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第25話
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あたし達の前に突如として現れた黒い靄の塊は、それはそれは愉快そうに高笑いする。
「あははははっ! いいわ、素敵なお涙ちょうだいシナリオだわ! あははっ!」
あたしはその靄が広げている、狂ったような目に見覚えがあった。
みずっちが憑依されている時にも、みずっちの体を介して見せた目と同じだったのだ。
ってことは、あの靄ってもしかして……
「まさか……魔女の本体なの!?」
あたしの予想に対して、靄は再び笑った。
「あははっ! そうよ? 驚いた? あの程度でわたしを全部浄化できてると思ったら大間違いなんだから! ワタシは、私の欲望を叶えるために何度でも復活するのよ!」
まるで何十人もの人が同時に喋っているような声だった。あらゆる声が入り交じって重なっているような不協和音は、ただひたすら不気味だった。
一人称があたしとか私とかワタシで統一性がないのも、きっとそのせいなんだと思う。今まで欲望を吸い取られてきたたくさんの魔法少女達の意識が混ざり合っているんだ。
すると、さっきまで愉快そうだった魔女は声のトーンを落とした。
「……なのにあんたときたら、余計なことしちゃってさ! あと少しだったのよ! ミズホの願いと、それにくっついてる欲望に乗じて、あたしの積年の恨みを晴らすチャンスだったのに! どうしてくれるのよ、バーカバーカ!」
魔女の話を聞きながら、あたしは呆気にとられてしまった。
魔女の身勝手な目的と、そのためにみずっちを利用しようっていう魂胆に呆れたのもあったけど。
なんていうか、こいつ……
「子供か! 子供の駄々か!」
自分の計画がうまく行かないからって、原因を相手に押しつけて、挙げ句の果てに「バーカバーカ」って小学生か!
すると、今度は「ふーんだ!」とすね始める魔女。
「子供でなにが悪いっていうのよ! だいたい貧乳幼女体型のあんたに言われたくないわ」
そういう魔女はただの靄じゃんか!
それなのに人のスタイルをバカにするなんて……くっそー。
すると、寄り添ったままのみずっちが言う。
「たぶん、ただの挑発。のっちゃったらダメ。それに、わたしは……ノ、ノゾミのスタイルも、嫌いじゃない」
「どういうフォローなのそれはー!」
勝手に頬を赤く染めるみずっちだけど、ぜんぜんなんの解決にもなってないよ!
すると今度は、つきのん達もあたしのそばにやって来た。
魔女を警戒しながらあたし達を立たせると、つきのんは呆れたようなため息交じりに言った。
「もう、しっかりしてくださいまし。さっきまでは驚くほどの戦いを見せておりましたのに……急にやりとりが子供っぽくなりましてよ?」
そんなことを言うつきのんのたわわな胸に、あたしの腕が不可抗力で当たってしまった。
ふにっと形を変える豊満な実りに、いよいよあたしは我慢できなくなった。
「誰が子供っぽいんじゃー! これでも立派なJKなんだからー!」
……なんてあたしがガウガウ吠えると、周りも「まあまあまあ」と宥め始める。
そしてひとしきり騒ぎ終えると、あたし達はケラケラと笑いだしちゃった。
「もう……急になに? このいつもの緩い感じ!」
あたしが言うと、つきのんも「ふふふっ」と笑った。
「ついさっきまでずっとシリアスでしたのに……なんだか、拍子抜けですわね」
すると、みずっちまで笑って言った。
「でも、その方がわたし達らしいと思う」
みずっちの言うとおりだとあたしも思った。
前向きに、ポジティブに、時に能天気に。毎日とにかく楽しく過ごすのが一番。
それがあたしのモットーだし、今までだってそうしてきた。
もちろんそれを好まない人や、知らず知らずのうちに傷つけてしまうこともあるってわかったし、これからはやりすぎないよう気をつけるけど。
やっぱり、シリアスでマジメ過ぎるのは疲れちゃうもん。
だからこうして、みんなで笑い合って困難を乗り越える。
それがあたし達のやり方なんだって、今なら胸を張って言える。
なんて思いながら、みんなでケラケラ笑っていると。
「ちょっと! もうアタシのこと忘れてるでしょ! 私を無視するなー!」
魔女がぷんすか怒っていた。靄の一部がぷしゅっ! と繰り返し吹き出していて、それで怒りを表現しているみたい。
「けれど……今のでわたし、ようやくわかったわ。ノゾミ、あんたが無尽蔵に魔力を垂れ流している理由にね」
魔女は目を細めると、ジーッとあたしを睨んできた。
「あなたの魔力が無尽蔵なのは、そのポジティブさにあるんだわ。ポジティブだからこそ、いろんな可能性を信じている。疑うことなく、夢は叶うものだと信じ切っている。その純粋な信じる心が、『なにかを願う』という『夢のエネルギー』を作り続けているの。いわば特異点的存在なのよ」
…………ん? どういうことだ?
つまり、あたしが普段からポジティブで、能天気だからこそ、ラミラミの言っていた『魔力タンク』状態ってこと?
ただそれって、褒められているのか貶されているのか呆れられているのか、よくわかんないなぁ。
「でも、そういうことならあたしの計画は変更ね! 特異点であるノゾミの体を手に入れちゃった方が効率はいいもの。無限に私の欲望は叶え放題! だ・か・ら……ワタシにその体、ちょうだい!」
たちまち、靄から触手のような物体が伸びてきて、あたしに襲いかかってくる!
でも、あたしに届く寸前で蹴散らす影が四つ。
「……みんな!」
あたしの目の前で触手を払ったのは、つきのんに若葉ちゃん、かすみんにむっちーだ。
「まったく。なんとも締まりのないラスボスですこと!」
つきのんが鉄扇を構えながら呆れる。
「でもぉ、マスコットキャラみたいでかわいいですよねぇ」
ハンマーを背負いながら、若葉ちゃんがのほほんと笑顔を浮かべる。
「見た目で判断しちゃダメだよ。ああいうのが一番厄介なのは、二次元のお約束なんだから」
二刀流の切っ先を靄へ向けながら、かすみんが敵を睨む。
「なんにせよ、戦い甲斐のない弱っちい相手だし、とっとと終わらせようぜ」
むっちーが手甲の魔導器を構える。
そうだ、みんなの言うとおりだ。
こんなわけのわからない妖怪に構っている場合じゃない。
いい加減、この戦いに終止符を打たないと!
