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ミツハナ脱退編
卒業まであと1年
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卒業生がクラスごとに分かれ校庭で集合写真を撮っている。それを2階の廊下の窓から見ている俺とヒデキ。
「俺たちも来年はああやってクラスみんなで最後の写真を撮ってるんだろうな」
「ヒデキとは一緒に撮れなくて残念だな」
4月から俺は特進コース、ヒデキは普通コースに進むことになる。
「そうだな。まあ、お前は佐原と森崎と一緒に撮れたらいいんだろ」
「お前だって藤木さんと一緒に撮れたら満足だろ」
「いやー、ケイコとはしょっちゅう写真撮ってるからな」
そう言い、ヒデキがスマホを取り出し、藤木さんとの写真を見せてくる。
お互いの頬を近づけた自撮り写真だ。
「シュウゴ、やっぱりお前と一緒に撮りたいな。あとは須藤を入れてケイコ、佐原、森崎も」
「来年まで待たずに2年の終業式にみんなで撮ろうぜ。あけみっちも入れて」
「だな。しかし、心配だろ。森崎が普通コースに進むなんて。森崎って大人しいから目立たないけど、意外と人気だからな。別のクラスになって、男が急接近ということもありうる」
「心配なんてしてないぞ」
というのは大嘘で、この頃、心配で心配で眠れない。
特進コースに進むためのテストで、友巴ちゃんは落ちてしまった。それがわかった時、友巴ちゃんは大泣きした。俺は今でも泣きたい気持ちである。
「自信満々だな。言葉だけは。結局、特進コースはお前と佐原だけで、俺とケイコ、須藤と森崎は普通コースだが、みんなクラスはバラバラになる可能性がある。ケイコに男どもがちょっかい出さないか俺も心配だわ」
「だよな」
同じ特進の帆乃花ちゃんとはなんとしてでも同じクラスになりたいところだ。
男二人でため息をついて、キャッキャと騒いでいる卒業生を見下ろした。
「ちょっと何二人で黄昏てるのよ」
振り返らずともわかる声の主。
「はあ。サッチは悩みがなさそうでいいよな」
「ちょっと、シュウゴ。私だって悩みの一つ、二つくらいあるわよ」
「例えば?」
「例えば……、3年生になって今よりもっとクラスの男子からモテたら大変じゃん。どうしよう、シュウゴ」
「俺に言うな。モテるのはいいことだ。他にないのか?」
「あるけど……。シュウゴには言えない」
「なんだよそれ」
俺がそう言うと、サッチは、ふんっと言って去っていった。
「お前、須藤には冷たいよな」
「そうか?」
「明らかに佐原や森崎に対する態度と違うぞ」
「まあそれはな」
「もう少し構ってやれ。同じクラスなのはあと1か月だしな」
「……わかった。多少、気にしておくことにする。さあ俺たちも教室に入るか」
教室に入ると友巴ちゃんと帆乃花ちゃんが話し込んでいる。窓からさす光が二人を輝かせる。あー、友巴ちゃんとは確実に違うクラスになるし、帆乃花ちゃんとも同じクラスになれるとは限らない。
このクラスのまま3年に上げてくれー。
普通コースと決まった時から友巴ちゃんの表情は暗かったのだが、今は笑顔を見せている。
「ねえ、シュウゴくん、聞いた? 私も特進コースに行けるかも?」
「え! 本当 ? 同じクラスになれるかも?」
「そうなの。生徒に勉強を頑張らせるためだと思うけど、中間、期末テストごとにコース入れ替えをするんだって。今、ホノカちゃんから聞いたところ」
「特進コースの下から10人と普通コースの上から10人が入れ替わるんだって。どうやらあけみっちの提案らしいよ。校長も学校の学力アップにつながるって賛成したんだって」
「だから私、ココアでもっと頑張るから二人ともよろしくね」
「うん。クラスがバラバラになるかもしれないけど、私たちにはココアがあるからいつも一緒だよ」
見つめ合う女子二人。
はあー、友巴ちゃんとも同じクラスになる可能性があって良かった。何より友巴ちゃんには笑顔が戻って良かった。ありがとう、あけみっち。
そう心の中で思っていると、そのあけみっちが入ってきた。
卒業式でピアノを弾くため、黒色のドレスを身に纏っている。スタイルのいい身体がさらに引き締まって見える。今日は主役ではないので、落ち着いたドレスではあるが、このまま上流階級のパーティーに出掛けて行っても恥ずかしくないだろう。それどころか、出席者の目をおおいにひきつけるに違いない。
「みんなもあと1年後、卒業式ね。受験する人も多いけど、みんな悔いのない1年にしましょう。じゃあ、卒業生に挨拶する人もいるだろうから、今日はここまで」
さよならの挨拶をして解散となった。
部活に入っているクラスメイトはそれぞれの先輩のところに向かったようだ。俺も超ゆるい剣道部に一応所属しているので、お別れの挨拶をしにいかなけ行かなければならない。
「二人とも、すぐ戻ってくるから待っててね」
「ゆっくりで大丈夫だよ」
「私、土曜日の話をトモハちゃんにしておくから、ごゆっくり」
今日は水曜日。日曜日の3月5日が友巴ちゃんの誕生日だ。
前日の土曜日に帆乃花ちゃんがお祝いし、誕生日当日の日曜日は俺がお祝いすることになっている。
友巴ちゃんが落ち込んでいたため、誕生日の話がこれまでなかなかできなかった。
