく載せても読み飽きれば勉学としては終わりですから、簡略化することにしました。これほどの教材なら飽きることもなく、その中から気になることがあれば自身でお調べになるでしょう。」
「そこまでの事は思いつかなかったな。流石に既存の教材では飽きるだろうしな。」
「ええ。そうでしょうね。まぁ仮に、これで駄目ならば施せることは無いに等しいかもしれませんが。」
公爵夫妻は教材を夢中で読み続けていた。公爵は読み終わるとセリアを尊敬するような眼差しを向けていた。夫人は読むにつれて、申し訳なさそうに俯き、公爵の対応を待つことにした。
そんな状況に置いて行かれていた学園長が我に返ったのを察した公爵は、読んでいた教材を学園長に渡し、しばし中身を確認することになった。
一講師として学園生の作った教材を参考にしてみようと思っていた学園長だったが、教材を読み流していくと、何度か頷いて内容に納得していた。
「うん。これなら簡単に知ることができるだろうね。参考になったよ、セリア嬢。」
「ありがとうございます、学園長。」
「公爵家の方も問題はないかな?私なりにも確認したけど、これ以上の教材はないと言えるが。」
「…ええ。我々は問題ありません。あるとすればナタリーから謝罪があるくらいですかね。ね、ナタリー?」
「はい…。セリア嬢、以前はキツく当たってしまい申し訳ありません。今後は良い関係を取って行きたいと思っております。」
「いえ、私に向けて謝罪する必要はありませんわ。こうして和解できたのですから、なんの問題も無いでしょう?」
「セリア嬢。」
「学園長。学園での沙汰が下りるまで領地へ帰ろうかと思います。」
「それはどうしてだい?最近ではチャール公爵からの便宜で自由な行動が取れているだろう。」
「そうなのですが、キーシュ家から目を付けられてしまいました。なので、関わる機会が来る前に王都を去ろうと思います。またキーシュ家が経営する商会は我が領には近付かないので、良い避難場所かと思いまして。」
「そ、そうか。だがキーシュ家といえば、王都でも一、二を争えるくらいに大きな商会だからな。離れても学園に戻ってきたら、意味がないのではないか?」
「そこは近々、考えがあるので大丈夫でしょう。…ところで公爵閣下、報酬のことですが」
「ああ、報酬はなんでも言ってくれて構わないと以前も話した通りで大丈夫だ。君の助けが欲しい時に頼ると良い。主に我々は領地には帰らず、王都の屋敷に居るからね。」
「感謝します。ところで最近、困ったことなどはありませんか?」
「ん?…まぁ取引先から打ち切りがきたとか、食糧が減ったとか聞くね。我々はさほど痛くもないがね、それがどうかしたのかい?」
交渉が終わり、世間話をしていた最中だった。場が和んでいると、セリアが近況の問題についてコリン公爵に話題を投げた。公爵は思い出すかのように顎に手を当てて考える素振りを見せながら、最近起きていた事を言葉に出していった。
夫人は先日に公爵の決済に悩まされていたため、記憶に新しかった。それを思い出すにつれて夫人は顔色が悪くなっていたが、公爵は夫人に気付かず、セリアに向かって答えていく。
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