「よーし……やったるぞ! ねっ、みずっち!」
「……うん!」
あたしとみずっちも魔導器を構える。
六人の魔法少女が、一斉に魔女の本体へたてついた。
魔女にとっては、そのことが相当不満らしい。
「なによ、なによなによなによ! 寄って集ってアタシ一人を虐めようっての!? 酷いわ酷いわ! 泣いてやるんだから!」
子供じみたことを言いながら、魔女の本体はカッと目を見開く。
たちまち、いろんな魔法が雨あられのように飛んできた。
あたしも含め、みんなが散り散りになって避ける。そして隙を見つけては攻撃をしかけていく……のだけど。
「ダメですわ! この魔女、靄の状態では攻撃が通りませんの!」
せっかく接近し、魔導器を振るっても、みずっちやつきのん達の攻撃はすり抜けてばかりだった。通らないとわかっているからか、魔女は避けることすらしない。
そうしている間にも、敵の魔法攻撃は止むことなくあたし達を襲う。
攻撃が効かないなんて、どうしたらいいってのよ!
半ばやけっぱちになりながら、あたしもレンレンを振るって攻撃をしかける。
目の前に展開した魔法陣から火の玉が生まれ、魔女へ飛んでいく。
「無駄よ無駄! そんなへっぽこな攻撃、当たるもんですか!」
魔女はケラケラ笑いながら避けた。靄状だから体が軽いんだと思う。移動もスイスイ素早くって、ぜんぜん魔法が当たらない。
みずっち達は、そうやって避けてばかりの魔女の体へ、何度も何度も魔導器を振るう。どこかに攻撃の通じる場所があるかもしれない……そんな可能性を一つ一つ潰すみたいな攻撃の連続だった。
一方、あたしの魔法は避けられてばかり。下手に大がかりな魔法を放つと味方にも当たっちゃうから、かなり神経を使う作業で…………、
「……あれ? なんか変だな」
ふとあたしは攻撃を止める。魔女の行動に違和感を覚えたからだ。
さっきから魔女は、みずっち達の攻撃は全然避けない。薙刀も、鉄扇も、ハンマーも刀も手甲も……どれも避けようって動作は見せていない。
なのに、あたしの魔法だけは避けている。そこの違いはなんなんだ?
「…………もしかして、そういうこと!?」
一個だけ理由に思い至り、あたしは大がかりな攻撃をイメージした。
味方を巻き込まないよう小さな魔法ばかり使っていたけど、今回ばかりはみずっち達の力を信じるしかない。
「みんな、ハデなの行くよ! ……避けて!」
叫びながらレンレンを振るう。すると、魔女の頭上に広範囲の魔法陣が展開。
みずっち達は気づいてすぐに陣の外へ逃げたけど、魔女は逃げ切れなかった。
直後、魔法陣から強力な雷撃が降ってきて、魔女に直撃する。
「――ぎゃっ!」
やった! 効いた! あたしの予想通り!
あいつはさっきから物理攻撃を避けようとはしなかったけど、あたしの魔法攻撃だけは避けていた。それは、魔法攻撃だけは避けないと喰らっちゃうからだ!
その予想は的中だった。これで魔女の攻略法は理解できたも同然!
「ノゾミ……さすがだね」
あたしのそばに着地したみずっちが笑顔で褒めてくれた。あたしはそれに笑顔で応えると、再び魔女へ目を向ける。これで終わるような敵じゃないもんね、きっと。
「よくもやってくれたわねぇ……そっちがその気なら、私はあんた達全員の心を折ってやるんだから!」
ぷすぷすと煙を昇らせながら魔女が叫ぶ。再び大きく目を見開いた。
たちまち、魔女の目の前に巨大な魔法陣が展開。
バチバチと電気のようなものを奔らせながら、ゆっくりと回転し始める。
「これまで何人もの魔法少女から吸収してきた欲望のエネルギーを、全部使ってお見舞いする超特大魔法よ! とくと味わいなさい!」
回転速度が増していき、それに比例して迸る電気の量も増えていく。
きっとエネルギーをチャージしてるんだ。言葉通り、特大なヤツが来る。
「ど、どうしたらいいんですの? こんなの、避けるのも防ぐのも……」
あまりに巨大な魔法陣を前に、つきのんが気圧されたように言う。でも、つきのんの気持ちはあたしにもわかる。
魔女の言葉が事実なら、とんでもない人数の魔法少女がありったけの魔力を注ぎこんで打ってくる魔法みたいなものだ。それも超特大。
けど、こっちで魔法を放てるのはあたしだけ。あたし一人では、いくら無尽蔵に生み出せるって言っても瞬間的な魔力量で勝てるかどうか……。
「……でも、攻撃の手段がないわけじゃないよね!」
あたしは決してうろたえず、前向きに状況を考える。
魔法を撃てるのはあたしだけ。
でも、魔力を生み出しているのはあたしだけじゃない。
「あいつの魔法に、こっちだって正面からぶつかってやるんだ。……そのためにみんな、あたしに力を貸して!」
すると、みずっちとつきのんがすぐにあたしのそばへ来てくれた。
「構いませんけど、どうするんですの!?」
そう訊ねつつも無条件に信頼してくれている感じが、あたしはすごく嬉しかった。
「あいつに負けないぐらいの特大魔法を、こっちだって撃てばいいんだよ。あたしがレンレンを……魔導器を通して、攻撃のイメージを作る。そこにみんなの、ヤツを倒したいって想いと魔力をありったけ注いで!」
このステッキは、あたしの「こうしたい!」という形を創造する力がある。
なら、「みんなの思いや魔力を合体させたい!」と願いを想像すれば、合体技だって撃てると思うんだ。
「あいつには、魔法以外に通じない……ノゾミの方法しか、きっと、勝つ手段はない」
みずっちが率先して、あたしの提案を受け入れてくれた。そっとレンレンに触れる。
それを見て、つきのんもあたしの隣でレンレンに手を添える。
「みずっち、つきのん……ありがとう! ほら、みんなも手伝って!」
あたしが外野で戦いを見守っていた他の魔法少女達にも声をかける。
頷き合い、気合いを入れ直し、みんながあたし達のところに集まってくる。
あたしを中心に、みずっちとつきのんがサイドからレンレンに手を添える。若葉ちゃんやかすみん、むっちーがあたし達三人の肩に手を添える。
そして他の魔法少女達は若葉ちゃん達の肩に、次の人は前の人の肩に……それぞれ手を添えて魔力を流すルートを作る。
準備は整った! あたしはスッと深呼吸して、目を閉じる。
特大魔法のイメージを、明確に、的確に作っていく。
魔法少女みんなの魔力と、あいつを倒したいという思いを、徐々にステッキへ集めていく……その感覚を意識していく。
体が熱い。まるで、みんなの熱意が通り抜けていっているみたいだ。
集まってくるたびに、ステッキの前では一回り、また一回りと魔法陣が広がっていく。
やがては魔女が広げている魔法陣と同サイズにまで拡大した!
