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反抗の余波-その1

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 その日、ティタン侯爵家にある執務室にて。

 執務室では当主であるガウェインが執事長であるセバスと領地における書類を決済していると、執務室の扉がノックされ、応じると娘シェルフォードの教育係であるメイドが入ってきた。

 そして配達員に立ち会ったメイドから王家の封蝋がされた一通の手紙が執務室へ持ち込まれた。

 手紙に押された封蝋を確認した執事長はペーパーナイフで手紙の端を切りつけ、中にある手紙をガウェインに手渡した。

 手紙の内容を確認し終えたガウェインは手紙を執事長に見せ、メイドにシェルフォードを呼びに行かせることにした。

「やっと許可が下りたようですね。これでシェルお嬢様も、安らかに休めるでしょう。」

「そうだな。シェルはヴェルから勉強を教わっているらしいが、最近どこまで進んでいるか知っているか?」

「いいえ。全てヴェルフォード様に一任しておりまして、確認できておりません。予想ではありますが、ヴェルフォード様が学園で学んだことを詳しく教えるのではないかと。」

「ヴェルもアレが無ければ、俺も気楽に過ごせるんだがな。」

「そうですね。ところで、シェルお嬢様が来られるのでしたら書類を片付けてしまいましょう。」

「ただ何か嫌な予感がするのは気のせいだろうか?俺だけか?」

「生憎、私もです。向かわせたのが、あのメイドであることだと思いますよ。」

「・・・だよなぁ。きっと、いつも通り来てくれるだろうさ。俺が許せば、再指導は無くなるだろうからな。」

「それで済めば、これほど心配しておりませんよ。」

 ガウェインとセバスは教育係の愚痴を溢しながら、黙々と執務机の上に置かれていた書類を死角となる場所へ移動させる2人である。

 当主としては駄目かもしれないが、父親としては娘に出来るところを見せたいと行動するガウェインだった。

『侯爵様。お呼びと伺いまして、シェルフォードが参りました。今、入ってもよろしいでしょうか。』
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