笑顔を取り戻した友巴ちゃんと早く段取りを決めたい。
さっさと先輩を送り出して戻ってこよう。すみません、先輩。こんな後輩で。
「俺たちも来年はああやってクラスみんなで最後の写真を撮ってるんだろうな」
「ヒデキとは一緒に撮れなくて残念だな」
4月から俺は特進コース、ヒデキは普通コースに進むことになる。
「そうだな。まあ、お前は佐原と森崎と一緒に撮れたらいいんだろ」
「お前だって藤木さんと一緒に撮れたら満足だろ」
「いやー、ケイコとはしょっちゅう写真撮ってるからな」
そう言い、ヒデキがスマホを取り出し、藤木さんとの写真を見せてくる。
お互いの頬を近づけた自撮り写真だ。
「シュウゴ、やっぱりお前と一緒に撮りたいな。あとは須藤を入れてケイコ、佐原、森崎も」
「来年まで待たずに2年の終業式にみんなで撮ろうぜ。あけみっちも入れて」
「だな。しかし、心配だろ。森崎が普通コースに進むなんて。森崎って大人しいから目立たないけど、意外と人気だからな。別のクラスになって、男が急接近ということもありうる」
「心配なんてしてないぞ」
というのは大嘘で、この頃、心配で心配で眠れない。
特進コースに進むためのテストで、友巴ちゃんは落ちてしまった。それがわかった時、友巴ちゃんは大泣きした。俺は今でも泣きたい気持ちである。
「自信満々だな。言葉だけは。結局、特進コースはお前と佐原だけで、俺とケイコ、須藤と森崎は普通コースだが、みんなクラスはバラバラになる可能性がある。ケイコに男どもがちょっかい出さないか俺も心配だわ」
「だよな」
同じ特進の帆乃花ちゃんとはなんとしてでも同じクラスになりたいところだ。
男二人でため息をついて、キャッキャと騒いでいる卒業生を見下ろした。
「ちょっと何二人で黄昏てるのよ」
振り返らずともわかる声の主。
「はあ。サッチは悩みがなさそうでいいよな」
「ちょっと、シュウゴ。私だって悩みの一つ、二つくらいあるわよ」
「例えば?」
「例えば……、3年生になって今よりもっとクラスの男子からモテたら大変じゃん。どうしよう、シュウゴ」
「俺に言うな。モテるのはいいことだ。他にないのか?」
「あるけど……。シュウゴには言えない」
「なんだよそれ」
俺がそう言うと、サッチは、ふんっと言って去っていった。
「お前、須藤には冷たいよな」
「そうか?」
「明らかに佐原や森崎に対する態度と違うぞ」
「まあそれはな」
「もう少し構ってやれ。同じクラスなのはあと1か月だしな」
「……わかった。多少、気にしておくことにする。さあ俺たちも教室に入るか」
教室に入ると友巴ちゃんと帆乃花ちゃんが話し込んでいる。窓からさす光が二人を輝かせる。あー、友巴ちゃんとは確実に違うクラスになるし、帆乃花ちゃんとも同じクラスになれるとは限らない。
このクラスのまま3年に上げてくれー。
普通コースと決まった時から友巴ちゃんの表情は暗かったのだが、今は笑顔を見せている。
「ねえ、シュウゴくん、聞いた? 私も特進コースに行けるかも?」
「え! 本当 ? 同じクラスになれるかも?」
「そうなの。生徒に勉強を頑張らせるためだと思うけど、中間、期末テストごとにコース入れ替えをするんだって。今、ホノカちゃんから聞いたところ」
「特進コースの下から10人と普通コースの上から10人が入れ替わるんだって。どうやらあけみっちの提案らしいよ。校長も学校の学力アップにつながるって賛成したんだって」
「だから私、ココアでもっと頑張るから二人ともよろしくね」
「うん。クラスがバラバラになるかもしれないけど、私たちにはココアがあるからいつも一緒だよ」
見つめ合う女子二人。
はあー、友巴ちゃんとも同じクラスになる可能性があって良かった。何より友巴ちゃんには笑顔が戻って良かった。ありがとう、あけみっち。
そう心の中で思っていると、そのあけみっちが入ってきた。
卒業式でピアノを弾くため、黒色のドレスを身に纏っている。スタイルのいい身体がさらに引き締まって見える。今日は主役ではないので、落ち着いたドレスではあるが、このまま上流階級のパーティーに出掛けて行っても恥ずかしくないだろう。それどころか、出席者の目をおおいにひきつけるに違いない。
「みんなもあと1年後、卒業式ね。受験する人も多いけど、みんな悔いのない1年にしましょう。じゃあ、卒業生に挨拶する人もいるだろうから、今日はここまで」
さよならの挨拶をして解散となった。
部活に入っているクラスメイトはそれぞれの先輩のところに向かったようだ。俺も超ゆるい剣道部に一応所属しているので、お別れの挨拶をしにいかなけ行かなければならない。
「二人とも、すぐ戻ってくるから待っててね」
「ゆっくりで大丈夫だよ」
「私、土曜日の話をトモハちゃんにしておくから、ごゆっくり」
今日は水曜日。日曜日の3月5日が友巴ちゃんの誕生日だ。
前日の土曜日に帆乃花ちゃんがお祝いし、誕生日当日の日曜日は俺がお祝いすることになっている。
友巴ちゃんが落ち込んでいたため、誕生日の話がこれまでなかなかできなかった。
笑顔を取り戻した友巴ちゃんと早く段取りを決めたい。
さっさと先輩を送り出して戻ってこよう。すみません、先輩。こんな後輩で。
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