特大魔法陣の完成だ――けど、一足遅かった。
「みんな仲良く、絶望に染まっちゃえ!!」
魔女が巨大な黒い光線を放ったのだ。
ぐんぐんこちらに近づいてくる魔女の攻撃に、あたしは正直、焦っちゃった。
すぐにでも攻撃に移りたい。でも、ちゃんとチャージできているか不安にもなる。
どうしよう、どうしたらいい? そんな自問が頭の中をぐるぐる巡った。
でも――みずっちがあたしの手を握ってくれた。
つきのんもしっかり握ってくれた。
あたしの肩に添えられているかすみん達の手にも力がこもった。
それだけであたしは、すべての心配が吹き飛んだ。不安が消え去った。決心がついた。
――ああ。きっと、そういうことだったんだね。
あたしは、みんながいたから前向きでいられたんだ。
あたしがポジティブなんじゃない。みんながポジティブでいさせてくれたんだ。
だからこそあたしは、手を握ってくれたなんて些細な行動で、驚くほど前を向けるようになれたんだ。
あたしは魔女の攻撃を、真っ向から捉える。
これで最後にするんだ。
そんなありったけの思いを込めて、あたしは叫ぶ!
「みんなの思いと願いを――くらええっ!!」
瞬間、轟音を響かせて巨大な光線が発射された!
こっちの白い光線と、向こうの黒い光線。二つがぶつかり合う。
互いに拮抗し合う攻撃。どちらも引かない。気を抜けば呑まれそうだった。
でも、あたし達は負けない、負けてなんかいられない!
あたしは自分のありったけの魔力を注ぎこむ。
すると、拮抗していたように見えた力に、徐々に変化が現れた。
あたし達の攻撃が、ちょっとずつ黒い攻撃を押し戻していった。
ここが正念場だ! あたしは叫んでいた。
「い……けええぇぇっ!」
やがて――黒い光線すらも飲み込んで、魔女を直撃する。
「ぎやあああっ!」
魔女の断末魔が響く。あたし達の攻撃によってどんどん散らされ、小さくなっていく。
ほとんど消えかけの靄は、最後の最後に叫んだ。
「あ、あたしの夢が……願いがああぁぁ!」
……やがて、魔法の光が細く収束していき、消える。
目の前に浮んでいた魔女は、もう跡形もない。
その瞬間、あたし達は勝利を確信し――
「いやったあ! 終わったあああぁ!」
妙に長く感じた、たった数時間の最終決戦の集結に、歓喜の声を上げた。
すべての戦いが終わったあと、あたし達はボロボロなお城をちょっとでもキレイにするため、動ける人総出で瓦礫の撤去作業などを手伝った。
まるで文化祭の後片付けみたいだなー、なんて思いながら作業していると、他にも同じようなことを考えている子もたくさん居たみたいで、夜は女王のお城のお庭でキャンプファイアーだ! なんて流れになった。
もちろん誰も異論はなく、使えない廃材を集めてタワーを組み、夜の宴の準備も着々と進んでいった。
ところで、魔女の本体である靄を撃退したあと、不思議なことが起こった。
それは、ユニっちの人格がちょこっと変化したのだ。
「みなさん。このたびは、エルドラのためにありがとうございました。女王としてお礼申し上げます」
幼女の姿のままだけど、そこそこ大人びた喋り方を普通にこなしたのだ。
「そんな驚かないでください。わたくしは自分が欲望に蝕まれるのを阻止するため、侵食されてしまった一部の記憶を抜き取り、『無垢』な状態で心の時を止めていました。それが、今回の件でわたくしの記憶が浄化されて、肉体に戻ってきた。それによって時の流れが再開したのです」
今はまだ肉体は無垢な幼女のままだけど、心に合わせてどんどん急成長するらしい。
便利な体だな……と眺めていると、ユニっちはあたしの手を取って言った。
「ノゾミ。そしてミズホ、ツキノにワカバ、カスミにムサシ……みなさんには本当に、たくさんの辛い思いと悲しい思いをさせてしまいましたね。ごめんなさい」
深々と頭を下げるユニっちに、あたしは驚いちゃった。
「そ、そんな! 謝らないでよ! 確かにそういう思いもしたかもしれないけど、基本的には毎日楽しかったし!」
ニコッと笑顔で応えるあたし。
でもその直後、パシッと頭をひっぱたかれる。
「相手は女王様。ちゃんと敬語を使う」
みずっちが呆れたようにあたしを見ていた。
敬語かあ、苦手なんだよなぁ……。
すると、ユニっちはクスクスと笑った。
「あなた達は、本当に心が強い方達ばかりなんですね。わたくしは、人々の欲望に抗えず、心を病みそうになってしまった。あなた達のように強い心を持っていれば、抗えたかもしれないのに」
ユニっちは目を伏せる。
でもね、違うよユニっち。あたし達だって最初から強かったわけじゃないよ。
こうして支え合える人がいるから、友達と呼べる人達がいるから、強くなれただけなんだよ。
あたしも、自分が前向きポジティブでいられる本当の理由に気づいたしね。
だからね、とあたしはユニっちに言った。
「そういうの、一人で抱え込んじゃダメだよ」
あたしはしゃがんでユニっちと視線を合わせた。
「だから、あたし達と友達になろうよ」
目を丸くしたユニっち。あたしの友達宣言に驚いているのは間違いない。
クリクリの目をぱちくりさせたあと、ユニっちは子供らしい笑顔を浮かべた。
「はい……ぜひっ!」
嬉しそうなユニっちを見ていると、あたしまで嬉しくなっちゃう。
二人でニコニコしながら、嬉しさを噛み締めていると、ユニっちは思い出したように言った。
「ではそんなお友達であるみなさんが、揃って現世に帰ることができ、かつしっかり夢を見続けられるよう、持ち続けられるよう……わたくしも、女王としての勤めを果たさないとなりませんね」
おお、ここで改めて女王即位の宣言!
ユニっち、かっこいい!
