婚約者を追いかけて【休載中】

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「何故だ?…確か、そうだ。ホルム家の息子が、お前のとこの娘に一目惚れした事がキッカケで婚約したと聞いたぞ?」

「ああ。その話の流れで間違いはないな…」

 思い出したことに肯定されたことで、整理のつかないカルロス。

「なら言っている意味が分からん。報告では領民が微笑ましく見守る程に仲が良いらしいが。」

「娘のティリアがな、………んだ。」

「すまん。聞こえなかった、もう一度言ってくれんか?」

「娘のティリアが心病で倒れたんだ。だから…」

 突然言われたことに頭の中が真っ白になったが、カルロスは唾を飛ばしながら食ってかかる。

「なんでティリア嬢が罹るんだ!そんな報告は聞いてないぞ!?」

 クリフは迷惑なと、溜め息を吐きつつハンカチで拭く。

「そうだろうな。誰に似たのだか、あれは生真面目というか、頑固者というか。」

「………(それはお前だろ)」

 クリフの唐突な言い分に、カルロスは心の中で悪態を吐いた。

「使用人でも分かりづらい程に外に出さない娘だからな。執事が気付いた時にはーー遅かったようだ。」

「………」

「ララは倒れて今のところ安静にしているが、再び会えば倒れるだろう。私でも心臓に悪い。」

「そんなに、か。なんなら、御医おいを向かわせるが」

 御医とは国王に代々仕えている医者のことである。

 代々の国王は何かと持病や、流行はやり病で倒れる国王がいるため、専属の医者が存在している。

 もちろん国王にいるように、王妃や王子などといった王族には別の御医が仕えている。

「いや良い。もし力になってくれるのなら、まずは婚約を破棄してほしい」

「その後は考えているのか?」

「ああ。我々家族は他国に亡命しようと思う」

 旧知の仲であるが故に、クリフの発言した言葉に非難をする。

「っ!お前はそれがどういうことなのか、分かっているのか!?亡命したら、ここに戻れなくなるんだぞ!」

「亡命後に貴族位を与えられたら、だろ?ちょうど遠い親戚筋の国が存在している。以前、ティリアが幼少の時に会いに向かった事があるから大丈夫だろう」

 貴族となっている家に何か問題が起きた際、他国に亡命することは、どの国でも暗黙の了解とされている。

 これには国の許可は通常必要とされないが、他国に行くには国境を越えなければならない。

 国境を越えるには必要な資格と、証明書などが必要であり、多少の額を支払わなければならず、出す物の中には国王か所属する組織の長による判が必要である。

「ほっ。そうか。そこまで考えているのであれば、俺は何も言えんな。ーーん?おい、ちょっと待て。お前のいう親戚筋って、聞いたことがないんだが」

 高位貴族が亡命する際、大抵は自家のコネクションを用いて袖の下を与える事で行なうことが多い。
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