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入学
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手続きを済ませたシェルフォードが宿屋に帰って暫くは快適に過ごし、学園からの直送で学生服が届き、学園での入学における日がやってきた。
学園の門を潜ったシェルフォードは、教師に案内されてパーティーをするほどに大きなホールへと来ていた。
一通り学生が集まった頃合いになると、扉が教師によって閉められ、ホールのステージに視線が集まる。
ホール内では立食パーティー用のテーブルに料理が載せられ、ステージに上がっていた学園長の一言でホールは歓声に満たされた。
「今日は同年代での入学記念だ!良い日となることを祈る。そして我々は運が良いぞ、今年は王太子殿下が入学なされた。それでは乾杯!」
『乾杯っ!』
教師陣から入場時に配られていた水の入った容器を頭上に掲げ、一斉に声を張り上げ、開催が始まった。
王太子は周囲から祝われて悦に浸っていたが、その中でウェーブの掛かった青いドレスを着たシェルフォードが1人で立食をする光景が見えていた。
それを訝しんだ王太子は近付こうとするが、祝う周囲の同年代に流され、向かうことが制限されていた。
そんなシェルフォードであるが、実際は入学イベントで起きそうと危惧する、うっかりで王太子に恥をかかせるという嫌がらせのような行為を回避するために避けていた。
シェルフォードの知るイベントでは、婚約者候補であるシェルフォードに向けて足を引っ掛けることや、祝いと称して他の令嬢の飲み物で王太子の学生服が汚れてしまうことが切っ掛けで、悪循環が広がるのだが、前もって知ってしまっているシェルフォードとしては王太子に関わらないことが一番と判断しての行動であった。
だが、そんな思惑を快く見守る者が居ないのも確かな訳で。
「ティタン侯爵令嬢ですね。私は新興貴族であるトレイン男爵家のレイと申します。本日はご入学おめでとうございます。」
「ティタン侯爵令嬢。私はーー」
「ティタン侯爵令嬢、本日はーー」
1人でパーティーの壁に徹していたシェルフォードだが、王太子の近くに行けるのは身分が高い者か、婚約者候補に入っている家柄なので、そこから省かれている子息子女に目を付けられてしまう悪手と化していた。
それでも社交辞令で返していくシェルフォードは疲労すら苦にせず接待し続けた。
そうして入学初日の盛大なパーティーは幕を閉じるのだった。
パーティーが後半に入る頃にはパーティー内で勢力図が仕上がってしまっており、その中で浮いてしまっているのは新興貴族や身分の低い者が支持するシェルフォードのグループだった。
ただ幸いだったのは他の令嬢や王太子を支持するグループは派閥として機能していたが、シェルフォードを支持するグループでは「派閥」という括りより「友人の集まり」という括りに変わっていた事で派閥による争いが起こったとしても、親切で優しく映った彼ら彼女らの間に切っても切れない絆が芽生えていることだった。
こればかりは身分差を傘に放置していた子息子女の誤算だった。
学園の門を潜ったシェルフォードは、教師に案内されてパーティーをするほどに大きなホールへと来ていた。
一通り学生が集まった頃合いになると、扉が教師によって閉められ、ホールのステージに視線が集まる。
ホール内では立食パーティー用のテーブルに料理が載せられ、ステージに上がっていた学園長の一言でホールは歓声に満たされた。
「今日は同年代での入学記念だ!良い日となることを祈る。そして我々は運が良いぞ、今年は王太子殿下が入学なされた。それでは乾杯!」
『乾杯っ!』
教師陣から入場時に配られていた水の入った容器を頭上に掲げ、一斉に声を張り上げ、開催が始まった。
王太子は周囲から祝われて悦に浸っていたが、その中でウェーブの掛かった青いドレスを着たシェルフォードが1人で立食をする光景が見えていた。
それを訝しんだ王太子は近付こうとするが、祝う周囲の同年代に流され、向かうことが制限されていた。
そんなシェルフォードであるが、実際は入学イベントで起きそうと危惧する、うっかりで王太子に恥をかかせるという嫌がらせのような行為を回避するために避けていた。
シェルフォードの知るイベントでは、婚約者候補であるシェルフォードに向けて足を引っ掛けることや、祝いと称して他の令嬢の飲み物で王太子の学生服が汚れてしまうことが切っ掛けで、悪循環が広がるのだが、前もって知ってしまっているシェルフォードとしては王太子に関わらないことが一番と判断しての行動であった。
だが、そんな思惑を快く見守る者が居ないのも確かな訳で。
「ティタン侯爵令嬢ですね。私は新興貴族であるトレイン男爵家のレイと申します。本日はご入学おめでとうございます。」
「ティタン侯爵令嬢。私はーー」
「ティタン侯爵令嬢、本日はーー」
1人でパーティーの壁に徹していたシェルフォードだが、王太子の近くに行けるのは身分が高い者か、婚約者候補に入っている家柄なので、そこから省かれている子息子女に目を付けられてしまう悪手と化していた。
それでも社交辞令で返していくシェルフォードは疲労すら苦にせず接待し続けた。
そうして入学初日の盛大なパーティーは幕を閉じるのだった。
パーティーが後半に入る頃にはパーティー内で勢力図が仕上がってしまっており、その中で浮いてしまっているのは新興貴族や身分の低い者が支持するシェルフォードのグループだった。
ただ幸いだったのは他の令嬢や王太子を支持するグループは派閥として機能していたが、シェルフォードを支持するグループでは「派閥」という括りより「友人の集まり」という括りに変わっていた事で派閥による争いが起こったとしても、親切で優しく映った彼ら彼女らの間に切っても切れない絆が芽生えていることだった。
こればかりは身分差を傘に放置していた子息子女の誤算だった。
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