すると、カマカマ先生が横からソッと入り込んでくる。
「でも、それじゃあ結局、エネルギー供給の問題は解決してないわ」
カマカマ先生の言うことはその通りだった。
今のままじゃ、結局魔法少女を呼び込んで、夢のエネルギーを吸収させるしかない。
ラミラミの言っていた、魔力供給タンクであるあたしの体じゃないけど、そういうのに近いなにかが都合よくないものかな。
そんなことを考えていた時だ。
あたしはふと、一つの可能性に行き着いた。
「ようは、他の魔法少女が夢を犠牲にせず、夢のエネルギーを常に吸収、循環させるものがあればいいんだよね?」
あたしが訊ねると、ユニっちとカマカマ先生が躊躇いがちに頷いた。
そういうことなら、試してみる価値はあるかもしれない。
あたしはさっそく、その案をみんなに提案してみた。
その日の夜は、エルドラでの最後の夜ということが決まり、ユメガッコーの畑の作物を全部使っての晩餐会が開かれた。
盛大なキャンプファイアーも天まで昇り、綺麗な夜景と満天の星空を存分に味わい尽くした。
明日にはみんな、現世に帰る。夢の世界ともお別れすることにある。
そこに名残惜しさはなさそうだった。あたしだってない。
だって、夢を見ればいつもそこにある世界なんだもん。
エルドラはいつも、夢を見る人のそばにある。
だから、この別れを惜しむという発想自体が成立しない。
エルドラでの最後の夜を、みんな思い思いに過ごし、疲れた人から倒れるように爆睡し。
気がつけば、あっという間に出発の朝になっていた。
「それでは、本当にいいのですね? ノゾミ」
ユニっちが最後の確認を口にした。あたしは躊躇わずに頷く。
「確かにあなたの言うとおり、ノゾミはあらゆる可能性を信じ切っている存在……無限の夢を放出し続けている特異点です。あなた一人が願いを叶えれば、夢のエネルギーを吸収・循環する反永久機関は、自動的に組み上がるでしょう」
そう、それこそがあたしの提案だった。
ラミラミも魔女も言っていた。あたしは夢のエネルギーを無尽蔵に垂れ流している存在だって。
エルドラは魔法少女の願いを叶え、そのエネルギーを吸収することで存続してきた。
でも本来、人の願いや夢は儚いもの。吸収してもすぐに枯渇して持続しない。
だからこそエルドラの存続には、今まで何人分もの夢や願いを吸収する必要が生じていた。
けど、あたしはその範疇を超えたエネルギー供給タンクだ。
そのあたしが願いを叶えれば、エルドラは当然、あたしからエネルギーを吸収しようとする。
そしてあたしのエネルギーは尽きないから、ずっとずっとあたしから吸収し続ける。
そうすれば、あたしが死なない限り、エルドラのエネルギー問題はバチッと解決するってわけだ。
「ただ、時にはそれがあなたを苦しませることになるかもしれません。ノゾミが未曾有の危機に瀕して絶望しかけたとしても、際限なく夢は吸い取られ続けてしまいます。それでも後悔はないんですね?」
「うん! だって、それがエルドラのためになるんだもん。みんなの夢のためになるんだもん。だったらバッチこいだよ!」
あたしは力強く即答した。
そんなのぜんぜん苦にならないよ。
むしろあたしには他にもっと心配なことがある。
だってあたしが夢を叶えちゃったら、他のみんなはここで夢が叶えられなくなるんだもん。
「みんなは、あたしが代表で夢叶えちゃっていいの?」
みんなのことを振り返りながら訊ねると、いの一番につきのんが口を開いた。
「私はもう、かまいませんわ。生の脚がなくとも、強く生きるに必要なものは得られましたの」
それがなんなのか、あたしはあえて訊かなかった。訊かなくても察しがついたしね。
つきのんは、強いよ。だって、脚をなくしてもエルドラを旅して、伝説の義足を手に入れた。
それだけの冒険をできる人なんだもん。これからもずっと、心折れずにやっていける。
「わたしもぉ、こうして仲良くしてもらえる人がたぁくさんできたから、願いは叶っちゃいましたぁ」
若葉ちゃんは相変わらずふわっと笑って応えた。
「私もよ。柳瀬川望実。あなたが人を信じることの大切さと強さを教えてくれた。それだけでも、私はエルドラに来て良かったと思ってる」
かすみんが笑顔を浮かべる。
かすみんは、ラミラミに対して啖呵を切ったことと、今の言葉がすべてなんだと思う。
その立役者があたしか……うう、泣かせてくれるねぇ!
「私はただ、強いヤツと戦いたかっただけだしさ。特に願いってものもないし、気にすんな」
むっちーは相変わらずむっちーだった。ほんと、この人のぶれないところ大好き。
そしてあたしは、すぐ隣にいるみずっちへ視線を向けた。
彼女はためらうことなく頷いてくれた。
「帰ったら、一緒にクレープ、食べに行くんでしょ?」
ニコリと笑ってくれるみずっちに、あたしも満面の笑みで「うん!」と頷いた。
きっとみずっちの願いは、それだけだ。今までの本音も全部吐き出し、受け止めた上で、それでも親友同士仲良しで居続けること。
それは、わざわざここで叶える願いじゃない。
現世で、二人でがんばって維持し続けていくべき夢なんだ。
まあ、そんなわけで。
他の魔法少女達も含め、だーれも異論はないそうだ。
皆が皆、自分の夢はとうに叶っているという。
「わかりました。ではノゾミ……あなたの願いはなんですか?」
あたしは深呼吸して、昨日の晩からずっと考えていた願いを思い出す。
あーでもないこーでもないと、ずーっと悩んでいた願い。
それを、今――言葉に乗せる。
「みんなで仲良く現世に帰って、人生を謳歌する上での最高の関係を維持し続けながら、毎日明るくハッピーに暮らせるように、健康にも気を遣いながら――」
「「「「願いが長いよ!」」」」
と、一斉にみんなからのツッコミが飛んできて、あたしはビックリしてしゃっくり出ちゃった。
直後、ちょっとだけシーンという空気になり。
やがて、みんなでケラケラと笑った。
ああ、うん。こういう感じ、あたし大好きだなぁ。
だから、改めてみんなに向けて言ったのだ。
「まあ、こんな感じで……現世に帰っても、みんな仲良しでいようね!」
瞬間、あたし達魔法少女を囲うように、大きな魔法陣が展開した。
最後の言葉が願いとして認識された。これで願いが叶う。
魔法陣からホタルのように光の粒が昇った。
キレイな魔法をこの目に焼き付けようとする途中、あたしは魔法陣の外で見送る人達にも目を向けた。
あたし達のことを導いてくれた、カマカマ先生。
先生が持っている、なんだかんだで相棒だった、レンレン。
そして、この世界を守るために女王で居続けることを決めた、生まれて初めてできた異世界の友達、ユニっち。
「そうだ、ユニっち! 提案提案!」
こんなタイミングでも良いアイディアが閃くなんて、あたしは将来どんな大物になることやら。
キョトンとしているユニっちに、あたしは笑顔を向けた。
「女王のお仕事が大変で気晴らししたくなったら、現世においでよ。案内してあげるからさ! みんなで一緒に遊ぼ!」
ユニっちにとっては思わぬ誘いだったせいか、彼女は無言で目をパチクリさせた。
でも、すぐに子供らしい笑顔で答えてくれた。
「はい! 必ず伺います! 楽しみにしていますから……それまでどうか、お元気で!」
次第にあたし達の姿は、粒子状になって散っていく。
体が全部消える前に、あたしは大きく大きく手を振った。
「ありがとう! すっごくすっごく、楽しかったよ!」
声が届いて、二人は手を振ってくれた。
目の前が真っ暗になっても、あたしの目には、その姿がずっと映っていた。
「あははははっ! いいわ、素敵なお涙ちょうだいシナリオだわ! あははっ!」
あたしはその靄が広げている、狂ったような目に見覚えがあった。
みずっちが憑依されている時にも、みずっちの体を介して見せた目と同じだったのだ。
ってことは、あの靄ってもしかして……
「まさか……魔女の本体なの!?」
あたしの予想に対して、靄は再び笑った。
「あははっ! そうよ? 驚いた? あの程度でわたしを全部浄化できてると思ったら大間違いなんだから! ワタシは、私の欲望を叶えるために何度でも復活するのよ!」
まるで何十人もの人が同時に喋っているような声だった。あらゆる声が入り交じって重なっているような不協和音は、ただひたすら不気味だった。
一人称があたしとか私とかワタシで統一性がないのも、きっとそのせいなんだと思う。今まで欲望を吸い取られてきたたくさんの魔法少女達の意識が混ざり合っているんだ。
すると、さっきまで愉快そうだった魔女は声のトーンを落とした。
「……なのにあんたときたら、余計なことしちゃってさ! あと少しだったのよ! ミズホの願いと、それにくっついてる欲望に乗じて、あたしの積年の恨みを晴らすチャンスだったのに! どうしてくれるのよ、バーカバーカ!」
魔女の話を聞きながら、あたしは呆気にとられてしまった。
魔女の身勝手な目的と、そのためにみずっちを利用しようっていう魂胆に呆れたのもあったけど。
なんていうか、こいつ……
「子供か! 子供の駄々か!」
自分の計画がうまく行かないからって、原因を相手に押しつけて、挙げ句の果てに「バーカバーカ」って小学生か!
