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しおりを挟む専属料理長を仲間に引き入れた翌日、簡素な服装に身を固めて騎士随行のもと、料理長と商会へ向かった。貴族子女と違い、働く時間の早い職人達は今日も朝から既に動き回っていた。
そんな中、セリアの姿を見れば商会前に迎えてくれる。その挨拶と共に、各員に紹介を始める。
「おはようございます。今日から、こちらの方に夕刻まで料理長を務めてもらいます。お互いに協力しつつ、彼らに給仕を。」
『はっ。』
商会員が作業を再開し始めた頃、侍女より来訪者の報せを聞く。騎士と侍女からの情報から、商業組合の関係者だと思われた。
「お嬢様、いえ商会長。来訪者が来ております。急であったので、近くの宿屋に一先ず泊まってもらっています。」
「私が見た雰囲気では下っ端という訳でもなく、視察にきた、といえるでしょう。ただ何か慌てている、というのが私の見解です。話してみた感じだと、身分的には平民に近く、しかし話術には長けているかと。」
騎士の一人が具体的に観察した情報を話すが、セリアは相手の情報が少ないため、寝首を掻かれる可能性も視野に入れておく。
「では偵察にきたのかもしれないわね。まあ表通りにある筈の商店がなく、活気も暗いなら仕方ないわね。…あちらの人数は?」
「3人だったかと。1人は御者で、あとの2人は商人風の格好でした。ただアグレス支部の者とは違う可能性が高いです。何より物腰が軽いように見受けられましたから」
セリアは人数を聞いて視察である可能性と、偵察に来た可能性が濃いと思えた。
しかし根回しと、確認することがあるから今日会うのは危険が付きまとう。
「そう。では明日、会いにいきましょう。誰か騎士を伝言に向かわせてちょうだい。もし今日とか、ごねて来たら『今回の話は無かったことに。』と伝えてね。」
「はい、そう伝えます。」
「さて、ではローナ。騎士を2人連れて調査をして頂戴。最悪、王都の組合にも探りを入れて確信を持てるようにして!」
専属侍女の一人であるローナに指示を出しつつ、確証の持てる情報を探してもらう。
「畏まりました。今日はこちらに?」
念のために、帰り道の変更を騎士に伝え、セリアは商会の経営を急ぐ。
「ええ。昨日と同じよ、ただ例の商業組合と宿屋を避けて通るから道順を変更しといてもらえるかしら?」
「はい!お嬢様も今日はお早めに屋敷に戻ってくださいね。」
「ええ、もちろんよ。」
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