すると、今度は「ふーんだ!」とすね始める魔女。
「子供でなにが悪いっていうのよ! だいたい貧乳幼女体型のあんたに言われたくないわ」
そういう魔女はただの靄じゃんか!
それなのに人のスタイルをバカにするなんて……くっそー。
すると、寄り添ったままのみずっちが言う。
「たぶん、ただの挑発。のっちゃったらダメ。それに、わたしは……ノ、ノゾミのスタイルも、嫌いじゃない」
「どういうフォローなのそれはー!」
勝手に頬を赤く染めるみずっちだけど、ぜんぜんなんの解決にもなってないよ!
すると今度は、つきのん達もあたしのそばにやって来た。
魔女を警戒しながらあたし達を立たせると、つきのんは呆れたようなため息交じりに言った。
「もう、しっかりしてくださいまし。さっきまでは驚くほどの戦いを見せておりましたのに……急にやりとりが子供っぽくなりましてよ?」
そんなことを言うつきのんのたわわな胸に、あたしの腕が不可抗力で当たってしまった。
ふにっと形を変える豊満な実りに、いよいよあたしは我慢できなくなった。
「誰が子供っぽいんじゃー! これでも立派なJKなんだからー!」
……なんてあたしがガウガウ吠えると、周りも「まあまあまあ」と宥め始める。
そしてひとしきり騒ぎ終えると、あたし達はケラケラと笑いだしちゃった。
「もう……急になに? このいつもの緩い感じ!」
あたしが言うと、つきのんも「ふふふっ」と笑った。
「ついさっきまでずっとシリアスでしたのに……なんだか、拍子抜けですわね」
すると、みずっちまで笑って言った。
「でも、その方がわたし達らしいと思う」
みずっちの言うとおりだとあたしも思った。
前向きに、ポジティブに、時に能天気に。毎日とにかく楽しく過ごすのが一番。
それがあたしのモットーだし、今までだってそうしてきた。
もちろんそれを好まない人や、知らず知らずのうちに傷つけてしまうこともあるってわかったし、これからはやりすぎないよう気をつけるけど。
やっぱり、シリアスでマジメ過ぎるのは疲れちゃうもん。
だからこうして、みんなで笑い合って困難を乗り越える。
それがあたし達のやり方なんだって、今なら胸を張って言える。
なんて思いながら、みんなでケラケラ笑っていると。
「ちょっと! もうアタシのこと忘れてるでしょ! 私を無視するなー!」
魔女がぷんすか怒っていた。靄の一部がぷしゅっ! と繰り返し吹き出していて、それで怒りを表現しているみたい。
「けれど……今のでわたし、ようやくわかったわ。ノゾミ、あんたが無尽蔵に魔力を垂れ流している理由にね」
魔女は目を細めると、ジーッとあたしを睨んできた。
「あなたの魔力が無尽蔵なのは、そのポジティブさにあるんだわ。ポジティブだからこそ、いろんな可能性を信じている。疑うことなく、夢は叶うものだと信じ切っている。その純粋な信じる心が、『なにかを願う』という『夢のエネルギー』を作り続けているの。いわば特異点的存在なのよ」
…………ん? どういうことだ?
つまり、あたしが普段からポジティブで、能天気だからこそ、ラミラミの言っていた『魔力タンク』状態ってこと?
ただそれって、褒められているのか貶されているのか呆れられているのか、よくわかんないなぁ。
「でも、そういうことならあたしの計画は変更ね! 特異点であるノゾミの体を手に入れちゃった方が効率はいいもの。無限に私の欲望は叶え放題! だ・か・ら……ワタシにその体、ちょうだい!」
たちまち、靄から触手のような物体が伸びてきて、あたしに襲いかかってくる!
でも、あたしに届く寸前で蹴散らす影が四つ。
「……みんな!」
あたしの目の前で触手を払ったのは、つきのんに若葉ちゃん、かすみんにむっちーだ。
「まったく。なんとも締まりのないラスボスですこと!」
つきのんが鉄扇を構えながら呆れる。
「でもぉ、マスコットキャラみたいでかわいいですよねぇ」
ハンマーを背負いながら、若葉ちゃんがのほほんと笑顔を浮かべる。
「見た目で判断しちゃダメだよ。ああいうのが一番厄介なのは、二次元のお約束なんだから」
二刀流の切っ先を靄へ向けながら、かすみんが敵を睨む。
「なんにせよ、戦い甲斐のない弱っちい相手だし、とっとと終わらせようぜ」
むっちーが手甲の魔導器を構える。
そうだ、みんなの言うとおりだ。
こんなわけのわからない妖怪に構っている場合じゃない。
いい加減、この戦いに終止符を打たないと!
「よーし……やったるぞ! ねっ、みずっち!」
「……うん!」
あたしとみずっちも魔導器を構える。
六人の魔法少女が、一斉に魔女の本体へたてついた。
魔女にとっては、そのことが相当不満らしい。
「なによ、なによなによなによ! 寄って集ってアタシ一人を虐めようっての!? 酷いわ酷いわ! 泣いてやるんだから!」
子供じみたことを言いながら、魔女の本体はカッと目を見開く。
たちまち、いろんな魔法が雨あられのように飛んできた。
あたしも含め、みんなが散り散りになって避ける。そして隙を見つけては攻撃をしかけていく……のだけど。
「ダメですわ! この魔女、靄の状態では攻撃が通りませんの!」
せっかく接近し、魔導器を振るっても、みずっちやつきのん達の攻撃はすり抜けてばかりだった。通らないとわかっているからか、魔女は避けることすらしない。
そうしている間にも、敵の魔法攻撃は止むことなくあたし達を襲う。
攻撃が効かないなんて、どうしたらいいってのよ!
半ばやけっぱちになりながら、あたしもレンレンを振るって攻撃をしかける。
目の前に展開した魔法陣から火の玉が生まれ、魔女へ飛んでいく。
「無駄よ無駄! そんなへっぽこな攻撃、当たるもんですか!」
魔女はケラケラ笑いながら避けた。靄状だから体が軽いんだと思う。移動もスイスイ素早くって、ぜんぜん魔法が当たらない。
みずっち達は、そうやって避けてばかりの魔女の体へ、何度も何度も魔導器を振るう。どこかに攻撃の通じる場所があるかもしれない……そんな可能性を一つ一つ潰すみたいな攻撃の連続だった。
一方、あたしの魔法は避けられてばかり。下手に大がかりな魔法を放つと味方にも当たっちゃうから、かなり神経を使う作業で…………、
「……あれ? なんか変だな」
ふとあたしは攻撃を止める。魔女の行動に違和感を覚えたからだ。
さっきから魔女は、みずっち達の攻撃は全然避けない。薙刀も、鉄扇も、ハンマーも刀も手甲も……どれも避けようって動作は見せていない。
なのに、あたしの魔法だけは避けている。そこの違いはなんなんだ?
「…………もしかして、そういうこと!?」
一個だけ理由に思い至り、あたしは大がかりな攻撃をイメージした。
味方を巻き込まないよう小さな魔法ばかり使っていたけど、今回ばかりはみずっち達の力を信じるしかない。
「みんな、ハデなの行くよ! ……避けて!」
叫びながらレンレンを振るう。すると、魔女の頭上に広範囲の魔法陣が展開。
みずっち達は気づいてすぐに陣の外へ逃げたけど、魔女は逃げ切れなかった。
直後、魔法陣から強力な雷撃が降ってきて、魔女に直撃する。
「――ぎゃっ!」
やった! 効いた! あたしの予想通り!
あいつはさっきから物理攻撃を避けようとはしなかったけど、あたしの魔法攻撃だけは避けていた。それは、魔法攻撃だけは避けないと喰らっちゃうからだ!
その予想は的中だった。これで魔女の攻略法は理解できたも同然!
「ノゾミ……さすがだね」
あたしのそばに着地したみずっちが笑顔で褒めてくれた。あたしはそれに笑顔で応えると、再び魔女へ目を向ける。これで終わるような敵じゃないもんね、きっと。
「よくもやってくれたわねぇ……そっちがその気なら、私はあんた達全員の心を折ってやるんだから!」
ぷすぷすと煙を昇らせながら魔女が叫ぶ。再び大きく目を見開いた。
たちまち、魔女の目の前に巨大な魔法陣が展開。
バチバチと電気のようなものを奔らせながら、ゆっくりと回転し始める。
「これまで何人もの魔法少女から吸収してきた欲望のエネルギーを、全部使ってお見舞いする超特大魔法よ! とくと味わいなさい!」
回転速度が増していき、それに比例して迸る電気の量も増えていく。
きっとエネルギーをチャージしてるんだ。言葉通り、特大なヤツが来る。
「ど、どうしたらいいんですの? こんなの、避けるのも防ぐのも……」
あまりに巨大な魔法陣を前に、つきのんが気圧されたように言う。でも、つきのんの気持ちはあたしにもわかる。
魔女の言葉が事実なら、とんでもない人数の魔法少女がありったけの魔力を注ぎこんで打ってくる魔法みたいなものだ。それも超特大。
けど、こっちで魔法を放てるのはあたしだけ。あたし一人では、いくら無尽蔵に生み出せるって言っても瞬間的な魔力量で勝てるかどうか……。
「……でも、攻撃の手段がないわけじゃないよね!」
あたしは決してうろたえず、前向きに状況を考える。
魔法を撃てるのはあたしだけ。
でも、魔力を生み出しているのはあたしだけじゃない。
「あいつの魔法に、こっちだって正面からぶつかってやるんだ。……そのためにみんな、あたしに力を貸して!」
すると、みずっちとつきのんがすぐにあたしのそばへ来てくれた。
「構いませんけど、どうするんですの!?」
そう訊ねつつも無条件に信頼してくれている感じが、あたしはすごく嬉しかった。
「あいつに負けないぐらいの特大魔法を、こっちだって撃てばいいんだよ。あたしがレンレンを……魔導器を通して、攻撃のイメージを作る。そこにみんなの、ヤツを倒したいって想いと魔力をありったけ注いで!」
このステッキは、あたしの「こうしたい!」という形を創造する力がある。
なら、「みんなの思いや魔力を合体させたい!」と願いを想像すれば、合体技だって撃てると思うんだ。
「あいつには、魔法以外に通じない……ノゾミの方法しか、きっと、勝つ手段はない」
みずっちが率先して、あたしの提案を受け入れてくれた。そっとレンレンに触れる。
それを見て、つきのんもあたしの隣でレンレンに手を添える。
「みずっち、つきのん……ありがとう! ほら、みんなも手伝って!」
あたしが外野で戦いを見守っていた他の魔法少女達にも声をかける。
頷き合い、気合いを入れ直し、みんながあたし達のところに集まってくる。
あたしを中心に、みずっちとつきのんがサイドからレンレンに手を添える。若葉ちゃんやかすみん、むっちーがあたし達三人の肩に手を添える。
そして他の魔法少女達は若葉ちゃん達の肩に、次の人は前の人の肩に……それぞれ手を添えて魔力を流すルートを作る。
準備は整った! あたしはスッと深呼吸して、目を閉じる。
特大魔法のイメージを、明確に、的確に作っていく。
魔法少女みんなの魔力と、あいつを倒したいという思いを、徐々にステッキへ集めていく……その感覚を意識していく。
体が熱い。まるで、みんなの熱意が通り抜けていっているみたいだ。
集まってくるたびに、ステッキの前では一回り、また一回りと魔法陣が広がっていく。
やがては魔女が広げている魔法陣と同サイズにまで拡大した!
特大魔法陣の完成だ――けど、一足遅かった。
「みんな仲良く、絶望に染まっちゃえ!!」
魔女が巨大な黒い光線を放ったのだ。
ぐんぐんこちらに近づいてくる魔女の攻撃に、あたしは正直、焦っちゃった。
すぐにでも攻撃に移りたい。でも、ちゃんとチャージできているか不安にもなる。
どうしよう、どうしたらいい? そんな自問が頭の中をぐるぐる巡った。
でも――みずっちがあたしの手を握ってくれた。
つきのんもしっかり握ってくれた。
あたしの肩に添えられているかすみん達の手にも力がこもった。
それだけであたしは、すべての心配が吹き飛んだ。不安が消え去った。決心がついた。
――ああ。きっと、そういうことだったんだね。
あたしは、みんながいたから前向きでいられたんだ。
あたしがポジティブなんじゃない。みんながポジティブでいさせてくれたんだ。
だからこそあたしは、手を握ってくれたなんて些細な行動で、驚くほど前を向けるようになれたんだ。
あたしは魔女の攻撃を、真っ向から捉える。
これで最後にするんだ。
そんなありったけの思いを込めて、あたしは叫ぶ!
「みんなの思いと願いを――くらええっ!!」
瞬間、轟音を響かせて巨大な光線が発射された!
こっちの白い光線と、向こうの黒い光線。二つがぶつかり合う。
互いに拮抗し合う攻撃。どちらも引かない。気を抜けば呑まれそうだった。
でも、あたし達は負けない、負けてなんかいられない!
あたしは自分のありったけの魔力を注ぎこむ。
すると、拮抗していたように見えた力に、徐々に変化が現れた。
あたし達の攻撃が、ちょっとずつ黒い攻撃を押し戻していった。
ここが正念場だ! あたしは叫んでいた。
「い……けええぇぇっ!」
やがて――黒い光線すらも飲み込んで、魔女を直撃する。
「ぎやあああっ!」
魔女の断末魔が響く。あたし達の攻撃によってどんどん散らされ、小さくなっていく。
ほとんど消えかけの靄は、最後の最後に叫んだ。
「あ、あたしの夢が……願いがああぁぁ!」
……やがて、魔法の光が細く収束していき、消える。
目の前に浮んでいた魔女は、もう跡形もない。
その瞬間、あたし達は勝利を確信し――
「いやったあ! 終わったあああぁ!」
妙に長く感じた、たった数時間の最終決戦の集結に、歓喜の声を上げた。
すべての戦いが終わったあと、あたし達はボロボロなお城をちょっとでもキレイにするため、動ける人総出で瓦礫の撤去作業などを手伝った。
まるで文化祭の後片付けみたいだなー、なんて思いながら作業していると、他にも同じようなことを考えている子もたくさん居たみたいで、夜は女王のお城のお庭でキャンプファイアーだ! なんて流れになった。
もちろん誰も異論はなく、使えない廃材を集めてタワーを組み、夜の宴の準備も着々と進んでいった。
ところで、魔女の本体である靄を撃退したあと、不思議なことが起こった。
それは、ユニっちの人格がちょこっと変化したのだ。
「みなさん。このたびは、エルドラのためにありがとうございました。女王としてお礼申し上げます」
幼女の姿のままだけど、そこそこ大人びた喋り方を普通にこなしたのだ。
「そんな驚かないでください。わたくしは自分が欲望に蝕まれるのを阻止するため、侵食されてしまった一部の記憶を抜き取り、『無垢』な状態で心の時を止めていました。それが、今回の件でわたくしの記憶が浄化されて、肉体に戻ってきた。それによって時の流れが再開したのです」
今はまだ肉体は無垢な幼女のままだけど、心に合わせてどんどん急成長するらしい。
便利な体だな……と眺めていると、ユニっちはあたしの手を取って言った。
「ノゾミ。そしてミズホ、ツキノにワカバ、カスミにムサシ……みなさんには本当に、たくさんの辛い思いと悲しい思いをさせてしまいましたね。ごめんなさい」
深々と頭を下げるユニっちに、あたしは驚いちゃった。
「そ、そんな! 謝らないでよ! 確かにそういう思いもしたかもしれないけど、基本的には毎日楽しかったし!」
ニコッと笑顔で応えるあたし。
でもその直後、パシッと頭をひっぱたかれる。
「相手は女王様。ちゃんと敬語を使う」
みずっちが呆れたようにあたしを見ていた。
敬語かあ、苦手なんだよなぁ……。
すると、ユニっちはクスクスと笑った。
「あなた達は、本当に心が強い方達ばかりなんですね。わたくしは、人々の欲望に抗えず、心を病みそうになってしまった。あなた達のように強い心を持っていれば、抗えたかもしれないのに」
ユニっちは目を伏せる。
でもね、違うよユニっち。あたし達だって最初から強かったわけじゃないよ。
こうして支え合える人がいるから、友達と呼べる人達がいるから、強くなれただけなんだよ。
あたしも、自分が前向きポジティブでいられる本当の理由に気づいたしね。
だからね、とあたしはユニっちに言った。
「そういうの、一人で抱え込んじゃダメだよ」
あたしはしゃがんでユニっちと視線を合わせた。
「だから、あたし達と友達になろうよ」
目を丸くしたユニっち。あたしの友達宣言に驚いているのは間違いない。
クリクリの目をぱちくりさせたあと、ユニっちは子供らしい笑顔を浮かべた。
「はい……ぜひっ!」
嬉しそうなユニっちを見ていると、あたしまで嬉しくなっちゃう。
二人でニコニコしながら、嬉しさを噛み締めていると、ユニっちは思い出したように言った。
「ではそんなお友達であるみなさんが、揃って現世に帰ることができ、かつしっかり夢を見続けられるよう、持ち続けられるよう……わたくしも、女王としての勤めを果たさないとなりませんね」
おお、ここで改めて女王即位の宣言!
ユニっち、かっこいい!
すると、カマカマ先生が横からソッと入り込んでくる。
「でも、それじゃあ結局、エネルギー供給の問題は解決してないわ」
カマカマ先生の言うことはその通りだった。
今のままじゃ、結局魔法少女を呼び込んで、夢のエネルギーを吸収させるしかない。
ラミラミの言っていた、魔力供給タンクであるあたしの体じゃないけど、そういうのに近いなにかが都合よくないものかな。
そんなことを考えていた時だ。
あたしはふと、一つの可能性に行き着いた。
「ようは、他の魔法少女が夢を犠牲にせず、夢のエネルギーを常に吸収、循環させるものがあればいいんだよね?」
あたしが訊ねると、ユニっちとカマカマ先生が躊躇いがちに頷いた。
そういうことなら、試してみる価値はあるかもしれない。
あたしはさっそく、その案をみんなに提案してみた。
その日の夜は、エルドラでの最後の夜ということが決まり、ユメガッコーの畑の作物を全部使っての晩餐会が開かれた。
盛大なキャンプファイアーも天まで昇り、綺麗な夜景と満天の星空を存分に味わい尽くした。
明日にはみんな、現世に帰る。夢の世界ともお別れすることにある。
そこに名残惜しさはなさそうだった。あたしだってない。
だって、夢を見ればいつもそこにある世界なんだもん。
エルドラはいつも、夢を見る人のそばにある。
だから、この別れを惜しむという発想自体が成立しない。
エルドラでの最後の夜を、みんな思い思いに過ごし、疲れた人から倒れるように爆睡し。
気がつけば、あっという間に出発の朝になっていた。
「それでは、本当にいいのですね? ノゾミ」
ユニっちが最後の確認を口にした。あたしは躊躇わずに頷く。
「確かにあなたの言うとおり、ノゾミはあらゆる可能性を信じ切っている存在……無限の夢を放出し続けている特異点です。あなた一人が願いを叶えれば、夢のエネルギーを吸収・循環する反永久機関は、自動的に組み上がるでしょう」
そう、それこそがあたしの提案だった。
ラミラミも魔女も言っていた。あたしは夢のエネルギーを無尽蔵に垂れ流している存在だって。
エルドラは魔法少女の願いを叶え、そのエネルギーを吸収することで存続してきた。
でも本来、人の願いや夢は儚いもの。吸収してもすぐに枯渇して持続しない。
だからこそエルドラの存続には、今まで何人分もの夢や願いを吸収する必要が生じていた。
けど、あたしはその範疇を超えたエネルギー供給タンクだ。
そのあたしが願いを叶えれば、エルドラは当然、あたしからエネルギーを吸収しようとする。
そしてあたしのエネルギーは尽きないから、ずっとずっとあたしから吸収し続ける。
そうすれば、あたしが死なない限り、エルドラのエネルギー問題はバチッと解決するってわけだ。
「ただ、時にはそれがあなたを苦しませることになるかもしれません。ノゾミが未曾有の危機に瀕して絶望しかけたとしても、際限なく夢は吸い取られ続けてしまいます。それでも後悔はないんですね?」
「うん! だって、それがエルドラのためになるんだもん。みんなの夢のためになるんだもん。だったらバッチこいだよ!」
あたしは力強く即答した。
そんなのぜんぜん苦にならないよ。
むしろあたしには他にもっと心配なことがある。
だってあたしが夢を叶えちゃったら、他のみんなはここで夢が叶えられなくなるんだもん。
「みんなは、あたしが代表で夢叶えちゃっていいの?」
みんなのことを振り返りながら訊ねると、いの一番につきのんが口を開いた。
「私はもう、かまいませんわ。生の脚がなくとも、強く生きるに必要なものは得られましたの」
それがなんなのか、あたしはあえて訊かなかった。訊かなくても察しがついたしね。
つきのんは、強いよ。だって、脚をなくしてもエルドラを旅して、伝説の義足を手に入れた。
それだけの冒険をできる人なんだもん。これからもずっと、心折れずにやっていける。
「わたしもぉ、こうして仲良くしてもらえる人がたぁくさんできたから、願いは叶っちゃいましたぁ」
若葉ちゃんは相変わらずふわっと笑って応えた。
「私もよ。柳瀬川望実。あなたが人を信じることの大切さと強さを教えてくれた。それだけでも、私はエルドラに来て良かったと思ってる」
かすみんが笑顔を浮かべる。
かすみんは、ラミラミに対して啖呵を切ったことと、今の言葉がすべてなんだと思う。
その立役者があたしか……うう、泣かせてくれるねぇ!
「私はただ、強いヤツと戦いたかっただけだしさ。特に願いってものもないし、気にすんな」
むっちーは相変わらずむっちーだった。ほんと、この人のぶれないところ大好き。
そしてあたしは、すぐ隣にいるみずっちへ視線を向けた。
彼女はためらうことなく頷いてくれた。
「帰ったら、一緒にクレープ、食べに行くんでしょ?」
ニコリと笑ってくれるみずっちに、あたしも満面の笑みで「うん!」と頷いた。
きっとみずっちの願いは、それだけだ。今までの本音も全部吐き出し、受け止めた上で、それでも親友同士仲良しで居続けること。
それは、わざわざここで叶える願いじゃない。
現世で、二人でがんばって維持し続けていくべき夢なんだ。
まあ、そんなわけで。
他の魔法少女達も含め、だーれも異論はないそうだ。
皆が皆、自分の夢はとうに叶っているという。
「わかりました。ではノゾミ……あなたの願いはなんですか?」
あたしは深呼吸して、昨日の晩からずっと考えていた願いを思い出す。
あーでもないこーでもないと、ずーっと悩んでいた願い。
それを、今――言葉に乗せる。
「みんなで仲良く現世に帰って、人生を謳歌する上での最高の関係を維持し続けながら、毎日明るくハッピーに暮らせるように、健康にも気を遣いながら――」
「「「「願いが長いよ!」」」」
と、一斉にみんなからのツッコミが飛んできて、あたしはビックリしてしゃっくり出ちゃった。
直後、ちょっとだけシーンという空気になり。
やがて、みんなでケラケラと笑った。
ああ、うん。こういう感じ、あたし大好きだなぁ。
だから、改めてみんなに向けて言ったのだ。
「まあ、こんな感じで……現世に帰っても、みんな仲良しでいようね!」
瞬間、あたし達魔法少女を囲うように、大きな魔法陣が展開した。
最後の言葉が願いとして認識された。これで願いが叶う。
魔法陣からホタルのように光の粒が昇った。
キレイな魔法をこの目に焼き付けようとする途中、あたしは魔法陣の外で見送る人達にも目を向けた。
あたし達のことを導いてくれた、カマカマ先生。
先生が持っている、なんだかんだで相棒だった、レンレン。
そして、この世界を守るために女王で居続けることを決めた、生まれて初めてできた異世界の友達、ユニっち。
「そうだ、ユニっち! 提案提案!」
こんなタイミングでも良いアイディアが閃くなんて、あたしは将来どんな大物になることやら。
キョトンとしているユニっちに、あたしは笑顔を向けた。
「女王のお仕事が大変で気晴らししたくなったら、現世においでよ。案内してあげるからさ! みんなで一緒に遊ぼ!」
ユニっちにとっては思わぬ誘いだったせいか、彼女は無言で目をパチクリさせた。
でも、すぐに子供らしい笑顔で答えてくれた。
「はい! 必ず伺います! 楽しみにしていますから……それまでどうか、お元気で!」
次第にあたし達の姿は、粒子状になって散っていく。
体が全部消える前に、あたしは大きく大きく手を振った。
「ありがとう! すっごくすっごく、楽しかったよ!」
声が届いて、二人は手を振ってくれた。
目の前が真っ暗になっても、あたしの目には、その姿がずっと映っていた。
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